本戦もサイドイベントも大盛況のグランプリ静岡。
スムーズなイベント進行と迅速なトラブル対応によって、来場者たちは心ゆくまでマジックを楽しんだことだろう。
だが、その裏で。
そんな安定したグランプリ運営のためにはなくてはならない、偉大な存在がいる。
ジャッジだ。
しかし、我々プレイヤーはジャッジについて、実はあまりよく知らない。
多くのプレイヤーにとっては、マジックのイベントに当然いるべきものとして、その恩恵を享受しているというのが実情に近いだろう。
では、そもそもジャッジをやっているのはどのような人々なのだろうか?
そんな疑問に答えるため、今回グランプリ静岡に裏方として参加した5人のジャッジに、突撃インタビューを簡単に試みてみた。
藤井 元(現Lv.2ジャッジ)
Q1.普段はどこでジャッジ活動をされていますか?
藤井 「滋賀県に『ドラゴン・テイル』という自分のお店を持っているので、そこで大会を主催したり、あとは大阪や京都のプロツアー予選をお手伝いさせていただいたりですね」
Q2.どうしてジャッジになろうと思ったんでしょうか?また、今でもプレイヤーとしてマジックをプレイされますか?
藤井 「昔はショップのアルバイトだったので、ジャッジ資格が何かの役に立つかなーと思ってジャッジ試験を受けたのがきっかけです。プレイについては、プロツアー予選を遠征してプロツアーに出たこともありましたが、最近はリアルはあんまりやらなくて、MOが中心ですね。ジャッジ活動とガチの競技マジックとの両立はやはり難しいので……。ただカジュアルなマジックは今でも楽しんでます。特にEDHでしょうか。全27色(5色と、その組み合わせ)のデッキを持ってますw」
Q3.今回のグランプリではどのようなお仕事をなさっていますか?また、今回プレイヤーとしてではなく、ジャッジとしてグランプリに参加されたのはなぜでしょうか?
藤井 「金土とフロアジャッジ(編注:プレイヤーに対する質疑応答や裁定を出す役割)のチーム、小隊といいますか、そのチームリーダーとしてチーム内の指揮をして、今日の日曜日はスーパーサンデーシリーズのスタンダード部門のヘッドジャッジ(編注:トーナメントの最も偉いジャッジ)を担当しています。ジャッジとして参加したのは、関西ではやはり128人規模が限界で、200人規模のイベントを動かす機会が欲しくて、それでスーパーサンデーシリーズのヘッドジャッジに志願させていただきました」
Q4.今後、ジャッジとしてどのようなことをしていきたいですか?
藤井 「一昨年くらいから海外グランプリにジャッジ参加する楽しさに目覚めたので、今後は積極的に参加する機会を増やしていきたいですね。あと、関西にはレベル2・レベル3ジャッジの絶対数が少ないので、そのへんを伸ばしていくために、自分自身がレベル3になることが今の目標です」
中嶋 智哉(現Lv.2ジャッジ)
Q1.普段はどこでジャッジ活動をされていますか?
中嶋 「東京・神奈川でPWC(Planeswalker’s Cup)という大会を主催しています」
Q2.どうしてジャッジになろうと思ったんでしょうか?また、今でもプレイヤーとしてマジックをプレイされますか?
中嶋 「昔秋田にいた頃、ルールを覚えるのが好きだったんですよね。それで、地元の大会の中でたまたまルールクイズというイベントがありまして、当時《謙虚/Humility(TMP)》とかが跋扈する環境で20問くらいのルール問題が配られたんですが、それで唯一満点を取りまして、あ、ルール覚えてるといいことがあるんだな、って。それがジャッジになった一番のきっかけですね。プレイヤーとしてはなかなか……年に一回程度ですねw」
Q3.今回のグランプリではどのようなお仕事をなさっていますか?
中嶋 「土曜日は本戦のフロアジャッジで、日曜日はスーパーサンデーシリーズのシールドの方のヘッドジャッジをしています」
Q4.今後、ジャッジとしてどのようなことをしていきたいですか?
中嶋 「やはりグランプリっていう大きなイベントとなると、たくさんのジャッジが参加しているわけですが、現状だとそれって主催者の努力によるところが大きいと思っていて。例えば静岡のグランプリなら関東と東海のジャッジだけで人数が足りる、神戸でのグランプリなら関西と中国地方のジャッジだけで十分、というようになったらいいな、と。要はジャッジの裾野がもっと広がって欲しいんですね。そうすれば、自分の地方のGPだからじゃあ行こうか、と自発的にジャッジ参加できるようになりますし。そのためにも、ジャッジを目指している方を色々とサポートできる立場になっていきたいな、と。今はレベル2なのでレベル1ジャッジの認定しかできないですが、レベル3になれれば、レベル2ジャッジを認定して、そのレベル2ジャッジがレベル1ジャッジを認定して、というふうに広がっていけるので、そのためにも、レベル3を目指していきたいです」
坂井 秀兆(現Lv.2ジャッジ)
Q1.普段はどこでジャッジ活動をされていますか?
坂井 「主に高田馬場にある晴れる屋トーナメントセンターで活動してます」
Q2.どうしてジャッジになろうと思ったんでしょうか?また、今でもプレイヤーとしてマジックをプレイされますか?
坂井 「プロツアーやグランプリに精力的に参加していたんですが、もうプレイヤーはやめようと思って。でもマジックは好きだからそのまま離れちゃうのは嫌で、別の形で関われないか、と思ったんですね。そんなわけで、ジャッジという形に行き着きました」
Q3.今回のグランプリではどのようなお仕事をなさっていますか?
坂井 「金曜はサイドイベントのスーパーFNMのヘッドジャッジをさせていただいて、土曜日は本戦のフロアジャッジをやっていました。今日はスーパーサンデーシリーズのスタンダード部門の方でジャッジをしています」
Q4.今後、ジャッジとしてどのようなことをしていきたいですか?
坂井 「今後ももっと上のレベルを目指して、主に関東圏のプロツアー予選や、グランプリなどでジャッジとして精力的にやっていきたいな、と。見かけたらよろしくお願いします!」
GIORGOS TRICHOPOULOS(現Lv.3ジャッジ)
Q1.普段はどこでジャッジ活動をされていますか?
TRICHOPOULOS (坂井が通訳、以下同様)「地元ギリシャでの活動もあるけど、それだけじゃなくて、東ヨーロッパのRegional Coordinator(編注:地域のジャッジの取りまとめを行う役職)なんだ。マキノ(編注:日本のRegional Coordinator)と同じ役職だね。一緒で2~3か月ごとに1回くらいのペースでヨーロッパのグランプリでジャッジをするし、グランプリトライアルやプロツアー予選に至ってはそれ以上の数を回ってるよ」
Q2.どうしてジャッジになろうと思ったんでしょうか?また、今でもプレイヤーとしてマジックをプレイされますか?
TRICHOPOULOS 「僕がジャッジになったのは2005年のことなんだけど、その頃地元ギリシャの小さな店舗では、誰もジャッジがいなくて、年長のプレイヤーが実質的にマジックのルールを決めていたんだ。それが正しいかどうかすら僕らにはわからなかったからね。それで、せっかくだからジャッジになってよって彼らに言ったんだけど、みんなやりたがらなかったから、僕がジャッジになったんだ。もちろんプレイヤーとしても、今でも毎週2回はドラフトするよ」
Q3.今回のグランプリではどのようなお仕事をなさっていますか?
TRICHOPOULOS 「土曜日はペーパーチーム(編注:結果記入用紙を配ったり、デッキチェックを行う役割)のリーダーで、今日はスーパーサンデーシリーズのシールドの方でジャッジをしてるよ」
Q4.今後、ジャッジとしてどのようなことをしていきたいですか?
TRICHOPOULOS 「僕はほんの半年前にレベル3のRegional Coodinatorになったんだけど、それが僕の長年の目標だったんだ。レベル3になったからには次はレベル4、と思うかもしれないけれど、レベル4とRegional Coodinatorは2つの両立しない道で、レベル4になったらグランプリのヘッドジャッジができるようになるけど、その分色んな場所を飛び回らないといけない。でも、僕は生まれ育ったギリシャの、自分のコミュニティを中心にジャッジがしたかった。だからRegional Coodinatorを選んだし、今後というなら、その『両立しない』というシステムが変わってRegional Coodinatorのままレベル4にもなれるっていう道が開けない限りは、Regional Coodinatorであり続けることが今の目標だね」
高橋 直樹(現Lv.1ジャッジ)
Q1.普段はどこでジャッジ活動をされていますか?
高橋 「今年の8月に認定ジャッジになったばかりですが、地元岩手は雫石のショップ、『たまや』でジャッジをしています」
Q2.どうしてジャッジになろうと思ったんでしょうか?また、今でもプレイヤーとしてマジックをプレイされますか?
高橋 「これはローカルな話になりますが、岩手県内の地域別のジャッジ比率は、県北部に3人いるのに対し、私がジャッジになるまでは県南部は0人だったんですね。それで私がジャッジになることでバランスを取りたいなぁ、と。でも今でもプレイヤーとして、ジャッジ活動と両立してマジックをプレイしてますね」
Q3.今回のグランプリではどのようなお仕事をなさっていますか?また、今回プレイヤーとしてではなく、ジャッジとしてグランプリに参加されたのはなぜでしょうか?
高橋 「本戦では結果記入用紙を配っていました。今日はサイドイベントの8人イベントの誘導や説明が主な仕事ですね。ジャッジ参加したのは、レベル1を取ったばかりですがレベル2になることが当面の目標で、そのためには大規模な大会での経験が不可欠だからです」
Q4.今後、ジャッジとしてどのようなことをしていきたいですか?
高橋 「岩手では今は県北部でしかプレリリーストーナメントやプロツアー予選が開かれないんですけれども、いずれ自分で開けるようになりたいので、繰り返しになりますがレベル2になりたいですね」
いかがだっただろうか。
自分の地方やコミュニティのため、あるいはマジック全体のため。
一口にジャッジといっても、実はそれぞれ様々な考えを持ってイベントに臨んでいるのだ。
だが目標は違えど、グランプリを成功させるという1つの目標に向かって全力を尽くしてくれる存在であることに変わりはない。
これからもジャッジとして活動していく彼らを、温かく応援していこう。
そしてもし。
ジャッジの仕事に興味を持った、という方がいれば、日本のRegional Coorinatorであるレベル3ジャッジ、牧野(makino@icacup.com)までご連絡を。