兵どもが夢の跡

高橋 優太

高橋 優太


 2011年6月20日、マジック界に6年振りの衝撃が走る。

《石鍛冶の神秘家》禁止
《精神を刻む者、ジェイス》禁止


 この2枚のカードの禁止が意味することは、非常に明確だ。Caw-Blade消滅である。
 禁止カードの適用は来月7月1日から。7月12、13に開催される日本選手権はM12発売直後ということも合わせて、スタンダード環境は激変することが予想される。禁止発表により、デッキが変わってしまうプレイヤーも多くいるだろうし、間違いなく、今一番話題に上がるのは「今後のスタンダードがどう変化するか」だろう。
 今回は、メタゲームが崩壊してしまった事を鑑みて、いつものプレイング記事ではなく、僅かではあるが7月に開催される日本選手権予選や、選手権本戦等の、新スタンダードがどのように変遷していくか?予想特集をお送りして行こうと思う。


1.帝王に再度返り咲き。赤緑ヴァラクート


「Valakut」

11《山》
5《森》
3《霧深い雨林》
3《広漠なる変幻地》
2《進化する未開地》
4《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》

-土地(28)-

4《草茂る胸壁》
2《ムル・ダヤの巫女》
4《原始のタイタン》
3《ゼンディカーの報復者》

-クリーチャー(13)-
4《カルニの心臓の探検》
4《探検》
3《耕作》
3《砕土》
3《緑の太陽の頂点》
2《召喚の罠》

-呪文(19)-
4《紅蓮地獄》
2《鞭打ち炎》
3《焼却》
3《自然の要求》
2《ガイアの復讐者》
1《召喚の罠》

-サイドボード(15)-
hareruya



 今回の禁止で最も強くなったデッキ、それは赤緑ヴァラクートだろう。デッキの主要パーツはそのままにライバルだったデッキが消えたのだから、当然のことと言える。
 事実、ミラディン包囲戦が発売される前(つまりCaw-Blade台頭以前)のスタンダードでは、コントロールにもビートダウンにも強い、紛れもないTier1デッキだと言えた。もともと基盤がしっかりしており、研究もされているので、これから再び隆盛を極めるであろうことは想像に難くない。
 ただCaw-Blade消滅により、クリーチャーの選択は変化させる必要があるだろう。《業火のタイタン》《石鍛冶の神秘家》《戦隊の鷹》などタフネスの低いクリーチャー達が流行していたからこそ使われるカードだった。しかしこれからのヴァラクートは意識される立場であり、他のデッキは《喉首狙い》などの単体除去の枚数を増やす傾向になることは想像に難くない。《業火のタイタン》は以前ほどの強さはないだろう。ヴァラクート同系対決でも《業火のタイタン》は決め手になりにくいことを考えると、再び《ゼンディカーの報復者》に焦点が当たるタイミングだと言える。なにしろ、もうプロテクション(緑)の剣をサーチする憎き1/2クリーチャーは居ないのだ。

 今回掲載するレシピはヴァラクート同系対決が増えるであろうことを考えて、出来るだけ4ターン目に《原始のタイタン》をプレイできるような構成にした。《稲妻》が0枚なのも同系戦を考えてだ。おもむろに懐から剣を取りだす1/2クリーチャーも、兵どもが何とやらである。青いデッキが軒並み弱体化するであろうことから、《呪文貫き》に弱いものの、確実性のある《緑の太陽の頂点》も多めに積んでいる。その《緑の太陽の頂点》と相性の良い《草茂る胸壁》はビートダウンにとっては厄介な存在であり、同系対決でも4ターン目タイタン率を上げてくれるカードだ。


2.アンチヴァラクート筆頭?青赤《欠片の双子》


「Deceiver-Twin」

9《島》
7《山》
2《進化する未開地》
4《地盤の際》
4《沸騰する小湖》

-土地(26)-

4《呪文滑り》
4《海門の神官》
4《詐欺師の総督》

-クリーチャー(12)-
4《定業》
4《マナ漏出》
2《ジェイス・ベレレン》
4《乱動への突入》
4《欠片の双子》
4《予感》

-呪文(22)-
3《呪文貫き》
1《ジェイス・ベレレン》
2《聖別されたスフィンクス》
4《紅蓮地獄》
3《変異原性の成長》
2《焼却》

-サイドボード(15)-
hareruya



 「Tier1に返り咲くであろう、赤緑ヴァラクートが最も苦手なデッキは何か?」
 この質問に対し、ヴァラクート使いの大半は「《欠片の双子》デッキ」と答えただろう。
 《詐欺師の総督》《稲妻》で落ちないタフネス4を持つため、ヴァラクート側は《内にいる獣》でも取らない限り、このデッキに一切干渉することが出来ない。最速4ターン目にコンボが決まる上に、《詐欺師の総督》の能力でヴァラクートの《原始のタイタン》を1ターン遅らせることも出来る。ヴァラクート側からしてみれば、まさに「天敵」とも呼べる存在だ。

 このデッキもまた、他の青デッキと同様、《精神を刻む者、ジェイス》という中心の存在を失ってしまっているが、そこは《予感》でカバーしたいところ。そもそもコンボデッキであるため、《精神を刻む者、ジェイス》がもたらしてくれる恩恵を最大限に活用出来るアーキタイプでは無いという事も含め、《精神を刻む者、ジェイス》の禁止を受けても、十分に活躍出来るポテンシャルを持っている。

 今後ヴァラクートが青赤双子を意識するなら、《呪文滑り》と打ち消し呪文を無視できる《焼却》は必須とも言える。それを考慮して、双子側は《変異原性の成長》などを採用すると良いだろう。

3.青黒コントロール


「UB-Control」

4《忍び寄るタール坑》
4《水没した地下墓地》
4《闇滑りの岸》
4《地盤の際》
4《沼》
4《島》
1《新緑の地下墓地》
1《霧深い雨林》

-土地(26)-

2《墓所のタイタン》
1《聖別されたスフィンクス》

-クリーチャー(3)-
3《定業》
4《コジレックの審問》
2《強迫》
3《広がりゆく海》
4《マナ漏出》
2《冷静な反論》
4《喉首狙い》
2《四肢切断》
2《弱者の消耗》
3《ジェイス・ベレレン》
2《ジェイスの創意》

-呪文(31)-
3《瞬間凍結》
3《見栄え損ない》
2《記憶殺し》
3《外科的摘出》
1《ジェイス・ベレレン》
2《強迫》
1《弱者の消耗》

-サイドボード(15)-
hareruya


 赤緑ヴァラクートや青赤双子が隆盛するようならなら、手札破壊・単体除去により対応力の高い青黒コントロールの出番だ。
 《精神を刻む者、ジェイス》の抜けた穴はあまりにも大きいが、なんとかそれをカバーしようと《ジェイス・ベレレン》多め、追加のドローとして《ジェイスの創意》も採用している。我々は今まで《精神を刻む者、ジェイス》という便利すぎるドロー呪文に慣れていたため、違和感があるかも知れない。しかし本来は5マナインスタントで3枚というのが、ドロースペルとしてちょうど良いくらいなのではないだろうか。このデッキの場合は5マナで《弱者の消耗》《ジェイスの創意》の二段構えという動きも可能だ。

 そして、今回このデッキを紹介する理由はサイドボードにある。
 《記憶殺し》《外科的摘出》、この2種類の「追放カード」は赤緑ヴァラクート・青赤双子両方に対して効果的だ。特に《外科的摘出》《地盤の際》からヴァラクートをすべて追放、双子相手には手札破壊からコンボの片割れを追放と、明確な勝ちパターンになり得るカードだろう。

 《瞬間凍結》《広がりゆく海》《地盤の際》《外科的摘出》といった、「ヴァラクートに強いカード」を多く使えるのも、青黒の魅力といえる。個人的な好みもあるが、言わずもがな、私はは新環境で青黒コントロールを最初に試すだろう。


4.決まれば勝ち。無限ライフ


「Infinity-Life」

4《剃刀境の茂み》
4《陽花弁の木立ち》
4《活発な野生林》
7《平地》
2《森》
4《地盤の際》

-土地(25)-

3《魂の従者》
2《縫合の僧侶》
1《コーの空漁師》
1《森のレインジャー》
3《呪文滑り》
4《戦隊の鷹》
4《獣相のシャーマン》
4《レオニンの遺物囲い》
4《ファイレクシアの変形者》
4《復讐蔦》
1《太陽のタイタン》
1《大修道士、エリシュ・ノーン》

-クリーチャー(32)-
3《暴走の先導》

-呪文(3)-
4《コーの火歩き》
1《呪文滑り》
1《悪斬の天使》
4《内にいる獣》
1《シルヴォクののけ者、メリーラ》
1《静寂の守り手、リンヴァーラ》
3《屈折の罠》
-サイドボード(15)-
hareruya



 新たなるファイレクシア発売直後、話題になりつつも消えていったデッキがあった。SoulSistersと呼ばれる、白単無限ライフデッキである。ChannelFireballに所属する、Conely Woodsが作りだしたこのデッキは、クリーチャーデッキにはめっぽう強いものの、「無限ライフ決めたのに、《精神を刻む者、ジェイス》の奥義で負けた。」という被害報告が殺到し、メタゲームの上位に入ってくる事は無かった。

 だが、《精神を刻む者、ジェイス》はもういない。無限ライフの上から勝利出来るデッキはほぼ環境に存在しないだろう。
 このデッキの魅力は二つある。環境に跋扈するであろうクリーチャーデッキに対してはめっぽう強く、無限エンジンを唯一搭載する《欠片の双子》デッキには、《魂の従者》《縫合の僧侶》《呪文滑り》が自然に対策してくれている。
ヴァラクートに対する根本的な解決策を持っているわけではないものの、そもそも無限ライフが決まればヴァラクートは勝つ術を失う。また、《レオニンの遺物囲い》《カルニの心臓の探検》に突き刺されば大幅な減速を期待出来るだろう。

 このレシピでは《獣相のシャーマン》《戦隊の鷹》《復讐蔦》というスロットを採用することで、白緑ビートダウンとしても動けるようなデッキにしているが、メタゲームに揉まれた期間が少ないデッキなため、まだまだ伸び代があるデッキと言えるだろう。
 例えば《出産の殻》を採用することで、クリーチャーサーチ能力を高める事も出来るし、先述した《獣相のシャーマン》《戦隊の鷹》《復讐蔦》を外してしまえば、大きなスロットが空く。

 黒をタッチして《コジレックの審問》等の手札破壊と相性が若干悪いヴァラクートデッキに有効な《記憶殺し》《喉首狙い》等の除去呪文を採用する事も出来る。
 青をタッチすれば、《呪文貫き》《マナ漏出》といったお決まりのカウンター呪文と、《予感》《定業》といったドローサポートはコンボの達成を円滑にしてくれる可能性もあるだろう。

 未完成故に、このデッキには可能性が秘められている。是非調整してみて欲しい。



おわりに

 カードゲームにおける禁止カードというものは、本来あってはならないことだ。
 なにしろ禁止されるほど強力で、ゲームバランスを壊すほどのものだと認めることになるからだ。

 しかし思えば、今のスタンダードは閉塞環境にあった。大会の入賞デッキのほとんどには《石鍛冶の神秘家》《精神を刻む者、ジェイス》の名前が連なり、グランプリ2日目の使用率は前者が70%、後者が88%だった。全盛期の親和ですら、30パーセント行かなかったことを考えると、異常とも言える事態だ。2つとも生き残ったらゲームの勝利につながるカードでありながら、《解放された者、カーン》のようにとてつもなく重いのではなく、2マナと4マナという「コストに見合っていない」カードだったといえる。私も「Caw-Blade以外はファンデッキ」とまで思っていた。

 今回の禁止リストの改訂に嘆くもの、異を唱える者も多いと思う。だが、私はこの変化を受容するし、良い変化をもたらすものだと考えている。これまでこの2種類によって抑圧されていたデッキやカードは数多くある。これからはプロテクション(白)(赤)(黒)(緑)のクリーチャーが揃うことも少ないし、インスタントタイミングで4/4絆魂、警戒のクリーチャーが出てくることもない。せっかく出した大型クリーチャーをバウンスされることもなければ、鎮座する青い悪魔に自らのドローを検閲されるゲームもスタンダードではあり得ない。

 自分でデッキを考える時間の楽しさは、マジックの大きな魅力だ。デッキの自由度は大きく上がり、以前よりも多くの種類のデッキが活躍するようになるだろう。日本選手権では、M12の加入も相まって、プレイヤーとして、デッキビルダーとして、真の実力が試されるトーナメントとなるだろう。実際、私のメモ帳には、既に多くの新環境デッキが書き記されている。
 禁止で衝撃を受けたプレイヤーも多いだろう。だが、変更は新たな楽しみも生み出してくれる。
 諸兄が、新たなデッキを手に、トーナメントシーンで活躍してくれる事を強く願っている。