有田 隆一(千葉)。
4回ものプロツアーサンデー進出経験を持つ古豪だ。
そんな彼がグランプリ2日目のサイドイベント、スーパーサンデーシリーズ予選のシールド部門に出ているというのである。
だが、有田といえばプロツアー・ロサンゼルス05のセプターチャントをはじめ、どちらかといえば構築が得意なプレイヤーといった印象がある。
現に今回のグランプリ本戦でも序盤は順調なスタートを切っていたはずだ。
それなのに。
スーパーサンデーシリーズ予選にはスタンダード部門もあるというのに、なぜわざわざシールド部門に出ているのだろうか。
もしや、シールドに絶対の自信があるとか?
有田 「いやいや違うよ(笑) 昨日6-0から3連敗ていうひどい負け方したんよ。だからもうスタンなんかやる気せーへん!」
なるほど、むべなるかな。
さて、ここではそんな有田のシールドデッキ構築を追ってみよう。
まずはチェック済のプールを開封すると、不要なカードを手早く選り分けていく。
その過程で《波使い》《英雄の破滅》が顔を覗かせると、
有田 「俺この組み合わせよく引くんよ~w」
と満足げだ。
そして慣れた手つきで、色ごとにクリーチャーとスペルに分類。ここまで5分足らず、さすがの手際である。
この淀みない動き、有田はテーロス環境のシールドを相当やり込んでいるのだろうか。
有田 「結構やったよ。この環境はきちんと2色で組みたいね」
しかしカードプールを精査した有田、一転して渋い顔。
有田 「カードが足りん……」
ひとまず《波使い》《英雄の破滅》といった強力レアを擁する青黒を並べるが、《ファリカの癒し人》をタッチしてもまだ23枚には届かない。
《死呻きの略奪者》と《国境地帯のミノタウルス》が2枚ずつに《クラグマの戦呼び》と揃っている赤黒ミノタウルスに組み替えてみるものの、こちらも全力でカードをかき集めてもカードが20枚しかない。
有田 「タッチしたいカードも少ないし、厳しいな……」
他の選択肢も検討しつつ、十分な時間をかけて悩んだ末に。
結局、最初に組んだ青黒に落ち着いたようだ。
有田 「青黒なのに《雨雲のナイアード》も《アスフォデルの灰色商人》もバウンス呪文もないのはかなり厳しいけど、除去は多いから何とか戦えるかな……」
《波使い》《英雄の破滅》で目を輝かせていたのも束の間、あまり満足いくプールではなかったらしい。
有田 「白と緑がほぼ存在しなかったのが辛いね。レアパワー重視で組んだけど、まわりの支えるカードが弱いから微妙なカードが入ってしまった」
有田 「一応《未知の岸》もあるから《はじけるトリトン》の能力は起動できるし、《水底の巨人》や《予記された運命》も、《波使い》のために『信心』稼ぎたいしね。《蘇りし者の行進》も《波使い》回収したいし」
とことん《波使い》を活かすプランのようだ。
シールド部門は参加者127名の8回戦を経て、トップ4だけが決勝ドラフトに進出できる。
それはつまり、勝ち残るには全勝に近いパフォーマンスが求められる、ということだ。
どんなカードプールをもらったとしても、シールドで全勝というのはなかなか難しい。自分より強いカードプールの相手は山ほどいるし、シールドに土地事故は付き物だ。
上位4人に残るには、何よりもまず膨大な運、幸運のビッグウェーブのようなものが不可欠だろう。
有田 「まあ持ち帰りあるし、デッキあまり強くないから、負けてもしゃーなしかな」
スタンダードでも猛威を振るっている《波使い》は、はたして有田に幸運の波をもたらすか。