新環境も青かった。

高橋 優太

高橋 優太

 この記事を読んでいる方々は、週末になればどこかの大会に参加するようなマジック好きが多いだろう。
 最初のうちは、つまらないミスでゲームを落としてしまったり、大会に参加しても負け越して終わったりする。誰でも、始めた頃はそんなものだ。しかし、練習を重ねていくことで、だんだん上達していく。負け越しを重ねていたプレイヤーもいつしかレベルアップし、大会の成績は3敗から2敗、2敗から1敗へと向上していく。

 初めて優勝・入賞した大会はどんなデッキを使っていたか、覚えているだろうか。私は覚えている。その頃は《対立》デッキを使っていて、決勝の相手は青緑マッドネスだった。8マナから《激動》を撃ち、セッランドから《極楽鳥》《リスの巣》とつなげて逆転勝利した。

 自分でデッキを考えて枚数を調整し、その結果が報われる瞬間。この喜びは、なにものにも変えがたい。おそらく読者の多くも、大会で初めて入賞したときのことを覚えているだろう。そして、プレイングやデッキ構築の腕を磨くことの面白さを感じたはずだ。

 シールドやドラフト・統率者戦など、マジックは様々な遊び方があり、仲間内でワイワイやるのも楽しいゲームだ。だがそれとは違う、競技という側面も併せ持っている。ただの「ゲーム」よりも、少し緊張感のある、ピリピリした「試合」をしたい。真剣勝負の世界を味わうこと。そこには、普段の遊びとはまた違った楽しみがある。

1.PTQへ行こう!

 もしあなたが「真剣に試合をしたい」と考えているのならば、まずはPTQに出てみよう。

PTQとは・・・

 Pro Tour Qualifierの略称。優勝者にはプロツアーの権利と、目的地までの往復航空券が発行される。
 世界中から集まった強豪達が腕を競う場所。プロツアーこそ、マジックの最高峰だ。先月国内でプロツアー名古屋が開催されたこともあり、どんなものかはイメージしやすいだろう。そのプロツアーを目指す予選というだけあって、参加者のレベルも他の大会よりも高い事が多い。マジックの腕を磨くにはもってこいの場所だ。中にはPTQのために、遠方まで遠征する人もいるくらいで、強豪ぞろいの大会になることが多い。

 ちなみに私の昨年度のプロレベルは5。プロツアーへの出場権利はあるが、航空券が支給されるのはプロレベル6からなので、優勝すれば航空券をゲットできる。

 というわけで、7月2日、千葉市民会館で開催されたPTQフィラデルフィアに参加した。


新環境をうらなう。
 フォーマットはスタンダードで、《石鍛冶の神秘家》《精神を刻む者、ジェイス》禁止後、間もないこともあり、さまざまなデッキが混在する環境だった。
 事前予想で強いとされたのは「赤緑ヴァラクート」「青赤双子」「青黒コントロール」といったデッキだったが、決勝に残った2つはどれとも異なるデッキだった。詳細なデッキ分布やTOP8デッキリストはMagic Daily Newsに掲載されると思われるので、確認して貰いたい。
(編注:2011年7月4日現在、まだ掲載されておりません。)

青黒テゼレッター



ヤマモトケンタロウ「UB Tezzeret」 (1位)

4《忍び寄るタール坑》
4《闇滑りの岸》
4《水没した地下墓地》
4《島》
3《沼》
3《地盤の際》
2《墨蛾の生息地》

-土地(24)-

3《呪文滑り》
1《ワームとぐろエンジン》

-クリーチャー(4)-
4《定業》
4《コジレックの審問》
2《蔑み》
2《マナ漏出》
2《見栄え損ない》
2《喉首狙い》
4《永遠溢れの杯》
3《転倒の磁石》
1《倦怠の宝珠》
2《殴打頭蓋》
4《ボーラスの工作員、テゼレット》
2《ジェイス・ベレレン》

-呪文(32)-
2《ジェイス・ベレレン》
1《黒の太陽の頂点》
1《弱者の消耗》
2《見栄え損ない》
2《墓所のタイタン》
1《決断の手綱》
1《強迫》
1《乱動への突入》
2《瞬間凍結》
2《倦怠の宝珠》

-サイドボード(15)-
hareruya

 《精神を刻む者、ジェイス》亡き今、カードパワーが飛びぬけているのは《ボーラスの工作員、テゼレット》
 これは優勝者山本の弁だが、私も同感だ。+1のアドバンテージ能力も去ることながら、5/5を作りだす攻撃力こそがテゼレットの強さだと、私は考える。ヴァラクートや双子相手にもスピード勝負が出来て、ビートダウンも5/5はなかなか対処しづらい。また、当然ながら《墨蛾の生息地》を5/5、感染、飛行クリーチャーとして、2発で相手を撲殺出来るというギミックも、非常に強力である。

 当然だが、テゼレットの能力を活かすためには多くのアーティファクトを投入しなければいけない。ときとして《伝染病の留め金》のような弱めのカードを入れざるを得ず、デッキ構築に大きな制限がかかることがテゼレットの難点だった。しかし、それらのアーティファクトが単体でも十分機能するならば、このデッキのアーティファクトたちは、新スタン環境に合わせて厳選された内容になっている。

《呪文滑り》
《欠片の双子》に対するアンチカード。また、赤いデッキ相手には、序盤は壁として、中盤以降はテゼレットを守る避雷針として、活躍してくれる。

《倦怠の宝珠》
《詐欺師の総督》《原始のタイタン》《刃の接合者》《戦隊の鷹》といった環境を代表するクリーチャーに対して効果的であり、また《出産の殻》デッキを機能不全にすることも出来る。

《殴打頭蓋》
《石鍛冶の神秘家》禁止により使いにくくなった。というのが世間一般の常識だろう。しかし、5マナ4/4絆魂警戒というのは十分通用するスペックであり、除去体制まである。
中速デッキにおけるライフゲインは、赤系ビートダウンの逆転の目を摘む役割もあり、これ2枚と《ワームとぐろエンジン》は必須パーツとも言えるだろう。

 そしてこの青黒テゼレットは、《石鍛冶の神秘家》禁止により少なからず恩恵を受けたデッキだ。禁止以前の環境ならば、《神への捧げ物》なり《帰化》《躁の蛮人》なり、どのデッキもアーティファクト破壊手段を積んでいた。場合によってはメインボードから搭載されるという状態だった。装備品ありきという前提があったため当然のことである。
 だがしかし、今はどうだろうか。ヴァラクートに効かない、双子に効かない、青白・青黒コントロールに効かないとなると、アーティファクト破壊で貴重なスロットを埋めるのはためらってしまう。「アーティファクト破壊が少ない=相手から妨害されにくい」というのも、このデッキの勝因だろう。

 一見すると青黒コントロールがベースになっているように見えるが、実際には、このデッキは自分から能動的に動くことが多い。相手のカードをコントロールしきるのではなく、少量の妨害を挟みながら攻めるイメージだ。
 《マナ漏出》の枚数が少ないのも、このデッキはメインフェイズに動くことが多く「カウンターを構える」というアクションがそこまで強くないからだ。そのためカウンターよりも、プランを立てやすくなる手札破壊が優先されている。少量の妨害を挟み相手の行動を遅くしながら5/5で殴る、攻撃的なコントロールデッキだ。

 除去は《見栄え損ない》《喉首狙い》と散らされているが、どちらかというと4《喉首狙い》の方が良いように思える。
双子相手には《呪文滑り》で曲げられない除去であり、ヴァラクート相手にも《喉首狙い》の方が強いからだ。

改良案
 《倦怠の宝珠》は双子コンボには強い。しかしヴァラクート相手にはタイタンの攻撃を許すと結局能力を誘発させてしまうし、ビートダウン相手には全く役に立たない。
 効果がありそうなCaw-Blade(下記)相手にすら、後手では間に合っていないのでサイドアウトしていた。本人いわく、次に大会に出るとしたら真っ先に抜けるカードだそうだ。
 また無色土地のお陰で色マナがタイトなので、《永遠溢れの杯》4枚よりも《永遠溢れの杯》《太陽の宝球》を併せて採用するという構成の方が安定するだろう。

新生Caw-Blade


そしてもう一つが、私の使ったデッキだ。


タカハシユウタ「Caw-Blade Next」
PTQフィラデルフィア千葉 (2位)

4《天界の列柱》
4《金属海の沿岸》
4《氷河の城砦》
4《島》
4《平地》
3《墨蛾の生息地》
4《地盤の際》

-土地(27)-

4《戦隊の鷹》
4《刃の接合者》
4《刃砦の英雄》
1《太陽のタイタン》

-クリーチャー(13)-
4《定業》
3《呪文貫き》
4《マナ漏出》
3《四肢切断》
1《糾弾》
2《ギデオン・ジュラ》
3《饗宴と飢餓の剣》

-呪文(20)-
3《ジェイス・ベレレン》
3《瞬間凍結》
2《天界の粛清》
2《糾弾》
2《失脚》
1《未達への旅》
2《神への捧げ物》

-サイドボード(15)-
hareruya




 前回の記事では《石鍛冶の神秘家》《精神を刻む者、ジェイス》禁止によりCaw-Blade消滅!と述べた。だが、舌の根も乾かぬうちに、私が使ったデッキは、装いを新たにしたCaw-Bladeであった。すまん。消滅は嘘であった。
 大幅に弱体化したのは事実だが、デッキ名になっている「Caw《戦隊の鷹》」も「Blade(装備品)」も健在だ。

 このデッキを組んだのはもともと、《饗宴と飢餓の剣》を使いたいという理由だった。相手のリソースを削りながら自分の行動回数は2倍。土地をアンタップしてカウンターを構えれば、磐石であり、勝利は目前。このカードは青と組み合わせてこそ、その輝きを増す。
 冒頭でも述べたように、Tier1と予想されるデッキはヴァラクート、双子、青系コントロール。それらすべてに大して《饗宴と飢餓の剣》は有効であり、他の剣では代用できない。《石鍛冶の神秘家》でサーチできないため3枚と多めだが、これが適正な枚数に思える。
 剣を活かす為にも《墨蛾の生息地》を多め。しかし無色土地が多すぎるとどうしても事故りやすくなるため、土地の枚数自体を増やした。他のデッキに比べ「土地が止まる=負け」となりやすいので、マナスクリューよりはマナフラッドの方がまし、と考えた結果だ。


 クリーチャーも、旧環境では見なかった2種類を採用している。

《刃の接合者》
先ほどのテゼレットの項でも述べたように、黒いデッキの除去は《喉首狙い》になってきている。それなら、除去されないアーティファクトクリーチャーを使うべきだ。
同じ3マナ域として《ミラディンの十字軍》も候補ではあったが、無色土地が多いため3ターン目のダブルシンボルが思ったよりも出しづらく、また赤に弱いという理由で解雇となった。


《刃砦の英雄》
環境の除去は《喉首狙い》と言いながらこれ、というのは矛盾しているように感じるかもしれない。実際、最初は《翼の接合者》《練達の接合者》などゴーレム軍団も候補ではあった。
しかし、それらゴーレム達は皆ヴァラクートの前では無力であった。クロックが遅すぎるのだ。
ヴァラクートは長期戦に強いデッキであり、相手に準備する時間を与えれば《マナ漏出》はケアされてしまうし、《召喚の罠》の存在もある。
王者ヴァラクートを倒すために必要なのは、相手がタイタンを出す前のターン、もしくは出された次のターンにはライフを削りきれるようにすることだ。
理想的なのはカウンターで相手のスピードを落とし、4ターン目《刃砦の英雄》というパターンだ。

ちなみに、青黒テゼレットも、ヴァラクートに対しては同じ戦い方をする。手札破壊で相手の初速を落とし、その間に5/5アーティファクト達でビートダウン。
対ヴァラクートは相手のカードをすべて受けきるのではなく、ある程度無駄なカードを作らせたほうが勝ちやすいと、私は考える。


《マナ漏出》
前環境での《マナ漏出》は強かった?Caw-Bladeを使っていたプレイヤーなら、この問いにはNoと応えるかも知れない。相手が先手の時の《石鍛冶の神秘家》→起動という動きに全く干渉できないことから、同系で後手のときはサイドアウトすることすらあった。
しかし今は違う。ヴァラクートや双子に当たったときに、《マナ漏出》はゲームの行方を握るカードになる。これもまた、《石鍛冶の神秘家》禁止により以前よりも価値を増したカードだろう。


改良案
 赤いビートダウンを苦手としているので、どうしても除去が欲しいと感じ《糾弾》を入れたが、1枚だとそんなに勝率に影響しない。ここは相手を選ばない強さのカード、3枚目の《ギデオン・ジュラ》にするべきだ。
 メインがコントロールに強い構成なので、サイドからビートダウンに勝てるように除去を多めに積むと良いだろう。今のところ《失脚》が抜けて《糾弾》4、《未達への旅》2、《天界の粛清》2になっている。

 《ジェイス・ベレレン》はあまり強くない。コントロールを意識して入れたはいいが、このデッキはアドバンテージを取って勝つのではなく、展開しながら重要な呪文だけを打ち消して自分のペースを守るデッキだ。3マナのカードが多すぎることもあるし、忠誠値も低く破壊され易い。対コントロールカードなら《エルズペス・ティレル》が良いだろう。


MAGIC2012はすぐそこまで来ている。

 カードが禁止されること、そして新規カードが加入することで、メタゲームの変化は一気に速まる。日本選手権はM12発売直後の予測できない環境ということもあり、今回紹介したデッキが正解になるとは限らない。
 少しずつではあるが、既にカードは公開されてきている。メタゲームを予想し、自ら答えを探し出して欲しい。それこそが、マジックの醍醐味であり、自ら探し出した答えがもたらした勝利こそ、もっとも甘美な勝利の美酒であるという事を、諸兄にも知ってほしい。

それでは、また。