レガシーMADデッキ開発室 vol.6 ~どうみても嫌がらせデッキです~

井川 良彦


マジックウィークエンド名古屋が終了しましたね。

今回のプロツアーは、国内プロツアーで日本人が決勝進出、しかも決勝戦の模様がMTGチャンネルで放送されたこともあり、いつもよりも盛り上がったプロツアーだったのではないでしょうか。

個人的な話をしますと、デッキをシェアした角岡君、三田村さんが好成績(それぞれ2位、28位)を残しただけでなく、僕自身も48位と久しぶりのマネーフィニッシュをすることができて嬉しかったです。

7月に行われる日本選手権、そして9月のプロツアーフィラデルフィアでも好成績を残せるよう、頑張っていきたいと思います。

さて、トーナメントプレイヤーとしての話はここまでとして、ここからはいつも通り、まったり、MADに、レガシーの話をしていきたいと思います(笑)



1.編集長、怒る!


さて、今回で連載も六回目になるのですが、成績があまり芳しくないことに、もりお編集長がご立腹なのです。
参考までに、過去五回の成績を列記してみましょう。

オパール力線:2-1
エラヨウクエスト:2-1
食物連鎖:2-1
無限メリーラ:1-2
ヤマディアンバーン:1-2

…3-0も0-3もない、なんて平凡な成績。
基本的にローグデッキを使っているとはいえ、開発室なんてコラムタイトルを付けてもらったというのにこれでは完璧に名前負けですね。

 「なんか中途半端な成績ばっかりだけど、理由わかってる?お前には明確に足りないモノがある。」

 「な、なんでしょう?」

 「お前はいつも自分のやりたいことだけをやる、自分で擦ってはいおしまい。みたいなデッキを使っているから勝てないんだ!」

 「マジックは、2人でやるゲーム。お互いに好きなことやったら、成績が中途半端になるのは当たり前。相手を妨害しなければ勝てるはずがないんだよ!!!」


そうだったのかーーーーーーーーー!

確かに、僕はこれまで自分がやりたいことだけをやる、いわば「一人回し最強系」デッキしか使ってませんでした。
デッキを組んで、相手のことなど考えず、独りよがりに回して1人で勝手に満足。相手がいる実戦では思う通りに動けず敗北。一人回しの《吠えたける鉱山》は最強だけど、実戦の《吠えたける鉱山》は…。

こんなんだから、僕はマジックの「極」に辿り着けないのですね…。

 「そんな君にこのデッキを授けよう。戦わずして勝つ。これ戦闘の基本。相手を妨害することに命をかけた、相手の心を折るためのデッキだ。」

と言われて渡されたのが、今回紹介するこのデッキです。



2.これが編集長の力だ…。




Shiro Wakayama「Mono Morio」

4 《Underground Sea》
4 《教議会の座席》
4 《ダークスティールの城塞》
4 《古えの墳墓》
4 《裏切り者の都》

-土地(20)-


-クリーチャー()-
4 《虚空の杯》
4 《三なる宝球》
4 《からみつく鉄線》
3 《煙突》
2 《飛行機械の鋳造所》
1 《弱者の剣》
1 《ゲスの玉座》
1 《罠の橋》
1 《世界のるつぼ》
4 《厳かなモノリス》
3 《連合の秘宝》
3 《オパールのモックス》
4 《テゼレットの計略》
2 《精神を刻む者、ジェイス》
2 《求道者テゼレット》
1 《解放された者、カーン》

-呪文(40)-
4 《トーモッドの墓所》
3 《漸増爆弾》
2 《誘惑蒔き》
2 《ジュワー島のスフィンクス》
2 《殴打頭蓋》
1 《世界のるつぼ》
1 《解放された者、カーン》

-サイドボード(15)-
hareruya



これまで使ってきたデッキとは一線を画した、アーティファクトの群れ。

《からみつく鉄線》《三なる宝球》《虚空の杯》で相手の動きを大幅に制限し、《煙突》が徐々にリソースを奪っていきます。《古えの墳墓》《裏切り者の都》《厳かなモノリス》といった高速マナブーストがあるので、これらの妨害用アーティファクトを最序盤に展開することが可能なのです。先攻1Tから《虚空の杯》X=1、《三なる宝球》《からみつく鉄線》などと動けば、きっと相手はプルプル震えながらドローゴーすることしかできないでしょう。


虚空の杯三なる宝球からみつく鉄線


また、一般的なMUD(茶単)と違って《金属細工師》が入っていないので、相手の手札の除去を腐らせながらこちらだけスムーズに展開することができそうです。

この「妨害用アーティファクト+マナブースト」という組み合わせはMUD(茶単)や各種StompyやSTAX系の定番なのですが、この「もりおスペシャル」で特徴的なのは「新たなるファイレクシア」で登場したニューカマー、《テゼレットの計略》


テゼレットの計略


無色でプレイすることのできるドロースペルであり、「増殖」が上記妨害アーティファクトを支えます。《からみつく鉄線》が1T伸びるだけならまだ可愛い方。《煙突》の煤カウンターを増殖させて、相手の(自分のも)パーマネントが次々と墓地に送られる様は感動すら覚えます。ちなみに、《連合の秘宝》にカウンターがある状態で増殖すると、当然次のターンには2マナ出ます。

またこのデッキの特徴的をもう一点挙げるとすれば、その線の細さでしょう。妨害アーティファクトとマナブーストにスペースの大半を割かれ、勝ち手段がほとんど入っていません。少数精鋭の神々しきプレインズウォーカー達と、そのプレインズウォーカーの力を借りなければ揃わないであろう、おまけ程度の《飛行機械の鋳造所》《弱者の剣》コンボ。…これ本当に大丈夫??

 「大丈夫だ。問題ない。」

自信満々だなぁ…。まぁきっと《煙突》でパーマネントが0になって投了してくれたり、高速プレインズウォーカーで勝ったりできるでしょう。信じる者は救われる。はず。

ちなみに、もらったリストにはサイドボードがなかったので、サイドボードだけは僕が3分クッキングで作りました。
デッキの構造上、大量にサイドインアウトすることは少ないので、本当に必要そうなものだけ選定しました。あと、メインの余りの細さにビビッて、フィニッシャーを追加してしまいました。前言撤回。信じてないので救われなさそうです。



さて、「相手の心を折ればゲームに勝てる」の言葉をそのまま具現化したようなこのデッキは、本当に勝てるのでしょうか?

ということで、毎度のことながらトーナメントに参加してきました。参加者14人のスイスドロー3回戦。この3回戦で編集長のマジック力が試されるといっても過言ではないのです。

栄光の3-0を目指して!もりおスペシャル、いざ発進!!









3.もりおスペシャル、敗退。


R1:対黒タッチ緑《悪疫》 ○○
R2:対エルフ ××
R3:対エンチャントレス ○○


3-0…ならずッッ…!!

残念ながら今回も勝利することはできませんでした。いつもは負けたところに焦点を当てていますが、今回はデッキの魅力を伝えるために、如何にブン回って勝ったかを簡単に説明しましょう。

R1、G1。《古えの墳墓》《裏切り者の都》を固め引いたため、相手の《不毛の大地》×2をものともせず《虚空の杯》《厳かなモノリス》からの《三なる宝球》《からみつく鉄線》《煙突》と展開。相手が投了したときの場は、『こちら:土地4枚、《オパールのモックス》《厳かなモノリス》《三なる宝球》《飛行機械の鋳造所》』『相手:なし』という圧倒的な場でした。

R3、G2。1T《古えの墳墓》からの《漸増爆弾》。2T《Underground Sea》置いて《連合の秘宝》。3T相手の《アルゴスの女魔術師》《漸増爆弾》で破壊。《古えの墳墓》置いて《解放された者、カーン》光臨。土地をリムーブ。4T《精神を刻む者、ジェイス》。相手を検閲してから《古えの墳墓》《厳かなモノリス》《虚空の杯》X=2。相手投了。


という風に、相手の動きを封殺しながら勝つことができました。
これまでが「自分のことしか考えない=いかにして勝つか」を追求したデッキだったので、相手の妨害をし続けるデッキもたまにはいいですね。相手の歪む顔を見ながら内心ほくそ笑むのもマジックの楽しみの一つ…なのかもしれません。

ちなみに、編集長がデッキの楽しさを伝え切れていないので、デッキの動きを捕捉説明したいそうなので、以下気になった人だけ読んでやって下さい。ブン周り最強的な、完全に中二病患者の戯言ですが。


—-以下もりお—-
1.高速PW精神折り
1T目2マナランド+《厳かなモノリス》《連合の秘宝》、2T目に青マナが出る土地1枚《オパールのモックス》《求道者テゼレット》《精神を刻む者、ジェイス》が2ターン目にどちらも出ます。どう考えても、ただの奇跡ですね。

2.煙突嫌がらせ精神折り
《煙突》《テゼレットの計略》で増殖させながら、《ゲスの玉座》《煙突》をサクリファイスすると、意味不明なアドバンテージが取れたりします。

3.テゼレット突発勝ち
《求道者テゼレット》を出してから増殖すると、いきなり最終奥義発動で、いい感じに撲殺できます。

4.セルフ縛り
《厳かなモノリス》経由で《からみつく鉄線》を出し過ぎると、お互いにドローゴーが数ターン続いて微妙な空気になります。ちなみに、《三なる宝球》はタップすると効果を失ってしまうので、必要に応じてタップして瞬間的に行動回数を増やして、追加の《三なる宝球》を出して再度蓋をする。などの気持ち悪い動きも可能です。
-以上もりお-


一つのデッキを愛用して、練りこんでいくのがマジック。色々なデッキを回して、違いを楽しむのもマジック。
皆さんも、たまには普段と違ったマジックをしてみると、また新しい発見ができるかもしれませんね。

それでは、また次回お会いしましょう!