Fight it out!!【回答編】

高橋 優太


happymtg.com当時はコメント欄がありましたが、現在は見ることができません。あらかじめご了承ください。


 今週末には、プロツアー名古屋が開催される。世界各地から珠玉のプレイヤー達が集まり、鎬を削る。日本各地で毎日のように行われているトーナメントや、先日開催されたグランプリともまた違う、独特の張りつめた空気がプロツアーにはある。参加権利を持たぬ者も、是非会場に足を向けて見て欲しい。その雰囲気に魅せられ、トーナメントマジックを本格的に開始する人間も多い。斯くいう私も、プロツアー、トーナメントマジックに魅せられた人間の1人である。
 是非、諸兄にも表現しがたい、プロツアーの空気を味わってほしい。

 それでは、本題に入ろう。先週の質問編を未だ読んでいない者は確認してから読み進めるように。



Case1





Case1コメント欄での意見と正しいプレイ

 解説が長くなるので、先に回答を述べよう。私の考える正解は以下の通り。

相手の《ゴブリンの先達》《四肢切断》をプレイ(自分のライフ12→8)
自分の《ゴブリンの先達》《槌のコス》にアタック。除去されたら対応して《投げ飛ばし》でコスに2点+《稲妻》でコスを除去。除去されなかったらそのまま《稲妻》でコスを除去する。


 今の盤面で考えるべきことは、以下の2つだろう。
1.相手が1マナの火力を持っているか
2.相手が4ターン目に《槌のコス》をプレイしなかった理由。
これらを、二つの観点から掘り下げていこう。

ライフとリソースの管理

 赤単同系は1~2点のライフを争うシビアなゲームだ。ライフを減らしすぎると、どんなに盤面が有利であろうと「火力を本体に」というゴールにたどり着かれてしまう。
 それにも関わらず、前のターン対戦相手は《ゴブリンの先達》《ぐらつく峰》の4点ダメージを受けている。このことからは、「1マナ火力はおそらく持っていないだろう。」という予測を立てる事が出来る。

 そしてライフ管理と同じくらい、リソースの管理も重要だ。お互いのライフがまだ12あるので、ライフよりもリソースの数を気にする場面だろう。特に、毎ターン4/4を生み出す《槌のコス》は、今すぐにでも対処しなければいけない。相手のマナが少ないうちに、確実に対処したい。
 クリーチャーによるダメージは、繰り返し使えることから火力によるものよりも効率が良い。手札の消費を抑えるためにも、《ゴブリンの先達》で2点を与えたい。

 コメントの中に以下のようなものがあった。
「まず《ゴブリンの先達》でアタック。ブロックされたら《投げ飛ばし》でコスに2点。その後《稲妻》でコスに3点」
 というものがあった。はっきり言おう、これは悪手である。
 なぜ《ゴブリンの先達》がアンタップ状態なのか、これまでの行動を思い出せばすぐにわかるはず。相手は《槌のコス》を攻撃から守りたいからこそ、2点のダメージよりも《ゴブリンの先達》をブロッカーとして立たせることを優先している。
 ブロックされるかどうかで行動を決めるプレイは、相手に選択肢を与えることで、対戦相手が、自分にとって都合のいい方向に誘導することが出来るようになってしまう。最もやってはいけないプレイだろう。

「相手の挙動から(棋譜)から、手札を読む」

 そして、なぜ相手は4ターン目に《槌のコス》をプレイしなかったか。同系対決の最も重要なキーカードとも言うべき《槌のコス》をプレイしなかった理由は何か?
・クリーチャーに対して火力を使わせることで、なるべく《槌のコス》が生き残り易い状況を作りたかった。
・そもそも4枚目として引いた土地が《ぐらつく峰》だった。
《槌のコス》をトップデッキした。
 などが考えられる。

 このように、それまでの相手の行動から相手の手札はある程度推察できる。そこからゲームプランを立てることも可能だ。

 今回の回答で示したプランを取ると、返しのターンに《槌のコス》の2枚目をプレイされたときに苦しいという指摘があったが、どのプランを取っても、結局相手の2枚目の《槌のコス》は厳しいので、割り切る必要がある。最悪の事態を考えてそれを回避するのは重要だが、本当に最悪なのは、それによって勝ちを逃してしまう事である。

 それと《ゴブリンの先達》に関して。
 赤単同系のマッチだと殴りあっている光景を見かけることがあるが、《ゴブリンの先達》がお互いの場に出たときは、殴らないほうが得になることが多い。赤単同型対決はリソースを削りあうゲーム。1枚の土地(=ドローが1枚多い=1枚多くスペルに辿り着ける)ことは重要であり、除去を《ゴブリンの先達》にプレイすると他のクリーチャーが生き残り易くなるメリットもある。真っ向勝負のアグロデッキを使っていても、押すだけではなく引く場面もあることを覚えていて欲しい。攻めと守りのバランスを適切に保つ事が、勝利への近道である。



Case2



Case2コメント欄での意見と正しいプレイ

 回答は
《銀皮の鎧》《腐食獣》に装備。
《ダークスティールの斧》《剃刀の豚》に装備。
《縒り糸歩き》《腐敗狼》に装備。


 である。そうすると、

・6/4トランプル、アーティファクト・クリーチャーの《腐食獣》
・4/1先制攻撃、感染の《剃刀の豚》
・4/6感染、チャンプブロックされたらドローできる《腐敗狼》

 という状態になる。
 《銀皮の鎧》はクリーチャーがアーティファクトになる事で《テル=ジラードの堕ちたる者》に止められてしまうので、一見では「《銀皮の鎧》を装備しない」ことを考えてしまうかもしれない。だが実際は《腐食獣》《銀皮の鎧》でパワー6、《ゴブリンの戦煽り》の喚声を受けるとパワーが7になるため、この2体を同時に攻撃させることも出来ない状況だ。そして2種類の感染クリーチャーのパワーを4にすることで、相手はこの2体の攻撃を通せなくなる。

 となると相手は必然的に《腐食獣》《腐敗狼》の2体をタップすることになる。そうなると先制攻撃を持つ《剃刀の豚》が攻撃することができ、クリーチャーを失うことなく相手にチャンプブロックを強制することが出来る。相手にとって、かなり苦しい状況が続くだろう。

相手の視点で考える

 この問題は、他の問題のように意見が割れる類のものではなく、どちらかというと詰め将棋に近い。盤面に並べられている彼我のリソースをきちんと整理すれば、明確に一つの答えが出るようになっている。
 回答にたどり着くためのポイントは、相手のライフ・毒をちょうど削りきれるようにすることだ。例えば3/3クリーチャーの攻撃を2/2クリーチャー2体でブロックすれば1:1交換できるように、基本的にマジックは防御側が有利なように作られているゲームである。たとえライフが1になろうが毒が9になろうが、守り続ければそれは「敗北」ではない。
 ライフだけを攻めようとすると《腐食獣》のような巨大クリーチャーだけ対処すれば良く、逆に毒だけを狙おうとすれば、相手は感染クリーチャーの対処だけすれば良いことになる。どちらかに傾倒した攻め方をすると相手の守りが簡単になる。

 相手のプレイの選択肢を狭める意味でも、この盤面ではライフ・毒の両方を攻めていく必要があるだろう。
 盤面で押しているこの状況なら、チャンプブロックしなければいけない状況を作り出し、消耗戦に持ち込めば勝利は目前だ。そのためには感染クリーチャーのパワーや、《腐食獣》のトランプルを有効に使える装備の仕方を考える必要がある。
 相手の立場に立って、どう行動されたら一番辛いかを考えよう。これはリミテッドに限った話ではなく、構築戦にも当てはまる。自分のデッキを深く理解すれば、ミラーマッチの場合にどう行動すれば良いかの判断材料になるだろう。