のぶおの部屋 -第10回 BUG続唱(後編)-

斉藤 伸夫



第10回 前編は【こちら】


斉藤 「前回はデッキ構造について解説していただきました。続く今回は、BUG続唱の弱点やサイドボーディングなどプレイ中のテクニックについて教えていただきたいと思います。倉田 由彦さん今回もよろしくお願いします。」

倉田 「はい。よろしくお願いします!」



■弱点・やられて嫌なことは?

斉藤 「BUG続唱を使っていて、やられたら嫌なことや苦手なカードを教えてください。」

倉田 「大きく分けて、以下のようなことがBUG続唱の弱点だと思います。

(1).<安らかなる眠り/Rest in Peace>

 一番攻撃の軸となる《タルモゴイフ》《死儀礼のシャーマン》が無力化してしまうエンチャントです。また、続唱デッキは他の《秘密を掘り下げる者》を使うタルモデッキとは違ってカウンターをそこまで構えることができないので、《安らかなる眠り》が一度は着地してしまうことが多いです。


(2).早い展開で、横に並べて攻めてくるデッキ

 1対1を繰りかえすデッキなので、1つ1つのスペルが軽く面で攻めてくるZooやマーフォークのようなデッキを苦手としています。また、メインの除去が《突然の衰微》《悪意の大梟》に依存しがちなので、先手1ターン目にでてくる《ルーンの母》などのシステムクリーチャーは負けに直結することも珍しくありません。


(3).コンボ

 ハンドアドバンテージを稼ぐのを得意とするデッキですが、カウンター数が少ないため勝率はあまり良くありません。スニークショーがよくサイドに採用している《血染めの月》も弱点のうちの一つです。

(4).バーン

 バーンはアドバンテージなどを無視して、早い段階からライフを直接狙ってきます。前半しのぐことができたとしても、こちらの攻撃に切り替えるタイミングにはライフがなくなっていることが多いです。基本地形が少ないことから《発展の代価》をもろに受けてしまいます。


 これらの弱点についてはそもそもデッキの構造に原因があります。青いデッキはカウンターをプレイした方が相手をうまく対処できますが、このデッキですと続唱でめくれてしまうと完全な無駄カードになるので、《Force of Will》以外のカウンターはなかなか採用できないません。《呪文貫き》《対抗呪文》がめくれると悲しいですからね。
 《祖先の幻視》《渦まく知識》《精神を刻む者、ジェイス》などで手札の調整やアドバンテージ獲得はうまくやることができますが、カウンターがない分、相手のノンクリーチャースペルに対する対抗策は他の青いデッキに比べると少ないのです。」

斉藤 「分かりやすい説明ありがとうございます。共通することは“続唱”は最高のアドバンテージカードになることが多い反面、デッキの構造に弱点が生まれているのですね。カウンターが少ない分《Hymn to Tourach》などの手札破壊で補っているということでしょうか。」

倉田 「そうですね。逆に言えばカウンターをそこまで重要視しないマッチでは強さを発揮します。《秘密を掘り下げる者》デッキやフェアなデッキには強いです。」






■サイドボード後のゲームプラン

斉藤 「まずはアーキタイプごとの話をする前に、サイド後のゲームプランは、どのように考えているか聞かせてもらえればと思います。」

倉田 「大まかに対ビート、コンボ、テンポ、コントロールを相手する時のサイドチェンジの考え方はこちらになります。基本戦略としては1対1交換を繰り返してから相手の息切れを持ってから攻めに転じることを重要視しています。


●対ビート

 《Force of Will》を抜いて除去を入れます。《Force of Will》のようなアドバンテージを失うカードは不要だからです。コントロール側に回りましょう。《水没》《Contagion》など盤面干渉していくカードをいれます。基本に忠実に、序盤から1対1交換を繰り返していけば勝てるでしょう。


●対コンボ

 遅すぎるアドバンテージ源である《祖先の幻視》と不要な除去を抜きます。サイドからは、追加でカウンター、優秀な生物など妨害するものをサイドインします。カウンターを構えながら《Hymn to Tourach》をうって早い段階で《タルモゴイフ》でクロックを削りにいきます。


●対テンポ
 対ビート同様、1対1交換を繰り返すゲームになりがちであり、《Force of Will》のディスアドバンテージが響きやすいので《Force of Will》を抜きます。《もみ消し》《目くらまし》などを出来るだけケアしながら、マウントをとることができれば磐石になります。


●対コントロール

 コントロール側の優秀なスペルに強い《ヴェンディリオン三人衆》《概念泥棒》をいれます。また、《安らかなる眠り》《血染めの月》を張ってくることが多いので《解呪》系スペルもインします。《悪意の大梟》は2マナサイクリングになりやすいので、減らします。


斉藤 「では、各主要デッキに対するサイドボーディングを教えてください。」

倉田 「実際に使っているリストを元に、具体的に見ていきましょう。」


倉田 由彦 「Shardless BUG」 日本レガシー選手権2014 Summer (トップ8)

4 《Underground Sea》
2 《Bayou》
2 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
3 《新緑の地下墓地》
3 《霧深い雨林》
2 《忍び寄るタール坑》
2 《不毛の大地》
1 《ヴォルラスの要塞》

-土地(23)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《タルモゴイフ》
4 《悪意の大梟》
4 《断片無き工作員》

-クリーチャー(16)-
4 《祖先の幻視》
4 《渦まく知識》
4 《突然の衰微》
4 《Hymn to Tourach》
1 《毒の濁流》
2 《Force of Will》
1 《梅澤の十手》
1 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(21)-
2 《狼狽の嵐》
2 《水没》
2 《Force of Will》
2 《仕組まれた爆薬》
2 《虚無の呪文爆弾》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《概念泥棒》
1 《Contagion》
1 《ゴルガリの魔除け》
1 《原基の印章》

-サイドボード(15)-
hareruya




●対RUGデルバー


倉田 《突然の衰微》を苦手とするRUGデルバーです。《突然の衰微》に対するカードとして《敏捷なマングース》がありますが、《死儀礼のシャーマン》《悪意の大梟》で抑えることができます。サイドから《虚無の呪文爆弾》をいれることによってさらに相手の勝ち方を抑制しましょう。

テンポデッキ相手は特にリソースを削り消耗戦を狙います。また、みんなが口を揃えて言っているかもしれませんが、《目くらまし》をケアしながら動くことが大事です。1ターン目《祖先の幻視》”待機”→2ターン目《突然の衰微》は、対RUGデルバーでのベストムーブの一つですね。《秘密を掘り下げる者》デッキには、最初はマウントを取られやすいですが、マウントを取り返した瞬間磐石なゲームとなります。」



●対スニークショー


倉田 「厳しい戦いを強いられます。しかし、サイドから追加のカウンターや《ヴェンディリオン三人衆》などを追加して対抗することになります。
 ゲーム展開としてはしっかりハンデスを絡めることが大事になってきます。相手のトップデッキに対応するためのカウンターを構えながら、《タルモゴイフ》《死儀礼のシャーマン》のクロックで勝ちにいきましょう。《精神を刻む者、ジェイス》はトップデッキをさせないようにする力もあるので蓋役として優秀な場合が多いです。
 スニーク側からのサイドボードとして《神聖の力線》《血染めの月》《騙し討ち》などエンチャントが色々あるので、《ゴルガリの魔除け》《原基の印章》をしっかり入れましょう。」



●対BG系


倉田 《死儀礼のシャーマン》系のデッキ全般に対しては、対テンポデッキ戦と似た考えでゲームをしています。BUGデルバーはシステムクリーチャーが少なく、殴るクリーチャーばかりなので《悪意の大梟》でしっかり相打ちを取っていくことを意識します。《墓忍び》《突然の衰微》が効かない強力なカードですが、《悪意の大梟》4枚のこのレシピなら問題ありません。

 もしもジャンドのようなデッキから《罰する火》をみたら《虚無の呪文爆弾》も入れるでしょう。《罰する火》《不毛の大地》《死儀礼のシャーマン》での対処を意識するため、《不毛の大地》の起動タイミングは考えることが大事になります。お互いハンデスを打って消耗し、重い強いアドバンテージのとれるカードがゲームのカギとなることが多くなると思いますので、なるべく青い利点を生かしてドローで手数を増やしていきましょう。」



●対エスパー石鍛冶


倉田 《石鍛冶の神秘家》をしっかり除去することが大事。《殴打頭蓋》は想像以上にきついカードです。また、《精神を刻む者、ジェイス》が出てきてもプレッシャーをかけれる体勢にしておくべきです。《忍び寄るタール坑》はとてもよいプレッシャーになるカードなので睨みをきかせましょう。

 《石鍛冶の神秘家》を使うデッキは最近は減ってきていますが、増えるようであれば《虐殺》がオススメです。」



●対デス&タックス


倉田 《突然の衰微》はとても優秀なスペルです。クリーチャーはもちろんのこと、相手の速度をあげる《霊気の薬瓶》や攻撃の要である装備品を壊すことも多いでしょう。

 サイドボーディングの考え方としては、相手の《霊気の薬瓶》《魂の洞窟》で無効化されがちなカウンターを抜き、《迷宮の霊魂》をケアするために《祖先の幻視》も抜きます。デス&タックスというデッキはアドバンテージを《石鍛冶の神秘家》以外ではなかなか取りにくいデッキなので、アドバンテージよりも盤面を制圧することを意識しましょう。

 デス&タックスは《ルーンの母》《スレイベンの守護者、サリア》をはじめクリーチャータイプ”人間”が多いので、《仕組まれた疫病》は”人間”を指定することが多いです。《Hymn to Tourach》でリソースを削り、盤面を制圧するカードと優秀なクロックで勝ちましょう。」



●対ANT


倉田 「ANTは、複数のカードの集合でコンボを決めてきます。スニークショーと違ってカウンターがなく、またハンド枚数を増やすカードもないので、《Hymn to Tourach》が非常に有効です。

 サイドプランの考え方としては、《闇の腹心》《ザンティッドの大群》のために《突然の衰微》を少し残し、たくさんの手札破壊とカウンターで妨害しながらライフを詰めていきましょう。最近のANTは《むかつき》よりも《炎の中の過去》から攻めてくる方が多いので、しっかり墓地対策もしましょう。」



●対エルフ


倉田 「エルフ戦ではマナを伸ばされないように、除去をしっかり当てることを意識しましょう。《ワイアウッドの共生虫》《エルフの幻想家》でアドバンテージを稼ぎながら《垣間見る自然》《自然の秩序》・大量のマナからの《緑の太陽の頂点》で勝負を狙ってくるのでその3つのためにカウンターを温存しておくべきです。

 サイドチェンジとして《狼狽の嵐》は効きにくいと感じたので入れないことにしました。2~3ターン目をしっかり捌いて、《仕組まれた疫病》に繋げるゲームだと感じています。《緑の太陽の頂点》《自然の秩序》を止めることができるので、もし《墓掘りの檻》を採用しているならサイドインしましょう。」



●対ミラクル


倉田 「普通のBUG続唱よりデッキが2マナに寄っているので、《相殺》をしっかり対処しながらゲームを進行することが大事です。《終末》をケアするためになるべくハンドには生物を残しながらゲームをするのはもちろん、《忍び寄るタール坑》はこのマッチではかなり強いので、うまく使ってライフを削っていくことが大事になります。このレシピは《ヴェールのリリアナ》《精神を刻む者、ジェイス》といったプレインズウォーカーが少なめなので、一般的な形の方が対ミラクルは有利に運べると思います。
 
 また、サイド後も《毒の濁流》は抜かないことにしています。「天使を2~3体出せば勝てるだろう」と《天使への願い》のXを小さめに打ってくることが結構あるためです。」



●対BUG続唱ミラー


倉田 アドバンテージ合戦になりますね。ミラーにはほとんど当たらないと思っているのでデルバーデッキを意識した構成に組んでおり、その分少し不利がつくかもしれません。プレインズウォーカーが少ない分だけ《タルモゴイフ》でしっかり攻める必要があるでしょう。」



■細かいテクニックや初歩テクニック

斉藤 「BUG続唱というアーキタイプでなにか小テクや基本テクがあれば教えてください。」

倉田 「このデッキの攻めの要は《タルモゴイフ》だと思っています。すぐに出して除去されてしまうくらいなら中盤以降相手の息切れを待って連打するほうが強いことが多いので、序盤の<渦まく知識>ではよく戻すカードとなります。」


タルモゴイフ渦まく知識



斉藤 「中盤以降ですと、《断片無き工作員》《悪意の大梟》が墓地に落ちていると《タルモゴイフ》のサイズがとても大きくなってますしね。デッキの軸である”続唱”や《祖先の幻視》に関することはないでしょうか?」

倉田 「3ターン目の《断片無き工作員》の前に《渦まく知識》《祖先の幻視》を積んだりする人がいますが、それは必要のないアクションだと思います《渦まく知識》を効率的に使っていない上に使っているカードと得たカードの枚数にそこまでの差がないということもあります。デッキの構成上、対象のない《突然の衰微》以外は何が捲れても”続唱”は強いので、相手に場にクリーチャーがいる場面などは気にせず《断片無き工作員》をプレイしましょう。」
 






倉田 「また、《祖先の幻視》は1ターン目に待機することによってカードを1枚失いますが、待機が明けた時にとても多くのカードを与えてくれます。待機カウンターが1つ減るということは一つ勝利に近づくので、普段とは異なり、《祖先の幻視》を待機している場合は2ターン目の<不毛の大地>によって1ターンお互いパスすることもプラスに働きます。」






■まとめ、BUG続唱に興味がある人へ

斉藤 「このデッキを使う人や興味がある人に一言お願いします。」

倉田 「私は、未来を読む力より盤面をみるのが得意なので、このデッキは自分にあっていると思います。インスタントを構えて先の未来をケアするより盤面を重要視する方には向いているデッキだと思います。有利・不利が出やすいデッキですが、レガシー環境にあるパワーカードが使える喜びもあります。ゲーム後半で相手の手札が尽きる頃に自分はディスカードフェイズで手札を捨てている余裕のあるゲームもできます。
 注意点としては、このデッキは1対1交換を繰り返してから相手の息切れを待ってから勝ちにいくため、思っている以上に時間のかかりやすいデッキです。時間配分には十分気を付けて下さい。」

斉藤 「意外と時間配分が大事なデッキなのですね。今日はインタビューありがとうございました。」

倉田 「こちらこそありがとうございました。」


次回は、ペインターを使っているあの人を招待して、一緒に解説していきたいと思います。
それでは、また第11回でお会いしましょう!

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