レガシーMADデッキ開発室 vol.2 ~0マナ6/8飛行~

井川 良彦


こんにちは、井川です。

3月/4月に行われたStarCityGamesの大会ではHigh Tideが優勝し、海外やMagic Onlineではトップメタに踊り出ているようですね。

普段あまり見かけないデッキでも、しっかりと練りこめばトップメタにも勝てるんだ、ということを改めて実感しました。
どんなカード(デッキ)でも、「使われてない=弱い」という偏見を持たずに、実際に自分で使ってみて確かめるのが一番ですね。



Jesse Hatfield「High Tide」
StarCityGames.com Legacy Open (1位)

12 《島》
2 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《汚染された三角州》

-土地(18)-


-クリーチャー(0)-
4 《Candelabra of Tawnos》
1 《精神力》
1 《青の太陽の頂点》
4 《渦まく知識》
3 《狡猾な願い》
4 《Force of Will》
4 《High Tide》
1 《直観》
3 《瞑想》
3 《転換》
4 《商人の巻物》
4 《思案》
2 《定業》
4 《時のらせん》

-呪文(42)-
1 《青の太陽の頂点》
1 《思考停止》
1 《残響する真実》
1 《直観》
1 《瞑想》
3 《否定の契約》
1 《再建》
3 《撤廃》
1 《断絶》
1 《転換》
1 《拭い捨て》

-サイドボード(15)-
hareruya



ということで、今回も懲りずにちょっと変わったデッキを紹介していきたいと思います。



1.レガシーでも見劣りしないスタンダードデッキ「白単アーマー」



突然ですが、みなさんは昨年末に千葉で行われた世界選手権の会場へ行きましたか?

会場全てがマジックジャンキーで埋まっている様はまさに圧巻でしたね。生粋のマジックジャンキーである僕はその光景を見ているだけで幸せでした。
今週末のグランプリ神戸、そして6月に開催されるプロツアー名古屋も今から楽しみです。

その世界選手権の横で開催されたThe Finals2010は、決勝トーナメントを全てストレートで勝利した仙波 恒太郎さんが栄冠を掴みました。彼がスタンダードで使用したのは、「白単アーマー」という《聖なる秘宝の探索》を使用した高速ビートダウンでした。



仙波 恒太郎「白単アーマー」
The Finals 2010 (1位)

20 《平地》

-土地(20)-

4 《メムナイト》
4 《羽ばたき飛行機械》
4 《きらめく鷹》
4 《闘争の学び手》
4 《コーの空漁師》
4 《コーの装具役》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《戦隊の鷹》

-クリーチャー(32)-
4 《聖なる秘宝の探索》
2 《肉体と精神の剣》
2 《アージェンタムの鎧》

-呪文(8)-
4 《未達への旅》
4 《コーの火歩き》
4 《真心の光を放つ者》
3 《白騎士》

-サイドボード(15)-
hareruya



《きらめく鷹》《コーの空漁師》《羽ばたき飛行機械》《メムナイト》を駆使して早いターンにクリーチャー呪文を複数回プレイし、クエストの条件をあっという間にクリアする様は、ビートダウンというよりはコンボデッキを思わせます。Finals2010の準決勝では「先攻4ターン目に《聖なる秘宝の探索》2枚がクエスト達成→《アージェンタムの鎧》付きクリーチャーが2体アタック」という超スタンダード級の動きで勝利を収めています。


聖なる秘宝の探索アージェンタムの鎧

 
スタンダードを制した、爆発力が魅力のこのデッキコンセプトなら、きっとレガシーでも輝けるに違いない!ということで、今回の合言葉は「スタンダードの挑戦」です。ちょうどAMCのデッキリストの中に《聖なる秘宝の探索》を使ったデッキがあったので、そちらを参考にしてデッキを構築してみました。それがこちらです。



2.エラヨウクエストッッ!!




「エラヨウクエスト」

2 《平地》
1 《島》
4 《Tundra》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《吹きさらしの荒野》
3 《古えの居住地》
3 《教議会の座席》

-土地(18)-

4 《メムナイト》
4 《羽ばたき飛行機械》
4 《ルーンの母》
4 《きらめく鷹》
4 《上位の空民、エラヨウ》
4 《コーの空漁師》
2 《石鍛冶の神秘家》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《粗石の魔道士》

-クリーチャー(28)-
4 《聖なる秘宝の探索》
3 《渦まく知識》
1 《悟りの教示者》
1 《梅澤の十手》
1 《肉体と精神の剣》
1 《アージェンタムの鎧》
1 《真髄の針》
2 《オパールのモックス》

-呪文(14)-
4 《剣を鍬に》
4 《戦隊の鷹》
1 《悟りの教示者》
1 《トーモッドの墓所》
1 《太陽と月の輪》
1 《忘却の輪》
1 《梅澤の十手》
1 《罠の橋》
1 《エーテル宣誓会の法学者》

-サイドボード(15)-
hareruya



普段スタンダードをプレイしている方にはお馴染みかもしれませんが、改めてデッキの動きを簡単に説明したいと思います。

このデッキは《聖なる秘宝の探索》をキーカードとして組まれたデッキです。《聖なる秘宝の探索》を早いターンに戦場に出し、《羽ばたき飛行機械》《メムナイト》《きらめく鷹》などによってクエストを達成させます。そして、《アージェンタムの鎧》という「超重くて超強い」装備品のコストを踏み倒して殴り勝つのが基本的な動きとなります。

《アージェンタムの鎧》は装備コストが非常に重いため、装備先の生物がすぐ除去されそうな場合は《梅澤の十手》《肉体と精神の剣》などの「軽くて強い」装備品をサーチし、大量の飛行生物+装備品で相手を圧倒します。


梅澤の十手肉体と精神の剣


スタンダードからレガシーにその戦場を移したことにより、強化された点は主に3つです。

1つ目は《ルーンの母》。「最強の1マナ圏はどれか」という議論になると常に名前が挙がる彼女。場に出て2秒で除去されるのが日常ですが、生き残れば盤面を支配する最強のお母さんです。


ルーンの母


2つ目は《悟りの教示者》《渦まく知識》。スタンダード時代は比較的初手依存率が高い=マリガンの多いデッキだったのですが、この2種類のおかげでかなり緩和されました。特に《渦まく知識》は「土地を引きすぎると負ける」「手札を整理して生物を複数枚プレイしたい」「手札に来たアージェンタムが憎い!」というこのデッキにはまさにうってつけ。


悟りの教示者渦まく知識


3つ目は、このデッキの新しいキーパーツ、《上位の空民、エラヨウ》です。反転後の「いずれかの対戦相手が各ターンに最初に呪文を唱えるたび、その呪文を打ち消す。」という強さは異次元であり、まさにエンペラータイム。反転の条件である『同一ターンに呪文を4回プレイ』も《きらめく鷹》《羽ばたき飛行機械》などを擁するこのデッキにとってはさほど難しくなく、《聖なる秘宝の探索》のカウンターを乗せつつ《上位の空民、エラヨウ》を反転させることも可能です!


Erayo, Soratami Ascendant


このように幅広く強化された「Finalsの王者」はレガシーでも勝利を収めることができるのでしょうか?ということで、実際にこのデッキでトーナメントに参加してみました。参加者19人の3回戦。力を試す場として不足はありません。今回も某有名人のセリフを借りて、意気込んでいきたいと思います。


 俺は、このデッキで3-0まで駆け抜ける!!!






3.惜敗……ッッ!!



R1:対Zoo ×○○
R2:対青タッチ緑コントロール ○×○
R3:対黒タッチ緑《悪疫》 ×○×
 

R1、R2は思い通りのゲーム運びをすることが出来ましたが、R3は《思考囲い》《Hymn to Tourach》《悪疫》でリソースを根こそぎ奪われて負けてしまいました。

実際に対戦するまで気付かなかったのですが、《聖なる秘宝の探索》にしろ《上位の空民、エラヨウ》にせよ、達成には一定の手札を必要とするので、2ターン目の《Hymn to Tourach》は泣きそうなほど辛かったです。2マナでランダム2ディスカードは強すぎる!《精神腐敗》に謝れー!!


Hymn to Tourach


今回はレガシー仕様ということで《上位の空民、エラヨウ》とのハイブリッドレシピで参戦しましたが、オリジナルに近い形の白単も魅力的です。《不毛の大地》が効かないというのはレガシーという環境において非常に大きなメリットですし、《戦隊の鷹》《石鍛冶の神秘家》はレガシーでもエース級の活躍をしてくれます。

もし「レガシーには興味あるけどスタンダードしか持ってない」という方でも、一度一念発起して大会に参加してみてはどうでしょうか。近年のスタンダードのカードパワーは非常に高いので、レガシーフォーマットの醍醐味を十分に味わってもらえると思います。

今回も敗北に終わり非常に悔しい思いをしたので、次回は3世界の“神”の力を借りて、勝利を掴みにいきたいと思います。

それでは、また再来週。