Would you like to mulligan to 6 cards?【回答編】

高橋 優太


happymtg.com当時はコメント欄がありましたが、現在は見ることができません。あらかじめご了承ください。


前回の記事では、ジェイス編を越える多くのコメントをいただいた。私の記事で求極者が増えていることを嬉しく思う。

普段の試合で、「マリガンする/しない」の選択は簡単だ。ものの10秒で判断できるだろう。
しかし簡単にできる選択だからこそ、間違いも起こりやすい。私をもってしても間違ってしまう事がある。うっかり弱キープした1ターン後に「実はマリガンだったのではないか」と後悔しても、既に遅い。
初手をキープした時点で、そのゲームの3割くらいは決定される。
開始数ターンで、自分がデッキがきちんと回るか、相手がどう動くか、ゲームのプランを立ててしっかり「マリガンする/しない」を検討するべきだろう。

では、回答編だ。マリガンの極をお見せしよう。

質問編を見ていない者は、こちらから確認しておくとよい。



Case1



1-1.Case1コメント欄での意見と正しいプレイ

キープ(13)
マリガン(18)

コメントの意見を踏まえつつ、自分の考える正解は 「マリガン」だ。
この初手は、ただ「マナがあるだけ」の状態だ。しかも初動が3ターン目で、相手への干渉手段が一切ない。現在のスタンダードの主要デッキとの対戦をイメージしてみると良い。

対戦相手が赤緑ヴァラクートだったら・・・同系でのターニングポイントである「4ターン目タイタン」を目指すには、2ターン目に2マナのマナブースト、それ以後に《原始のタイタン》と、都合良いトップデッキを繰り返さなければいけない。

対戦相手がビートダウンだったら・・・《稲妻》のような軽い除去もなく、《ゴブリンの先達》《ステップのオオヤマネコ》《板金鎧の土百足》にガンガンライフを削られる展開になるだろう。引いて状況が好転するカードは《稲妻》だが、4枚しか入っていない。《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》、2種のタイタン、《ゼンディカーの報復者》も有効なカードだが、稼働するのは5ターン目以降。つまり、引いて良いカードが2T目の《探検》《カルニの心臓の探検》を除くと、4枚しか無い事になる。つまり絶望だ。

対戦相手がCaw-Goだったら・・・このマッチでのみ、良い手札になる可能性のある初手だ。相手が《石鍛冶の神秘家》《饗宴と飢餓の剣》で攻めてこない展開なら、悠々とマナを伸ばすことが出来る。9マナで《原始のタイタン》をプレイするプランが立てられる初手だ。
しかし逆に言うと、相手の《石鍛冶の神秘家》《饗宴と飢餓の剣》に対して無力だ。4ターン目から手札を削られ、相手の行動回数が2倍になり、そのままゲームの敗北につながるだろう。

コメントで指摘があった通り、マリガン後に「緑マナが無い」「重いカードばかり」「そもそも土地が無い」などで手札が悪化する可能性はある。
「マリガンする/しない」の選択は、”都合の良いドローに賭けてキープ”と”1枚初手を減らしてでも、良い手札を求める”ことの比較でしかない。
たしかに緑マナもマナブーストもあるので、キープしたくなる理由も理解できる。だが、はっきり言って、この初手は中途半端である。ビートダウン・ヴァラクート同系に対して弱い初手というのも頷けない。
これからのドローに強く依存しており、そしてヴァラクートはドローサポートを持っていない。運の要素が強く、必要とするカードも多い。初手だけではプランを立てられない手札だ。

1-2.攻めのマリガン

ヴァラクートはこの初手よりも、もっと良い周りを期待できるデッキだ。
今回のケースは土地が多い・少ないという事故回避の為のマリガンではなく、より良い回りを目指すためのマリガンと言える。
もう一度言おう。この初手は中途半端だ。中途半端な7枚キープは、初手6枚よりも悪いものになり得る。手札が多い程、勝利の期待値は高い。だが、手札に意味がなければその手札はもはや無いものと同じ。”手札が減る”という対価で得られる、新しい6枚の期待値を、冷静に判断してほしい。



Case2



2-1.Case2コメント欄での意見と正しいプレイ

キープ(4)
マリガン(27)

やはり「土地1枚はマリガン」という基礎があるからだろうか、この問題はマリガン派が大多数を占めた。

ビートダウンを使うとき、初手のキープで大事なのは「序盤からクロックを展開できる手札か」という点だ。マジックの基本として、「毎ターンマナを使い切る展開が強い」というものがあるが、ビートダウンはその典型だ。相手のライフを削るのに最適なのは1,2マナのクリーチャーであり、火力ばかりの初手よりもクリーチャー多めの初手の方がキープしやすく、ビートダウンの初手は除去よりも軽いクリーチャーの方が大事だ。1ターン目にプレイした《ゴブリンの先達》なら1マナ4点~6点の火力として考えることも出来るし、《板金鎧の土百足》は2マナで5点や10点にもなり得る。

今回のものはそのクロックがあり、火力ありの初手だ。しかし・・・土地が無い。
綺麗に回るためには、最初のドローで土地を引かなければいけない。こういった初手のときは、確率を考えてみよう。デッキの土地が24枚なので23/53・・・43%。引けない確率の方が高く、すぐに2枚目を引けたとしても《板金鎧の土百足》の打点を維持するには3枚目、4枚目の土地が必要になってくる。

マリガンかどうか考えるときは、その手札のうちどれが機能していて、どれが機能していないかを考えるべきだ。
この手札で言うなら確定で使えるのが《山》《ゴブリンの先達》《稲妻》、次点で《板金鎧の土百足》であり、2枚の《よろめきショック》《槌のコス》は手札として機能していない状態だ。そして土地が引けなかったなら、多くの無駄カードを抱えたままゲームに負けることになるだろう。

既にお気づきだろうが、この手札は、マリガンだ。
マリガンを恐れてはいけない。いくら手札の枚数があっても、ゲーム終了までにきちんと使い切ることが出来なければ、それは手札にないものと同じだからだ。ライブラリーのトップは、都合の悪いものであることのほうが多い。

余談だが、自分もGP神戸で似たような初手(対戦相手のデッキは不明。先手で《思考囲い》《苦花》含む、土地が《闇滑りの岸》のみ)が来て、考えた上でマリガンした。引けたらブン回りだが、引けなければ何も出来ず負けに近づく。そんな7枚の初手にかけるよりは、6枚でも土地のある、きちんと手札を使いきれる初手をキープしたい。

過去に、日本選手権という大舞台で、夢を追い求めてキープを宣言した痴れ者がいた。諸兄らも、このような無様な姿を晒さないよう、都合のいいドローにすがる等と言う愚行に及ばないよう気をつけて欲しい。

2-2.マリガンしにくいデッキ、マリガンできるデッキ

しかし、ビートダウンは土地1枚でもキープする場合がある。

《山》
《ゴブリンの先達》
《ゴブリンの先達》
《板金鎧の土百足》
《稲妻》
《稲妻》
《よろめきショック》

1マナが多く、ダメージ効率の良い手札。これはキープするべきだろう。

トーナメントマジックにおいて1~2マナのカードの使用頻度が高いのは、それらが初手にあったときキープしやすいというのも理由に含まれるだろう。
低コストのカードが多い構築は、マリガンに強くなるメリットもある。マナコストが低く寄ったデッキほど、マリガンに耐性がつきやすい。枚数こそ少なくても、より良い初手を想定しやすいからだ。
自分もダブルマリガンして《祖先の幻視》《苦花》で勝ったゲームは幾度もある。

初手をキープしやすくするためにも、デッキを構築する際は1、2マナに気をつけて組むと良いだろう。

そして初手のキープの話として、マリガンの回数によって変わるというものがある。
今回のケースで、もしマリガン後に以下の初手が来たらどうするだろうか。

《山》
《ゴブリンの先達》
《板金鎧の土百足》
《稲妻》
《よろめきショック》
《槌のコス》

自分はキープする。
マジックにおいて、ダブルマリガンはかなりのハンデを背負うことになる。マリガン後は、7枚のときよりも少し緩くキープ基準を設けるべきだろう。



Case3



3-1.Case3コメント欄での意見と正しいプレイ

キープ(23)
マリガン(8)


解説が長くなるので、先に結論を言おう。コメント欄ではキープ派が多数を占めていたが、私が考える正解は、「マリガン」だ。

Caw-Blade同系対決での大きな分岐点は2つだ。
《石鍛冶の神秘家》+装備品をめぐる攻防
《精神を刻む者、ジェイス》をめぐる攻防

この2つを巡る攻防でゲームは進み、均衡がとれた状態でお互いが消耗しあったあとに初めて、《ギデオン・ジュラ》《太陽のタイタン》《決断の手綱》などのパワーカードゲームになる。

初手にカウンター呪文は無い。
しかし、相手の視点からすると4ターン目フルタップで《精神を刻む者、ジェイス》というのは仕掛けにくい。これはコメント欄で言及している者もいた。《呪文貫き》されて、返しで《精神を刻む者、ジェイス》を出されてしまうのは愚の骨頂。4ターン目に仕掛けてくるようなことはしないだろう。同じ理由から、こちらが《ギデオン・ジュラ》を能動的にプレイすることには、大きなリスクが伴う。つまり、現段階では実質《戦隊の鷹》と土地5に近いものがある。

青対決において土地は重要だ。このマッチは《マナ漏出》《呪文貫き》のような「マナ払え」系カウンターが多いので、それを効きにくくするためにも毎ターンセットランドしたい。そう考えると、土地の多いこの手札は良いように見える。

だが、まずは①をクリアできないことには、ゲームが②の段階に行く前に不利になってしまう。この初手では、2ターン目に《石鍛冶の神秘家》を出されたらそのままゲームの主導権を握られてしまうだろう。
《戦隊の鷹》でチャンプブロックできるから大丈夫、というコメントもあったが、私はこの考えには反対だ。
こちらは毎ターン2マナ払った上でチャンプブロックし、そして相手は何のリソースも失っていない。
もっと長い目でゲームを見ると、相手のライブラリーには4枚の《戦隊の鷹》が残りつつ、自分はチャンプブロックで2~3体の鷹を失う。消耗戦になったときに装備品の価値が高いのは、無論鷹が多い方である事は言うまでも無い。

3-2.精度の高いゲームプランと、それに伴った積極的なマリガン

エクステンデッドのフェアリー同系対決でお互いが《思考囲い》《苦花》を求めてマリガンしたように、Caw-Go同系もまた、序盤の相手への干渉手段が必要だ。自分も《石鍛冶の神秘家》を持っている、もしくはサイドインした《神への捧げ物》や相手の装備アタックをかわせる《糾弾》などが、初手のキープ基準となる。そう考えるからこそ、自分は最低3枚の《神への捧げ物》をサイドに取るべきだと考えているし、今回のリストもそうした。

同系の後手は、《石鍛冶の神秘家》《神への捧げ物》《糾弾》の3種のうち、どれかのある初手をキープしたい。もしくは選択肢になる《定業》でも良い。キープ基準に足るカードがこれだけあるのであれば、マリガンしても、これより強い初手は来やすい、との判断だ。長いゲームになる事が予想される事、後手である事を考えると、マリガンによる1枚のマイナス値も、相対的に小さくなる公算が大きい。

マジックには様々なデッキタイプが存在し、自分のデッキ、相手のデッキによって、初手キープの基準も大きく異なる。ビートダウン相手には除去の多い手札をキープしたいが、コントロール相手にはカウンターが多い初手をキープしたい。Caw-Goは特にそれが出やすいデッキだ。余談ではあるが、相手によって取捨選択が出来る《定業》は4枚必須のカードだろう。


今回は、ゲームの趨勢を決める「マリガン」について、自論を拝読いただいた。第1回、第2回で展開したようなプレイングは、検討がしやすい。理由は至極簡単で、記憶に残りやすいからだ。初手は、ゲームに対する影響度にも関わらず、そのあとの分岐が多い為、勝敗との因果関係がわかりづらい。それはわかる。だが、「土地引かず負け。」や「決まり手はマナフラッド」等と、求極者とは思えない、稚拙極まりない思考放棄をしている輩も散見される。そんな事では極には辿りつけない。自分の悲運を嘆くのでは無く、悲運の中でも勝利を見出せるよう自己を研鑽して欲しい。


それでは、また。