「目の前に龍の服を着た人が座ったら、負けを覚悟した」
これは僕が尊敬するとあるプロプレイヤーに、【プロツアー・ニューオリンズ2001】の思い出を尋ねた際に返ってきた答えでした。
「龍の服」と言われてもピンとこないかもしれませんが、かつて一世を風靡した世界最高のチームのユニフォームこそが、その「龍の服」だったのです。
「Team YourMoveGames」。
「ChannelFireball」や「StarCityGames」などなど、これまでに成功を収めてきたチームは数あれど、「Team YourMoveGames」ほどの偉業を成し遂げたチームは他にありません。
それが最も顕著に表れた大会結果は、【プロツアー・ヒューストン2002】でしょう。「Team YourMoveGames」のメンバーで、まさかまさかの1・2・3フィニッシュを記録した奇跡の大会です。
プロツアーのトップ8に3名を送り込むだけでも凄まじい偉業ですが、ましてや上位3つを埋め尽くすなど、この大会、そしてこのチーム以外に聞いたことがありません。
【準々決勝のカバレージに記載してある】、Final Result: YMG – 9 World – 0 を見たときは震えました。
上記主要メンバーは3名全員が殿堂入りをはたしていますし、これほどの成功を収めるチームは金輪際現れないのではないかとさえ思っています。
だーいぶ脱線してしまいましたが、そんな歴代最高のチームである「Team YourMoveGames」の代表作が「Benzo」です。
21 《沼》 -土地(21)- 1 《ゴブリンの太守スクイー》 1 《冥界のスピリット》 2 《Krovikan Horror》 1 《粛清するものクローシス》 1 《マローの魔術師ムルタニ》 1 《悲哀の化身》 1 《新緑の魔力》 -クリーチャー(8)- |
4 《強迫》 4 《納墓》 4 《吸血の教示者》 4 《再活性》 4 《死体発掘》 4 《生き埋め》 1 《虐殺》 4 《ゾンビの横行》 1 《動く死体》 1 《汚染》 -呪文(31)- |
3 《ファイレクシアの抹殺者》 3 《棺の追放》 2 《汚染》 2 《虐殺》 1 《骨砕き》 1 《隆盛なるエヴィンカー》 1 《無のロッド》 1 《非業の死》 1 《灰は灰に》 -サイドボード(15)- |
当時発売されたばかりの「オデッセイ」に収録された《納墓》を、これ以上ないほどに悪用したデッキが「Benzo」です。当時はほとんど対策されていなかった「墓地」という領域を利用して、《再活性》や《死体発掘》で大型クリーチャーを速やかに釣り上げます。
釣り上げる大型クリーチャーには、《粛清するものクローシス》、《マローの魔術師ムルタニ》、《新緑の魔力》など、この時代を代表するものが名を連ねますが、その中で異彩を放っているのが《悲哀の化身》です。
このデッキで採用されるまで見向きもされなかったこのクリーチャーは、《ドルイドの誓い》を擁するデッキに劇的に作用します。《ドルイドの誓い》から導かれる《スパイクの織り手》さえ除去してしまえば、これら【大型クリーチャーの進撃を止めるのは困難】でした。
その後のエクステンデッドを席巻するほどに強力なこの「リアニメイト戦略」でしたが、「Benzo」の秀逸な点はそれ以外のプランも非常に優秀だったことです。
まずは《ゾンビの横行》によるトークン戦略。このカードは手札にきてしまったデカブツを捨てることができる便利なカードですが、《ゴブリンの太守スクイー》と《Krovikan Horror》を組み合わせることで、爆発的な速度でトークンを生産することが可能です。
こうすると毎ターンほぼ無料で1~2体のゾンビが手に入るため、これだけでも迫力は十分。ただし、そのトークンをより輝かせるのが《汚染》の存在です。
さながら黒き《血染めの月》といわんばかりのカードですが、《血染めの月》とは違い、その効果は基本地形を含む全ての土地に及びます。
すなわち、《汚染》と《ゾンビの横行》、または《冥界のスピリット》が揃えば、黒いデッキ以外は全くもって身動きが取れなくなるということです。
余談ではありますが、僕が友達に英語のカードの能力を説明されたときに、強すぎて「絶対嘘だ!」と信じられなかったカードが《汚染》と《変異種》でした(笑)
今思えばデメリットも非常に緩いですし、当時のカードは恐ろしいですね。
ちなみに、冒頭の解答をくださったプレイヤーとは、今は亡き石田 格さんでした。格さんはたくさんの名デッキを生み出したデッキビルダーとして知られていますが、そんな格さんにここまで言わせるなんて、「Team YourMoveGames」、そして「Benzo」はどんだけすごかったんだって話ですね。
この後も猛威を振るった「Benzo」は、《金粉のドレイク》や《棺の追放》の価値を高めたりと、エクステンデッド環境に多大な影響を与えました。
「墓地」という領域の大切さを教えてくれたデッキ、それが「Benzo」です。
現在のスタンダードにも、「墓地」を悪用した革新的なデッキは存在するので、今週末の【第3期 スタンダード神挑戦者決定戦】でも、そういったデッキの活躍に期待しています!
3 《森》 1 《山》 1 《平地》 3 《樹木茂る山麓》 3 《吹きさらしの荒野》 4 《欺瞞の神殿》 2 《ラノワールの荒原》 2 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《マナの合流点》 2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(23)- 3 《エルフの神秘家》 4 《サテュロスの道探し》 4 《森の女人像》 2 《霊刃の幻霊》 1 《苦悶の神、ファリカ》 3 《大いなる狩りの巫師》 4 《彩色マンティコア》 2 《嵐の神、ケラノス》 4 《魂剥ぎ》 2 《サグのやっかいもの》 1 《黄金牙、タシグル》 -クリーチャー(30)- |
4 《神々との融和》 3 《僧院の包囲》 -呪文(7)- |
4 《悲哀まみれ》 3 《軽蔑的な一撃》 3 《否認》 2 《闇の裏切り》 2 《残忍な切断》 1 《死者の神、エレボス》 -サイドボード(15)- |
こちらは最近【津村健志のゴキゲン!MO生活】でも使用している「Soulflayer」デッキ。
《サテュロスの道探し》や《神々との融和》で墓地にクリーチャーを送り込み、それらを《魂剥ぎ》の「探査」に費やして究極のクリーチャーを誕生させることを目指します。
Nice deck! pic.twitter.com/HAxh0zRZgE
津村 健志 (@KenjiTsumura) 2015, 2月 20
《森の女人像》、《彩色マンティコア》、いずれかの「神」を追放すると、《魂剥ぎ》は「呪禁」、「飛行」、「先制攻撃」、「トランプル」、「警戒」、「絆魂」、「破壊不能」を持った凄まじいクリーチャーに!
《霊刃の幻霊》や《大いなる狩りの巫師》を追放すれば、「二段攻撃」や「速攻」を付けることもできます。
非常に面白いデッキですので、ぜひ一度お試しください(*^_^*)
【PWCC2015】にて、【なべ君も同様のアーキタイプを使用していた】ので、そちらもお見逃しなく!
※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『MAGIC: THE GATHERING』
http://magic.wizards.com/en/magic-gathering
コガモ