普段は東京でレガシーを中心にマジックを楽しんでいるものです。トリコミラクル、ANT、BUG続唱、RUGデルバーなどを好んで使っています。
このコラムでは、毎回ゲストを招待してレガシーのデッキをアーキタイプ別に解説していきます。各アーキタイプのエキスパートがゲストとして参加することにより、「このデッキで勝ちたい」「あのデッキに勝ちたい」に応えたいと思っています。前編ではデッキについて、後編ではプレイについて焦点をあてていきます。
それでは、今回のゲストを紹介します。
今回のゲストは 「RUGデルバー」を使っている土屋 洋紀(東京)さんです。DairynoteではRockeyというHNで活動していらっしゃいます。
土屋さんは、Eternal Festival Tokyo 2011でTOP8、エターナルパーティー2012で5位、晴れる屋オープン記念レガシー杯で3位などの戦績をもっています。
斉藤 「本日は『RUGデルバー』について話していきたいと思います。土屋さん、よろしくお願い致します。」
土屋 「よろしくお願いします。」
■RUGデルバーとは?
斉藤 「こちらが、一般的なRUGデルバーのレシピです。」
3 《Tropical Island》 3 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《不毛の大地》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《敏捷なマングース》 4 《タルモゴイフ》 -クリーチャー(12)- |
4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《呪文貫き》 4 《もみ消し》 4 《稲妻》 1 《Chain Lightning》 1 《思考掃き》 4 《目くらまし》 4 《Force of Will》 -呪文(30)- |
3 《水没》 2 《狼狽の嵐》 2 《赤霊破》 2 《外科的摘出》 2 《古えの遺恨》 2 《乱暴+転落》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
斉藤 「RUGデルバーの簡単なデッキ説明をお願いします。」
土屋 「このデッキは、《秘密を掘り下げる者》や《タルモゴイフ》などの優良生物と火力で素早くライフを削り切ることを目的としているテンポデッキの代表です。
《秘密を掘り下げる者》の能力を有効活用するためにデッキの半分がインスタントやソーサリーで構成されています。《不毛の大地》と《もみ消し》での土地破壊によって低マナ域の勝負を持ち込むのが特徴です。
他のデッキがあまり行動できない間に勝ちにいくデッキですね。」
■なぜRUGデルバー?
土屋 「《稲妻》が好きだからです。ボルト算という持論がありまして、<稲妻>を6回相手にあてると勝てるデッキだと思っています。(※編注:レガシーは各種フェッチランドや《思考囲い》、《Force of Will》などでライフが18を割っていることが殆どなので18点ダメージを与えれば勝てるということ。)《敏捷なマングース》や《秘密を掘り下げる者》で殴るのも1回分の《稲妻》と考えています。
なので、《タルモゴイフ》での4点は自分の中でアドバンテージがとれた扱いになります。」
斉藤 「面白い持論をお持ちですね。では、赤単バーンやURバーンではない理由があるのですか?」
土屋 「生物を除去されるのが昔から嫌いなので、被覆を持っている《敏捷なマングース》を好んでいます。以前は《聖トラフトの霊》を使ってエタフェスTOP8も残りました。除去されない、安定したクロックはやはり大事ですね。」
■メタ上ではどうか?
斉藤 「RUGデルバーはメタ上での立ち位置はどうなのでしょうか?」
土屋 「RUGデルバーは丸いですよ。(ここでの”丸い”とはレガシー特有の表現で、コントロール、コンボ、ビート全てと戦えることをいう)
しかし、以前より環境に《死儀礼のシャーマン》・《突然の衰微》・《タルモゴイフ》が増えたので今までより厳しい立ち位置になったと感じます。以前はどんなデッキにも有利がついていましたので。」
斉藤 「たしかにそうですね。マナを確保する《死儀礼のシャーマン》、生物を確実に除去してくる《突然の衰微》、《稲妻》では落とせない《タルモゴイフ》はあまり見たくないカードたちでしょう。
そんな環境の中で相性差はどう感じますか?」
土屋 「明らかに不利と感じるマッチアップはあまりないですね。ミラクルが少しきついぐらいでしょうか。ただ、非常に有利というマッチアップも少ないので、ショーテル、ANT、ジャンド、BUG系すべてに負ける要素があります。」
■一般的なレシピとの比較
斉藤 「では、実際に土屋さんが使っているレシピを踏まえた上で一般的なレシピとの違いを教えてくだい。」
土屋 「これが晴れる屋トーナメントセンターオープン記念レガシー杯で使用したレシピです。」
3 《Tropical Island》 3 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《不毛の大地》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《敏捷なマングース》 4 《タルモゴイフ》 -クリーチャー(12)- |
4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 3 《もみ消し》 3 《ギタクシア派の調査》 2 《呪文貫き》 1 《死亡+退場》 4 《目くらまし》 1 《四肢切断》 4 《Force of Will》 -呪文(30)- |
3 《水没》 2 《ファイレクシアの破棄者》 2 《狼狽の嵐》 2 《被覆》 2 《発展の代価》 2 《乱暴+転落》 1 《紅蓮破》 1 《古えの遺恨》 -サイドボード(15)- |
斉藤 「なにがトップメタだと思ってこのレシピのカード選択をしたのか教えてください。」
土屋 「トップメタを5つあげるとしたら、RUGデルバー・BGx系(ジャンド、BUG)・スニークショー・エルフ・ミラクルです。」
土屋 「違いは、メインからみていくと、《死亡+退場》の存在ですね。《死儀礼のシャーマン》や《タルモゴイフ》が増えたことにより、除去が《稲妻》4枚じゃ足りないと感じたので増やしました。《死亡+退場》の「Dead」では《死儀礼のシャーマン》を、「Gone」では《タルモゴイフ》や《墓忍び》を戻せる強みがあり環境に多いBGx系に対しての回答です。《四肢切断》も同じ理由になります。デスブレードのような《タルモゴイフ》を使わないデッキが増え、《タルモゴイフ》が環境から以前のように減るようであれば、《タール火》なども選択の一つになると思います。まれに、「Gone」で場に出てしまった《グリセルブランド》を対処できたりします。」
土屋 「サイドでは《発展の代価》、《被覆》、《ファイレクシアの破棄者》の3種が珍しいかもしれません。
環境に増えたBGx系やデスブレードは基本地形をほとんど使いません。これらのデッキは土地が並ぶにつれアドバンテージを稼ぐのは得意です。それらへの対抗策が《発展の代価》です。《発展の代価》はそれ1枚だけで相手の戦略を否定し、ボルト算的にもかなり勝利に貢献してくれます。1枚引ければいいので、2枚という枚数です。
また《虚空の杯》などを使ってくるデッキにもこれだけで勝てたりします。」
土屋 「次に、《被覆》。よく使われる《紅蓮破》・《赤霊破》などのカードと比較になるのですが、《紅蓮破》・《赤霊破》でカウンターしたいカードの代表としては《実物提示教育》や《相殺》があります。《被覆》は《実物提示教育》をカウンターできるだけでなく、エルフの《垣間見る自然》・《緑の太陽の頂点》・《自然の秩序》、ANTの《冥府の教示者》、ミラクルの《終末》や《天使への願い》など、かなり多くのカードをカウンターできます。《相殺》系デッキに対しては一般的なカウンターを《相殺》などに使い、奇跡呪文を《被覆》でカウンターします。ちなみに、最近の石鍛冶デッキは攻めるデッキが増えた(黒が濃くなった)ので《紅蓮破》・《赤霊破》は以前より弱くなったとも感じています。」
土屋 「《紅蓮破》・《赤霊破》のどちらかを使う場合は、《紅蓮破》をお薦めします。《紅蓮破》は《赤霊破》と異なり「パーマネント1つを対象とし、その色が青である場合、それを破壊する。」と書いてあるので、土地などのパーマネントに空打ちすることにより、《敏捷なマングース》のスレッショルドを助けることができるメリットがあります。」
土屋 「《ファイレクシアの破棄者》もANT、ミラクル、スニークショー、エルフに対して入る幅広いカードです。ANTには《ライオンの瞳のダイアモンド》を止めるだけで暴勇しにくくなる上、《むかつき》が必要とするライフを削れます。ミラクルには要である《師範の占い独楽》を止めることができる他、《秘密を掘り下げる者》《敏捷なマングース》への優秀な除去である《仕組まれた爆薬》を止めることもできます。スニークショーには《騙し討ち》を止めながら《実物提示教育》へのカウンターを構えながら戦闘にいけます。エルフには《ワイアウッドの共生虫》を止めるのはもちろんのこと、危ないマナ生物や、サイドインされる《漁る軟泥》を止めることができます。」
斉藤 「メインが非常に丸いデッキなので、サイド後に対策を水増しすることによりどんなデッキとも戦えるのはいいことですね。」
■メタが変わったら?
斉藤 「なにかメタにあわせた改良案とかあれば教えてください。
土屋 「今は《死儀礼のシャーマン》をメタに合わせてデッキを組んでいますが、もし環境にコンボが増えるようであれば、《稲妻》以外の追加除去の部分は《呪文貫き》に変えるでしょうね。コントロールが増えるようであれば、有効なカードである《ヴェンディリオン三人衆》や《森の知恵》が候補に挙がります。
斉藤 「カードの選択を少し変えるだけで、かなり印象の違うデッキに変わりますね。」
次回はRUGデルバーの弱点やサイドボードの考え方、事例をあげての小テクを紹介するといったプレイ編をお届けします。
では、次回プレイ編でお会いしましょう。