のぶおの部屋 -第8回 リアニメイト(前編)-

斉藤 伸夫



その昔、「チャネルファイヤーボール」というコンボがありました。
《チャネル》により自らのライフを削り大量のマナを出して、そのマナを《火の玉》に注ぎ込んで勝利するコンボです。《チャネル》は余りにも強力すぎるため、現在レガシーでは禁止カードになっています。そんな自らのライフを削り早い段階で勝利を手にすることができるデッキがあったらあなたはきっと魅了されてしまうことでしょう。

今回紹介させていただくアーキタイプは《チャネル》のようにライフなどを踏みつぶして、《ヨーグモスの取り引き》(こちらも禁止カードになっています)のようなカードを場に出すデッキでもある、リアニメイトを紹介させていただきます。

斉藤 「というわけで今回のゲストは、リアニメイトを使い続けて15年、関東でリアニマスターとして知られている林 将人(埼玉)さんです。5月に行われた、レガシー大会として一番大きい大会である第一回BIGMAGIC OPENにて見事TOP4入賞にされました。おめでとうございます!またBMO以外でも、AMCで優勝多数と実績豊富なプレイヤーです。」

「ありがとうございます。今回はよろしくお願いします。」

斉藤 「よろしくお願い致します!リアニメイトなら林さんしか居ないと思っていましたので、来ていただけて嬉しいです!」



■リアニメイトとは?

斉藤 「こちらが一般的なレシピになります。」



Loic Le Briand 「Reanimate」 Grand Prix Paris 2014 (3位)

1 《島》
1 《沼》
4 《Underground Sea》
4 《汚染された三角州》
1 《血染めのぬかるみ》
1 《溢れかえる岸辺》
1 《霧深い雨林》
1 《新緑の地下墓地》

-土地(14)-

1 《灰燼の乗り手》
1 《大修道士、エリシュ・ノーン》
1 《エメリアの盾、イオナ》
4 《グリセルブランド》

-クリーチャー(7)-
4 《渦まく知識》
4 《入念な研究》
4 《納墓》
4 《再活性》
3 《思考囲い》
2 《思案》
4 《死体発掘》
3 《目くらまし》
2 《実物提示教育》
4 《Force of Will》
4 《水蓮の花びら》

-呪文(39)-
4 《強迫》
3 《真髄の針》
2 《実物提示教育》
2 《裏切り者の都》
1 《灰燼の乗り手》
1 《浄火の大天使》
1 《狼狽の嵐》
1 《残響する真実》

-サイドボード(15)-
hareruya



グリセルブランド納墓再活性



斉藤 「それでは基本的な内容からお聞かせください。まず、リアニメイトとはどんなデッキなのでしょうか?」

「リアニメイトとは、墓地から大型クリーチャーを直接戦場に出すことを目的としているデッキです。《納墓》《入念な研究》を利用して山札や手札から墓地に普通では出せないような強力な大型クリーチャー(=ファッティ)を墓地に落として、《再活性》《死体発掘》のようなカードを使って『釣る』ことになります。相手のデッキやその場の状況にあったファッティを適宜釣ることによって、そのままゲームを決めてしまうことができます。






斉藤 「ファッティにはいろいろな選択があるようですが、どのような基準で選択するのですか?」

「はい。リアニメイトの生物は大きく分けて2つに分けることができます。

1つ目は相手に関わらず、出したらそのまま勝てたり圧倒的に有利になるような生物です。《グリセルブランド》《核の占い師、ジン=ギタクシアス》《墓所のタイタン》がこれにあたるでしょう。1ゲーム目の早い段階=相手のデッキが特定できない段階で釣りやすい生物でもあります。」


グリセルブランド核の占い師、ジン=ギタクシアス墓所のタイタン



「2つ目はメタ生物です。相手によって強さが大幅に変わるものの、適切な相手に対して出せばそれ1枚だけで勝てる生物です。メタゲームによって選ぶ生物が変わる枠でもありますので、有名な生物を順に紹介していきましょう。

《大修道士、エリシュ・ノーン》
自分のクリーチャーにプラス修整、対戦相手のクリーチャーにマイナス修整を与える。
スイーパー能力と高タフネス、警戒という3拍子そろった法務官。横にならぶ部族戦やドレッジ戦に重宝します。また、《秘密を掘り下げる者》《死儀礼のシャーマン》《真の名の宿敵》という環境の中心にいる生物にもとても有効に働きます。

《エメリアの盾、イオナ》
指定した色の呪文を封じる常在型能力を持つ天使。単色デッキや黒系のコンボデッキが増えた場合採用されます。

《魅力的な執政官》
相手のクリーチャーから攻撃されなくなるという、ルール破りな生物です。除去の薄いデッキで特にスニーク・ショーや発掘に強い生物です。

《潮吹きの暴君》《灰燼の乗り手》
種類を問わずパーマネントに触れる万能生物です。
特に《潮吹きの暴君》《動く死体》で釣ると、『《潮吹きの暴君》への除去にスタックで呪文をプレイ→《動く死体》を手札に戻す』というプレイもできるので、機会があれば是非試してみてください。

《鋼の風のスフィンクス》
《怒りの天使アクローマ》のようにたくさんの能力をもった生物。《剣を鍬に》《ヴェールのリリアナ》もないRUGデルバー相手に出すクリーチャーとしては最高峰です。」





■なぜリアニメイト?

斉藤 「レガシー環境には多くのデッキがありますが、林さんがその中からリアニメイトを選んだ理由をお聞かせください。」

「私はコンボデッキが大好きなんですよね。元々やっていたコンボ主体のカードゲームを引退してマジックを始めたのですが、その初心者の頃に安いストレージの中から発見したのが《死体発掘》だったんです。
『何マナのクリーチャーでも2マナで場に出せるなんて!!』と驚いたとともに、この《死体発掘》がとても強いカードだということを直感した私は、それから《死体発掘》の魅力に惚れ込んで、今までずっと《死体発掘》を使ったリアニメイトを使っています。

デッキの構造上リアニメイトというデッキはプレイイングスキルよりデッキ構築の比重が高いのですが、リアニメイトデッキの経験が長いおかげでメタに合わせた調整がしやすいのが選択する大きな理由の一つですね。前述の理由により、実際に取る練習時間が他のデッキに比べて少なくて済むのも今ではメリットになっています。」

斉藤 「レガシーというフォーマットの性質上カードプールが広い分、経験値の差が大きいフォーマットですね。これまでのゲストの方も、一つのデッキを使い込んでいる方ばかりです。
林さんはリアニメイトを長い間使い続けているとのことですが、レガシーというフォーマットでのリアニメイトの強みは何でしょうか?」

林 「レガシーはカードプールが広い分すべてのデッキを対策するのは大変です。色々なデッキの対策をまんべんなくしようとすると、コンボデッキへの対策は薄くなりがちです。なので、“自分がやりたいことができれば勝つ”いわゆる尖ったデッキ=コンボデッキが勝ちやすいのです。
そんなコンボデッキですが、リアニメイトはコンボデッキの中でも『コンボデッキに強いコンボデッキ』なのです。エルフ、スニーク・ショー、発掘、ANTなどに対して相手より早く、出てしまえばほぼ勝ちとも言えるファッティが用意できます。また、フェアなデッキやローグといわれるデッキに対しては、理不尽な速さとコストの踏み倒しをすることにより簡単に勝利を手にすることができます。



■一般的なレシピとの違いは?

斉藤 「では、林さんのレシピを教えてください。」

「こちらがBMOの時に使用したレシピになります。」


林 将人 「Reanimate」 BIGMAGIC OPEN (4位)

2 《島》
2 《沼》
4 《Underground Sea》
4 《汚染された三角州》
2 《血染めのぬかるみ》
2 《霧深い雨林》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》

-土地(17)-

4 《不運な研究者》
2 《グリセルブランド》
1 《墓所のタイタン》
1 《大修道士、エリシュ・ノーン》
1 《灰燼の乗り手》
1 《浄火の大天使》
1 《魅力的な執政官》
1 《核の占い師、ジン=ギタクシアス》

-クリーチャー(12)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《納墓》
4 《再活性》
1 《思考掃き》
4 《死体発掘》
2 《目くらまし》
4 《Force of Will》
2 《動く死体》
1 《真髄の針》
1 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(31)-
3《実物提示教育》
3《魂の洞窟》
2《ヴェンディリオン三人衆》
2《造物の学者、ヴェンセール》
2《ザルファーの魔道士、テフェリー》
1《エメリアの盾、イオナ》
1《暗黒破》
1《真髄の針》

-サイドボード(15)-
hareruya



墓所のタイタン不運な研究者真髄の針



◆<入念な研究>or<不運な研究者>?

斉藤 「一般的なレシピとは明確に違うところがいくつかありますね。どうしてこのような構築にしたのかを教えてください。」

「一般的なレシピですと、《グリセルブランド》が4枚ですが、私がデッキを組む時は2~3枚しています。ハンドに複数枚くると選択肢の幅が狭くなるからです。また、最近ではサイドボードに《Karakas》を入れてくるデッキが増えてきたようになってきたように感じるのも要因です。
また大きな違いとして<入念な研究>が0枚で、代わりに<不運な研究者>を4枚採用しています。《入念な研究》はメインではとても強いですが、《不運な研究者》サイド後強いです。」

斉藤 「メインはコンボの利があるため比較的勝率が高いので、サイド後を見据えて構築しているのですね。《入念な研究》より《不運な研究者》が優れている点は、どういうところなんですか?」

「はい。レガシーで今一番みるPW、《ヴェールのリリアナ》のエディクト(-2能力)対策になるのは大きいです。それと、《入念な研究》とは違い墓地に生物がインスタントタイミングで落ちるので、相手からするとケアすべきことが増えます。
《死体発掘》に対応して墓地にある生物を掃除しても、《死体発掘》は釣る生物の対象をとっていないで墓地対策などの効果が解決した後にさらに墓地に《不運な研究者》の能力で墓地に生物を落とすことによって釣る事ができます。

《入念な研究》は生物がハンドにいない時打つのはリスキーですが《不運な研究者》でしたら先にプレイしながら、《タルモゴイフ》などの攻撃をブロックしながら起動することができます。コンボデッキの1ターンの《濃霧》は非常に大事ですね。

また、火力が入っている相手に《再活性》の2枚目を打つのはかなりリスキーですが、《不運な研究者》を釣ることによってドロースペル+ブロッカーに変身したりもします。」


斉藤 《ヴェールのリリアナ》《死儀礼のシャーマン》をメインからケアできるようになるのはとても大きいことですね。《入念な研究》は絶対必要なカードだとこれまで考えていたのですが、理由を聞いて納得しました!」





<真髄の針>の採用、<実物提示教育>の不採用

斉藤 「メインにある《真髄の針》はなんのためにあるのでしょうか?」

「メインの《真髄の針》は、《死儀礼のシャーマン》《Karakas》《精神を刻む者、ジェイス》《騙し討ち》を指定することが多いです。苦手なカードを指定できるので腐ることがほとんどない、とても使いやすいユーティリティカードです。」


斉藤 「メインに《実物提示教育》はとらないのですか?」

《実物提示教育》は、ハンデスが多い環境で使うには重く感じていて、このカードを通しても《罠の橋》などのあわせて負けてしまうカードがあるのを懸念しました。
前述したように、このデッキは、『コンボデッキに強いコンボデッキ』というのが大事だと思っています。《実物提示教育》ですとスニーク・ショーにあたった時に不要になってしまいますが、《真髄の針》でしたらさらに有利にすることができるのです。」



◆特徴的なサイドボードについて

斉藤 「メインの構成もかなり特徴的でしたが、サイドボードもかなり一般的な構成と違いますね。」

《魂の洞窟》が3枚に《ヴェンディリオン三人衆》《造物の学者、ヴェンセール》《ザルファーの魔道士、テフェリー》がそれぞれ2枚。これらはすべてレガシーの中心である青いデッキ対策のために採用しました。やはり一番きついのはカウンター呪文なので、それにサイド後はそれに強い構成にしようと。《ザルファーの魔道士、テフェリー》《外科的摘出》対策という点も合わせて採用しました。」




■メタに合わせた変更点

斉藤 「では、今後メタにあわせてデッキを変えるとしてどうするか教えてください。」

「パターン分けして、順にあげていきます。」


◆ビートが増えた場合

スピードが大切になるため、《暗黒の儀式》が入るかもしれません。しかしスピードが大事といっても、《再活性》は4枚からは減らすでしょう。ライフを攻められすぎて、《再活性》をプレイできない、もしくはプレイしても返しの攻撃で負ける、という盤面に多々なりうるからです。
《再活性》が減る=代わりに《動く死体》のような釣竿を増やす=2マナのスペルの割合が増えるので、土地を18枚にするか、《水蓮の花びら》を入れるでしょう。
また、リアニ先の生物として《鋼の風のスフィンクス》を入れます。


◆コンボが増えた場合

コンボが多くなったら速さをあげるか、妨害を増やすかの2択になります。
特に妨害の枚数調整に重点をおきます。私でしたら《目くらまし》などの妨害を減らして、《陰謀団式療法》《思考囲い》といった手札破壊を追加すると思います。

相手もファッティを使うようなデッキであれば、逆にそれを利用してしまいましょう。今まであった具体例として、「発掘」がたくさん発掘した墓地に《大修道士、エリシュ・ノーン》がいたので、それを《再活性》で釣ってそのまま勝ったことがあります。


◆テンポが増えた場合

このマッチが一番大変な戦いとなります。《再活性》を打つとライフが大幅に減るため、無理やり押し切られることがあるからです。
対テンポだけを考えるのであれば、黒単に変えた方が有利にゲームを進めれるでしょう。青を足すことにより《もみ消し》が刺さりやすくなっていますし、青いカードが《紅蓮破》《赤霊破》の的になってしまうからです。

また、《ヴェールのリリアナ》はとても強いカードになるので3枚まで増加します。《無垢の血》もとても有効な除去になるので使うと思います。


◆コントロールが増えた場合

コントロール戦はマストカウンターを叩きつけ続けるのが一番勝率高いので、《再活性》《死体発掘》のようないわゆる「釣り竿」を10枚程入れて、さらにメインから《実物提示教育》を2枚入れます。

今回のサイドボードのように、《ザルファーの魔道士、テフェリー》もとても有効です。《ヴェンディリオン三人衆》《造物の学者、ヴェンセール》も長期戦になるほど強いカードになります。






次回はリアニメイトの弱点やサイドボードの考え方、リアニメイトの動きをあげての小テクを紹介するといったプレイ編をお届けします。

では、次回プレイ編でお会いしましょう。