取捨選択【回答編】

高橋 優太


happymtg.com当時はコメント欄がありましたが、現在は見ることができません。あらかじめご了承ください。




Case1



Case1コメント欄での意見と正しいプレイ

コメント欄での意見
2《呪文貫き》
2《四肢切断》
8《ギデオン・ジュラ》


 コメントでは《ギデオン・ジュラ》が多数を占めた。
 たしかにギデオンはコストが重く、お互いに《呪文貫き》《マナ漏出》を取っているであろうこのマッチでは着地させるには大きな苦労が伴う。お互いの手札が多くマナを構え合う現状では、5マナのカードは複数は不要だという考え方も理解できる。意見の割れ方も、それを物語っているだろう。

 だが、私の考えは異なる。解説が長くなるので先に正解を述べよう。最も勝利に近いのは、《呪文貫き》をディスカードだ。

 反論がある兄等もいるであろうから、現在の手札について、それぞれ詳細に説明していこう。

(1)《マナ漏出》
 こういった、お互い土地4~5枚/手札7枚でにらみ合いになっている状況での《マナ漏出》は強い。
 例えば次のターン、相手が《戦隊の鷹》《石鍛冶の神秘家》をプレイしたとする。こちらはそれに《マナ漏出》をプレイしたとしよう。3マナを払い、《マナ漏出》を無効にすることは出来る。相手の場に脅威は展開される。だが、相手の視点からするとその3マナは支払いにくい。なぜなら3マナを支払うことでタップアウト状態になり、次のターンのこちらのアクションに対して無防備になってしまうからだ。勿論、こちらの《マナ漏出》に対して《呪文貫き》《マナ漏出》をプレイするのはさらに愚の骨頂である。

 3マナが払える状況でも、青対決での《マナ漏出》は役に立つことが多い。
「クリーチャーにも使える」、「相手に要求するマナが1つ多い」というのは大きな差であり、現状の手札では一番強いカードだ。

(2)《精神を刻む者、ジェイス》
 青対決でよく起こるのが、
 Ⅰ.プレイヤーAが《精神を刻む者、ジェイス》を通してブレインストーム
 Ⅱ.プレイヤーBが返しのターン、《精神を刻む者、ジェイス》をプレイして対消滅
 Ⅲ.プレイヤーAが《精神を刻む者、ジェイス》2枚目をプレイ。そのままアドバンテージを取ってゲームに勝つ。

 プレインズウォーカーのルールの特性上、先に出したほうが圧倒的に有利だ。1回ブレインストームした後に対消滅したとしてもカード1枚分得しているし、手札の濃度は高まるだろう。さらに、相手はジェイスに対処するためにマナを使うことになる。これこそ、青対決がジェイスゲーと呼ばれる所以だ。ジェイスを中心にゲームは回る。
 ほとんど全ての青いデッキに4枚採用されているからこそ、対消滅も考えなくてはいけない。コメントでも0人だったように、ジェイスを捨てることはまずないだろう。

(3)《四肢切断》
 マジックはどちらかが攻勢、どちらかが守勢になるゲームだ。これは中速デッキや、コントロールの同系対決においても当てはまる。盤面がイーブンに見えても、必ずどちらかがイニシアチブを握っている。
 こちらのジェイスが通ったなら、相手はそれを破壊しようとオフェンス側に回るだろう。忠誠値5なら対消滅狙いで《精神を刻む者、ジェイス》をプレイしてくるだろうが、忠誠値3ならクリーチャーの攻撃で破壊し、なるべく手札のジェイスを取っておきたいはずだ。こちらはそれを防ぐためのカードが必要になってくる。
 そして対戦相手の場には《天界の列柱》がある。ジェイスが通った次のターンの攻撃を対処できる《四肢切断》は必要なカードなのだ。
 《石鍛冶の神秘家》+装備品にも対処できるし、《殴打頭蓋》をサーチされても石鍛冶の召還酔いが解ける前に除去してしまえば、5マナの呪文はプレイしづらい。《四肢切断》を捨てるとは即ち、クリーチャー戦での優位を破棄するという事と同義に近い。これを捨ててしまっては、こちらが許容できるゲーム展開の選択肢が減ってしまうだろう。捨てるべきではない。

(4)《呪文貫き》
 《呪文貫き》のメリットは、その軽さだ。わずか1マナで相手の行動に制限をかけることが出来る。
 Caw-Bladeは2マナで行動することの多いデッキなので、序盤は《マナ漏出》よりも重宝する。3ターン目《石鍛冶の神秘家》の能力を起動しつつ《呪文貫き》を構えて相手の除去呪文に備えることができるのが、Caw-Bladeが他のコントロールを先んじてTier1に君臨している理由の一つである事は言うまでも無いだろう。

 だが、当然デメリットも存在する。「クリーチャーでない呪文」しか打ち消せないことと、後半腐りやすいことの二つだ。
 Caw-Bladeは、デッキ名にもなっている通り、《戦隊の鷹》《石鍛冶の神秘家》という2種類の「クリーチャー呪文」を主軸として相手にプレッシャーをかけていくデッキだ。

 今後のゲームがどう動くか、深く考えてみて欲しい。
 お互いにマナを構えあっている以上、土地を置ける限り待ち続けるか、相手が動いてくるのを待つ状態になる。こちらのマナがオープンなら、相手が《精神を刻む者、ジェイス》《ギデオン・ジュラ》をプレイしてくるのは、もう少しゲームが進んでからのことになる。この1~2ターン以内にもしも相手が仕掛けてくるとしたら、《戦隊の鷹》《石鍛冶の神秘家》といった2マナのクリーチャーが先になるだろう。そうなったときに、クリーチャー呪文を打ち消せない《呪文貫き》は役に立ちづらい。

 相手がプレインズウォーカーをプレイしてくるにしても、もう2、3枚土地が伸びた後のことだろう。

 相手が7マナで《精神を刻む者、ジェイス》をプレイ→こちらは《マナ漏出》/《呪文貫き》を合わせてカウンター→返しにこちらが《精神を刻む者、ジェイス》をプレイ→《マナ漏出》でカウンター→相手は《精神を刻む者、ジェイス》または《ギデオン・ジュラ》をプレイとなっても、こちらの《呪文貫き》が届かないマナ域になっており2枚目の《呪文貫き》が活きるゲームにはならない。

 ディスカード候補として上がった《ギデオン・ジュラ》は、2種類のクリーチャーどちらにも効果があるカードだ。石鍛冶も鷹も単体のクロックは微々たる物なので、容易に《ギデオン・ジュラ》を破壊できない。通った後の《精神を刻む者、ジェイス》を相手の攻撃から守るためにも必要だし、相手のギデオンとの対消滅を考えても、2枚目は持っておきたい。現在あなたの手札には《精神を刻む者、ジェイス》《ギデオン・ジュラ》が2枚ずつ。この2枚をどうやって場に残すかのゲームになることが予想できる。

 《呪文貫き》《マナ漏出》は後半戦に弱いカードだ。2つのカウンター呪文はマナを払うことで軽減できるので、お互い土地が伸び、カードを消費しあった後は「どちらがより強力なカードをプレイするか」になる。そのときに《ギデオン・ジュラ》は必要なカードだ。土地の差で少し不利な現状、お互いに土地が伸びたあとのことを考えると、逆転するために必要なのは、《呪文貫き》がもたらしてくれる、小回りが利いた対応力ではなく、重くてもゲームを打開できる《ギデオン・ジュラ》だろう。

 よっしー氏のコメントが、回答への過程も含めて非常に秀逸であったので、ここに紹介する。これに奢ることなく、「極」へ向けて精進してほしい。

呪文貫きを捨てます。
 相手のほうがマナが潤沢にある状況で、今後最も使用が難しくなりそうなのが貫きだからです。
 ジェイス×2、ギデオン×2はこの状況になったら、もはや相手に合わせて連打していくために必須と言えて、四肢切断は、こちらがPWの着地に成功した時に殴ってくるであろう列柱に対して使いたい。ミシュラランドを壊せれば、相手のマナ基盤を崩せる結果にもつながるので残しておきたいかと。。。
 そして、マナリークは仮に相手が次のターンにセットランドから、ジェイスを展開してきたとしても弾くことができるため残す必要がありますが、呪文貫きは2枚ともを使わないとはじけないのでアドバンテージを取られます。
 だったら1枚すてて、もう1枚はジェイスでライブラリーに戻すなりを考えるのが一番いいかと思いました。





Case2



2.Case2コメント欄での意見と正しいプレイ

コメント欄での意見
10《戦隊の鷹》
1《石鍛冶の神秘家》
1《コジレックの審問》


 《戦隊の鷹》という回答が多数を占め、カードを選ぶだけではなく、その後の展開について言及しているコメントが多かった。この記事で述べてきた「自分のデッキの動きを理解する」「対戦相手のデッキを予測する」を実践して、諸兄が「極」に近付いているようで、欣喜雀躍の思いである。

 もはや諸兄にはわかり切っている事とは思うが、正解は《戦隊の鷹》だ。そしてコメントでも言及されていた通り、《闇滑りの岸》《強迫》(指定は《精神を刻む者、ジェイス》)と続ける。これも諸兄には蛇足ではあるが、この問題は「ディスカードさせた後のターンにどう動くか」を主眼に置いている。

 《石鍛冶の神秘家》は、装備品こそ残るものの、装備させる先のクリーチャーさえ破壊してしまえば対処できる。2ターン目にプレイされたとしても、《喉首狙い》で対処が可能だ。《忍び寄るタール坑》に装備品がつくのはずっと後の話だ。ここでその心配をしていては、正確な動きが出来ない。
 そして3ターン目に《喉首狙い》をプレイすれば、こちらの手札に3マナ以下のカードは無い。《コジレックの審問》を撃たれたとしても空撃ちさせることができる。勿論3マナ以下のカードを引いている可能性もあるが、後述する、《精神を刻む者、ジェイス》をプレイしてマウントを取るというゲームプランに大きな支障は無い。

 先に《コジレックの審問》から撃たれて《喉首狙い》を落とされたとしても、結局《石鍛冶の神秘家》+装備品が動き出すのは5ターン目以降。それまでにこちらの《精神を刻む者、ジェイス》でアドバンテージを取ることができる。

 《戦隊の鷹》さえ落としてしまえば、相手のターンを自分に都合よく変えることが出来る。現在の初手で十分対処可能な手札だろう。

 手札に除去、カウンター、フィニッシャー、土地と存分なリソースがあるに越したことは無い。だが、いつもそういう状況になれるとも限らない。相手の手札、自分の手札と相談し、4ターン目のフルタップだとしても、時にダイナミックに《精神を刻む者、ジェイス》をプレイできるような柔軟なプレイングを身につけて欲しい。それこそが「極」の一端である。

 Case2へのコメントでは、中田と田中の剣氏のコメントが秀逸であった。視野狭窄に陥ることなく、広く選択肢を検討し、正解に辿り着いたその明晰な分析力は見事の一言に尽きる。

戦隊の鷹をディスカード
さらに言えば闇滑りの岸セットから強迫プレイで精神を刻む者、ジェイスをディスカード

石鍛冶の神秘家パッケージは環境に肉体と精神の剣をあまり見ない以上、ジェイスが間に合えばバウンスでどうにかなります
戦隊の鷹が通ってしまうとこちらのジェイスを潰したうえで向こうのジェイスを守られてしまう、いわばガンなので石鍛冶より優先すべきです

続いてジェイスのディスカードですが
単純にこのマッチアップだと次相手よりジェイスの枚数が多いに越したことはありませんし
返しの相手のターン
石鍛冶の神秘家を通してきた場合
こちらのメインに喉首狙いを打てば剣は着地せず
仮に剣をキャストされてもこちらのジェイスが着地します

コジレックの審問を打ってきた場合
捨てられるのは喉首狙いだけ
石鍛冶のキャストが1ターン遅れるのでジェイスが間に合います

余り考えても仕方のないことかもしれませんが
ジェイスを捨てずにターンを返し
相手が強迫をトップデッキしたときに、ジェイスも強迫も失い、キツ過ぎます

あと私の知りえる限りのダークブレードだと、デッキのカウンターはマナリークが3~4枚
こちらの4ターン目までの2回のドローでそこから1枚以上をドローする確率は
3枚なら11.3%4枚なら12.9%なのでここでジェイスを捨てておけばこちらのジェイスが生き残る確率はかなり高いと考えられます

長くなりましたが以上がCase2 戦隊の鷹の理由です



土地の置き方

 土地を置くという行為は、1ターンに1度しか行えないとルールで定められた行為だ。アクションをとる為に、対価として土地から生み出されるマナを使うというゲームシステムがある以上、当然セットランドには制限が付きまとう。
 タップインランドが手札に残ってしまったせいで、スムーズに呪文をプレイ出来なかったり、重要な土地を先に置いてしまったせいで破壊されてしまったりと、セットランドの順番は、デッキを運用するために重要な要素である。

 今回のケースでいえば以下の2択になるだろう。
《忍び寄るタール坑》を置いてスムーズに動ける事を優先する
《強迫》を打つために黒マナをこのターンに出せる土地を置く

 相手は次のターンに《石鍛冶の神秘家》をプレイしてくるだろう。とはいえ、《コジレックの審問》を先にプレイしてくる可能性も無くは無い。また、次のターンのドローを含めて考えても、3マナが必要な可能性が非常に低いことから、《忍び寄るタール坑》をこのターンに置いて、スムーズさを優先する意味が無い。このターンに《強迫》を打つ事が優先されるため、セットランドは《闇滑りの岸》だ。
 デッキリスト的にほぼ可能性は無いのだが、3ターン目に3マナ使う事の有用性が非常に高い可能性がある手札の場合は《強迫》を打つよりも、《忍び寄るタール坑》をセットしてスムーズな動きを優先する事もあるだろう。

 余談だが、ドローサポートがある場合はさらに土地の置き方が重要になる。
 例えばレガシー界ではドローの代名詞ともいえる《渦まく知識》がある。デッキをスムーズに動かすため、《不毛の大地》ケア等の観点から、置く土地を限界まで選びたい。引いてきた3枚を含めて十分すぎる土地があるのなら、土地をライブラリーに戻してフェッチランドでシャッフルしてしまうというように、様々な選択肢が存在する。
 《定業》にしても、タップインをこのターンに置いておきたい、もしくはアクションするためにこのターンはタップインを置かずにアクションにつなげるためのアンタップインを置きたい。など、状況に応じてセットする土地を検討する必要がある。

 また、土地を置くことは情報管理という観点からも重要だ。
 相手に必要以上に情報を与えず、自分の情報はなるべく少なくする。引いた土地をそのままセットランドしていれば、ドローが盤面に影響を与えないという事実が相手に伝わってしまう。これは何も土地に限らず、マジックのゲーム全般に通じることだ。細かいところだが、気をつけてみると良いだろう。



 次回の講義で触れようと思っているのは、「戦闘」だ。これまで、私が得意とするところでもあるコントロールデッキの求極を披露してきた。だが、コントロールデッキだけが全てではない。寧ろ想定ターン数が短い、ビートダウンデッキ等のライフを積極的に削るデッキ程、一つ一つのプレイングが勝敗に与える影響は大きいと言っていいだろう。
 出せば勝ち、出した時点で仕事の大半を終えているといったクリーチャーが多い昨今、細かい攻防が少ない。だが、そんな今だからこそ、戦闘で細かくアドバンテージを稼ぐ事が勝利につながっていくだろう。