ちょっとMADに《異端の癒し手、リリアナ》でデッキを組んでみよう

井川 良彦



 《異端の癒し手、リリアナ//反抗する屍術師、リリアナ》






 今セットの目玉である「変身」持ちのプレインズウォーカーの中でも、屈指の性能を誇る新カードです。


 一度「変身」さえすれば、モダン・レガシーでも大活躍中の《ヴェールのリリアナ》に非常に似た能力を持っています。



 これは!!!!ぜひ!!使いたい!!!!!

 ということで、この期待の新鋭を活躍させるべくデッキを組んでいきましょう!



■ どういうデッキを組むか


 今回は「スタンダード環境」で、「出したターンに変身させること」をテーマにデッキを組んでみたいと思います。

 フォーマットにスタンダードを選んだのは、このカードはモダン環境での活躍がある程度約束されているため、それ以外のフォーマットを選択したかったからです。

 なぜモダンで《異端の癒し手、リリアナ》が活躍しやすいかというと、《臓物の予見者》《カルテルの貴種》などのマナを使わずに生け贄に捧げるクリーチャーが豊富なためです。


臓物の予見者カルテルの貴種


 これらのクリーチャーがいれば、《異端の癒し手、リリアナ》を任意のタイミングで「変身」させることができるので、【アブザンカンパニー】や、行弘くんが組んだ【おやつカンパニー】《異端の癒し手、リリアナ》が入る可能性が高いのではないかと思います。

 では、スタンダードだとどうでしょう?

 実は今のスタンダードには、実用的なマナを使わずに生贄に捧げるクリーチャーがほとんどいないのです。『マジック・オリジン』での再録が《ナントゥーコの鞘虫》じゃなくて《血の座の吸血鬼》だったら《異端の癒し手、リリアナ》よりも先に出しておけたのになぁ、と残念に思った方は多いのではないでしょうか。


ナントゥーコの鞘虫血の座の吸血鬼


 もうひとつの「出したターンに変身させること」に固執するのは、今回のプレインズウォーカーたちはクリーチャー面からのスタートなので、「出してターンエンド」だと比較的簡単に対処されてしまうと予想されるからです。

 また、裏面の「+2:各プレイヤーはそれぞれカードを1枚捨てる。」の能力は、動き出すのが早ければ早いほどリソースを締め上げることができるのは《ヴェールのリリアナ》で誰もが経験していることでしょう。


ヴェールのリリアナ


 ということで、「スタンダードでデッキを組むこと」「出したターンに変身させること」を軸にしてデッキを組んでみることにしました。



■ 出したターンに変身させよう


 まず《異端の癒し手、リリアナ//反抗する屍術師、リリアナ》は当然4枚。スタート地点はここからです。



「リリアナスペシャル」



-土地(0)-

4 《異端の癒し手、リリアナ//反抗する屍術師、リリアナ》

-クリーチャー(4)-


-呪文(0)-
hareruya



 「スタンダードでは0マナで生け贄にできるクリーチャーがほとんどいない」と先述しましたが、果たしてまったくいないのでしょうか?

 ということでカードリストを穴が開くほど見てみたところ……見つけました!


発生器の召使い


 「マナを払わずに」「2マナ以下で」「生け贄に捧げることができる」、スタンダード唯一のカード!


 また、『マジック・オリジン』にはこんな新戦力もいました!




 《電結の荒廃者》《鋼の監視者》と相性が良いので、モダンの親和で使われるかも?と噂されているコイツですが、このデッキでの使い方は「X=0」での自殺!

 そう、「0マナで戦場から墓地に直行させることができる」スタンダード唯一のカードなのです!


 《発生器の召使い》《搭載歩行機械》も、どちらも《異端の癒し手、リリアナ》→《反抗する屍術師、リリアナ》に即変身」をかなえてくれる強力(?)なカードたち!

 「変身」させるためにリソースを使い過ぎな気がしなくもないですが、まぁそんな小さいことには目を瞑りましょう。



「リリアナスペシャル」



-土地(0)-

4 《搭載歩行機械》
4 《発生器の召使い》
4 《異端の癒し手、リリアナ//反抗する屍術師、リリアナ》

-クリーチャー(12)-


-呪文(0)-
hareruya





■ できるだけ早いターンに変身させよう


 かつてモダンで、そして現在レガシーで行われている「1ターン目《死儀礼のシャーマン》からの2ターン目《ヴェールのリリアナ》」には、それだけでゲームに勝利しうるほどの、圧倒的な強さがあります。

 「早ければ早いほど強い」

 これが真だとするならば、せっかくなので夢を追いかけて奇跡の「2ターン目《異端の癒し手、リリアナ》への変身」を目指すしかないですね。

 2ターン目に3マナ出すために必要なカードは……。



「リリアナスペシャル」



-土地(0)-

4 《羽ばたき飛行機械》
4 《搭載歩行機械》
4 《エルフの神秘家》
4 《発生器の召使い》
4 《異端の癒し手、リリアナ//反抗する屍術師、リリアナ》

-クリーチャー(20)-
4 《バネ葉の太鼓》

-呪文(4)-
hareruya




エルフの神秘家羽ばたき飛行機械バネ葉の太鼓


 このカードたちの力を借りることによって、2ターン目に3マナ出すことが可能になりました。
 上記の《発生器の召使い》《搭載歩行機械》に比べると、見慣れたトーナメントレベルのカードなので、これらをデッキに入れただけで強そうなデッキに見えてきました(病気)。


 とは言え、毎回これらのカードが初手にくるわけではありません。
 少し下振れをケアして「3ターン目に4マナから《異端の癒し手、リリアナ》+1マナで生け贄」プランも視野に入れると……




「リリアナスペシャル」



-土地(0)-

4 《羽ばたき飛行機械》
4 《搭載歩行機械》
4 《エルフの神秘家》
4 《発生器の召使い》
3 《森の女人像》
4 《異端の癒し手、リリアナ//反抗する屍術師、リリアナ》

-クリーチャー(20)-
4 《バネ葉の太鼓》
3 《巻き添え被害》

-呪文(4)-
hareruya




森の女人像巻き添え被害


 追加のマナクリーチャーと、1マナでサクれるカード。実に合理的ですね。
 どちらも4枚入れたくなりましたが、既に2枚引きたくないカードが大量に入っているので、3枚でグッと我慢しました。デッキ構築にはバランス感覚も必要なのです。



■ 新デッキ、完成!!

 さてここまでの段階で、「出したターンに変身させること」というコンセプト通りにデッキの骨格を作ることができました。

 土地が20枚だとしてもまだ結構な枚数のスペースがあるので、ここからは肉付けをしていきましょう。


 《異端の癒し手、リリアナ》こそ「変身」するようにはなりましたが、ただ「変身」させるだけではマジックに勝つことはできません。なんせ《反抗する屍術師、リリアナ/Liliana, Defiant Necromancer》自身は殺傷能力が皆無なのです。


 モダンの「黒緑」系デッキの《ヴェールのリリアナ》がなぜ強いのか。それはリソースを削り合っている間にゲームを速やかに終わらせてくれる《タルモゴイフ》がいるから、と言っても過言ではないでしょう。

 このデッキでもリソースを絞りながら勝てるように、《タルモゴイフ》のように軽く、そして強いフィニッシャーを入れたいですね。

 コストパフォーマンスで《タルモゴイフ》に匹敵するカードといえば……。


黄金牙、タシグルグルマグのアンコウアーティファクトの魂込め



 さらに相手の盤面に干渉できて、かつ《異端の癒し手、リリアナ》《反抗する屍術師、リリアナ/Liliana, Defiant Necromancer》の両面と相性のいい《肉袋の匪賊》《無慈悲な処刑人》を入れれば完成!


肉袋の匪賊無慈悲な処刑人


 スタンダードに激震を走らせるかもしれない、新デッキがこちらです!!




「リリアナスペシャル・完成版」

4 《沼》
1 《山》
1 《島》
2 《汚染された三角州》
2 《血染めのぬかるみ》
4 《マナの合流点》
4 《ラノワールの荒原》
2 《ヤヴィマヤの沿岸》

-土地(20)-

4 《羽ばたき飛行機械》
4 《搭載歩行機械》
4 《エルフの神秘家》
3 《森の女人像》
4 《発生器の召使い》
4 《異端の癒し手、リリアナ//反抗する屍術師、リリアナ》
1 《肉袋の匪賊》
1 《無慈悲な処刑人》
2 《黄金牙、タシグル》
2 《グルマグのアンコウ》

-クリーチャー(29)-
3 《巻き添え被害》
4 《アーティファクトの魂込め》
4 《バネ葉の太鼓》

-呪文(11)-
hareruya




発生器の召使いアーティファクトの魂込め



 激震が、走った (弱すぎて)。

 「ブン回れば強いんじゃない?」と思う方がもしかしたら100人に1人はいらっしゃるかもしれませんが、さすがにコレはやってしまいました。あまりにも多い欠点が、少ししかない強みをどこまでも打ち消しています。

 具体的に列挙すると、

 ・《反抗する屍術師、リリアナ》に変身させると、リソースが足りなくて何もできない
 ・《反抗する屍術師、リリアナ》で戦場に戻したいクリーチャーが入っていない
 ・《発生器の召使い》で出したマナをほとんど有効活用できない
 ・単体で仕事をしないカードが多すぎる
 ・相手の脅威にほとんど対処できない
 ・マナベースがやばい
 ・アーティファクト12枚で《アーティファクトの魂込め》は攻めすぎた
 ・実はデッキの一番強い動きが2ターン目《アーティファクトの魂込め》

 といった有様。余りにも恥ずかしすぎてスリーブに入れることすら躊躇してしまいます。



 気持ちよくデッキを組んでいたはずなのに、最強のデッキを組んでいたはずなのに。

 完成したデッキはクソデッキだった。

 こんな経験、すべてのマジックプレイヤーが体験したことがあるでしょう。

 マジック:ザ・ギャザリングは思考のゲーム。勝利のためには、強いデッキを作るためには理論が必要です。

 ですが「理論通りに組み上げたデッキが必ずしも強い訳ではない」というのもまた事実。

 また、デッキが完成したと僕は書きましたが、そもそもデッキの定義とは何なのでしょうか。60枚あるからといって、それは本当にデッキと呼べるのでしょうか?


 難しい話になりそうなので、今回はここまで。

 皆さんもデッキを作る際は、コンセプトを考えるだけではなく「そのデッキが本当に勝てるデッキかどうか」一度考えてみてください。お兄さんとの約束です。



 それでは、また次の、そして次こそはもう少しマジメな記事でお会いしましょう。


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