レガシーMADデッキ開発室 vol.9 ~井川良彦のPWハロー○ーク~

井川 良彦


 日本選手権及びレガシー選手権が終了しました。

 スタンダードでは、尖った形の環境最速「白単《鍛えられた鋼》」が三日間合わせて11-0という史上最高のスコアで駆け抜け、一方レガシーでは、全てを裁き切れる環境最遅のコントロール「青黒緑Landstill」が栄冠を掴みました。見事優勝した石田さん、安田さん、おめでとうございます!

 僕自身の話をさせてもらいますと、奇跡的にベスト8に滑り込み、またもや奇跡的に準々決勝を勝利するものの、『山王工業との死闘に全てを出し尽くした湘北は、続く3回戦愛和学院にウソのようにボロ負けした。』と言わんばかりに準決勝、3位決定戦と連続で敗北してしまい、4位で終わりました。

 日本選手権で好成績を残せたことは非常に嬉しいのですが、3位or4位=日本代表か否かはまさに雲泥の差。凄く凄く悔しかったです。
 来年こそは頂点まで登り詰めて、日本代表の一員として世界選手権で戦いたいです。

 そんな前置きはこれくらいにして、今週のMAD行ってみましょう!



1.再就職支援


 レガシー選手権のベスト8を御覧になってもらっても分かるように、やはり青いデッキの、《精神を刻む者、ジェイス》のカードパワーは頭一つ抜けているように思えます。


精神を刻む者、ジェイス


 手札の補充、盤面への対処、そして自身がそのままフィニッシャーになるという自己完結っぷり。このカードの強さを今更語るのも野暮というものでしょう。スタンダードで禁止になったのも頷けます。スタンダードで禁止になったあともレガシー・ヴィンテージで第一線にいる《精神を刻む者、ジェイス》はまさにプレインズウォーカーの鑑であり代表と言えるでしょう。

 では、他のプレインズウォーカー達はエターナル環境でどう暮らしているのでしょうか?

 《遍歴の騎士、エルズペス》はその堅実な力を買われ、Bantなどのビートダウンから青白コンロトール、青白Landstill、白Staxなどのコントロールにまで幅広く雇われています。《求道者テゼレット》はときたまアーティファクトをメインとしたデッキに使われることもありますが(僕も連載第6回で使用しました)、基本はヴィンテージ環境を根城にし、《Time Vault》《通電式キー》コンボと睦まじく共生しています。

 他にも《ギデオン・ジュラ》《エルズペス・ティレル》《ジェイス・ベレレン》《復讐のアジャニ》等はピンポイントで採用されることはあるものの、その他のプレインズウォーカー達は基本的にお通夜状態と言ってもいいでしょう。
 特に黒・赤・緑のプレインズウォーカー達はその能力だけでなく、色の特性や重さのせいもあり、ほとんど使われていないのが現状です。《ニッサ・レヴェイン》《チャンドラ・ナラー》?ご冗談を(笑)




 しかし、これは彼らが悪いわけではないのです。雇用がない社会が悪い!何もしない《ソリン・マルコフ》《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》が悪い!そんな不遇なプレインズウォーカー達に陽の目を浴びさせてやりたい!お前達だって、きっと輝ける場所があるはずだ!いや、俺がお前たちの居場所を作って見せるッッ!!

 ストレージの中に埋もれていた《チャンドラ・ナラー》《サルカン・ヴォル》を見つめながら、そう叫んでいたところ、ニートプレインズウォーカーを神のカードへ変えてくれるカードを思いつき急遽作成したのが、今回紹介するこのデッキです。



2.サルカン/リリアナ/ガラク/チャンドラ「明日から本気出す。」




Yoshihiko Ikawa「Ikawa Regenerate Factory」

5 《森》
3 《沼》
3 《山》
4 《樹木茂る山麓》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《新緑の地下墓地》

-土地(23)-

4 《極楽鳥》
4 《水蓮のコブラ》
4 《桜族の長老》

-クリーチャー(12)-
2 《思考囲い》
3 《耕作》
1 《喉首狙い》
1 《四肢切断》
1 《大渦の脈動》
2 《師範の占い独楽》
2 《破滅的な行為》
3 《倍増の季節》
3 《はじける子嚢》
2 《チャンドラ・ナラー》
1 《野生語りのガラク》
1 《原初の狩人、ガラク》
1 《サルカン・ヴォル》
1 《狂乱のサルカン》
1 《リリアナ・ヴェス》

-呪文(25)-
3 《仕組まれた疫病》
3 《破壊的な流動》
2 《思考囲い》
2 《根絶》
2 《古えの遺恨》
2 《喉首狙い》
1 《大渦の脈動》

-サイドボード(15)-
hareruya



 今まではうだつがあがらなかった、ダメダメなプレインズウォーカー達も、これさえあれば超優秀なヒーロー(ヒロイン)に生まれ変わる!ラヴニカが誇るトンデモカード、それが《倍増の季節》です!!


倍増の季節


 《倍増の季節》の効果で各プレインズウォーカーの忠誠カウンターが倍の状態で出るので、《チャンドラ・ナラー》《リリアナ・ヴェス》のように初期忠誠度が高いプレインズウォーカーはその恩恵を最大限に受けることができます。一度このデッキをプレイすれば、出したターンに奥義である10点ビームを飛ばしまくる《チャンドラ・ナラー》さんや、即座に超《黄昏の呼び声》を行使する《リリアナ・ヴェス》さんにメロメロになること間違いなし!《精神を刻む者、ジェイス》にできないことを平然とやってのけるッ!そこにシビれる!あこがれるゥ!


チャンドラ・ナラーリリアナ・ヴェス


 男性陣も女性陣に負けず劣らず派手に戦います。《サルカン・ヴォル》は出したターンになんと4/4ドラゴントークンを10体も量産!!即座に40点クロックを出せるデッキもそうないでしょう。最高のドヤ顔を決めるチャンス!

 《狂乱のサルカン》はその《闇の腹心》能力でデッキを回しつつ、用済みになった《極楽鳥》《水蓮のコブラ》などを5/5ドラゴントークン2体に変える暴れっぷり。

 基本セット2012で新登場の《原初の狩人、ガラク》も勿論このデッキではエースです。即座に6/6トークンを生み出して良し、ドローしても良しの万能選手。《野生語りのガラク》だけはちょっと地味ながらもマナブーストと3/3トークンでデッキを支えます。ドラゴントークンやワームトークンを奥義であるオーバーランで強化して殴るのもアリですが、往々にしてオーバーキルでしょう(笑)


狂乱のサルカンサルカン・ヴォル原初の狩人、ガラク


 また、《倍増の季節》と相性の良いカードとして《はじける子嚢》も採用しました。
 消散カウンターも倍になって出てくるので、場に出して消散14。1回起動すると13/13が2体。もう1回起動すると12/12が4体…という風に普段のマジックとは全く別のゲームを楽しめます。《はじける子嚢》でトークンを並べて《サルカン・ヴォル》で速攻を付与すれば、往年のFiresを思わせる動きで心が温まり、懐古話に花が咲くかもしれませんね。

 今回はスペースの都合上採用できなかったのですが、プレインズウォーカーや《はじける子嚢》との組み合わせだけでなく、《倍増の季節》には沢山の夢が詰まっています。もし良ければ試してみてください。

〔コンボ例〕
《倍増の季節》《伏魔殿》《歯とかぎ爪》=無限ダメージ
《倍増の季節》《季節の導き、節貴》《爆破基地》=無限トークン+無限ダメージ
《倍増の季節》《トリスケラバス》《アシュノッドの供犠台》=無限トークン+無限マナ+無限ダメージ
《倍増の季節》《目覚めの領域》などトークン系カード+《獣使いの昇天》=即昇天で大ダメージ


 デッキの解説に戻ると、今回のデッキはマナベースも特徴的です。3色なのに《Taiga》《Badlands》などのデュアルランドが0枚!?

 …この理由はただ一つ。レガシー特有のランデス=《不毛の大地》を構築段階で回避するためです。5マナ圏が勝負のこのデッキは、一度でも《不毛の大地》を喰らったが最後、二度とその紙束をプレイできずに負けることが明白。なので、各種マナブーストと12フェッチに頼ってデュアルランド0枚の構築にしてみました。全て基本地形の強みを活かしてサイドボードには《破壊的な流動》も搭載。《血染めの月》でも良かったのですが、フェッチが起動できず色マナに困るのを嫌い《破壊的な流動》を今回は選びました。

 デュアルランド0の弊害として、プレインズウォーカー界きってのイケメン、《ソリン・マルコフ》を諦めざるを得なかったのが残念ですね。黒黒黒はさすがに厳しい。まぁ、彼は偉い人のようなので、僕が力を貸すまでもなく、1人で何とかしてくれるでしょう。

 あとはPVのLandstillを真似て除去を散らしてみたり、相性のいい《破滅的な行為》《師範の占い独楽》を採用したりしてデッキ完成!
 
 ということでいつも通りトーナメントに参加してきました。参加者20名のスイスドロー3回戦。
 3-0が表の目標なら、裏の目標は各種プレインズウォーカーの奥義を使って勝つこと。
 派手に、楽しく、強く(?)をモットーに、勝ち上がって見せましょうじゃありませんか!



3.サルカン/リリアナ/ガラク/チャンドラ「働いたら負けだと思ってる。」



R1:対青赤コントロール ○××
R2:対青単ユーロブルー ○○
R3:対青白緑赤CTG ×○‐


 1-1-1。3-0はなりませんでしたが、青いデッキ相手は基本的にゲームスピードが遅いため、身が多いこちらが少し有利な感触がありました。普段使われてなくても、やはりプレインズウォーカーのカードパワーは高い!

○R1
 G1は相手が確定カウンターを余り引けなかったため、《師範の占い独楽》《Force of Will》撃たれた後に《倍増の季節》《チャンドラ・ナラー》と通って勝ち。これぞ分からん殺しって奴ですね。チャンドラの奥義を決めることができて、既に満足。

 G2は、相手の《渋面の溶岩使い》《ヴェンディリオン三人衆》《仕組まれた疫病》で封じ込める形でスタート。しかし、《仕組まれた疫病》《仕組まれた爆薬》X=3で破壊されてしまう。相手の手札を《思考囲い》で確認してから《倍増の季節》《サルカン・ヴォル》でドラゴン10体出して攻め立てるものの、《渦まく知識》《仕組まれた爆薬》2枚目を引かれてしまい、《精神を刻む者、ジェイス》で負け。でもドラゴンたくさん出せて満足。

 G3も土地が少ない手札をキープしたため、《仕組まれた疫病》を出すものの3Tの《ヴェンディリオン三人衆》にかなり削られてしまい、最終的に《仕組まれた疫病》割られてからの《渋面の溶岩使い》《稲妻》で負け。マリガンミスか。


○R2
 復帰したばかりで久々のマジックとのこと。
 G1《桜族の長老》《魔力の乱れ》《師範の占い独楽》《無効》、こちらのエンド前に《衝動》《ミューズの囁き》と懐かしい動き。《袖の下》を撃たれるものの《水蓮のコブラ》しか盗るものがなく、返しに《リリアナ・ヴェス》が着地。《ネビニラルの円盤》ではプレインズウォーカーを破壊できずにやりたい放題やって勝ち。

 G2《プロパガンダ》出されて「奥義でトークン並べてフルパン大作戦」が完全沈黙。ドローゴーを続ける相手に対して《桜族の長老》《水蓮のコブラ》で4マナ払いながらチマチマ殴っていき、マナブーストのおかげで差が付いたところで《思考囲い》絡めて攻める。《リリアナ・ヴェス》が無双して手札を空にさせ、最終的には《倍増の季節》《原初の狩人、ガラク》《リリアナ・ヴェス》《チャンドラ・ナラー》揃い踏みの場になり、《チャンドラ・ナラー》奥義10点で勝ち。


○R3
 G1カウンターでバックアップされながら《タルモゴイフ》《ヴェンディリオン三人衆》と攻め立てられるが《喉首狙い》《四肢切断》《破滅的な行為》《はじける子嚢》《チャンドラ・ナラー》でなんとか食い止め、五分な盤面まで持って行く。が、序盤にダメージを食らいすぎており、相手《師範の占い独楽》でマナを伸ばした後に《赤の太陽の頂点》X=6で昇天。く、悔しい。

 G2《粗石の魔道士》《強欲のトーテム像》をサーチされる。相手もMAD!で、《はじける子嚢》を奪われるものの《思考囲い》のバックアップもあり《倍増の季節》が無事着地し、《強欲のトーテム像》を返さないまま《野生語りのガラク》《はじける子嚢》《倍増の季節》と次々通って勝ち。
《倍増の季節》×2+13個載った《はじける子嚢》《野生語りのガラク》オーバーラン可能という場だったので、投了されなかったら何点入ったのかちょっと気になるところ(笑)

 G3《破壊的な流動》《自然の要求》され、《はじける子嚢》《罠の橋》でシャットアウト。《思考囲い》《赤の太陽の頂点》を落として突然死を防ぐものの、2T後に《精神を刻む者、ジェイス》出されて雲行きが怪しい…。というところでタイムアップ。3Gともお互い《師範の占い独楽》をコントロールしていた上に、僕のプレイングが遅く、時間がなくなってしまいました。


 という感じで、コンボデッキに運良く当たらなかったため、レガシーにしては重いこのデッキでもしっかりとゲームを作ることができました。コンセプトをしっかり固めたデッキなら、好きなデッキでもある程度戦える&楽しめるのがレガシーの魅力の一つかもしれませんね。

 次回も派手に楽しく、レガシーMAD道を突き進んで行きたいと思います!

 それでは、また再来週。