By Atsushi Ito
【For English speakers】
本日は皆さんに、日本マジック界の歴史を変えるかもしれない特大ニュースをお届けしよう。
【プロツアー・チャールストン】優勝、【POY2006】、MOPOY2009、【マジック・プレイヤー選手権2012】準優勝、【プロツアー『タルキール龍紀伝』】準優勝、ほかグランプリトップ8入賞19回などの華々しい戦績を持ち、つい先日【プロツアー『マジック・オリジン』】の場で【マジック・プロツアー殿堂】入りも決定した超一流のトッププレイヤーにして、不世出の天才デッキビルダー。
八十岡 翔太(東京)。
何とこのたび彼が、2015-2016シーズンから【Hareruya Pros】に加入することが決定したのだ!!
しかし一体なぜ八十岡は、Hareruya Prosに加入するという一大決断を下したのだろうか?
”Blazing Speed”とも評される、八十岡の稲妻のごときプレイスピードを支えているのは、我々常人ではトレースすることができないほどの思考のクロック速度だ。
そのシナプスが描き出した未来のヴィジョンとは。八十岡は日本のマジック界の行く先に、何を見ているのか。
気になる八十岡の決断の裏側について、この機会にインタビューを試みた。
■ 八十岡はなぜHareruya Prosに加入したのか?
--「というわけで、八十岡さんはどうしてHareruya Prosに加入することにしたんでしょうか?」
八十岡 「仕方がなかったからだね」
--「え?」
八十岡 「仕方がなかった」
--「いや、もうちょっと具体的に、何がどう『仕方がなかった』んでしょうか?ていうかその言い方は『晴れる屋が八十岡を《強迫》している』みたいに聞こえるのでやめてください」
八十岡 「やりたいことを実現するためにはHareruya Prosに入らざるをえなかったんだよね」
--「うーん、もうちょっとポジティブなニュアンスになりませんかね……」
八十岡 「事実だからね、仕方がない」
--「ではその八十岡さんが『やりたいこと』とは、一体何なのでしょうか?」
八十岡 「日本のプロマジックのコミュニティを育てたい」
--「え?」
八十岡 「いや、今度はわかるでしょ」
--「すみません、失礼ながら八十岡さんの口からそんな殊勝な言葉が出てくるとは思わなくて……『コミュニティを育てる』というと、この場合『プロツアーに出場して活躍する日本人を増やす』ということでしょうか?」
八十岡 「本当に失礼だね。まあプロツアーの結果までは保証できないけれど、日本で本気でマジックを頑張れる人を増やしたいし、そういう人を応援してあげたいということだね」
--「増やしたいということは、今は少ない、という認識なのでしょうか?」
八十岡 「少ないでしょ。特に下の世代という話になると、ナベ(渡辺 雄也)とゆくひろ(行弘 賢)くらいじゃない?」
--「最近は市川(ユウキ)さんとか覚前(輝也)さんとか、新しい人も活躍してるじゃないですか」
八十岡 「彼らにしたって世代的にはあまり変わらないし、単純に人数として見てもやっぱりまだまだ少ないと思うよ」
--「だからもっと本気で打ち込める人を増やしたい、と。でもそれって具体的にどうすればいいんですかね?」
八十岡 「部屋を借りる」
--「え?」
■ 『これからマジックを本気で頑張ろう』という人のための環境を作りたい
--「ちょっと話がよくわからないんですが、『日本でマジックを本気で頑張れる人を増やしたい→部屋を借りよう!』ってこれかなり開きがありますよね。『刹那/Split Second』みたいな、天と地ほどの差がある気がしますが」
八十岡 「そうかな?自然な流れだと思うけど」
--「まあでも八十岡さんはそれが必要だと考えている、と。つまり才能ある人が世に出ていくまでの過程におけるボトルネックが、それによって解消されると考えているわけですよね」
八十岡 「まあそうだね」
--「ちょっと気になったんですが、八十岡さんが考える、マジックで強くなるために必要なモノって何なんでしょうか?」
八十岡 「環境だね」
--「環境。それは人的にも場所的にも、ということですか」
八十岡 「そう。強い人が近くにいて、直接対戦できたり、わからなかったら聞ける。そういう場が必要なんだと思う。やっぱりマジックって強い人とやらないと気づけることにも気づけないからね。少しでも上の人がいないと、まあそれでも成長はするんだろうけど、遅いよね。スライム倒して成長しても仕方がないし」
--「そこで八十岡さんが部屋を借りて、はぐれメタルやメタルキングを集めようという話ですか」
八十岡 「メタルキングというか、プラチナの人たちはどうでもいいかな。彼らは勝手に勝ってくれって感じ。どちらかというと『これからマジックを本気で頑張ろう』という人のための環境を作りたいから、たとえばシルバーレベルの人とか、RPTQでプロツアーの権利取ったとかグランプリで勝ったとかでマジックこれから頑張りたいっていう日本の人たちが、ちゃんとステップアップするための場を用意してあげたいんだよね」
--「場所は都内ですか?それと、どういった用途を想定しているんでしょうか」
八十岡 「まだ未定だけど、高田馬場の近くになるんじゃないかな。やる気のある数人がプロツアー前に一週間くらい泊まり込みで練習しに来ても構わないくらいのスペースは用意したいね。用途としては、細かい運用はまだ詰めてないけど、主にドラフト練習かな。人を集めて徹夜でドラフトとか。ドラフトだけは日常的にやってないとマジックの感覚がどんどん落ちていっちゃうからね」
--「構築だって日常的にやってないとメタゲームから取り残されたりするじゃないですか」
八十岡 「そういう特定の環境ごとの話じゃなくて、勝つためにはもっとマジックの基礎力を養う必要があるということ。リミテッドにはマジックの基礎が全て詰まっているからね。ピックは特定の環境にしか通用しないセオリーであることが多いけど、ゲームに関しては、コンバットとダメージレースとマリガンと、マジックで勝つために必要な全ての要素が含まれているといっても過言ではないよ」
--「プロツアー前の練習機会というだけなら、たとえば【菊名合宿】では不十分なんでしょうか?」
八十岡 「菊名は遠いし、やっぱりどこまで行っても『友達の家』だから、長期滞在するには不向きだよね。KAKAO (中村 肇) もプロツアーに出るわけではないし」
■ プロプレイヤー・八十岡 翔太のこれから
--「それにしても、何だか突然ですね」
八十岡 「練習部屋を借りるというアイデアそのものは前々からあったんだけど、実際に実行しようというのは来季のプラチナレベルが確定してから決めたことだからね」
--「あ、そうなんですか。そのことと今回のHareruya Pros加入に何か関係があるんでしょうか?」
八十岡 「プラチナになったからにはマジックと他のこととの比重が変わらざるをえないというか、よりマジックに打ち込んだ方がリターンが大きいからね。今季は『3 : 7』くらいだったけど、来季は『5 : 5』か『6 : 4』くらいにはするだろうし、そうなったときに『じゃあついでにやりたかったことをやるか』と思って。それでトモハルに話を持っていったら乗り気になってくれたから、今に至る」
--「ああ、何となく『仕方がなかった』のニュアンスがわかりました(笑) となると八十岡さんとしては、次のシーズンはトーナメントでの勝利よりも主に後進の育成に力を入れていく、という感じなのでしょうか?『プロプレイヤー・八十岡 翔太個人の勝利』と『日本でマジックを本気で頑張れる人を増やす』だと、どっちが優先なんですか?」
八十岡 「いや、そこはまあ前者だよね。プレイヤーとしては、今まで通りプロツアーで勝つことを一番の目標にしていくつもりだよ。プレイヤーを引退しない限り、それは変わらないんじゃないかな」
--「つまり『日本でマジックを本気で頑張れる人を増やす』は、プレイヤーとしての願望というよりは、業界全体のため、ということですか」
八十岡 「マジックもプレイヤーがどんどん増えてきているし、こういう受け皿があった方がいいんじゃないかなと思ってね。そこらへんは【Hareruya Prosの理念】とも重なるところがあるから、まああながち『仕方がなかった』だけではないのかもしれないね」
--「フォロー弱すぎるでしょ!w ありがとうございました」
齋藤 友晴。津村 健志。山本 賢太郎。高橋 優太。ただでさえ豪華なこの4人に加え、5人目のProsとして最高に心強いメンバーが加入した。
さらなる躍進を目指す【Hareruya Pros】と、マジックの新しい未来を切り開こうとする八十岡 翔太のことを、是非これからも応援よろしくお願いします!
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする