自称・MTG最強ショップ決定戦!!

晴れる屋

By Daisuke Kawasaki

 高尾 翔太(東京)の使用する斬新なエスパー人間デッキ。環境の新たなソリューションとなりえるかと思われた高尾のデッキだったが、最終的にこのデッキを決勝戦で破ったのは、仲田 涼(神奈川)の使用する白単タッチ黒の人間デッキだった。

 二種類の人間デッキ同士の決勝戦、もしくは《ザスリッドの屍術師》によって次々と人間をゾンビとしていくネクロマンサー同士の対戦だったと後の世に語り継がれていくイベントとなるのだろう、グランプリ・静岡2014は。

 違う。

 真に語り継がれるべきイベントははじまってすらいない。会場にたぎる熱い思い、そして深い因縁。伝説が生まれるのはいつだってフィーチャリングエリア、そんなことは誰が決めた?デュエルをすることは物語を紡ぐことと同じ、ならば、物語がどこででも生まれるように、デュエルだって、机の上に縛られる必要はないのではないか?


 なにより、なんのために、グランプリ・静岡の会場中央にはリングが設置されているのだ!?


 グランプリ・静岡の決勝戦が終了、表彰式も終了、そしてニコニコ生放送も終了し、会場全体に「今回のイベントも終わったなぁ」といういつものあの空気が流れ始めた時、伝説となるマイクアナウンスが響き渡る。


「これより、会場中央リングに置きまして、本日のメインイベント、自称・MTG最強ショップ決定戦、BIGMAGIC vs. 晴れる屋を開催いたします」


 さぁ、ここからが静岡の本番だ。きっと、この対戦の記録が公式として残っていくことはないだろう。だからこそ、僕は、歴史の証人としてこの伝説を人々のために残さなければならない。


■選手入場、そして因縁勃発

 西川清吾リングアナによって、レフェリーの小出勝氏(靴の色は忘れたが、以後レッドシューズ小出と呼ばせていただく)の紹介の後、選手の入場が始まる。

 プロレスで、違う間違えた、マジックだ、これは。マジックにおいて最も重要とされるのは入場シーンである。殿堂(レジェンド)クラスのプロプレイヤーとなれば、フィーチャリングエリアへの入場シーンだけで、プロプレイヤークラブ報酬が発生するというウワサもあるくらいだ。

 まずは、Team BIGMAGICが、Queenの「We Will Rock You」をバックに、Bigwebマンを先頭に入場。チーム全員お揃いの、BIGMAGICのイメージカラー、ブルーのアフロをかぶっての入場だ。




 最初にリングインしたのは、自分自身が《稲妻》であり、ライトニング。お前は自分がこれまでにプレイしたバーンスペルの枚数を覚えているか?の名言を持つとか持たないとか。「関西最強のバーン使い」村栄 龍司!!

 続いて、日本のシングル価格はオレが決める、泣く子もタップするBIGMAGIC副店長にして、2013年マジック日本代表。スタンダードだけでなく、幅広いフォーマットで仕入れた知識を仕事に活かす「IQMTGマネージャー」日下部 恭平!!

 そして最後に控えるのは、日本のプロプレイヤーの歴史を切り開いた、来年でプロツアー優勝10周年。日本で一番赤への信心が高いのは!?と聞けば、誰もが答えるその名前、赤とドラゴンと天使、そして家庭を愛する「燃えるドラゴン、ミスタービッグレッド」黒田 正城!!

 会場を割れんばかりの拍手と歓声が包む。どうやら観客の多くはBIGMAGICを応援するべく集まっているようだ。だが、そんな観客を一気に黙らせるべく鳴り響く賛美歌。そう「ハレルヤ」のテーマだ。オレンジをイメージカラーとする晴れる屋チームは、マスコットキャラ「晴れる屋くん」の顔が書かれたみかんを観客に配りながら入場する。




 まずは、20世紀からDCIトーナメントセンターに通い詰め、今では晴れる屋トーナメントセンターの店長。新旧トーナメントセンターをもっとも深く知る男。デッキ選択に悩んだらもっとも簡単に勝てるデッキを選ぶ「不惑のイージーウィン」中島 主税!!

 続いて。日本国内グランプリ2連勝、だれもが知る最強の妖精使いにして、究極のマジック愛と至高の思考回路に自分自身も制御不能な《思考囲い》《苦花》行きの暴走マジック超特急!「不屈のストイシズム」高橋 優太!!

 そして、最後は、晴れる屋の首領にして、日本最強のストンピー使い。ストンピーというアーキタイプがあるのではない、齋藤が使えばそれはストンピー!誰よりもハッピーとストンピーを愛する「ストンピーの貴公子」齋藤 友晴!!




 以上、参加者6名が入場。そして、まずは齋藤がマイクを持つ。

齋藤 「あんなぁ、おめーらなんて小指一本で倒せるわ!」

 これに対応するように黒田がマイクを持って、一言。

黒田 「マナがあれば、なんでもできる!」

 まったく会話が成立してないが、トップデュエリスト同士、ましてやプロツアーチャンピオン同士であれば魂が震え、共感する。言葉の意味はわからずとも、観客席のマジックプレイヤーたちのボルテージが高まり、会場を歓声が包む。




 そして、二人の熱いやりとりに触発されたのか、村栄ことリュウジが高橋を挑発。それに対して熱い闘志を秘めた男、高橋が呼応し危うく大乱闘が発生、黒田も応戦の構えをとり、観客が戦いを煽る!みんなまって、ここはマジックの大会会場よ!




中島 「いや、一応、みんなマジックプレイヤーですし、マジックで勝負を決めましょうよ」

 中島による突然のマジレスマイクアピールによって、一瞬会場が静まり返る。中島が滑ったわけではなく、みんなが冷静になっただけなのだ!良かった!

、というわけで、一旦ブレイクが入ったところで、ルールが説明される。

 ルールは、レガシー、モダン、そしてスタンダードの3つのフォーマットで行われる。サイドボードは無しの60分1本勝負。互いに、対戦相手はまだ不明の状態から、両チーム大将によるメンバー表の交換が行われた。

 まず、第1試合のレガシーは、「日本最強のバーン使い」リュウジ vs. 「不惑のイージーウィン」中島のマジレス対決!

 続く第2試合、モダンは、「IQMTGマネージャー」日下部と、「不屈のストイシズム」高橋による新旧日本代表の因縁対決!

 最終試合は、大将戦。「ミスタービッグレッド」黒田と「ストンピーの貴公子」齋藤によるスタンダード対決となった。

 そして、優勝店舗が「日本最強のマジック店舗」を自称できることを確認。だが、所詮は自称。ここでさらなる追加ルールとして、敗北したチームが勝利チームのユニフォームを着た上で、相手店舗を褒め称える姿を生中継で放送することが提案される。

齋藤 「構わない。リングをオレンジ一色に染め上げてやるよ。ハッピーだ!」

 「リングにハッピーの雨が降るぜ」と言わんばかりの「ハッピーメーカー」齋藤の了承によって、未だかつて無い「リング上での」「店舗同士のプライドをかけた」マジックが、今、はじまる。

 試合開始前に齋藤が「いつものやるぞー」とチームメンバーに声をかけ、円陣を組む。

晴れる屋 「ゴーゴー晴れる屋!Yeah!」

 そんなことをやっている姿を見たことは一度もない。


■第1試合 村栄 龍司(BIGMAGIC) vs. 中島 主税(晴れる屋)

 ある、マジック界のレジェンドはこう言ったと言う。

「最強のカード?それは《山》《島》だね」

 伝説的な名言として伝えられているこのフレーズ。だが、この男だったらこういうだろう。「最強のカード?土地なら《山》、スペルなら《稲妻》」と。

 村栄 龍司。産声が「おぎゃー」ではなく「バーン」だったといいう言い伝えすらあるこの男が、《山》30枚《稲妻》30枚というレギュレーション外のデッキを作らないよう、レガシーのデッキは開始前に入念に小出レフェリーがテェックしたという。

 数々のバーン伝説を持つ村栄がリング内のテーブルについた瞬間、会場から「燃やせ!燃やせ!」の大コールが。

 先行村栄の一手目は当然の《山》。だが、そこからキャストされたのは《ゴブリンの従僕》

 バーンではない!ゴブリンだ!

 バーンの魂を勝利のためにゴブリンに売ってしまったのか、リュウジ!そんな失望とも取れる空気が会場に漂うが、中島が土地をおいた瞬間、会場の空気は張り詰め、リュウジの目が変わる。

 それは、《島》

 太古の昔より、マジックの二極と言われた赤と青。なんでもありのストロングマジック赤と、ドロー・カウンター・コンボを駆使する総合マジック青による対抗戦が、このリングの上で実現するのだ。このドリームマッチに興奮しないプレイヤーはいない。

 中島はゆっくりと《思案》をプレイすると、トップを固定して、ターンを返す。まるで、リュウジの出方を見て、いつでも関節を取りに行ける準備をするかのように。

 一方のリュウジは、相手が青であればと、先程までが嘘のような猛ラッシュを仕掛ける。まずは《ゴブリンの従僕》からの《包囲攻撃の司令官》で中島を逆さまに持ち上げると、ツームストン《ゴブリンの群衆追い》!!

 早くもダウン寸前の中島だが、ここで逆転の一手を打ち込む。赤に火力があるのならば、青にはコンボがある。《実物提示教育》で真のマジックを魅せつける。

 ここで、中島は、《実物提示教育》用にふせたカードをめくると……《グリセルブランド》!?いや、これでは返しのターンで死んでしまいかねない。中島は改めて手札から《騙し討ち》を魅せるという老練なテクニックを駆使、これにたいしてリュウジはレフェリーアピールをするが、小出レフェリーの判断はセーフ。

 そう、この大会のルール適用度は「プロレス」。反則は5カウントまでオッケーだ。

 中島は《水蓮の花びら》プレイから赤マナを生み出し、シャイニング式に《グリセルブランド》を場に呼び出して能力を起動。ここで渋い顔をして、さらに能力を起動。手札を見て、長考。必至に場を計算すると、《グリセルブランド》をリュウジに叩き込み、ライフを回復してターンを返す。

 ここでリュウジは一撃必殺の《ゴブリンの戦長》をプレイするが……これは文字通りのカウンター。そのまま、ライフを削りきれず、《引き裂かれし永劫、エムラクール》によるカウンターアタック!

 残りライフ13のリュウジはたまらずリングサイドに逃げ、チームメンバーである黒田にタッチを求めるが、黒田はこれを拒否。黒田に押し返されたリュウジは、中島からのエムラクールアタックのダメージが足に残っていたのか、たまらずダウン。




 この隙を見逃す中島ではなかった。フォールからの3カウント。

第1試合結果:シャイニングエムラクール→フォールで中島選手の勝利




■第2試合 日下部 恭平(BIGMAGIC) vs. 高橋 優太(晴れる屋)

 因縁がある。

 2012年のワールドマジックカップ。

 日本代表となった高橋を待っていたのは、いや、待っていなかったのは乗り換えるはずだった飛行機だった。

 長時間のタクシー移動によって疲労困憊した高橋はベストのパフォーマンスを発揮することができず、日本代表は無残な成績に終わった。

 2013年のワールドマジックカップ。

 前年の日本代表が無残な成績であったことから、この年の日本代表には無用と言って良いレベルのプレッシャーがかかっていたのかもしれない。

 飛行機に乗れなかったのは、オレだったわけじゃないのに。

 グランプリ会場のショップスペースで、BIGMAGICスペースから晴れる屋スペースの高橋の姿を見る日下部はそんな思いに支配されていた。

 ここまでは僕の勝手な思い込みで、彼らの間にはそんな因縁が無いことは厳重に伝えておきたいが、なんにしろ、現在それぞれショップブースを任される立場であり、日本代表経験者、そんな想像をふくらませてみたっていいじゃないか。

 とにかく、モダンで行われる「ミスターストイック対決」。技と技、そして魂と魂のぶつかり合いが期待される。




 先行は日下部。マリガンはなし。対する高橋は……テイクマリガン。

 そして、この隙を日下部は逃さない。弱った場所を攻め続けるのはマジックの常道。執拗なローシャッフルで高橋の膝を攻めていく。会場のBIGMAGICファンからは「マリガン!マリガン!」の大歓声。

 もし、これがグランプリ本戦、いや、PTQの会場だったとしてもマリガンコールをした観客たちは全員DQの上で、会場追放だっただろう。だが、繰り返すがこの大会のルール適用度は「プロレス」。会場を盛り上げる観客への懲罰規定は記載されていない。

 そして、日下部のローシャッフルが効いたのか、高橋はさらなるテイクマリガン、からのキープした土地は《ガヴォニーの居住区》1枚!

 執拗な膝攻めで無色マナしか出せない高橋にアップキープの《やっかい児》スクリューでの膝攻めからの足四の字《欠片の双子》固め!ギブアップ寸前、たまらず逃げ出した高橋だが膝のダメージの蓄積で立ち上がることが出来ない。



 高橋を屈辱的にフォールした日下部が、BIGMAGICに星を取り戻す。

第2試合結果:足四の字《欠片の双子》固め→フォールで日下部選手の勝利


■第3試合 黒田 正城(BIGMAGIC) vs. 齋藤 友晴(晴れる屋)

 ついに大将戦。この二人の戦いに余計な煽りは必要ないだろう。なにより、彼ら自身がマイクアピールで煽ってくれる。

齋藤 「おい、黒田!よく聞け!お前さ、日本人初のプロツアーチャンプとか言ってるけど、それ、何年前の話だよ!?あと、お前の子供、くそかわいいんだよ!おれんちの子供なんておはぎみたいなもんだぞ……でもマジックじゃまけねぇ。マジック愛が一番強いのだれだかしってるか!?」

黒田 「お前、前にオレんちに来た時、何しに来たんだ!?お前、オレのカード買いにきたんだろ!?あれでオレの家の家計、助かってんだよ!」

 よくわからないので、ゲームに目を移そう。

 齋藤は座禅状態からの、頬をビンタ。その間にシャッフルを終えた黒田はデッキをシャッフルしろと、たたきつけるが、対して齋藤は「まだやってるんじゃ!」とたたきつけ返す。コレに対する黒田のリアクションは……

黒田 「正直、すまんかった」

 としょっぱいもの。

 サイコロが7個を盤面に叩きつける斬新なムーブで先攻後攻を決める黒田。合計数字は27。対する齋藤数えるまでも無く、黒田が先手。

 マリガン判断時、齋藤が吠える。

齋藤《炎樹族の使者》3枚こい!」

 黒田は《山》をセット。同型対決かと見せかけて……《神聖なる泉》をタップインする齋藤。

 ここに黒田は、《山》セットから《灰の盲信者》……を、タップ状態の《神聖なる泉》に重ねてアタック。齋藤は《平地》をセット。

 続く黒田の土地にかぶせるアタックに齋藤はジャッジをコール。土地を邪魔するこの《灰の盲信者》をゲーム外に追放してよいかと確認する。黒田は4カウント以内だったと反論。当然ルール適用度は「プロレス」なので黒田の主張が通って、ゲームは継続される。




 齋藤は回転しながらのドローでの遠心力で土地を引きこもうとしたが、回転が足らなかったのか青マナをゲットできず、《拘留の宝球》《灰の盲信者》を止める。黒田は《炎樹族の使者》から《モーギスの狂信者》によって、信心を3点これによって、齋藤のライフは13。

 続くターンに土地を引けない齋藤。だが、黒田も続くカードがない。齋藤はロープの反動を利用したドローによって《神聖なる泉》をドロー、これで《至高の評決》でラリアットの様に黒田のクリーチャーをなぎ払う。

 返しで黒田は《パーフォロスの槌》を垂直落下式でプレイ、そして、そのまま《山》をサクリファイスして、アイアン・ゴーレム・フロム・ヘル!!

 ジャッジにトークンを要求する黒田に対して、齋藤は晴れる屋トークンを渡す。この挑発行為にリング外にいたリュウジが乱入しようとするが、黒田はそれを制する。そう、このまま行けば、晴れる屋トークンで齋藤にトドメをさすことが可能なのだ!齋藤もこれに気が付き、慌ててトークンをSaitoCardshopのものに変えるが本質的には変化ない。何故か会場では「英語フォイル!」のコールが!

 齋藤は落ち着いてドロー……手札はカウンターが2枚に《今わの際》《思考を築く者、ジェイス》《太陽の勇者、エルズペス》そして、《スフィンクスの啓示》。土地は4枚なので、回復できるライフは1。手札を見て、長考する齋藤だが……あまりの長考とジェイスの姿に混乱し齋藤は椅子から崩れ落ちるよに倒れる。そこを黒田はフォール。

 だが、齋藤、最後の意地でフォールを返す。カウントは2!齋藤のライフも2!!

 しかし、盤面はどうやってもさばけない。齋藤が椅子に座るが、黒田は判定勝ちを主張。齋藤は落ち着いて一言。

齋藤 「早く、サイドしてよ」

 一本勝負だったはずでは!?当然、黒田も自身の勝利を主張する。

 ルール適用度が「プロレス」であろうと、プレイヤー同士の主張が食い違えば、最終的な判断は、ヘッドジャッジ、つまり小出レフェリーに任される。

 マイクを持ち、小出レフェリーが重々しく口を開く。

小出 「せっかくのいい試合なので、2本先取」

 マジック界に残る名言の誕生だ!古の浅原・三原戦以来の決戦中のルール変更に会場はどよめく。

 なんにしろ、サイドボーディングが行われ、残ったサイドボードの枚数がレフェリーチェックされた上で、2本目が開始される。

 黒田は、相手のデッキをロープの反動を利用してシャッフルし、齋藤は頬を叩く。何を書いているかわからないかもしれないが、これは実際にリング上で行われたことだ。

 今度は《神聖なる泉》からの《島》につなぐ齋藤。対して、黒田は《山》からの……竜巻ドローで土地セット。ここで、齋藤は《凍結燃焼の奇魔》。シークレットテックだ!初めて、普通のマジックのプレイに会場が盛り上がる!

 黒田は《パーフォロスの槌》をプレイするが、返しで齋藤は《思考を築く者、ジェイス》でジェイス固めの姿勢。

 プラス能力で《至高の評決》《島》《神聖なる泉》のうち後者2枚を手に入れた齋藤だったが、黒田は《モーギスの狂信者》でジェイス固めを抜けだすと、そのまま下から突き上げるような、膝蹴りならぬ《モーギスの狂信者》の速攻で齋藤のライフを削る。

 しかし、ここで齋藤は《テューンの大天使》。そう、齋藤は黒田のダメージ対策は万全だったのだ。これは効きますよ、とのことで、黒田は、まずは《モーギスの狂信者》でアタック、これをテイクさせたが、黒田はアンタップ状態で《嵐の息吹のドラゴン》をプレイ。

 このプロテクション白のドラゴンが《テューンの大天使》がどうにもならない。齋藤は、《凍結燃焼の奇魔》を召喚すると、一体でアタック。黒田はこれを通すと、齋藤は《アゾリウスの魔除け》ので絆魂を付けて、ライフゲインし+1/+1カウンターをえる齋藤。またも、普通のマジックのプレイに歓声があがる。そう、半分忘れていたが、これはマジックの試合だ。

 齋藤が反撃の準備を整え、黒田は回答を求められる。

 ……黒田はドローをするとガッツポーズ。すべてを察した観客は歓声をあげる。

 2004年。黒田をプロツアーチャンピオンに導いたのは、赤単のビッグレッドだった。赤への信心、感謝の心。黒田はこの日まで、毎日の感謝の1万回山タップをサボったことがない。

 ここでキャストしたのは《モーギスの狂信者》。まずは信心でダメージを与えると、畳み掛ける様に2枚目をキャスト!黒田のフィニッシュホールド、エベレストジャーマン《モーギスの狂信者》だ!

 《アゾリウスの魔除け》をドローモードで使用し、回答を求める齋藤だったが……そのドローを見る前に、エベレストジャーマン《モーギスの狂信者》のダメージでダウン。すかさず黒田はフォール。

 このフォールを齋藤は返せない。

 ストンピーとビッグレッドの頂上決戦、ここに決着。




第3試合結果:エベレストジャーマン《モーギスの狂信者》→フォールで黒田選手の勝利




 こうして、マジックショップ界を局所的に二分した戦いは終わり、BIGMAGICは日本最強のMTGショップを自称する権利を得た。そして、青いTシャツとアフロを身につけた晴れる屋メンバーがマイクを持つ。




齋藤 「ビッグマジックさん、正直なめてました。僕も髪が伸びたら、アフロにします」

高橋 「ビッグマジック・サイコー」

中島 「髪型、もともとアフロみたいで変わらなくてすみません。ビッグマジック最高でした」

 マイクを持つ、彼らの顔はどこか晴れ晴れとしていた。

 そう!どちらが本当に最強のマジックショップであるかなんて関係ないではないか。マジック界を盛り上げたいという共通した思い、それがあるから、この2店舗は共同主催でグランプリを開催したのだ。

 BIGMAGICと晴れる屋のリング上の戦い、そして、共同主催されたグランプリ・静岡。このイベントは、いつまでも伝説として語り継がれることだろう。


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