新エキスパンション『神々の軍勢』の発売がいよいよ一週間後に迫ってきた。
どのカードが使われるのか、どんな新しいデッキが生まれるのか。これを読んでいる方々も、今から気になって仕方ないことだろう。
ここhappymtgでも、いつものようにカードレビューをしようかと考えていた。
だが結局「使ってみないとわからない」というような曖昧な評価になるようでは、読者の方々の参考にならないだろう。
そういうわけで今回はちょっと趣向を変えて、禁断の領域に足を踏み入れてみたいと思う。
そう、それは……価格。
ショップの聖域に、大胆に切り込んでいく。
対象となるのは、『MTGSHOP 晴れる屋』の初動価格。その価格について、豪華3名のレビュアーに「高い/妥当/安い」といった判断をしてもらうのだ。
だが、ここではむしろレビュアーたちのマジックに対する理解度が問われている。
何故なら、1~2か月とか経って自分の予想が大きく外れていたら、何よりもまずかなり恥ずかしいからだ。
そう。価格というのは、よりシビアにカードを評価するセンスが問われる場なのだ。
それでは、この無謀な企画に挑戦する3名のレビュアーを紹介しよう。
・ 北山 雅也
言わずと知れた日本チャンピオン。昨年はグランプリ・横浜13で優勝して調子に乗った結果、グランプリ・静岡14では自宅でスリープインしてしまった。
・ 齋藤 友晴
『MTGSHOP 晴れる屋』の店主にしてプロプレイヤー。最近は自ら製作したデッキであるSaito青白コントロールがAlexander HayneによりGP優勝したのをはじめ、世界各地のPTQを突破したとの報告を受けて調子に乗っている。
・ 二丸 十四朗先輩
晴れる屋トーナメントセンターのポイント番長。晴れる屋ポイントを配りまくって調子に乗っているが、キャンペーンは2014年1月末まで。先輩の運命やいかに!?
……以上3名の豪華レビュアーにより、『神々の軍勢』の晴れる屋の初動価格を大胆に斬る!
《夜帷の死霊》や《群れネズミ》のように、もしかすると後から高騰するカードもあるかもしれない。
はたして3人は、カードの強さや可能性を正しく測ることができるのか!?
それでは早速いってみよう。
※記事内に掲載した価格は初動価格となりますので、現在の価格とは異なる場合があります
オレスコスの王、ブリマーズ/Brimaz, King of Oreskos
・ 北山の意見
「2500円は妥当だと思います。スペックは及第点ですがトークンは増えづらいですし、目玉神話レアとはいえそこまで強くないかなーと」
・ 齋藤の意見
「最近は価格付けをスタッフに任せっきりだけれど、こういう場だから正直に言わせてもらいます。圧倒的に安いでしょ」
「理由は3つあって、1つ目は今は白優遇の時代ということ。トップメタのデッキ8つくらいあったら、5つくらいに白が入ってる。環境初期のプロツアー・テーロスでは『信心』祭りだったけど、終盤になったら結局白絡みのデッキばかりになってる。さらに、『神々の軍勢』までの時点で『占術』ランド4種類、全部出てるのは白絡みだけ。つまり今、白だけ飛びぬけて使いやすいんだよね。だからおそらく高需要になりやすいだろう、というのがある」
「さらに、このセットには値段がつくようなマルチカラーが多いから、相対的に単色の神話レアは貴重。ショップは新セットの値付けをするとき、個々のカード評価だけではなく、セット全体のバランスで値段を付けるので、今回のこのカードは高めに値付けしたかったね」
「最後は個人的な話になるけどSaito青白や、あるいは普通の青白コン全般のサイドにも、《万神殿の兵士》のスペースにぴったり収まるカードだよね。《管区の隊長》と比べても守ってよし攻めてよしと万能だし」
「こういった背景的な、メタ的な理由がなければ、カードの強さの感覚だけなら2500が妥当なんだけどね。そういうわけで3000以上つけて欲しかったな」
・ 十四朗先輩の意見
「『神々の軍勢』のカードの中では、こいつと一番タイマン張りたい」
迷宮の霊魂/Spirit of the Labyrinth
・ 北山の意見
「これも妥当ですかね。クリーチャータイプが『人間』だったらワンチャンあったんだけど、『スピリット』とかスタンダードでは出番なさそうですしね。効果も、《スフィンクスの啓示》は止められるけど、《地下世界の人脈》は止められないしねー。そもそも何でエンチャントやねん。まあでも下の環境では出番ありそうだからやっぱりこの程度なのかなー」
・ 齋藤の意見
「妥当。カード単体の強さで見ると、マジックでは『カードを引く』というアクションが強いからピカイチの能力だよね。ただメタ的な視点で言うと、最もプレイ人口が多いスタンダードではそこそこの性能だし、小型セットのノーマルレアなのでそこが評価を下げるかな」
「注目してるポイントとしては、このカードは一見ヘイトベアだけど、ハッピーベアでもあるということ。《ヴェンディリオン三人衆》や《寺院の鐘》、《海の中心、御心》とコンボするから、《レオニンの裁き人》や《スレイベンの守護者、サリア》とかと違って単純に邪魔するだけじゃなく、自分が得をできる可能性があるという裏効果もある」
「《Ancestral Recall》も防げるし、ヴィンテージ級まであるかもね」
・ 十四朗先輩の意見
「こんなひょろひょろしたカードには興味ないぜ!」
責め苦の伝令/Herald of Torment
・ 北山の意見
「これは安い。スタンダードで《加護のサテュロス》の次に使われる『授与』になりえますね」
・ 齋藤の意見
「圧倒的に安い。ていうか安すぎバケモンwww 少なくとも500円はつけたいよね。黒信心のアグロに寄せたバージョンとかにもそのまま入りそうだし。《夜帷の死霊》と違って多色化もしやすいし、《今わの際》を食らわないのもでかい。黒いビートダウンは今まで横に並べるしかなかったけど、『授与』という<至高の評決>をかわす選択肢ができたのも大きい」
「スタンダードレベルでは十分じゃないかな。《ヴィズコーパの血男爵》につけられないのが玉に瑕だね。《生命散らしのゾンビ》みたいなライバルは多いけど、こっちは5マナ扱いもできるし。《ボロスの反攻者》に対して強い。GPで一回勝ったような赤黒ビートにもワンチャンあるかもね」
・ 十四朗先輩の意見
「ライバル校のやつらを5人くらい倒せそうだから是非舎弟に欲しい」
苦痛の予見者/Pain Seer
・ 北山の意見
「ちょっと安い……かな。まあ神話レアじゃなくてよかったですよね。人間だし、結構強いと思います。もしかしたら黒単の《群れネズミ》の枠を脅かすかもしれませんね。《群れネズミ》は除去されやすくなったし、こいつ出して除去撃ってるだけで勝てるし。新しい《思考囲い》からのパターンになるかもしれませんね」
・ 齋藤の意見
「申し訳ないけど正直判定不能。『神啓』っていう能力が未知数だよね。現状だと気軽にタップできるカードが《バネ葉の太鼓》しかなくて、能力を発動させるには基本的に殴るしかないから、どうなんだろう」
「殴れるってことは有利だし、殴れないってことは不利だから、有利なときにもっと有利になるカードで、不利をまくれないわけだからなー。《ファリカの療法》、《今わの際》、《灼熱の血》などのあらゆる除去も食らっちゃうしね。まあでもわからないってことはこの値段で妥当なのかな。難しいね。このカードの評価が簡単にわかるようだったら僕はこんなにハゲてないよ」
・ 十四朗先輩の意見
「この程度の新入生には学園の覇権は渡せない。舎弟にするにしてもタフネス3は欲しい」
炎輪のフェニックス/Flame-Wreathed Phoenix
・ 北山の意見
「高いでしょ。高い高い。《冒涜の悪魔》がいる中でこんなん出してもねー。800円は高いよー」
・ 齋藤の意見
「赤といえば、クリーチャーが弱いけれど全体のスピード感でなんとかする、という色。自分が速攻のモードか単体で勝てるモードか選べれば強かったんだけど、『貢納』なのがネックだよね。どっちも悪くはない能力ではあるんだけど。それでも、昔から赤いデッキのサイドボードでは飛行生物が活躍することが多いから、そのあたりでチャンスがあるかもしれない」
「ショップ目線の評価としては、神話レアはレアの2分の1しか出ないので、値段は高めにつけなければいけない。メインはチャンス少ないけどサイドはワンチャンというカードなので、800円は割と妥当だと思うよ。使うとしたら4枚だろうし、300円~400円みたいなリスキーな値段はつけたくない。《オレスコスの王、ブリマーズ》同様、単色レアの割り振りの問題もあるしね」
・ 十四朗先輩の意見
「こいつには期待している。でかい声で『押忍!』って言うか、何回も『押忍!』って言うか、どっちにしても見込みはある。やる気が感じられる」
クルフィックスの狩猟者/Courser of Kruphix
・ 北山の意見
「書いてあることはまあまあ強いけど、どういうデッキに入るかわからないですよね。スタンダードにシャッフル手段があまりないですし。500円くらいで良かったんじゃないかね。というか、これが入るようなデッキをすんなり思いつくようなら僕は今頃プロツアートップ8入ってますよ」
・ 齋藤の意見
「妥当だと思うよ。3マナにしては、という能力ではあるけれど、如何せんやってることがしょっぱい。土地を並べることが重要になる長期戦デッキ同士の対戦でのサイドボード後には生きるかもしれないね。ビート対策としては、ライフを得られるとはいえ2/4くらいでは今のビートは止まらないし、《稲妻の一撃》や《胆汁病》では死なないけど《今わの際》食らうしね」
・ 十四朗先輩の意見
「パンチがない。3マナも払ってるんだから相手の顔面が凹むくらいのカードがいい」
都市国家の神、エファラ/Ephara, God of the Polis
・ 北山の意見
「これは安いでしょう。初めて見たときから僕のイチオシですよ。他のショップでもなぜか安いんですよね。正直青黒や赤黒の神より強いと思うんだけどな。白メインのデッキでもいいし、青単信心にこれと《拘留の宝球》だけ入れてみてもいいんじゃないかな」
・ 齋藤の意見
「安いでしょ。《オレスコスの王、ブリマーズ》の方が高いのは納得だけど、次点のトップレアじゃないかな?これと《オレスコスの王、ブリマーズ》を場に揃えられたら奥義『ブリマーズダンス』だよ?」
「真面目な話としても《管区の隊長》や《太陽の勇者、エルズペス》のような単体で強くてかつ『信心』があるカードと噛んでいるよね。《拘留の宝球》とも合っているし。ちょっと適当だけど、こんな感じの白ベースの青白ミッドレンジみたいなのができるんじゃないかな」
10 《平地》 2 《島》 4 《神聖なる泉》 4 《啓蒙の神殿》 4 《アゾリウスのギルド門》 -土地(24)- 4 《万神殿の兵士》 4 《管区の隊長》 4 《威圧する君主》 4 《ボロスの反攻者》 4 《オレスコスの王、ブリマーズ》 4 《都市国家の神、エファラ》 3 《万戦の幻霊》 -クリーチャー(27)- | 2 《アゾリウスの魔除け》 4 《拘留の宝球》 3 《太陽の勇者、エルズペス》 -呪文(9)- | -サイドボード(0)- |
・ 十四朗先輩の意見
「強い奴だけど、着てる服の色がね……何か宿敵を連想させるんだよな……そこが気に入らない」
荒ぶる波濤、キオーラ/Kiora, the Crashing Wave
・ 北山の意見
「高いですね。フルスポイラー出る前から色々と議論されていたけれど、僕は弱いと思います。忠誠値の低さがどうしても引っかかる。唯一のプレインズウォーカーだし値段をつけないと、っていう事情はわかるけど、どうしても《思考を築く者、ジェイス》と比較してしまいますね」
・ 齋藤の意見
「妥当だと思うよ。僕はカード的には『強い』派だね。相手に出されたときのことを想像するとなかなか嫌らしいと思う。4枚入れて平場で出ちゃうとうっかり奥義いくかもっていうのがあるし、先ほど挙がった《クルフィックスの狩猟者》と相性が良いから、新しいアーキタイプができるかもしれないし。青緑っていう二色拘束を考えると、そこまで使い勝手は良くないけど、イラストも良いしプレインズウォーカーはそもそも値段高めにつけるから、存在感含めて妥当かな、と」
・ 十四朗先輩の意見
「残念ながらうちの舎弟は女人禁制だ」
殺戮の神、モーギス/Mogis, God of Slaughter
・ 北山の意見
「いや高いっすよ。入るデッキがあまり思い浮かばないし、《鍛冶の神、パーフォロス》の方が強いんじゃないかと思います」
・ 齋藤の意見
「これも難しいね。《ラクドスの哄笑者》→《とげの道化》→《責め苦の伝令》→《殺戮の神、モーギス》で手がつけられない回りになるし、《世界を喰らう者、ポルクラノス》や《ボロスの反攻者》を出されて地上が止まったときにも間接的なダメージ源になるのは強いよね。でもちょっと高いかな。1500円くらいが妥当じゃないかな。赤黒で攻めるデッキ、かつ『信心』デッキ限定っていう使いまわしのきかなさがあるから」
「ただ、日本のカジュアルプレイヤーは黒が好きというのがあるから、そこを評価して高めにつけてもいいかもしれない」
・ 十四朗先輩の意見
「俺の跡継ぎはこいつしかいない。何といっても俺は黒が好きなんだよ。早速晴れる屋で4枚予約したぜ!」
歓楽の神、ゼナゴス/Xenagos, God of Revels
・ 北山の意見
「まあ妥当ですね。書いてあることは無茶苦茶だし、緑が混じってるから5マナという重さも気にならない。《ドムリ・ラーデ》でめくれると手札に入るのも嬉しい」
・ 齋藤の意見
「さすがにちょっと高いかなと思う。《ゼナゴスの狂信者》っていう強力な相棒が一緒に出たのは良いと思うけど、《都市国家の神、エファラ》は4枚入りうるのに対して、これはデッキに4枚入りにくそうだよね。ただちょっとしたテクニックとして、《歯と爪》からこいつと《引き裂かれし永劫、エムラクール》を一緒に出すと、どっちも対処されにくいからパーフェクト30点シュートが可能になる、というのがあるね。《戦導者オレリア》とのコンボは言わずもがな、あとイラストは格好良いから、そういった点を含めたらもしかしたら妥当なのかもしれない」
・ 十四朗先輩の意見
「こいつが跳ね回るようだったらちょっとシメてやろうかな」
いかがだっただろうか。
このレビューが、読者の方々がカードを購入する際に判断の参考になれば幸いだ。
それでは最後に、レビュアーの3名にそれぞれの個人的なオススメのカードを聞いてからお別れだ。
・ 北山のオススメ
「《次元の浄化》だって使われたくらいだし、50円くらいなら買っておいて損はないんじゃないかなと思いますね」
・ 齋藤のオススメ
「個人的にはセレズニアを救うきっかけになるのではないかと考えてるよ。《復活の声》や《魔女跡追い》との相性が良いし、エンド前の《加護のサテュロス》や《ワームの到来》で奇襲を仕掛ければ7枚くらい引けそうだしね」
・ 十四朗先輩のオススメ
「ムカつく神とかをこれで一息にグシャっとひねり潰せると思うとたまらないぜ!」
それでは、良い『神々の軍勢』ライフを!