what we need -相対化と場合分けによる環境定義-

金 民守


PTQプレイヤーたちが次のレベルに進むための助けになるような実用度の高いリミテッドの戦略記事が欲しい」

今回寄稿するに当たっての編集からの要望はそのようなものだった。なかなかに難しく、それだけに取り組む価値のあるテーマだ。

PTQで勝ちあがるレベルの実力をつけるためにはどのようなドラフトスキルが必要か。
MTGにまつわる多くの戦術論と同じく、それは具体的な戦術レベルではとても流動性の高いものになる。初心者が中級者を目指すのならばそのような具体性の高い個々の戦術を身につけることはとても重要だろう。

しかし中級者がさらに一歩上の段階を目指すのなら、戦術だけでなく、その背景を理解し、複数の戦術をフレキシブルに取捨選択できるようになる必要がある。個々の戦術はいわばピラミッドの頂上であり、土台から理論を積み上げる行為こそが真に重要になってくるのだ。

そのような観点から、この記事では典型的なリミテッドの記事であるいわゆる「点数表」を載せるのではなく、その一歩手前、環境理解に関する考察から始めたいと思う。その上で相対的な優先度という形でのカード評価を行なうことで環境を定義づけたい

前置きはこれくらいにして本題に入ろう。あらゆる問題解決の最初のステップであり最重要事項は前提条件の把握だ。まずは環境把握から始める。さて、この「ラヴニカへの回帰(RTR)」ドラフトはどのような環境か? この環境の特徴は以下のような点があげられる。

・パワー3は止まる
・除去が重い
・ゲームの優劣が見え始めるのは3ターン目から
・全体的にカードパワーが低い

上記の情報を総合すると、RTR環境は生物のタフネスがやたらと高く設定されているので、漫然と生物を並べるだけではゲームが進展も消耗もせずただ際限なく戦線が延びてしまうことになる。なので明確な勝ちパターンを持つことがいつもよりも重要になってくる。

漠然とした「勝てるデッキを組む」というところから一歩踏み込んで「タフネス4を恒久的に突破できるようにする」などクリアすべき具体的なライン設定があり、それをクリアすることを軸にドラフトをすることが求められる。つまり汎用性の高いカードで臨機応変に攻めるよりも、特定カードの組み合わせによる勝ちパターンを複数デッキに仕込んでそれを決めることに重きを置く戦略が奨励されるということが言える。

また、カードパワーの低さが多色化のメリットを薄めると同時に、やはり膠着しやすさを助長することにもなっている。基本的にこの記事では、RTRドラフトのデッキの完成形はギルドを構成する2色の組み合わせ(及びタッチ1色)として話を進めていきたい。

上記を踏まえて次は各ギルドの主な解説を。



アゾリウス

塔のドレイク臣下の魂武器庫の護衛天上の鎧


アゾリウスの勝ちパターンは主に以下の2つのいずれか、及びそのハイブリッドである。

(1)下(地上)を止めて上(飛行)で勝つ
(2)オーラによるクリーチャー強化ビート

アゾリウスが擁するコモンのフライヤーは全8種。特に3種のパワー2のフライヤーが揃った3マナ域はその布陣を確認するだけで(1)の戦略が成立することを示唆してくれる。
「イニストラード」にも3マナパワー2のフライヤーが複数いたが、それだけでは青白は魅力的な選択ではなかった。あくまであの頃の青白の強さは《戦慄の感覚》によるところが大きかった。
だが、RTR環境は2マナ以下の強力なアタッカーが少ないこと、同時に全般的にパワーが低めのサイズ設定であることから、先行されることも後から巻き返されることも展開的に少なくなったため、3マナパワー2のフライヤーが相対的に強力になっているのだ。
十分な数のフライヤーの供給と、0/4《門衛》や2/5《武器庫の護衛》など地上を止める要員が簡単に手に入ること、緑のマナブーストが3マナの《斧折りの守護者》からであることなどが相まって、久しくなりを潜めていたオーソドックスなスタイルの青白戦略が現環境では肯定されているということになる。

(2)についてはとにもかくにも《天上の鎧》の存在に頼ることになる。
何かの記事で「相手よりも半歩遅いデッキが勝つ」という内容の発言を高橋純也君がしていたことをおぼろげに記憶しているが、これはリミテッドのゲームスピードをとても的確に表している。そしてその逆側の真理として「相手よりも一歩半早いデッキが勝つ」ということが言えるのだが、(2)のアーキタイプはこの「一歩半先」を目指すことになる。
特化するほど引きムラが生じやすくなる不安定さと特定カード依存型の戦略だという点で本質的な危うさはあるが、除去のエンチャント《拘引》などが取れているときのオプションとして採用する分には問題ないだろう。



イゼット

凍結燃焼の奇魔秘密を盗む者飛行術の探求高射砲手


堂々たる環境最強色であるイゼットの勝ちパターンは主に以下のいずれか、及びそのハイブリッド。

(1)オーラビート
(2)強力な2マナクリーチャーと飛行によるビート
(3)<高射砲手>や火力による本体ダメージのサポート

アゾリウスと同じくオーラ戦略が有効になるがイゼットの《飛行術の探求》はより凶悪だ。

加えて生物の内容も《太陽塔のグリフィン》こそ失ったものの主要なフライヤーはアゾリウスと遜色ないレベルで揃っており、その上で2マナの生物のクオリティは格段にアップしている。特に環境最強の2マナ生物である《凍結燃焼の奇魔》の能力を最大限に活かせる点は重要。

オプショナルなプランとして《本質の反発》《高射砲手》などで場が膠着した状態から詰めに行ける点も無視できない。言わずもがなだが、このように前のめりな構成が望める上で除去として本体にも飛ぶ3点火力《滅殺の火》と5点火力《爆発の衝撃》が揃っているのは頼もしい。



ラクドス

跳ね散らす凶漢リックス・マーディの落とし子滅殺の火穴開け三昧


イゼットの対抗馬と目されるラクドスの勝ちパターンには以下のような特徴がある。

(1)解鎖クリーチャーのサイズによる先手の利を最大限に活かしたビート
(2)豊富な除去によるサポート

マナカーブを前に詰められるので土地16で運用することもできる上に、他のアーキタイプと比べて解鎖生物のサイズが一回り大きいので息切れがしにくい。遅めに回収できることも珍しくない《リックス・マーディの落とし子》はなんのフォローもなしに《武器庫の護衛》を突破できる点が大きく評価できる。

環境最弱であるゴルガリの影響で黒が不人気なことから、強さの割に狙い目になりやすいアーキタイプである点も無視できない。



ゴルガリ

下水のシャンブラー斧折りの守護者構脚のトロール刺し傷


前述したように最弱ギルドのゴルガリは、地上を固める能力はあるものの、コモンに攻めきる力が不足している。「活用」というシステムが攻めきるまでに時間がかかる上に奇襲性がないものなので、相手にすると対応しやすいのが一番の弱点。環境にある黒・コモン・インスタントの確定除去が《打ち上げ》である影響も大きく、このカードが攻めよりも捌きに向いているので出遅れた相手にも結局がっぷり四つの消耗戦を挑む展開になりがちだ。

不人気ゆえのパーツの安さは確かな魅力なので、勝ちパターンを示すとすれば以下のようになる。

・突破力のあるアンコモン、レアのピックから入って多色化に活路を見出す



セレズニア

太陽塔のグリフィンそびえ立つインドリクケンタウルスの癒し手共有の絆


セレズニアの勝ちパターンは主に以下の2つに大別される。残念ながらキーワード能力である「居住」は、元になるトークンクリーチャーの供給が安定しないので基本的に気にしなくていいだろう。

(1)オーラビート
(2)ジャイグロビート

緑でありながらもやはり素のサイズではタフネス4が突破できないためアゾリウスと同様にオーラビート戦略が有効になる。アゾリウスと比べてフライヤーの質が落ちる反面、標準的な生物のパワーが2から3に上がっているので《天上の鎧》が単体でタフネス4を乗り越えられるのは無視できない。

セレズニアならではの戦略としては《共有の絆》を中心としたジャイグロビートがあげられる(ジャイグロは《巨大化》に代表される強化インスタントの総称)。《共有の絆》は、「イニストラード」でよく使われた《旅の準備》と違い、+1/+1カウンターを1箇所に集中することができるので《武器庫の護衛》も突破できる点が大きい。

弱点としては、ジャイグロなどの生物依存スペルをたくさん搭載するため引きムラが多く、コンバットトリックを抱え込んだまま負ける可能性のある点があげられる。ピック中、コンバットトリックは無理せずとも回ってくるため、軸になるレアと脇を固める《太陽塔のグリフィン》《ケンタウルスの癒し手》の確保が重要になってくる。


各ギルドの所感は以上である。
これを踏まえた上で色別のカード評価に移ろう。まず白→青→黒→赤→緑と単色のカードを評価し、次に白青→青赤→黒赤→黒緑→緑白と多色のカードを見ていく。《臣下の魂》など混成マナのカードは便宜上、片方の色の単色カードとして扱った。

※色別カード評価の見方※
RTR環境の単色カードを評価する場合、同じカードであっても自分がどのギルドをやっているかによって、ピックの優先度とデッキに入れたときの相対的な強さが変わることに留意してほしい。例えば白はアゾリウスとセレズニアに分かれる。各ギルドの上述した勝ちパターンの違いとそれによる必要パーツの違い、ギルド毎のマナカーブの埋めやすさ(あるマナ域のカードの選択肢が多いなら優先度は下がるし逆に少ないなら優先される)、ギルドのもう1色に代替できるカードがあるかなどによって、カードの評価は変わってくる。
多色カードは1ギルドと対応しているので単色カードのような問題はないが、1色合っている他のギルドにタッチして使う場合については特筆することもある。また例えば、白青の多色のコモンについては、白単色のコモン、青単色のコモンと比較してギルド内での優先度が分かるようにした。



●白

▲コモンランキング

トロスターニの裁き

同率1位 《太陽塔のグリフィン》《トロスターニの裁き》
どちらを優先するかはギルドごとに評価の分かれるところ。
アゾリウスの場合はフライヤーのクオリティを少し下げて青のパーツで補完できるので除去である《トロスターニの裁き》を優先する。
セレズニアの場合、1パック目は《太陽塔のグリフィン》からピックして2パック目以降は1枚目の《トロスターニの裁き》を優先する。
環境が遅いとはいえ6マナというコストがどうしてもネックになるので、2枚目の《トロスターニの裁き》はきれいなマナカーブをかけるめどが立ってから確保するようにしていいだろう。
1-1(ピックの初手)などギルドが定まらない状態で二択を迫られた場合はギルドの力関係から《トロスターニの裁き》から取るのが無難だが、何か狙いがあって目指したいギルドがセレズニアな場合は《太陽塔のグリフィン》から取ってもいい。

3位 《報復の矢》
他の環境なら二流の性能だがこの環境では十分に機能する。おそらく「留置」という能力を意識したのか生物のパワーがいつもよりも低く設定されているため、本体にワンパン受けるデメリットがいつもよりも軽減しているのだ。また、オーラビート戦略が有効な環境なのでサイズによらず除去できる点も重要になってくる。
2パック目以降で除去が確保できていないなら《太陽塔のグリフィン》より優先していい。除去同士の比較だと《トロスターニの裁き》の2枚目より優先度を高めて取る。

4位 《臣下の魂》
セレズニアの場合はマナ拘束が厳しいので若干評価が下げたいところだが、それでもフライヤーの供給が制限される分の上方修正と相殺されて結局この位置に収まる。
マナカーブの調整で《アゾリウスの拘引者》を優先するシチュエーションは考えられるがレアケースだろう。
《護民官のサーベル》がある場合は意識して確保しよう。

同率5位 《天上の鎧》《アゾリウスの拘引者》
《天上の鎧》は評価の難しいカードだ。環境初期の段階では極端に回ってくるので優先度は限りなく低いが、オーラビートに対する耐性が低いデッキには有無を言わさず勝てる早さがあり、過小評価するのは危険なので注意を喚起する意味も込めてこの位置にランクインしてみた。
確定除去が軒並み6マナな環境なので《天上の鎧》はテキストを読んで受ける印象よりもずっと強い。先制攻撃が付くスペルには珍しくタフネスが上がる点も重要だ。可能ならばタフネス4以上になるようにプレイしよう。
複数枚の《天上の鎧》によるビートはセレズニアよりもアゾリウスで活きる。そもそもセレズニアは《天上の鎧》よりも優先して《共有の絆》を採用するべきで、重ねて強さが増す《天上の鎧》にスロットをまとめて割くのは得策ではない。《秘密を盗む者》を通すためのパーツとしてアゾリウスで重宝するのは言わずもがな。

同率の《アゾリウスの拘引者》は、アゾリウスでは中盤以降も腐らない2マナ域として安定した働きを見せる。セレズニアだと殴り合っている場合はいいのだが、場が膠着すると1体留置しても意味がないことが多いので少し評価を下げていい。

7位 《叫び回る亡霊》
セレズニアなら5位と優先度が逆転する。
標準的2マナ域で能力もあまり腐らないが、この環境の白の2マナ域は従来よりも優先度は低い。低マナ域を厚く取ってスペルでバックアップしながら殴りきる戦略が有効ではないのだ。地上の2/2に+1/+1カウンターを2個乗せても2/5《武器庫の護衛》は乗り越えられない。それならテンポを少し緩めて3/3の登場を待つか飛行の2/2に乗せて2/4到達《そびえ立つインドリク》を乗り越えるようにするべきで、要は白の2マナ域は攻めるためよりも攻められないための役割を担っていると考えていい。

天空の目

8位 《天空の目》
当然ながらアゾリウスよりもセレズニアで活躍する。しかしその要因は居住よりもマナ域の問題によるところが大きい。
居住に注目して考えてみると4ターン目に3/3が1体と1/1飛行が1体出るならなかなか強いが、そういう展開にはなりにくく、活躍のブレの幅が大きい割に上にはブレにくいカードという印象だ。そもそも居住は手間の割にリターンが少ないシステムだ。《議事会の招集》が複数枚取れていれば標準以上の働きはするが、それでもこの環境はパワー3がそのままだとすぐ止まるので何がしかのバックアップが必要。パワー3のカードをコピーするカードよりもパワー3のカードを+1/+1するカードのほうが重要なのだ。手間をかけて産んだトークンが活躍するのにさらにもうひと手間かかるのはどうかと思う。
十分に大きなサイズのトークンが用意できるか《集団的祝福》など横に広げるメリットがある場合は上方修正していい。

9位 《武器庫の護衛》
アゾリウスの地上を止めて飛行で殴る戦略にはよく噛み合うので《天空の目》より優先していい。
重要度の割に優先度が低いのは、セレズニアではこの枠に《そびえ立つインドリク》を採用したいために競合相手が少なく、結果としてぐるぐる回るからだ。

騎士の勇気

同率10位 《騎士の勇気》《協約のペガサス》
《騎士の勇気》は5マナという重さはとても気になるがアドバンテージ面では及第点だ。決して強くはないが、この環境は不器用なやり方でも戦線をこじあけるカードは存在価値があるし、他にオーラを増やすメリットがあるなら十分に採用の価値がある。

《協約のペガサス》は2マナ生物としてマナカーブを埋める要員としての採用になる。明確にカードとして存在意義を発揮するのは対アゾリウス戦で、パワー3のフライヤーは6マナまで待つ必要があるので、飛行をキャッチする分には仕事をする。


▲<太陽塔のグリフィン><トロスターニの裁き>よりも優先するアンコモン

1位 《拘引》
繰り返しになるがコモンに《平和な心》系がないことで、この環境はオーラビート戦略が肯定されている。逆説的に言うと《拘引》されないことを前提にドラフトが進んでいるのでプレイしたときの効果はいつもよりも大きいだろう。
自分の《天上の鎧》とも噛み合うのは素晴らしい。

2位 《アゾリウスの大司法官》
本質的に《アゾリウスの拘引者》と同じだが能力とマナ域が噛み合っているのは大きな利点だ。環境が早ければ《拘引》よりも優先されただろうが、現環境ではそうではないだろう。
基本的に《太陽塔のグリフィン》《トロスターニの裁き》よりも優先していいが3パック目では最低限の除去の確保とマナカーブのデザインを優先しよう。


▲<拘引>よりも優先するレア

1位 《静穏の天使》
分かりやすくボム。この環境は7マナが十分に間に合う環境だし、もしそうじゃなかったとしてもこの性能は使われてしかるべきものだ。見たら取ろう。それだけだ。

2位 《戒厳令》
見たとおりの優秀な除去だ。即効性に欠ける部分はあるがメリットはそれを補うだけのものを持っている。



●青

▲コモンランキング

1位 《凍結燃焼の奇魔》
青に限らず全コモン中でも出色の強さ。1-1では微差で《滅殺の火》に軍配が上がるが、ドラフト中盤でマナカーブを調整するためにこちらを優先することは珍しくない。
オーラがついたこのカードに対して回答を用意できるかどうかというのがこの環境でのデッキの強さを計る指針になる。
色が確定する前にピックした場合は、相性のいいオーラの関係でアゾリウス(《天上の鎧》)より若干イゼット(《飛行術の探求》)の優先度を上げてドラフトしていい。

虚無使い

2位 《虚無使い》
オーラ戦略に対する回答でありセレズニアのトークンやゴルガリの活用など幅広いアンチカードとして機能する。素のサイズも優秀で守備面では文句なし。青はフライヤーの補充が容易なのでアタッカーよりもまずはこちらを優先していい。
アゾリウスの場合、早い段階では《太陽塔のグリフィン》から確保することになるが、2パック目中盤以降でまだ《虚無使い》が確保できていないならこちらを優先することになる。
2色土地さえ取れていれば、オーラ《飛行術の探求》の起動マナと合わせてラクドスにタッチすることも視野に入れていい。

3位 《ルーン翼》
この環境は3マナに比べて4マナの競合が少ないのでこの順位。何の変哲もなく見たままの性能でデッキのベースになる。

4位 《塔のドレイク》
《臣下の魂》とほぼ同評価。
スローゲームなら《塔のドレイク》のタフネスを上げる効果も場の抑止になるが、それよりも素のサイズと《護民官のサーベル》の受け入れの分でわずかに《臣下の魂》の優先度が高いか。

霊感

同率5位 《秘密を盗む者》《霊感》
どちらも《臣下の魂》の次点。
アゾリウスの場合《霊感》を優先していい。
イゼットならオーラがついた時の破壊力を評価して《霊感》よりも《秘密を盗む者》を優先することが多い。イゼットでも決定打になるようなボムがある場合は安定した働きの《霊感》を優先していいだろう。

7位 《イスペリアの空見張り》
環境の遅さから6マナ生物を採用することに対する閾は確実に下がっている。特にアゾリウスは5マナにアタッカーがいないことからこのカードの採用が肯定されるドラフトは少なくない。

同率8位 《取り消し》《麻痺の掌握》《都市内の急使》
その時々で足りないパーツを埋めよう。繰り返しになるが環境の遅さから《取り消し》はいつもの環境よりも採用を前向きに検討していい。


▲<虚無使い>よりも優先するアンコモン

1位 《魂誓いの霊》
アゾリウスで2マナがある程度優秀なカードで埋まっているなら《凍結燃焼の奇魔》よりも優先することもあるだろう。

2位 《摩天楼の捕食者》
《虚無使い》と同等かやや下。3点火力で落ちないのは重要だ。


▲<凍結燃焼の奇魔>よりも優先するレア

1位 《サイクロンの裂け目》
強すぎてあまり言うことがない。あらゆるアンコモンに優先する。3色目タッチも全然アリ。

2位 《思考を築く者、ジェイス》
あらゆるアンコモンに優先するがダブルシンボルである分タッチでは採用できない。

3位 《鐘楽のスフィンクス》
青の中ではあらゆるアンコモンに優先する。1-1で暫定最強アンコモンの《リックス・マーディのギルド魔道士》と一緒に出た場合は、《鐘楽のスフィンクス》のコストの重さから《ギルド魔道士》を取るだろう。

4位 《アゾールの雄弁家》
見た目よりもずっと強くサイズも能力もバカにならない。本当に待っているだけで勝てるのは偉大だ。能力が極端なので、イゼットで解鎖が多い構成か、アゾリウスでタフネスの高い生物がそろうかで、評価は大きく変わる。
《凍結燃焼の奇魔》と強さは拮抗しているがピックに迷うことはあまり無いだろう。すでに《凍結燃焼の奇魔》が強さを十二分に発揮する構成になっているなら素直に《凍結燃焼の奇魔》でいいし、そうでないならこちらだ。
1-1なら5マナ圏の競合の少なさが《アゾールの雄弁家》を優先する要素になるが微差なので好みの問題。



●黒

▲コモンランキング

1位 《刺し傷》
汎用性の高い除去。クロックとして機能させることにあまりこだわり過ぎないほうがいい。
ゴルガリの場合全てのコモンに優先する。ラクドスの場合も《滅殺の火》に次ぐ優先度。

2位 《下水のシャンブラー》
3マナで活用できるのは偉い。特に消耗戦に強いデザインで序盤から終盤まで満遍なく活躍してくれる上に同系では沼渡りによるイージーウィンが期待できる優れもの。
ゴルガリの場合は緑の全てのコモンに優先し、ラクドスの場合は赤の《跳ね散らす凶漢》の次点として評価して、マナ域の混雑具合を見て適宜下方修正を行なう。

死の歓楽者

3位 《死の歓楽者》
解鎖なしでも及第点のサイズなので後手を踏んだときでも働いてくれるのはうれしい。全ての解鎖生物に言えることだが活用で強化された際にもブロックができなくなるので、ある程度のロングゲームに持ち込むことが前提のゴルガリよりもテンポで押すラクドスでその真価を発揮する。
この順位はラクドスのもので、ゴルガリの場合は緑の7位タイ(《斧折りの守護者》《石載りのクロコダイル》《野面背のサイ》)と同列で扱っていい。

4位 《オーガの脱獄者》
ナイスサイズ。門を確保してある程度アタッカーとしてカウントできるようにしたい。防衛を持っているので《斧折りの守護者》で活用などのマナを工面するのに役に立つ。
ゴルガリの場合は《死の歓楽者》よりも優先していいし、3枚以上の門を確保できる見込みがあるならラクドスでも同じく上方修正を行なっていい。

打ち上げ

5位 《打ち上げ》
確定除去ではあるがブロッカーを退かすのと同時にクロックも下がるので従来の黒のインスタント確定除去と大きく使用感が異なる。使いどころを厳選して相手のフィニッシャーを捌くためのカードとして認識した方がいい。
ラクドスの場合はスペル枠がすぐにいっぱいになるので1枚目から投入が怪しまれる。ドラフト序盤で除去が確保できていない場合は保険としてこの順位で評価するが、3枚以上除去がある場合は9位まで優先を下げていい。
ゴルガリではマナカーブがある程度下に寄せられているならという条件付きで2枚までの採用は現実的だ。受け入れ枚数が少ないことから1パック目では緑の5位(《ゴルガリの長脚》)と同列で評価。2パック目以降は1枚目なら緑の4位(《コロズダの監視者》)と同列で評価する。2枚目以降はピックしたとしてデッキに投入されるかどうかを判断して下方修正を。
また、確定除去でありながら比較的遅くに確保できるのでセレズニアが3色目にタッチするのにも向く。

6位 《不気味な人足》
2マナのカードはマナカーブのデザインの都合で優先度が乱高下する。2パック目中盤以降で2マナの生物が2枚以下のような場合は2位タイまで上方修正。

同率7位 《ラクドスの切り刻み教徒》《短剣広場のインプ》
《ラクドスの切り刻み教徒》はラクドスの先手でこそ良い動きをするがそれ以外の状況ではマナカーブを埋める以上のことを期待しないほうがいい。《短剣広場のインプ》は活用先として最適。
両者に共通して言えるのは真価を発揮するシチュエーションの受け入れの狭さだが、それでも2マナの生物というだけで存在価値が一定以上担保されている。

精神腐敗

同率9位 《精神腐敗》《危険な影》
全体的なカードのマナ域の重さから《精神腐敗》はいつもの環境よりも強いと判断する人もいるかもしれないが、むしろこのカードは弱体化している。
《精神腐敗》は打ち所を見計らう必要のあるスペルだ。そして打ち所を見計らうという行動はこちらが場の主導権を握っている状況でないとリスキーな行動になってくる。つまり自分が低マナ域に寄せた構成で序盤の盤面を支配した上で相手の5枚目の土地と5マナのカードなどを叩き落すというのが《精神腐敗》が最も活きる展開なのだが、環境的に極端に低マナに寄せた構成は強くないのだ。

次に《危険な影》だが、こちらはゴルガリの同系戦用のサイドカードとしてはある程度有効に機能する。それ以外でも膠着した状態になることが避けられないようなマッチアップなら同様の活躍が見込めるので、序盤に2点与えるかどうかの2マナ生物と入れ替えていいだろう。


▲<下水のシャンブラー>より優先するアンコモン

1位 《暗殺者の一撃》
確定除去ながら6マナという重さなので《刺し傷》には劣る。
ラクドスの場合《爆発の衝撃》とマナ域が被ることになるが、それでもこの環境ならデッキ次第で3枚までなら6マナ除去の投入が許容される。赤のカードと比較したときは《爆発の衝撃》の次点。

2位 《快楽殺人の暗殺者》
見た目よりもずっと強い。マナカーブ次第では《暗殺者の一撃》より優先していいが《刺し傷》より上に行くことはないだろう。


▲<刺し傷>より優先するレア

1位 《群れネズミ》
例え黒を触ってなくとも3色目タッチで使おう。
イゼットをやっている時の2-1(2パック目の初手)ならラクドスへの色換えも肯定される。
3-1(3パック目の初手)で既に3色が違う色の場合でも3色目を換えるだけの価値がある。

2位 《冒涜の悪魔》
全てのアンコモン以下のカードに優先する。タッチで使えないことから2-1でのこのカードから色換えするのはリスクが伴うが黒の流れが良いならアリ。

3位 《死滅都市の執政》
《リックス・マーディのギルド魔道士》との比較は微妙なラインだがおおむね《リックス・マーディのギルド魔道士》を優先していい。2パック目以降色が合ってない状況で出現した場合はシンボルのきつさもあり色換えまではしなくていい。



●赤

▲コモンランキング

1位 《滅殺の火》
現環境のトップコモン。

2位 《跳ね散らす凶漢》
ラクドスで黒のカードと比較すると《刺し傷》の次点。
イゼットで青との比較なら基本的に《虚無使い》よりも優先していいが、代役の補充しやすさからドラフト終盤で優先度が逆転することは珍しくない。

爆発の衝撃

3位 《爆発の衝撃》
この位置は2パック目以降で1枚目の場合の評価。本体にも飛ぶ5点火力は確かに強力ながらもマナ域の関係で早い段階なら下方修正して評価すべき。最終的に2枚までなら積極的に採用していい。デッキの構成次第だが3枚目もギリギリ許容だ。

4位 《飛行術の探求》
2枚までなら積極的に採用したい。環境が煮詰まれば評価の下がることが予想されるがまだまだイージーウィン可能だ。
《爆発の衝撃》との比較は難しく、《凍結燃焼の奇魔》《秘密を盗む者》など噛み合いが強いものが複数確保されているなら《飛行術の探求》の優先を上げてもいい。

5位 《流血の家の鎖歩き》
先手で3~6点削って相打ちが取れるなら、後手で2マナ2/1のバニラであっても十分に強いカードだと言えよう。
青なら各3マナフライヤーより優先度が一段下がるが、2マナ生物はマナカーブの都合でいくらでも優先度が上がるのは既に言及したとおり。
黒なら《オーガの脱獄者》と比較して門の数が2枚以上なら《オーガの脱獄者》を。

ヴィーアシーノのゆすり屋

6位 《ヴィーアシーノのゆすり屋》
6マナスペルが複数入っていたり3色目のスペルが3枚以上入っていたりと状況ごとに腐るカードが生じやすいデッキの潤滑剤として機能する。
青なら《霊感》の次点。
黒なら7位タイ(《ラクドスの切り刻み教徒》《短剣広場のインプ》)で評価。

7位 《電謀》
《電謀》は2ターン目の《群れネズミ》に対処できる点でドラフトよりもシールドで重用される存在だ。ドラフトでは弱くはないもののやはり若干ボーっとしたカードなのでピックした上で入らないことは珍しくない。

同率8位 《乱打角》《高射砲手》
《乱打角》は割る対象があるのならば5位タイまで優先度を上げていい。
ラクドスの場合は競合するマナ圏に《リックス・マーディの落とし子》《ゴルガリの長脚》がいるので特に意識してとる必要はないが、イゼットの場合は5マナのアタッカーが青に不在なためこの程度の優先度で確保してもいいだろう。

《高射砲手》はマルチカラーのカードが一定以上入ったデッキでは悪くない働きをする。しかしそれはあくまでオプショナルなものでダメージソースとして主役を張れるようなレベルではない。固め取って専用デッキを組もうなどとは考えない方がいい。

裏切りの本能

同率10位 《長屋壊し》《暴れ玉石》《裏切りの本能》
同率10位には尖ったカードが並んでいるがその中で《裏切りの本能》は今後上方修正が予想されるカードだ。赤の人気が高まって今ほど贅沢にスペルをより好めなくなった際には活躍するだろう。

《暴れ玉石》《飛行術の探求》の対象として爆発力があり《長屋壊し》は消耗戦に強い。どれも特に優先度を細かく意識するような強さではないが、カードプールがそれほど強くないときには出番があるはずだ。


▲<滅殺の火>よりも優先するアンコモン

1位 《血暴れの巨人》
素晴らしいサイズ。ラクドスでは《リックス・マーディのギルド魔道士》の次点。
アゾリウス、セレズニア、ゴルガリの各ギルド魔導師との比較は、赤という色をやることにアドバンテージが有るうちは《血暴れの巨人》を優先していいだろう。微妙なラインなので赤が過当競争化した際にはこの評価は覆ることが予想される。

2位 《通りのひきつけ》
飛行生物を落とせないという点は決して無視できない弱点だが、それでもゲームに勝てるカードであることは変わりない。優先度は《血暴れの巨人》とほぼ同じ。


▲<血暴れの巨人>よりも優先するレア

1位 《ミジウムの迫撃砲》
《群れネズミ》と評価を二分する環境最強カード。見たら取る。打ったら勝つ。

2位 《混沌のインプ》
微妙なラインだが紙一重の差で《血暴れの巨人》よりも優先したい。環境の高速化が進めばこの差は逆転することが予想される。



●緑

▲コモンランキング

1位 《そびえ立つインドリク》
1位が守るカードなのはどうかと思うが実際問題そうなのだからしょうがない。
セレズニアでは《臣下の魂》の次点で《アゾリウスの拘引者》より優先していい。

同率2位 《ケンタウルスの伝令》《蠢く甲虫》
居住か活用のどちらに寄せるかで優先度は変わるが基本は《蠢く甲虫》でいい。
2マナのその他の競合カードと比較して《蠢く甲虫》はなかなか優秀だが、《ケンタウルスの伝令》は3マナの競合がフライヤーであることと合計で4マナかかることで相対的に取れなかった場合の損失が少ない。
1回限りの居住でなく反復する居住のシステムがある場合は《ケンタウルスの伝令》を優先しよう。

コロズダの監視者

4位 《コロズダの監視者》
セレズニアでは《アゾリウスの拘引者》と同率で評価してマナ域で取捨選択しよう。
ゴルガリで活用というシステムを運用する際に分かりやすく実力の差が出る点として、活用する先の生物についてちゃんと意識できているかという問題がある。この点をノーケアで、活用の付いた生物は集めるがボーっとした生物を強化するばかりのゴルガリの勝率は控えめに言って無惨だ。そのようなことから呪禁、絆魂、トランプルなど活用でサイズが上がることのメリットを増幅させる能力を持った生物はとても重要であると意識してほしい。その点《コロズダの監視者》は活用の種であり、かつ活用先としても機能する。これはたとえば2色土地がマナベースを安定させるように、活用というシステムが機能する上でこのカードが優秀な潤滑油になると言える。

5位 《ゴルガリの長脚》
素でパワーが5ある生物はそれだけで評価できる。

6位 《力の合唱》
勝てるカードであることを意識してちゃんと使いどころを選ぼう。小回りの利かなさから複数枚の投入はためらわれるので優先度は下がる。

野面背のサイ

同率7位 《斧折りの守護者》《石載りのクロコダイル》《野面背のサイ》
《斧折りの守護者》はセレズニアとゴルガリで大きく評価が変わる。この位置はゴルガリでの評価だ。セレズニアにおいて3マナから5マナへのマナブーストにカード1枚を使う価値はない。しかしゴルガリでは活用で6~7マナを要求される上に優秀な防衛生物が揃っている(なにしろアタッカーの《オーガの脱獄者》まで防衛を持っていたりする)ので十分にシステムの一環としてデッキに組み込むことができる。また、セレズニアに比べてゴルガリは3色目タッチ赤の受け入れを整えることが重要なのでその点でも存在価値を見せる。ただし競合が少ないので優先度はあくまで低い。

《石載りのクロコダイル》《野面背のサイ》はともに活用先として機能するが、《野面背のサイ》はセレズニアでも《共有の絆》のターゲットとして優秀なのでその点を忘れないでおこう。

空中捕食

同率10位 《空中捕食》《巨大化》
《空中捕食》はサイドカードとしてとても優秀だ。《解呪》系のサイドボードカードとは違い、頭数をそろえる価値があるので、メインデッキの枚数が確保できるめどが付いたら緑の4位タイまで優先度を上げて取っていい。

《巨大化》は小回りの利くカードだがこの環境は強化系のスペルがあまりにも豊富なのでどうしても優先度は落ちる。また、小回りの利くカードよりも決定力のあるカードの価値が高い環境でもあるのであまり採用の率は高くないだろう。
逆に言うと明確な勝ちパターンの一環に組み込まれているなら《力の合唱》よりも《巨大化》を優先して採用していいとも言える。例えばジャンドカラーで《ヘルホールのフレイル使い》と組み合わせて突然死を狙う場合なら、他の強化系よりも《巨大化》が優先して採用される。カードの強さ、優先度を画一的に認識するところから脱却して、その時々のベストの選択を探ることを怠ってはいけない。


▲<そびえ立つインドリク>よりも優先するアンコモン

1位 《スライム成形》
トークンが重要なセレズニアは勿論、《斧折りの守護者》で大量のマナが確保できるゴルガリでも優秀なカード。
セレズニアでは基本的には《ケンタウルスの癒し手》の次点として考え、反復可能な居住システムがあるなら上方修正を加える形でピックする。
逆にゴルガリでは必須でないので飛行への対処が手薄なら《そびえ立つインドリク》より優先度を下げてもいい。

2位 《ゴルガリのおとり》
膠着した場を一気に勝ちに持っていけるポテンシャルのあるカードだが過信は禁物。そもそもこのカードは攻めている状態で相手の反撃に蓋をするのに最適なカードだが、今の環境の緑は1マナのマナブーストの不在や2マナ生物の弱体化などが原因で一旦場を止めたあとで後手からまくる展開が多い。《ゴルガリのおとり》に支配的な強さを期待すると肩透かしを食らうだろう。
セレズニアでの評価はやはり《ケンタウルスの癒し手》の次点。
ゴルガリでは《刺し傷》の次点。


▲<スライム成形>よりも優先するレア

1位 《死橋の大巨虫》
デカイ。強い。
セレズニア、ゴルガリともに基本的にアンコモン以下のどのカードよりも優先していいが《コロズダのギルド魔道士》《ヴィトゥ=ガジーのギルド魔道士》《議事会の招集》とはマナ域の調整で優先度が逆転することはある。

2位 《兵士の育成》
反復可能な居住エンジン。白と緑のハイブリッドカードではあるが緑がらみのギルドで使うことを前提に考えた方がいい。居住がシステムとしてパッとしないとは言え、さすがにこのレベルになるとデッキの軸に据える価値が出てくる。
優先度は《コロズダのギルド魔道士》《ヴィトゥ=ガジーのギルド魔道士》の次点。
1-1で他の色のカードと比較する際は《滅殺の火》と同列で考える。

3位 《野生の獣使い》
強力な勝ち手段ではあるが、戦線を構築したあとで活躍するカードな上に対処が簡単なので比較的回ってくる。「まとまりはあるが爆発力に欠ける」と言ったデッキに欲しいパーツ。
優先度は《コロズダのギルド魔道士》《ヴィトゥ=ガジーのギルド魔道士》《議事会の招集》より下で《ケンタウルスの癒し手》《共有の絆》と拮抗している。



●白青

▲コモンランキング

劇的な救出

1位 《劇的な救出》
白の10位(《騎士の勇気》《協約のペガサス》)、青の8位(《取り消し》《麻痺の掌握》《都市内の急使》)ラインと同じレベルの評価。安いカードでオーラに対する回答が用意できるのはアゾリウスの利点だ。

2位 《軽騎兵の巡視部隊》
《武器庫の護衛》よりもサイズが小さい上に競合が少ないので、デッキには入るがピックするときの優先度はかなり低い。瞬速で有利な状況になることはあまり期待しない方がよい。


▲アンコモンランキング

1位 《新プラーフのギルド魔道士》
白と青の全てのコモンより優先していい。
序盤から終盤まで活躍を見込める素晴らしいカードで《秘密を盗む者》との組み合わせはマナカーブ的にも理想。

2位 《空印のロック》
アゾリウスに色が確定している状況で2マナが足りないということでないなら《凍結燃焼の奇魔》より優先していい。1-1だとその後のピックの受けの広さで《凍結燃焼の奇魔》に軍配が上がる。
白のコモンと比べて悩むことはないだろう。

3位 《リーヴの空騎士》
白のコモン全部、青は《虚無使い》よりも優先していい。
《凍結燃焼の奇魔》との比較は、1-1なら《凍結燃焼の奇魔》が無難だが、中盤以降で既にアゾリウスになっているなら《リーヴの空騎士》を取っていい。トリコロールの場合は《凍結燃焼の奇魔》がいいだろう。

4位 《アゾリウスの魔除け》
白の8位(《天空の目》)、青の7位(《イスペリアの空見張り》)と同列。オーラに対する回答であり、後手から殴りあう場合に活きる絆魂モードも重要。


▲<新プラーフのギルド魔道士>よりも優先するレア

同率1位 《スフィンクスの啓示》《至高の評決》《至高の審判者、イスペリア》《三巨頭の執政官》
強すぎて言うことがない。重い生物もそれだけの見返りがあるので問題なし。シングルシンボルまでなら3色目タッチも視野に入れるべき。

同率5位 《正当な権威》《拘留の宝球》
基本的に上位の4枚と扱いは同じだが3色目でタッチするときにどれだけの無理が肯定されるかで少し差がある。



●青赤

▲コモンランキング

ゴブリンの電術師

1位 《ゴブリンの電術師》
6マナの除去や《本質の反発》が安くなるのは喜ばしい。イゼットの層の厚さの一端を担う生物。ギルドが決定した後なら《流血の家の鎖歩き》の少し上として評価していいがドラフト最序盤なら受けの広さで《流血の家の鎖歩き》を優先。

2位 《本質の反発》
枚数を入れたいカードではないが、マナ域的に競合が少なく、先手なら上手く機能する展開を作ることは容易だ。必須パーツではなく、強さが展開に左右されるカードでもあるので優先度は低く各サイドカードと同列でピックする程度でいい。


▲アンコモンランキング

1位 《思考閃光》
1色合っていればタッチを検討していいレベルの強さ。5マナのタレントが揃っているラクドスよりもアゾリウスでタッチが奨励される。2色合っているなら何も考えずに取っていい。

2位 《イゼットの魔除け》
優先度は《跳ね散らす凶漢》と同列、《虚無使い》よりも上。既にイゼットが確定しているなら《跳ね散らす凶漢》より優先していい。

3位 《ニヴィックスのギルド魔道士》
序盤~中盤まではちょっと気の利いたクマ程度の存在感だがゲームが後半までもつれるようなら事実上のフィニッシャー足りえる。優先度は《跳ね散らす凶漢》よりも下、《虚無使い》よりも上。

4位 《イゼットの静電術師》
環境の2マナ域が解鎖というシステムの関係でタフネス2が多く従来の環境のティムほどは猛威を振るわない。2体並ぶと世界は変わるがなかなかそれは難しく、優先順位はまず基本パーツを確保するのが先。
青、赤ともにコモンの5位タイ(《秘密を盗む者》《霊感》《流血の家の鎖歩き》)で評価。

5位 《瞬間移動門》
2マナ圏を厚く取る赤系のデッキのフィニッシュブロウとして機能するが、除去単になってしまうとドロースペルを優先して入れたいため、自分のデッキの勝ちパターンを正確に把握して取捨選択する必要がある。
現状は《飛行術の探求》よりも優先度が下がるが、今後環境が煮詰まってオーラに対する対処が徹底されだすとそれに比例して存在感が増すと予想される。


▲レアランキング

1位 《竜英傑、ニヴ=ミゼット》
できるだけ1パック目に出会いたい。パックを剥く順番が難しい分プレイする際に簡単極まりないのは見たとおり。

2位 《気紛れな薬術師》
出して召喚酔いが解けたらあとは作業だ。言うまでもないが全てのコモン、アンコモンに優先する。

3位 《超音速のドラゴン》
上の2枚を見ると随分かわいく思えるがそれでも殆どのコモン、アンコモンに優先する。
《リックス・マーディのギルド魔道士》との二択は微差で《超音速のドラゴン》が上。タッチのしやすさ、そして除去耐性の差が最大の要因だ。しかし生き残った場合の勝利貢献度は《リックス・マーディのギルド魔道士》の方が高いので、1-1でこの二択に遭遇した場合はパック内の3マナ除去の出方でどちらを優先するか決めてもいいだろう。3マナ以下の除去を同時に流してしまうようなら大人しく《リックス・マーディのギルド魔道士》よりも《超音速のドラゴン》をピックしたほうが無難だ。そうでないのならイゼットが人気過多と踏んでラクドスに走る戦略はそれほど悪くない。返しの黒はかなり期待できるはずだ。
場合分けの基準が細かすぎて馬鹿馬鹿しく感じられるかもしれないが、ある一定以上のプレイヤー同士の差はそういった微差の積み重ねでしか出てこないので、それこそが重要だとも言える。



●黒赤

▲コモンランキング

1位 《穴開け三昧》
優先度は《滅殺の火》の次点。分かりやすく強力な除去。

リックス・マーディの落とし子

2位 《リックス・マーディの落とし子》
除去が豊富な黒赤に緑系よりもサイズが大きいコモンの生物がいるのは脅威。5マナ域はそう多く取るものではないため優先度は柔軟に変化するが、基本的には黒、赤ともに3位タイ(《死の歓楽者》《爆発の衝撃》)で考えて5マナ域が開いているなら同じ順位のカードより優先して取っていく。

3位 《頭蓋裂き》
入れればそう悪くない仕事をすることも珍しくないが役割的に除去や生物がどうしても優先され、さらに《精神腐敗》と競合するため優先度は圏外まで落ちる。
6~7マナのボムが相手のデッキに入っていてマッチアップ的に腐るカードがあるならサイドから入れ替える形で一応の存在価値は示せるだろう。


▲アンコモンランキング

1位 《リックス・マーディのギルド魔道士》
暫定ではあるが環境最強アンコモンの座はこの2マナ生物になる。このカードが2ターン目に登場するだけで明らかにゲームスピードが変わる。3色目タッチでは真価を発揮しないため強さの割に流れて来たりもする。
微妙な二択の際にこのカードの受け入れを作るという意味でラクドスを優先するという考え方はあながちなしではない。

2位 《ヘルホールのフレイル使い》
アタッカーとしての性能はかなり優秀だが優先度は《滅殺の火》にわずかに及ばない。
ゴルガリにタッチして使える点は《滅殺の火》よりも優れている。

3位 《ラクドスの激怒犬》
黒、赤ともにコモンの1位(《刺し傷》《滅殺の火》)の次点として評価する。
活用のターゲットとしてゴルガリにタッチする際は優先度を上げていい。


▲レアランキング

1位 《謝肉祭の地獄馬》
優先度は《血暴れの巨人》よりも上。

2位 《戦慄掘り》
優先度は《血暴れの巨人》と拮抗している。それまでに取れている除去と4マナ圏の内容次第でどちらを優先するか決める。

3位 《暴動の長、ラクドス》
既に黒赤2色が確定しているなら《血暴れの巨人》よりも優先していい。
1-1での二択はギャンブルだ。《暴動の長、ラクドス》の強さだけで考えると50%の確率で使えなかったとしても賭けに出るだけのものがあるが、比較対象の《血暴れの巨人》も相当な強さなため危ない賭けに出るのを拒否するのは賢明とも言える。

4位 《ラクドスの復活》
除去デッキが自分で使うか対除去デッキのマッチアップにおいて無類の強さを発揮する。6ターン目にX=4で打ってそれだけでゲームに勝てるような展開も珍しくないだろう。ただし大振りな上に不利なときには役に立たないので過信は禁物。
3-0を狙うドラフトなら《血暴れの巨人》よりも優先していいが、堅く行くなら《滅殺の火》の次点。



●黒緑

▲コモンランキング

1位 《構脚のトロール》
かなりの固さ。除去等と違って他のギルドにタッチでつままれることはないので優先度自体は低い。
緑は4位(《コロズダの監視者》)、黒は5位(《打ち上げ》)と同列に扱っていい。

水路の蠍

2位 《水路の蠍》
優先度は《構脚のトロール》とほぼ変わらない。

3位 《忌まわしい回収》
黙っていても回ってくるので優先度はかなり低く、他の色の9位以下で考えていい。
活用と噛み合うスペルだがゴルガリは活用に特化させすぎるよりも3色目に除去をタッチしてタダツヨ系のカードを集める戦略の方が有効になってくるので、このカードをたくさん集めて活用スペシャルを組むのはリスキーだ。
ただし《群れネズミ》を探すのには最適なのでチャンスがあればイージーウィンのお供にしよう。


▲アンコモンランキング

1位 《コロズダのギルド魔道士》
全てのコモンと、黒と緑のアンコモン全てに優先する。このカードの有無でゴルガリの強さは2段階変わってくる。

2位 《屑肉の刻み獣》
素晴らしくテンポのいいカードだが単体だとすぐに止められてしまう。均等3色気味のドランカラーで《共有の絆》のターゲットにしたい。
カードの強さのわりに優先度は低く《刺し傷》の次点が妥当なラインか。

3位 《刈り取りの儀式》
6マナ払ってタフネス4が除去できないカードには基本的にタッチするほどの強さはない。さらに信じられないことにこいつはソーサリーだ。人を馬鹿にしている。とはいえ除去は除去なので2色合っていればデッキに入ることもあるだろう。2枚目の《打ち上げ》よりも少しだけ優先度を上げる程度の評価でピックする。

同率4位 《貴重な発見》《ゴルガリの魔除け》
《貴重な発見》はボムのありなしで評価が変わる。《見えざる者、ヴラスカ》などの消耗品のボムなどは特に相性がいい。漠然と使うのには向かないので注意。

《ゴルガリの魔除け》はサイドボード要員なのでメインデッキのパーツ集めのめどが付いてから確保する程度の心構えでかまわない。


▲レアランキング

1位 《見えざる者、ヴラスカ》
見たとおりの強さ。1色合っているなら3色目にタッチして使ってもいい。アンコモン以下にこれより優先するカードはない。

2位 《ロッテスのトロール》
《コロズダのギルド魔道士》と同じようにゴルガリに欠けた突破力を補うには最適のカード。登場するターンが遅くなるにつれ強さがマイルドになるのでタッチには向かない。

3位 《屍体屋の脅威》
《コロズダのギルド魔道士》の次点。
4マナ4/4というナイスサイズだが、活用に固執してコンバットへの参加を保留し続けるとその投資効率のよさが損なわれるので、解鎖や《共有の絆》と組み合わせたときの方が暴力的な強さを発揮する。

同率4位 《ゴルガリの死者の王、ジャラド》《ジャラドの命令》《突然の衰微》
これらのカードよりはデッキの根幹になるパーツをまず優先して確保する形で考えていい。
黒のコモン4位(《オーガの脱獄者》)と同列程度に扱って、デッキの完成度が高まった段階でオプショナルな勝ち筋を確保する意味で上方修正を加えてピックしよう。



●緑白

▲コモンランキング

共有の絆

1位 《共有の絆》
緑の全てのコモンに優先してピックする。
白はセレズニアが確定しているなら《太陽塔のグリフィン》と同列に扱ってスペルと生物のバランスで決めるが、ギルドが決まっていないタイミングでは《太陽塔のグリフィン》を優先する。

2位 《ケンタウルスの癒し手》
優先度は《共有の絆》とほぼ同じ。

3位 《狩猟者の協定》
セレズニアの6マナ域は《トロスターニの裁き》のためにできるだけ空けておきたいので優先度はかなり下がって緑の10位タイ(《空中捕食》《巨大化》)で評価。


▲アンコモンランキング

1位 《ヴィトゥ=ガジーのギルド魔道士》
このレベルのカードなら1-1でセレズニアを意識してもいい。白と緑のコモンでこれよりも優先するカードはない。

2位 《議事会の招集》
コモンパーツによる居住はテンポの悪さから二の足を踏むが《議事会の招集》が複数枚取れるのなら話は変わってくる。
セレズニアなら白と緑のコモンでこれよりも優先するカードはないが、1-1なら《太陽塔のグリフィン》とどちらを取るかは一種の賭けになってくる。環境初期のMagic Onlineだと何故か緑が人気だったりするのでリスクテイクするのは慎重に。

3位 《セレズニアの魔除け》
基本的に除去として使用する。構えやすく一発目はまず警戒されないのでかなり効果的に作用する。
セレズニアが決定している場合この優先度だが、早い手順で、ギルドの決定を保留したいタイミングだと《議事会の招集》より優先度を上げていい。
ゴルガリがタッチで使用する場合は《ヴィトゥ=ガジーのギルド魔道士》よりも優先度を上げていい。

4位 《目覚めし聖域》
7マナでもこれくらいサイズがあると存在価値がある。ただしこのカードを使うためにコンバットで活躍しない18枚目のマナソースを投入する価値はない。
2~4マナのマナカーブが最低限整っている前提で白なら《臣下の魂》の次点、緑なら1位タイ(《そびえ立つインドリク》)の優先度でピックする。

5位 《ドライアドの闘士》
1マナ2/1。それ以上でも以下でもない。マナカーブの都合で状況ごとに取捨選択されるカードなのであまり優先度を決める意味がない。


▲<ヴィトゥ=ガジーのギルド魔道士>よりも優先するレア

同率1位 《集団的祝福》《大軍のワーム》《セレズニアの声、トロスターニ》
このレベルでようやくセレズニアに対して積極的にピックする気になる。《集団的祝福》は3色目タッチでも使うべき強さ。

4位 《ロクソドンの強打者》
ピックはするがその後青と赤の流れがよければそちらに移ることに躊躇はない。





以上、若干駆け足だが(それでも25000字以上はあるのだが)主要なカードの優先度評価を軸に各ギルドの戦略概要をまとめてみた。
もし次回があるようなら今回は紹介しなかった「そんなに強くないカード」が有効に機能するケースなども掬い上げたい。また、ドラフト環境、特に色の人気不人気は日ごとに変化していくので、脱稿から公開までのタイムラグで色々考えが変わったりすることも多いだろうから、その点にも言及できたらと思う。
最後まで読んでくれてありがとう。この記事をあなたの環境把握の一助にしてもらえたらとてもうれしい。
よいリミテッドライフを。