こんにちは。
今回紹介するデッキは、青白奇跡コントロール(以下ミラクル)です。
前回までは各アーキタイプのスペシャリスト達をゲストにお招きして話を伺ってきましたが、このデッキに関しては、昨年末のThe Last Sun 2013をはじめとして何度となく大きな大会で使用したことのあるアーキタイプということで、僕自身が解説させていただこうと思います。
僕の主な戦績としては、エターナルパーティー2012:3位、エターナルパーティー2013:8位、The Last Sun 2013:4位などがあります。
■ミラクルとは?
まずは、GPパリ14で入賞したレシピをご覧ください。
4 《島》 2 《平地》 3 《Tundra》 2 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 2 《乾燥台地》 1 《Karakas》 -土地(22)- 3 《瞬唱の魔道士》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(4)- |
4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 2 《思案》 2 《呪文貫き》 2 《天使への願い》 2 《対抗呪文》 4 《Force of Will》 4 《終末》 3 《相殺》 4 《師範の占い独楽》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(34)- |
3 《狼狽の嵐》 2 《赤霊破》 2 《安らかなる眠り》 2 《仕組まれた爆薬》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《紅蓮破》 1 《解呪》 1 《対抗呪文》 1 《天使への願い》 1 《至高の評決》 -サイドボード(15)- |
「ミラクル」「奇跡コン」と呼ばれるこのデッキは、「アヴァシンの帰還」発売以降確立されたアーキタイプです。
先日開催されたGPパリ14では、優勝こそチームアメリカに譲ったもののトップ8に3人を送り込む活躍を見せた、今最も旬なレガシーデッキといえるでしょう。
通常は任意のタイミングでは誘発しない「奇跡」呪文を、《渦まく知識》や《師範の占い独楽》といったライブラリ操作によって自分の好きなときにプレイできるのが最大の特徴です。特に《師範の占い独楽》による1マナかつインスタントタイミングの全体除去=《終末》を有することから、対クリーチャーデッキに高い勝率を誇ります。
さらに、《師範の占い独楽》とコンボを形成して相手の呪文をシャットアウトする《相殺》がコンボデッキに対するアンチカードになり、レガシー環境では数少ないコントロールデッキとして成立しています。
採用される「奇跡」呪文は2種類。
まず、対クリーチャー戦略の要となる《終末》。
この軽い全体除去に加えて、《剣を鍬に》や《Force of Will》といったレガシーの定番カードで要所を抑え、盤面をコントロールします。
続いてフィニッシャーである《天使への願い》。
X=4~6でキャストすることにより、一撃必殺のフィニッシュスペルとなります。
また、相手のアタックに合わせて《師範の占い独楽》などで「奇跡」することにより、除去として機能することもあります。
■なぜミラクル?
「アヴァシンの帰還」のスポイラーを見て、発売前から奇跡呪文を試したくて知り合いと一緒に調整をしたのがきっかけです。
発売日、その翌日と大会に出てみたのですが、どちらも優勝できたので、それからは有力な選択肢としてしっかり練習し始めました。
僕は元々コントロールデッキが好きなので、使ってみてすぐに気に入りました。
4 《島》 2 《平地》 3 《Tundra》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 1 《湿地の干潟》 1 《Karakas》 3 《ミシュラの工廠》 2 《不毛の大地》 -土地(24)- 4 《石鍛冶の神秘家》 3 《瞬唱の魔道士》 3 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(10)- |
4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 3 《呪文嵌め》 4 《Force of Will》 3 《終末》 4 《師範の占い独楽》 1 《梅澤の十手》 1 《殴打頭蓋》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(27)- |
2《エーテル宣誓会の法学者》 2《翻弄する魔道士》 2《外科的摘出》 2《流刑への道》 2《解呪》 2《基本に帰れ》 2《大祖始の遺産》 1《饗宴と飢餓の剣》 -サイドボード(15)- |
5《島》 2《平地》 4《Tundra》 4《溢れかえる岸辺》 4《霧深い雨林》 1《汚染された三角州》 1《Karakas》 1《アカデミーの廃墟》 -土地(22)- 3《瞬唱の魔道士》 3《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(6)- |
4《剣を鍬に》 4《渦まく知識》 3《呪文嵌め》 1《対抗呪文》 1《天使への願い》 4《Force of Will》 3《終末》 4《相殺》 4《師範の占い独楽》 1《ヴィダルケンの枷》 3《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(32)- |
3《外科的摘出》 3《呪文貫き》 2《流刑への道》 2《解呪》 2《基本に帰れ》 2《仕組まれた爆薬》 1《トーモッドの墓所》 -サイドボード(15)- |
当時は《石鍛冶の神秘家》を使うか抜くかで悩んでいて、2種類のレシピで練習していました。
赤をタッチしていないところから、弱点を把握しきれていなかったことが窺えますね。
現在ではレジェンドルールの変更もあり、最も苦手な《精神を刻む者、ジェイス》対策にあたる《赤霊破》や、テンポデッキに非常な効果的な《血染めの月》をタッチした形が主流になっています。
僕は昔からコントロールデッキが好きで、レガシーでもコントロールを使いたいと考えていました。
しかしレガシーというフォーマットは1枚1枚のカードが強力で、たった1枚でゲームに勝てるパワーをもったカードがたくさんあります。
RUGデルバー、スニークショーなど、Tier1と呼ばれるデッキも色々使ってきましたが、どれも3~4ターン目までに実質的に勝敗を決するような、強力な攻め手を持ったデッキです。
攻撃的なデッキが蔓延するレガシーにおいて、なぜ本質的に攻めに劣ってしまう受動的なデッキであるミラクルが、唯一コントロールデッキとしてメタの一線にあり続けることができるのか、考えてみてください。
個人的な意見ですが、レガシー環境で別格の強さを持つカードは2種類あると思っていて、一つは《実物提示教育》、もう一つが《精神を刻む者、ジェイス》です。
コンボ戦などを除けば、《精神を刻む者、ジェイス》を安全に着地させるまでがゲームで、《精神を刻む者、ジェイス》が動き始めてしまえば、その先はなにもしなくても「神」と称されるこのPWがプレイヤーを勝たせてくれます。
つまりミラクルが強いのは、相手デッキの最速の回りを阻害しつつ、<精神を刻む者、ジェイス>を最も強力に運用できるデッキであるということがその理由だと僕は思っています。
ミラクルには他のTier1デッキのような目に見えるブン回りはありませんが、《渦まく知識》と《師範の占い独楽》による豊富な選択肢から、様々な応手を選択することができます。
<精神を刻む者、ジェイス>や<天使への願い>といった明確な目標を設定し、そこに至るまでの相手の動きとこちらのリアクション、それに対する相手のプレイングまでを予測して、最適なルートでゴールを目指す。
レガシーにおいて「対戦相手と最も会話できるデッキ」が、このミラクルというデッキなのです。
■ミラクルが大きな大会に強いわけ
もう一つミラクルを使う大きな理由として、「大きな大会に強いデッキ」であるということが言えます。
レガシー環境の有力アーキタイプとして、テンポデッキとコンボデッキがあります。
前者の代表はRUGデルバーやパトリオット(UWRデルバー)、後者の代表はスニークショーですが、それらのデッキは強いプレイヤー達が好んで使うアーキタイプでもあり、上位卓を見渡せば必ず目にすると思います。
ミラクルはそれらに対して高い勝率を誇るのです。
1.テンポデッキに強い理由
《剣を鍬に》、《終末》といった軽量除去が多く、また基本地形を多く有することで、テンポデッキの「マナ否定戦略」(※)を否定します。「相手の態勢が整わないうちに殴り切る」のが基本であるテンポデッキに対して、「殴り切らせない」ことが可能なのがミラクルというデッキです。
マナを伸ばして態勢を整え、《相殺》や《血染めの月》といった、相手に対して致命的になるパーマネントを設置することが目標となります。
2.スニークショーに強い理由
メイン戦は多くの除去が役に立たないマッチアップなので不利と言えますが、《相殺》などのメインでは対処できないパーマネントを設置することで勝利を目指します。
サイドボード戦はそれらの除去が抜け、《紅蓮破》や《ヴェンディリオン三人衆》をはじめとする追加の妨害手段や、《謙虚》《罠の橋》といった対処されなければ勝ちとなるパーマネントをサイドインすることで、スニークショー側が嫌がるカードの集合体となります。
最大勢力であるこれらのデッキに勝てることに加えて、多くの人はこの最大勢力をメタるため、ミラクル対策に意識が向きにくいことも、ミラクルを「大きな大会に強いデッキ」たらしめています。
※編注:「マナ否定戦略」とは、《不毛の大地》《もみ消し》などを使って相手のマナ基盤を縛りながら、《秘密を掘り下げる者》のような低コストクリーチャーでビートダウンする戦略のこと。レガシーではRUGデルバー、パトリオット(UWRデルバー)などがこの戦略を用いる。
■一般的なレシピとの違いは?
僕がThe Last Sun 2013で使用したレシピはこちらです。
5 《島》 2 《平地》 3 《Tundra》 3 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 2 《Karakas》 -土地(23)- 2 《瞬唱の魔道士》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《造物の学者、ヴェンセール》 -クリーチャー(5)- |
4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 2 《呪文貫き》 1 《対抗呪文》 2 《天使への願い》 4 《Force of Will》 3 《終末》 3 《相殺》 4 《師範の占い独楽》 2 《罠の橋》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(32)- |
2 《紅蓮破》 2 《赤霊破》 2 《摩耗+損耗》 2 《安らかなる眠り》 1 《白鳥の歌》 1 《狼狽の嵐》 1 《天界の粛清》 1 《至高の評決》 1 《血染めの月》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
メインから<罠の橋>を採用したのが最大の特徴です。
このカードは、大きな大会で必ず多数いるスニークショー対策として有効なだけでなく、《終末》以外で対処しにくい《真の名の宿敵》や《敏捷なマングース》を封殺できる優秀なカードで、環境のソリューションだと思って採用しました。
以前からサイドカードとして必ず1枚は採用していましたが、The Last Sun 2013ではメインに2枚と大幅に増量しました。
これは、The Last Sun 2013というプロも参加する大規模な大会では、有力なプレイヤーはテンポデッキかスニークショーを選択する可能性が高いと考えたためです。
スニークショーに対する有用性は言うまでもなく、テンポデッキの代表格であるRUGデルバーやパトリオットも、基本的に《罠の橋》を対処するカードがないため、場に出てしまうだけで勝ちとなります。
実際にこれ1枚で勝つゲームは非常に多く、大会を終えてさらにこのカードが好きになりました。
ゲームを簡単にする1枚なので、これを読んでくれた皆さんにも使って実感してほしいと思っています。
《精神を刻む者、ジェイス》との相性も良く、海外のレシピで殆ど見かけないのが不思議だとさえ思います。
もう一つ改良を加えた点としては、《実物提示教育》やPWに強い《造物の学者、ヴェンセール》をメインに採用したという点があります。
その《造物の学者、ヴェンセール》や《ヴェンディリオン三人衆》と相性が良く、《実物提示教育》から出される《引き裂かれし永劫、エムラクール》《グリセルブランド》や、《終末》《精神を刻む者、ジェイス》を止めてくる《ガドック・ティーグ》に強い《Karakas》も直前で2枚に増量しました。
苦手な《ヴェールのリリアナ》や《精神を刻む者、ジェイス》を簡単に対処できるようになり、この調整は成功だったと思います。
《真の名の宿敵》の登場により、メタゲームの中心は、《真の名の宿敵》で戦場の主導権を握るデッキか、盤面を無視して勝利するコンボデッキを使うかという二択だったと思います。
そのような2つのデッキに絶対に負けないよう調整したのが、上記のレシピでした。
■メタに合わせた変更点
このデッキは、特定のアーキタイプに対するメタカードが多いので、それらの入れ替えでメタゲームの変化に対応することができます。
◇ビートが増えた場合
《相殺》は盤面に触れるカードではなく、そもそもカウンターができないことも多いため、ビートダウンデッキ相手には基本的に不要です。
環境に多くいると予想される場合には、《相殺》を減らし、《至高の評決》や《仕組まれた爆薬》などの全体除去を増量しましょう。
◇コンボが増えた場合
ビートダウン相手とは逆に、ほとんどのコンボデッキ相手に《相殺》が重要な役割を果たすので、3枚以上は採用したいですね。
スニークショーに対しては《罠の橋》や《真髄の針》、ドレッジに対しては《安らかなる眠り》など、メタカードの枚数を増減させます。
《ヴェンディリオン三人衆》や《翻弄する魔道士》といったクロック兼妨害手段となるカードも良く刺さるので、サイドボードには用意しましょう。
◇テンポが増えた場合
現状、テンポデッキの多くは、《罠の橋》が決定打となるレシピがほとんどです。また、戦略上軽いカードを大量に含むデッキなので、《相殺》も効果的です。
これらのカードをメインから採用するべきでしょう。
テンポデッキは3色以上のカラーパターンが多く、《血染めの月》もキラーカードとなるので、これもメインに入れることを検討します。
他には、《至高の評決》のような全体除去を追加で入れます。
◇コントロールが増えた場合
PWを巡る攻防になることが予想されますので、《ヴェンディリオン三人衆》や《造物の学者、ヴェンセール》を増量しましょう。
相手の《精神を刻む者、ジェイス》に強い《遍歴の騎士、エルズペス》も候補に挙がります。
次回はミラクルの弱点やサイドボードの考え方、事例をあげての小テクを紹介するといったプレイ編をお届けします。
では、次回プレイ編でお会いしましょう。