どうも、井川です。
最近は今月中旬に行われるGP上海、そして来月上旬に行われるPTフィラデルフィアのために、日々エクステンデッドとリミテッドの練習に勤しんでいます。
エクステンデッドは、レガシー同様《石鍛冶の神秘家》&《精神を刻む者、ジェイス》の最強タッグが幅を利かせており、中々打開ができません。ソリューションが天から降ってこないかなー?と日々お祈りしています(笑)
・・・と思ったら、PTフィラデルフィアの形式がモダンに変わってしまいました!急いで練習しなきゃまずいです!
というのはさておき、第10回という記念すべき今回は、これまで使っていなかったリセット系のデッキをご紹介したいと思います。
1.仕切り直しや、刃クン
先日、レガシーの大会を見学したところ、懐かしい匂いのするデッキを使っていた方がいました。
圧倒的不利な盤面にも関わらず、その目は死んでいない。と、思った次のターン、大量のマナからプレイしたのは、なんと《ジョークルホープス》!!そして浮いたマナから《土を食うもの》!!その超巨大なルアゴイフはそのまま無人の荒野を駆け抜け、華麗な大逆転劇を決めていました!!
「このデッキこそが、俺の求めていたMADデッキだ…!」
その懐かしくド派手な動きに心を惹かれ、そう直感した僕は、すぐさまその方にデッキを教えてもらったのでした。
古くからプレイされている方なら上記のカードだけでお分かりでしょう。
そう、ターボジョークルです。
4 《サプラーツォの岩礁》 4 《鋭き砂岩》 3 《ヒッコリーの植林地》 3 《ドワーフ都市の廃墟》 3 《地熱の割れ目》 3 《ほくちの加工場》 2 《硫黄孔》 2 《古えの墳墓》 2 《水晶鉱脈》 -土地(26)- 3 《土を食うもの》 -クリーチャー(3)- |
4 《精神を刻む者、ジェイス》 2 《チャンドラ・ナラー》 3 《ジョークルホープス》 3 《抹消》 3 《燃え立つ願い》 4 《睡蓮の花》 4 《魔力変》 4 《煮えたぎる歌》 2 《連合の秘宝》 2 《ギタクシア派の調査》 -呪文(31)- |
4 《虚空の力線》 1 《死の印》 1 《紅蓮地獄》 1 《大渦の脈動》 1 《非業の死》 1 《壌土からの生命》 1 《思考囲い》 1 《再活性》 1 《緑の太陽の頂点》 1 《巣穴からの総出》 1 《ジョークルホープス》 1 《抹消》 -サイドボード(15)- |
レシピを見ただけでこの異様さと殺意は伝わると思いますが、一応解説したいと思います。
このデッキの動きとしては、タップインの2マナ地形を毎ターンセットしながら、ある程度マナが出るようになったら試合開始。大量マナ発生→《ジョークルホープス》or《抹消》で世☆界☆崩☆壊→《土を食うもの》で相手を撲殺!I Win!!と言った感じです。
《土を食うもの》は《緑の太陽の頂点》が入ったZooやBantなどで良く使われますが、元々は由緒正しきリセットデッキのフィニッシャー。このデッキですと10/10以上で出てくることも多々あります。
もう一つの勝ち筋として、高速プレインズウォーカー+リセット=プレインズウォーカー無双があります。
《ジョークルホープス》と《抹消》のテキストを改めて見てみましょう。
「すべてのアーティファクトと、すべてのクリーチャーと、すべての土地を破壊する。それらは再生できない。」
赤がエンチャントに触れないのはもはやお約束。しかしもう一つ壊せないものがあります。それが、《ジョークルホープス》《抹消》が印刷された当時は存在しなかったプレインズウォーカーなのです。そこで、その特性を利用して《精神を刻む者、ジェイス》《チャンドラ・ナラー》を先に出しておいて《ジョークルホープス》,《抹消》を撃つとあら不思議。焼け野原に一人仁王立ちする勇姿を拝むことができます。
ただし、この特性は諸刃の剣でもあります。端的に良いますと、相手の場に《精神を刻む者、ジェイス》が出るだけで《ジョークルホープス》《抹消》が撃てなくなるのです(笑)
《土を食うもの》はバウンスされるわ、延々と《渦まく知識》連打されるわで涙しか見えません。
ということで、本来ならこの記事の理念である「MAD」とは対極の位置にいる《精神を刻む者、ジェイス》を4枚も使うことはできれば避けたかったのですが、絶対に《精神を刻む者、ジェイス》を対処しなければならないので止むを得ず採用することにしました。《ジョークルホープス》,《抹消》関係なしに2T《精神を刻む者、ジェイス》だけで勝ててしまうこともあるかもしれませんが、それは大目に見てください(笑)
サイドボードはもはやMAD御用達となったウィッシュボードが実に11枚を占めています。
ハンデス、軽量除去、リセットと幅広く採用している中で、異質な数枚だけ説明したいと思います。
・《緑の太陽の頂点》
「《ジョークルホープス》はあるのに《土を食うもの》がないから攻められない!」「緑緑が出ないから《土を食うもの》がプレイできない!」
そんな時にはこのカードの出番。プレイした後はライブラリーに戻ってくれるので、ライブラリーが薄くならないのもメリットですね。
・《巣穴からの総出》
普段は赤入りのANTやBelcherなどのストーム系デッキで採用され、10体以上のトークンを生み出していますが、このデッキでも似たような働きができます。
《煮えたぎる歌》→《ジョークルホープス》or《抹消》で更地になった後にプレイすることにより6体以上のトークンを生成。相手が復旧する前になぐり倒してしまいましょう。《睡蓮の花》や《魔力変》、《ギタクシア派の調査》が絡めば10体オーバーも夢じゃない!《土を食うもの》と違って、相手の場に《精神を刻む者、ジェイス》があってもプレイできるのが強みです。
・《再活性》
《入念な研究》の返しに「その《核の占い師、ジン=ギタクシアス》貰ったーっ!」発掘した返しにその《エメリアの盾、イオナ》頂戴!と超ドヤ顔を演出できる1枚。マナの余裕がなくて《土を食うもの》や各種プレインズウォーカーが出せない時は、リセット後に相手の《聖遺の騎士》を貰って殴り切ることも。
ウィッシュボード以外で採用されているのは《虚空の力線》4枚のみ。このままだとコンボ相手に無抵抗すぎるので、《思考囲い》は普通にサイドインできるようにもう数枚取っても良いかもしれませんね。
ということで、この「破壊の帝王」を新たな相棒として、トーナメントに参加してきました!
参加人数18名、スイスドロー3回戦。
目の前に置かれた土地を、クリーチャーを、その全てを破壊してやろう!!
2.不利な場?やり直せばいいじゃん。
◎R1
お互い挨拶したところで、対戦相手が取り出したのはスリーブの山。山。山。そう、《機知の戦い》デッキです。しかもスリーブの絵柄は「バベルの塔」という凝り様。
ターボジョークルvsバベルという、会場随一のイロモノ対決の幕開けです。まぁ幕が開けるまでには長い長いシャッフルタイムが必要でしたが(笑)
G1:こちら先攻3Tに《魔力変》経由で《精神を刻む者、ジェイス》が無事着地。そこから《抹消》《ジョークルホープス》と撃ちながら盤面を一掃しつつ相手のライブラリーを検閲し続けて《精神を刻む者、ジェイス》最終奥義で勝利。
G2:今度は、先手5Tに《機知の戦い》を出されて、《燃え立つ願い》を引けずに即死。てか手札にある《抹消》も《ジョークルホープス》もエンチャント触れないんですけど。全てを破壊(笑)
G3:《ギタクシア派の調査》を1Tに撃つと、土地3枚に《モックス・ダイアモンド》《知識の渇望》《補充》。《知識の渇望》のドロー次第だなーと思ってターンを進めると、2Tに《モックス・ダイアモンド》→エンドに《直観》から《機知の戦い》×3→《補充》で《機知の戦い》2枚が場に!!!《燃え立つ願い》引けず、見事な4キルを決められてしまいました。MAD対決完敗です。
◎R2
先ほど隣でやっていたドラゴンストンピィの方。どうやらG1では、先手1Tに《裏切り者の都》→《猿人の指導霊》×2→《煮えたぎる歌》→《三なる宝球》→《ゴブリンの突撃》という圧倒的な動きで1キルしたものの、続くG2G3と《石鍛冶の神秘家》→《殴打頭蓋》に惜しくも屈してしまったようです。
《ゴブリンの突撃》と《槌のコス》は厳しいものの、《虚空の杯》も《三なる宝球》も《月の大魔術師》もほとんど効かないので、少し有利そうな感じ。
G1:《虚空の杯》X=1を先手1Tに置かれるものの、被害は皆無。3Tに《三なる宝球》出されるも、もちろん影響なし。で、《精神を刻む者、ジェイス》降臨→次のターンに《煮えたぎる歌》→《ジョークルホープス》→《土を食うもの》で勝ち。
G2:相手が1Tに《裏切り者の都》+《猿人の指導霊》→《煮えたぎる歌》→《月の大魔術師》+《ファイレクシアの破棄者》(指定は《精神を刻む者、ジェイス》)とエンジン全開!!だったものの、後続が居なかったので、4点クロックを喰らいながらも後手3T《連合の秘宝》→4T《チャンドラ・ナラー》→5T《精神を刻む者、ジェイス》で完全に掌握。《抹消》で勝負あり!
◎R3
R1で2つ隣でやっていた記憶があります。細かくは見ていませんが、《島》《沼》《Underground Sea》《闇の腹心》と並んでいたような…。嫌な予感がプンプンします。。。
G1:相手先攻で《汚染された三角州》→《Underground Sea》で「ANTかー。こりゃ無理だー。」と思ってたら、《暗黒の儀式》→《陰謀団の儀式》→《ライオンの瞳のダイアモンド》→《冥府の教示者》→《むかつき》でマナソース沢山と《苦悶の触手》めくれて死亡。1キル!!
G2:構築段階で切っていたため普通にやっても勝てないので、2T《土を食うもの》出してライフにプレッシャーをかけようとするものの、3T《むかつき》からの《苦悶の触手》で16点喰らい、次のターンに《むかつき》で手札に入った溢れんばかりの《思案》《渦まく知識》で2枚目の《苦悶の触手》を撃たれてゲームセット。対策されてないANTは宇宙ですね!そりゃそうだ!
という感じで、1-2という残念な結果に終わりました。
Zooや石鍛冶のような真っ直ぐにぶつかってくる相手だと、もっと効果的に《抹消》《ジョークルホープス》を撃てたかもしれませんし、もしかしたら撃つ暇もなくボコボコに負けていたかもしれません。そこら辺は神のみぞ知るってやつですね。
次使う機会があれば、ウィッシュボードの枠を減らして《思考囲い》の追加や《精神壊しの罠》を積んでコンボデッキへの耐性を上げたり、メインから《台所の嫌がらせ屋》を採用してビートダウンに強くしてもいいかもしれません。
「リセット撃ってドーン!!」というデッキコンセプトは非常に魅力的なので、良ければ一度使ってみてください。
3.旅立ち
ところで皆さん、私ごとではありますが、最近プロツアーのための調整をしている最中に、自分では全く記憶がないのに、フェアリーデッキに《技鋸の徒党》が紛れ込んでいたり、石鍛冶系のデッキに《世界薙ぎの剣》が入っていて、調整相手に怒られてしまうという怪現象が多発していました。
このままでは、プロツアーで優勝ができないので病院に行ってみたところ、マッドデッキ症候群(Mad Deck Syndrome)と診断されてしまいました。デッキにMAD的要素を無意識のうちに取り込んでしまうという奇病で、現代の医学では、MAD活動をやめる以外に病気の進行を止める方法が見つかっていないとのことでした。
僕にとってはトーナメントマジックも大切ですが、それと同じかそれ以上にMADなデッキ構築も大切なのです。このままでは、世界中にいる2000万人ともいわれるMAD好きプレイヤーがマジックを楽しめなくなってしまいます。
”MADレガシーMADデッキ開発室”を休載することはとても心苦しいのですが、僕は、MDSの特効薬を探す旅に出ます。
大変申し訳ないのですが、僕が特効薬を見つけるまで、MAD活動は皆さんにお任せしたいと思います。
僕はこの連載で、MADなデッキを作り続けてきましたが、一度しか3-0することができませんでした。でも、逆に一度も0-3しませんでした。
それはもちろん運が良かったという面もありますけど、一つのコンセプトを突き詰めれば、レガシーでも十分に勝利を狙えるデッキを作れるという証となったんじゃないかと思っています。
レガシーというフォーマットは非常にカードプールが広い故に、様々なデッキを組むことができます。
トーナメントシーンで第一線で活躍しているデッキ以外にも、これから急に活躍したり、注目されるデッキが出てくるでしょう。
五ヶ月という長い間、不慣れなレガシーの記事を続けてこれたのも、変なデッキを紹介して使う(そしてボコボコになる)というこの記事を辛抱強く読んでくださった皆様や、僕がレガシーの大会に出るたびに声をかけてくださった皆様のおかげです。沢山のご意見・ご感想ありがとうございました。
これからも日本中のMADデッキマニア、レガシーファン、そしてマジックプレイヤーが、色んなデッキを作って、遊んで、マジック:ザ・ギャザリングを楽しんでくれることを願っています。
初めての連載でしたが、とても楽しかったです。本当にありがとうございました!
それでは、またどこかの大会会場でお会いしましょう!
第一部 完