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マジックは、本コラムでのテーマである”プレイング”によって勝利を掴み取る事が出来るという側面と、そういった全てを超越した運の要素も、また重要であるという側面を併せ持っている。
どうしようもない土地事故でまけたり、ダブルマリガン・トリプルマリガンで負けたという経験は、誰しもがしていると思う。
だがしかし、その敗北を”運が無かった”、”事故った”と言っていては進歩は無い。ランダム性があるゲームなのだから、そんなことは当然である。その上で勝利を目指すためにはどうしたら良いか。
一見良さそうに見える「罠ハンド」をキープしてしまったり、逆に厳しくマリガンしすぎて手札が減って負けるといった事態もある。それらは全て、因果応報なのである。勝負事に「たら・れば」は無いとはよく言うが、「あの時こうしていたら」どうなったか?を考えなければ、経験を糧に成長することは出来ない。
実際のところ、初手の7枚というのはゲーム全体で消費するリソースの多くを占める事が非常に多いし、「キープ」と宣言をしないと、ゲームは始まらない。今回は、「マリガンをする/しない」という選択肢をどうやって検討していくかについて、焦点を当てていきたいと思う。
Case1.RGValakut
11《山》 5《森》 4《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 1《怒り狂う山峡》 2《霧深い雨林》 3《広漠なる変幻地》 2《進化する未開地》 -土地(28)- 4《原始のタイタン》 4《業火のタイタン》 2《ゼンディカーの報復者》 -クリーチャー(10)- |
4《稲妻》 4《カルニの心臓の探検》 4《探検》 4《耕作》 4《砕土》 2《召喚の罠》 -呪文(22)- | -サイドボード()- |
あなたのデッキ:UGValakut
1本目/先手/相手のデッキは不明
手札:《山》3枚、《広漠なる変幻地》、《耕作》2枚、《砕土》
あなたの手札は、わかりやすく”マナ”と”マナブースト”しか無い。リストを見るまでも無くご存じの方が多いと思うが、大半が土地とマナブーストなのだから、こういった初手が来るのも織り込み済みである。土地アリ、マナブーストアリ、フィニッシャーアリという手札が理想なのは間違い無いが、毎回そういった初手を手に入れられるわけでは無い。自分が思い描いた最善手からどの程度乖離があるのか、またそれは許容が出来る範囲なのか。マナ加速を約束されたハンドと、マリガンして手札が1枚減った上で手に入れるハンドのどちらが勝率が高いだろうか?
ヴァラクートをプレイした事が無いプレイヤーは、PWCC2011で優勝した斉田氏がヴァラクートに関する詳細な記事を執筆しているので、参照した上で考察してみると良いだろう。
自分がヴァラクートをプレイいないからといって、思考を放棄してはいけない。第2回の記事でも触れたように、相手の手札を予測することでプレイングは「極」に近づくのだから。
Case2.Monored
12《山》 4《沸騰する小湖》 4《乾燥台地》 4《ぐらつく峰》 -土地(24)- 4《ゴブリンの先達》 4《トゲ撃ちの古老》 4《燃えさし運び》 4《板金鎧の土百足》 -クリーチャー(16)- |
4《稲妻》 4《噴出の稲妻》 4《焼尽の猛火》 4《よろめきショック》 4《槌のコス》 -呪文(22)- | -サイドボード()- |
あなたのデッキ:赤単
1本目/先手/相手のデッキは不明
手札:《山》、《ゴブリンの先達》、《板金鎧の土百足》、《稲妻》、《よろめきショック》2枚、《槌のコス》
この手札が発している情報は非常に沢山あるが、一つだけ確かな事がある。土地が足りないのだ。だが、よくよくスペルを見て欲しい。火力にクリーチャー、フィニッシャー。全てが揃っている。土地があれば、勝ちは約束されたようなものだ。
“土地だけが無い”と見るか”土地以外はすべてある”と見るか。どちらの解釈も成立し得るだろう。赤単というデッキが、効率よく相手のライフを削り切るためにはどのような動きをするのが一番強いのかを想像して欲しい。Case1でも述べたように、最善手との違いはどこか?この手札から描けるゲームプランはどのようなプランなのか?勝利への道は、自分の技術と、経験と、判断によって細くも、太くもなる。赤単に代表される、早いターンで相手のライフを削り切るデッキタイプの場合、初手への依存度がコントロールデッキに比べて高い場合が多い。
“ここで土地引き込めないようじゃ勝てない”とか、”これは土地が山の上にあるパターン。”等というオカルトじみた考え方は望んでいない。「極」を目指すものとして、考えの根拠をしっかりと持ち、自説を書きこんで欲しい。
Case3.Caw-Blade(Game2)
4《金属海の沿岸》 4《天界の列柱》 4《氷河の城砦》 4《島》 4《平地》 4《地盤の際》 1《沸騰する小湖》 1《墨蛾の生息地》 -土地(26)- 4《戦隊の鷹》 4《石鍛冶の神秘家》 -クリーチャー(8)- |
4《定業》 2《呪文貫き》 4《マナ漏出》 3《糾弾》 2《失脚》 2《転倒の磁石》 4《精神を刻む者、ジェイス》 3《ギデオン・ジュラ》 1《饗宴と飢餓の剣》 1《迫撃鞘》 -呪文(26)- |
3《神への捧げ物》 4《瞬間凍結》 3《審判の日》 3《コーの火歩き》 1《肉体と精神の剣》 1《決断の手綱》 -サイドボード(15)- |
Caw-Go同系で、後手のときの《転倒の磁石》は返しの《精神を刻む者、ジェイス》に対して無防備になってしまうので、軽さ重視の選択をしている。
あなたのデッキ:Caw-Blade
2本目/後手/相手のデッキはCaw-Blade
手札:《天界の列柱》、《金属海の沿岸》2枚、《島》、《地盤の際》、《戦隊の鷹》、《ギデオン・ジュラ》
《戦隊の鷹》はあるものの、肝心の《饗宴と飢餓の剣》をはじめとする剣にアクセスする手段が無い。《ギデオン・ジュラ》はあるが、そこに至るまでの道がハンドからは読み取れない。相手への干渉手段が無いのも不安要素の一つだ。だが、同系対決で非常に重要な要素である、”土地を伸ばす”という点に関してはほぼ不安が無い。デッキのほぼすべてのカードをプレイ出来るランドに恵まれている。
Case3のみ、”同系対決”、”サイドボード後”、”後手”というように状況をより具体的にした。メインボードでは、自分の最善手とはどのような動きなのか?というゲームプランの立案の仕方が大切になるが、サイドボード後では様相が異なる。相手のデッキリストは大部分を把握しているし、サイドボードにも私なりに意味を込めた。つまり、より具体的にゲームプランを練る必要があるのだ。
長い戦いになるであろう同系対決で、安定したマナ供給の約束を取るか、手札が1枚減るというデメリットを受け入れて、もっと強いカードを求めてマリガンをするか。
同系対決という、一番精度の高いゲームプラン立案が出来るこのゲーム。出来るだけ詳細に考えてみて貰いたい。
ジェイスのブラフ
前回の記事の最後に書いたジェイスの+2能力でのブラフについて、また議論が盛り上がっていたので、少しコメントを残して置こうと思う。
既にコメント欄に書かれているが、少し状況を整理しよう。
■記事で例を出した、相手が赤緑ヴァラクート相手の時にはフェッチを使わせる事に以下のようにメリットがある。
・《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》の山枚数達成時に、火力を擬似的に”置いておく”事が出来る。
・《ゼンディカーの報復者》を引かれた時の脅威を減らす事が出来る。
・フェッチランドを消費させる事で、次以降の《精神を刻む者、ジェイス》の+2能力がより確実になる。
■デメリットは以下のように簡単だ。
・相手がシャッフルしなかった場合、そのまま強いカードを引かれてしまう。
これらを確率論的に、期待値で比較すれば、ボトムに置いた方が良いに決まっているのだ。だが、それは《精神を刻む者、ジェイス》をコントロールしている側の期待値でしか無い。
対戦相手からしてみれば、期待値で見ればシャッフル以外の選択肢が無い。対戦相手が期待値に基づいて動いていれば、ボトムにカードを送り続ける限り、フェッチランドは起動されず、先述したような相手側のメリットが場に残る事になる。そして、トップに置けば対戦相手は必ずシャッフルするはずなのだから、相手視点で考えれば、トップに置けば必ずフェッチランドを起動すると言う事になる。
この様に、期待値や正着手がどうかという視点のみで議論をすると”鶏が先か卵が先か”と同じように、永遠に結論が出なくなってしまう。
重要なのはそこではなく、”あえて”や”逆手にとって”というプレイの選択肢を常に持って置く事、ひいては対戦相手に”こいつは虚実を織り交ぜたプレイをしてくる。”と思わせる事が大事だ。
ブラフをするかどうかというのは、確率ではなく各々の経験則によるものが大きいものだと自分は考える。相手の思考を計算に入れるのが「ブラフ」なので、相手の行動次第では当然ブレも生じる。
この盤面でも、相手がシャッフルを選択しないこともあるだろう。
ジェイスで強いカードをトップに乗せて、シャッフル手段を使わせる。選択肢の一つとして、頭の片隅にでも置いておくと良いだろう。
そうそう、先日開催された第1回HareruyaOpenTournamentでは、プレイングの極まで至る事は叶わなかったが、優勝という結果を残させて頂いた。だが、一つの大会に勝ったからと言って、そこが終着点では無い。あくまで目指すはプレイングの極。勝って兜の緒を締めよ、とはよく言ったものである。日々精進あるのみ。
観戦記事を見て見識を深める事を、求道の一助として欲しい。
また、どうやら諸兄の参加レポートを投稿することもできるようである。活発な議論の一歩目は、意見を出すところから。特に参加した塾生達は、怖じけることなく、自身のデッキやプレイについてのレポートを投稿してみてほしい。それもまた、「極」に至る道程なのである。