斉藤 「今回はBUG続唱を使っている倉田 由彦 (神奈川)さんに、BUG続唱についてインタビューさせていただきます。倉田さんは日本レガシー選手権2014 SummerにてTop8進出という好成績を収めています。よろしくお願いします。」
倉田 「よろしくお願いします!エタフェス(エターナルフェスティバル2014)も近づいてきたので、BUG続唱のことを伝えることによってこのデッキタイプが増えると嬉しいです。」
斉藤 「BUGカラーを普段からよく使っていますよね。以前アルーレンを使っていたのも印象的でした。」
倉田 「1年ほど前は続唱システムを組み込んだアルーレンを使っていましたね。今はシンプルなBUG続唱に落ち着きました。」
■ BUG続唱とは?
斉藤 「こちらがBUG続唱の一般的なレシピになります。」
倉田 「7月に行われたレガシー神決定戦でTOP8に入った高橋さんのレシピなどが一般的な形に近いですね。」
斉藤 「そうですね。準々決勝で当たりましたが、これに近い形だったと記憶にあります。」
1 《沼》 3 《Underground Sea》 2 《Bayou》 2 《Tropical Island》 4 《汚染された三角州》 4 《新緑の地下墓地》 2 《霧深い雨林》 2 《忍び寄るタール坑》 2 《不毛の大地》 -土地(22)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《タルモゴイフ》 2 《悪意の大梟》 4 《断片無き工作員》 -クリーチャー(14)- |
4 《祖先の幻視》 4 《渦まく知識》 3 《思考囲い》 4 《突然の衰微》 1 《Hymn to Tourach》 1 《毒の濁流》 3 《Force of Will》 2 《ヴェールのリリアナ》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(24)- |
2 《狼狽の嵐》 2 《見栄え損ない》 2 《ゴルガリの魔除け》 2 《Hymn to Tourach》 2 《寒け》 2 《虚無の呪文爆弾》 1 《思考囲い》 1 《毒の濁流》 1 《Force of Will》 -サイドボード(15)- |
斉藤 「それでは基本的な内容からお聞かせください。まず、BUG続唱とはどんなデッキなのでしょうか?Team America(BUG Delver)と同じ色構成ですが、違いはどのような点にあるのでしょうか?」
倉田 「BUG続唱とは、《断片無き工作員》の“続唱”というシステムをうまく使ったデッキになります。
同じ色構成のTeam Americaがテンポ・アドバンテージを重視するのに対し、こちらはカード・アドバンテージを意識した構成になっています。ビート・コントロールに部類されるデッキです。
“続唱”から《Hymn to Tourach》や《祖先の幻視》などのとても大きなアドバンテージカードに繋げることを目的としています。 また、続唱との相性の悪さから、Team Americaでは一般的な《目くらまし》が採用されないのも大きな違いです。」
■なぜBUG続唱?
斉藤 「このデッキを使い始めたきっかけや、今も使い続けているメタ上の理由はあるのでしょうか?」
倉田 「このデッキを使う前にデッドガイを使っていたのですが、たまたま友人に誘われたエタフェス2013のための調整会に参加した時にこのデッキを勧められたので、パーツを持っているということもあり使ってみることにしました。プレイしていくうちに《祖先の幻視》の圧倒的アドバンテージや《悪意の大梟》などでの《秘密を掘り下げる者》デッキ全般への制圧力が気に入って、それ以来愛用しています。
最近では、デルバーは多いのは変わらず、ミラクルが少しずつ増えてきたので環境的にも優位性があるデッキになっていると感じています。一方、早いターンで勝ちにくるスニークショーや横に並ぶZooみたいなデッキは苦手ですね。」
■一般的なレシピとの違いは?
斉藤 「では、倉田さんのレシピを教えてください。」
倉田 「こちらが日本選手権で使用して、現在でも使っているレシピになります。」
4 《Underground Sea》 2 《Bayou》 2 《Tropical Island》 4 《汚染された三角州》 3 《新緑の地下墓地》 3 《霧深い雨林》 2 《忍び寄るタール坑》 2 《不毛の大地》 1 《ヴォルラスの要塞》 -土地(23)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《タルモゴイフ》 4 《悪意の大梟》 4 《断片無き工作員》 -クリーチャー(16)- |
4 《祖先の幻視》 4 《渦まく知識》 4 《突然の衰微》 4 《Hymn to Tourach》 1 《毒の濁流》 2 《Force of Will》 1 《梅澤の十手》 1 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(21)- |
2 《狼狽の嵐》 2 《水没》 2 《Force of Will》 2 《仕組まれた爆薬》 2 《虚無の呪文爆弾》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《概念泥棒》 1 《Contagion》 1 《ゴルガリの魔除け》 1 《原基の印章》 -サイドボード(15)- |
斉藤 「それでは倉田さんのレシピを見ていきましょう。日本選手権からずっとレシピが変わっていないということで、デッキが完成されていることが伺えますね。まずはこのレシピを使っている理由を教えてください。」
倉田 「はい。レガシーという環境において《秘密を掘り下げる者》を使用したテンポデッキが一番多いと予想のもとこの形になりました。また”続唱”というシステムはとても強力ですが、《渦まく知識》で積み込まない限りは多少なりとも運の要素が絡むので、なるべくムラをなくすためにできる限り4枚に統一しています。」
斉藤 「一般的なBUG続唱のレシピとの違いはどのようなものがあるのですか?」
倉田 「違いとしては、以下のような感じですね。デルバー系のデッキを特に意識しているので、以下のような相違点が出ています。
1. 悪意の大梟/Baleful Strixを4枚に
普通は1~2枚しか採用されていない《悪意の大梟》を4枚最大限に採用しました。この《悪意の大梟》はレガシーで一番多いデルバーデッキに対して非常に強力なクリーチャーです。また不要な相手にも最悪1ドローになったり、《Force of Will》で切れるためどの相手にも腐ることがない、とても優秀なカードなのでこのデッキを触り始めてからずっと4枚採用しています。
2. ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veilの不採用
調整をしていくうちに、能力が噛み合っていないと感じました。デッキの特性として1対1を繰り返し、相手を息切れさせながらカードアドバンテージ稼ぐことが多いですが、その頃に《ヴェールのリリアナ》を出しても自分だけがハンドを失ってしまうことが多かったためです。
3. 手札破壊をHymn to Tourachに統一
《思考囲い》・《Hymn to Tourach》を2:2で散らすことが多いですが、《Hymn to Tourach》4枚に統一しました。4枚に統一することにより安定性を重視できる点、《思考囲い》よりも《Hymn to Tourach》の方がアドバンテージを稼げる点、そして《断片無き工作員》から続唱でめくる際に重いカードの方が理にかなっている点、この3点が主な理由です。《思考囲い》は“続唱”でめくりたくないことが多いカードのひとつなので、その点も加味して採用を見送りました。
4. Force of Willはメイン2枚・サイド2枚
《Force of Will》を何枚採用したとしてもデッキの構造上コンボに対しては根本的にきついので、《Force of Will》の枚数を抑えて、メインは有利な相手にしっかり勝つことを意識しました。このデッキの《Force of Will》は最後の一押しする時に使うカウンターとしての立ち位置の方が大きいと感じています。
5. ヴォルラスの要塞/Volrath’s Strongholdの採用
《ヴォルラスの要塞》の採用は珍しいかもしれません。この土地は《断片無き工作員》・《悪意の大梟》の再利用を主な目的としています。私のレシピですと 《ヴェールのリリアナ》や《精神を刻む者、ジェイス》などのプレインズウォーカーが少ないので、その分をカバーするアドバンテージ源になります。《ヴォルラスの要塞》を入れることにしたため、よく2-3枚採用される《不毛の大地》はマナバランスを考慮して2枚にしました。
6. 1枚差しの扱い
《毒の濁流》・《梅澤の十手》・《精神を刻む者、ジェイス》を1枚ずつ採用しています。
これらのカードは引けなくても良いですが、後半に引けたら嬉しく、ゲーム展開に大きく変化をもたらすカードです。」
斉藤 「各カードをそれぞれ4枚にすることにより、安定性を上げてしっかりアドバンテージを稼ぎながらビートしていく形にまとまっていますね。プレインズウォーカーの数を最小限に抑えて軽めにデッキを構築しているのが好印象です。」
倉田 「軽めに構築することは意識しましたね。このデッキはロングゲームになるとアドバンテージを稼ぐのが得意なので、序盤から動けるカードを採用したいと考えました。」
斉藤 「サイドにもいくつか珍しいカードの採用がありますね。《原基の印章》・《Contagion》などは比較的珍しい選択ですね。」
倉田 「《原基の印章》を選択したのは、このデッキの苦手とする《血染めの月》や《神聖の力線》対策のためにいれました。続唱と相性のよい割りものという立ち位置です。」
斉藤 「普通の《帰化》のようなカードですと、続唱から唱えたとしても対象がなくて”スカる”こともありますもんね。
《Contagion》は久しぶりに見ましたが、このカードの使い勝手はいかがでしょうか?」
倉田 「《Contagion》はテンポデッキのもつ《目くらまし》や《呪文貫き》をケアしながら最大2体倒すこともできるカードとして重宝しています。また、最近はエルフの活躍も目立ってきたため採用にいたりました。中盤では腐っている《Hymn to Tourach》をリムーブすることにより唱えることができ、続唱で不要な時にめくることがない優秀なサイドカードだと思います。」
斉藤 「《突然の衰微》系のデッキは横に並ぶ相手を苦手としますが、《Contagion》はそういう動きに強く、また中盤以降腐りやすい《Hymn to Tourach》をコストに当てることができるのはとても理にかなっていますね。」
メタに合わせた変更点
斉藤 「では、今後メタにあわせてデッキを変えるとすればどうするかを聞かせてください。」
倉田 「パターン分けして、順にあげていきます。」
◆ビートが増えた場合
除去を追加し、《見栄え損ない》や《毒の濁流》をメインに採用します。ゲームプランとしては除去を繰り返しながら相手の息切れを待つゲームを目指します。ビートには、《タルモゴイフ》や《悪意の大梟》が優秀なブロッカーとしてゲームを支えてくれます。
◆コンボが増えた場合
メインの《Force of Will》を4枚にした上で、《思考囲い》もメインに入れる形にすると思います。《悪意の大梟》を減らし、《ヴェンディリオン三人衆》などのカードメインに入れるか検討しますね。また、メインのハンデスだけだと足りないと思うので、サイドにも追加のハンデスを採用すると思います。
スニークショーが増えるようなら、ミラーでも活躍する《誘惑蒔き》を。ストーム系が増えるようなら《精神壊しの罠》の採用を視野に入れます。
◆テンポが増えた場合
今のレシピは対テンポ用に組んでいますので、基本的に大幅な変更はないですね。よほどテンポが多くなるようでしたら、《梅澤の十手》を追加したり、《敏捷なマングース》や《真の名の宿敵》に強い《悪魔の布告》のようなエディクト系除去を入れると思います。
◆コントロールが増えた場合
ミラクルは増えてきていますが、今より増えた場合はメインにプレインズウォーカーである《精神を刻む者、ジェイス》の増加、《ヴェールのリリアナ》の採用をすると思います。
レガシーのコントロールはクリーチャーへの除去やコンボに対する対策は強いですが、恒久的にアドバンテージを稼げるプレインズウォーカーには弱いことが多いからです。守ることが強い分、相手のプレインズウォーカーへ干渉することが難しくなっています。
次回はBUG続唱の弱点やサイドボードの考え方、BUG続唱の動きをあげての小テクを紹介するといったプレイ編をお届けします。
では、次回プレイ編でお会いしましょう。