レガシーMADデッキ開発室 vol.5 ~井川が山田で愉快に大冒険~

井川 良彦


こんにちは!井川です。

GPプロビデンスのトップ8デッキには《精神的つまづき》が25枚、《Force of Will》が16枚使われていましたが、優勝したBantはなんと《Force of Will》が0枚でした。

メタの動きを読み、「青いデッキには4枚必須」と考えられてきた《Force of Will》を抜くという決断ができるその「意志の力」は、まさにチャンピオンにふさわしいですね。


Force of Will


ですが、レガシーが持つ広大なカードプールには、まだまだ可能性が埋まっています。独創的なデッキをどんどんご紹介していければと思っています!

ということで今回は、連載開始が決まったときから、いつか使おうと心に決めていたデッキをご紹介したいと思います。



1.本当にあった!?ネット上の凄いデッキ


そのデッキとは、知る人ぞ知る、最凶最悪最弱のデッキ。
5年程前にネット界を騒がせた「MTG既知外列伝」(筆者注:長編です。読む際は《時間のねじれ》に気をつけてください。)というスレッドの登場人物「山田」が作ったといわれる、異次元的発想によるバーンデッキ。

ご存知の方も多いと思います。そう、ヤマディアンバーンです。



山田「ヤマディアンバーン」

12 《山》
1 《沼》
4 《硫黄泉》
4 《真鍮の都》

-土地(21)-

4 《モグの狂信者》
4 《ボール・ライトニング》

-クリーチャー(8)-
4 《悪疫》
4 《炎の嵐》
4 《ショック》
4 《焚きつけ》
2 《火炎破》
2 《地震》
4 《暗黒の儀式》
4 《吠えたける鉱山》
3 《呪われた巻物》

-呪文(31)-

-サイドボード(0)-
hareruya



(注:スレッド内に完全なデッキレシピは載っていないため、あくまで想像のレシピです。)

スレッド内で、「私」は以下のように語っています。

『それは、《悪疫》の最初の1発が7点もライフを削れることに着目し、赤バーンにPOXを投入するという暴挙に出た超デッキである。
悪疫の黒黒黒を出すために沼も投入されたそのデッキでは、初手に 悪疫 ボールライトニング の2枚が同時に入り、必要なマナが 黒黒黒 赤赤赤 であるというような悪夢もしばしば起こったが、そのような問題は些細な問題だとされた。
また、《ヤマディアンバーン》では、悪疫をプレイした結果手札が大幅に減り、《真鍮の都/City ofBrass》、《硫黄泉/SulfurousSprings》等によるダメージが相手に与えるバーンのダメージを上回るといった相乗効果ももたらした。』



悪疫ボール・ライトニング


マナシンボルに囚われない自由な発想。《悪疫》を高水準火力と考えるその柔軟な考え。

しかし、当然の如く発想はただの電波であり、「黒黒黒 赤赤赤」をスムーズにプレイするマナベースなんて、構築できる訳がなかったのです。当時スレッドを読んだ僕は感銘を受け、すぐに上記のデッキを作って回してみましたが、到底凡人が扱えるような代物ではありませんでした。

「これが凡人と天才の差か…!!」

会ったこともない、実在するかも分からない「山田」に、僕は尊敬の念と共に嫉妬心を抱いたものです。

「MTG既知外列伝」がアップされた日、通称「ヤマディアン・インパクト」から早5年が経ちました。
ただの一マジックオタクだった僕はプロツアーに出場するという夢と、ある程度の好成績を残すことができました。記事という形で自分の考えを発表する場も持つことができるようになりました。

「成長した今の僕なら、きっとヤマディアンを使いこなせるに違いない!」

そう思ったか思わなかったかは置いといて、というかこれまでの回想もどこまで《嘘か真か》は置いといて、とにかく無性にヤマディアンバーンが使いたくなったのです。
《悪疫》《ボール・ライトニング》。「黒黒黒 と 赤赤赤」の奇跡の競演。
これほど「レガシーMAD研究室」に相応しいデッキは他にあるでしょうか?いや、あるはずがない!はず!

ということで、今回紹介するデッキはこちらです。



「ヤマディアンバーン2011」

4 《黒割れの崖》
4 《Badlands》
2 《血の墓所》
2 《竜髑髏の山頂》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《汚染された三角州》

-土地(20)-

4 《恐血鬼》
4 《地獄火花の精霊》
4 《ボール・ライトニング》

-クリーチャー(12)-
4 《悪疫》
4 《Chain Lightning》
4 《溶岩の撃ち込み》
4 《稲妻》
4 《命知らず》
4 《吠えたける鉱山》
4 《モックス・ダイアモンド》

-呪文(28)-
4 《火山の流弾》
4 《紅蓮光電の柱》
4 《破壊放題》
3 《紅蓮破》

-サイドボード(15)-
hareruya



全国7万人超の山田ファンの皆様、大変長らくお待たせいたしました。現代版ヤマディアンバーンの登場です!

充実した特殊地形+《モックス・ダイアモンド》で貴方を完全サポート!もう赤赤赤と黒黒黒に悩まされることはありません!

オリジナルに忠実に《悪疫》《ボール・ライトニング》はもちろん4枚!この8枚こそがこのデッキの象徴でありポリシーなので、変えることはできません。
《悪疫》《モックス・ダイアモンド》のディスアドバンテージ分は《吠えたける鉱山》で取り戻しましょう。少し遅めのデッキ相手には、《吠えたける鉱山》を主体とした『ハウリングバーン』として戦うこともできます。

2011年バージョンとして、オリジナルにはなかった要素として《悪疫》と相性のいい《恐血鬼》《地獄火花の精霊》を採用しました。1回《悪疫》を撃てば最低でも13以下なので、3点火力を一回撃つだけで《恐血鬼》は速攻持ち!《地獄火花の精霊》は蘇生が付いていますし、どちらも気兼ねなく《悪疫》の餌にすることができますね。


恐血鬼地獄火花の精霊


バーンスペルも当時の《ショック》《焚きつけ》などとは比べ物にならない、レガシー最高品質の物を用意しました!なかでも《命知らず》は制限はあるものの1マナ4点とまさに最強の火力。墓地から帰ってくる《恐血鬼》やターン終了時に死ぬ《地獄火花の精霊》を笑顔で投げつけてやりましょう。


命知らず



デッキの理想の回りを説明すると、
1T《モックス・ダイアモンド》から《吠えたける鉱山》
2T《悪疫》で相手は20→13、《恐血鬼》2枚をディスカード。
3T《稲妻》で相手13→10、土地プレイで《恐血鬼》×2が場に戻って速攻でアタック10→6、《Chain Lightning》《溶岩の撃ち込み》で6→0
という感じですね。予想の斜め上からの3ターンキルは対戦相手を奈落の底に突き落とすことでしょう。


サイドも分かりやすく、バーンデッキとして基本的なカードを各種取り揃えました。

アーティファクト破壊については、複数枚壊せるように《破壊放題》を選びましたが、火力としてカウントできる《粉々》の方が良かったかもしれません。


破壊放題粉々


バーンデッキの天敵である《神聖の力線》を張られても、《紅蓮光電の柱》のダメージと《悪疫》による7点ルーズ、そしてクリーチャーによるビートダウンによるダメージで相手を打ち破ることが可能です。まさに向かうところ敵なし!!といった感じですね。

タッチ黒なので本来ならば《非業の死》《思考囲い》などを採用したいところですが、バーンという名にふさわしくない気がしたのでグッと我慢しました。

《悪疫》で対処しきれない程《タルモゴイフ》《聖遺の騎士》を固め引かれたら、悲しい目をして静かに投了しましょう。人生諦めが肝心です。



《悪疫》《ボール・ライトニング》擁する奇跡のバーンデッキは、《精神的つまづき》が跳梁跋扈するレガシー界に一石を投じることができるのか?
ということで、いつも通り大会に参加してきました。
参加者27名。スイス3回戦。

悠久の時を経て、俺と山田の魂が今一つになる!






2.伝説は伝説のままで・・・



R1:ZOO ○○
R2:Bant ×○×
R3:Merfolk ××

この負けっぷり、まさにヤマディアンの名にふさわしい…!

R1は、2T《吠えたける鉱山》→3T《悪疫》で相手のクリーチャーを殺しながら《恐血鬼》《地獄火花の精霊》ディスカードとやりたい放題して勝利したものの、R2では《タルモゴイフ》→フェッチランドを《もみ消し》《不毛の大地》《壌土からの生命》で全てランデスされて敗北。嗚呼、手札の《悪疫》《ボール・ライトニング》が泣いている…。

R3は相手が1T《霊気の薬瓶》スタート。返しの2Tに渋々《吠えたける鉱山》を置いたところ、予想通りの動き&予想以上に土地を引いてしまい、完全なるクロック・パーミッションを喰らって完全敗北。《霊気の薬瓶》がある状態で毎ターン2ドローできるMerfolkはまさに「水を得た魚」でしたね!皆さんも《吠えたける鉱山》は計画的にご利用ください(笑)


吠えたける鉱山


と、まぁ今回もまた敗北に終わったわけですが、普段使わないカードやデッキタイプを使えて非常に充実した大会でした。
《悪疫》は撃っててとても気持ちよかったので、ちょっとクセになりそうです(笑)


冒頭にも述べたように、GPプロビデンスは「青いデッキに《Force of Will》は4枚」という常識を捨て去ったBantが見事優勝しました。

《ボール・ライトニング》《悪疫》はちょっと極端過ぎるかもしれませんが、たまには皆さんも常識にとらわれず、自由な構築をしてみませんか?

自由すぎてボコボコに負けることもあるかもしれませんが、何か新しい発見があるかもしれませんよ。

それではまた次回お会いしましょう!