情報を制す者はマジックを制す。
特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。
すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。
当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。
カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。
【BIGMAGIC OPEN vol.4開催】
先週末には関西では初となる【BIGMAGIC OPEN vol.4】が開催された。フォーマットはスタンダードとレガシーの2つ。
特に今回注目度が高かったのはスタンダードだろう。『マジック・オリジン』リリースから早くも1週間、【第4回スタンダード神挑戦者決定戦】の直後で【プロツアー『マジック・オリジン』】の直前に開催された同大会は、まさにマジック界の【フジロックフェスティバル】と言える大盛況だった。
【Uncharted Realms: 巻き返し】
【マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト】にて毎週木曜日に連載されている背景ストーリーの翻訳記事【Uncharted Realms】で公開されたあるイラストが国内外で話題となった。
今回のアンチャーにジェイスとリリアナが恋人つなぎでラヴニカの街を歩く微笑ましいような怖いような絵がありますが過去のDotPに出ていたものです pic.twitter.com/uaJh8XGvnV
— M. Wakatsuki/aisha (@aishawakatsuki) 2015, 7月 22
仲睦まじく(?)手をつないでラヴニカ市街地を闊歩するジェイスとリリアナ。この挿絵に至るまでの経緯とその後の物語については、ぜひ当該記事をご覧いただきたい。
また、この他の【Uncharted Realms】の記事も非常におもしろく、マジックのカードにも関連深いものが多い。背景ストーリーに馴染みのないプレイヤーも、これを機にいくつかの記事を読んでみてほしい。きっと、いっそうマジックを楽しめるようになることだろう。
晴れる屋では【Uncharted Realms】の翻訳を務める若月繭子さんの連載記事【あなたの隣のプレインズウォーカー】なども公開しており、【Uncharted Realms】と併せて読めばより楽しめるはずだ。
主要な出来事はこのくらいだろうか。
さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。
1. 異端の癒し手、リリアナ
《ヴリンの神童、ジェイス》に続いて、先週末には《異端の癒し手、リリアナ》も【SCGO Richmond】も大活躍を見せてくれた。
2 《平地》 1 《森》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《ラノワールの荒原》 4 《砂草原の城塞》 3 《マナの合流点》 1 《疾病の神殿》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(20)- 4 《エルフの神秘家》 4 《サテュロスの道探し》 3 《棲み家の防御者》 4 《死霧の猛禽》 4 《異端の癒し手、リリアナ》 3 《不気味な腸卜師》 3 《無慈悲な処刑人》 3 《モーギスの匪賊》 2 《肉袋の匪賊》 2 《ナントゥーコの鞘虫》 -クリーチャー(32)- |
4 《先祖の結集》 4 《集合した中隊》 -呪文(8)- |
3 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 3 《アラシンの僧侶》 1 《肉袋の匪賊》 1 《再利用の賢者》 2 《ドロモカの命令》 2 《悲哀まみれ》 2 《英雄の破滅》 1 《残忍な切断》 -サイドボード(15)- |
【前回】も紹介した【先祖の結集コンボ】だが、今回の【SCGO Richmond】では1位に輝き、ローグデッキから一躍トップメタへと躍り出た。
本デッキはアブザンカラーで構築されており、《異端の癒し手、リリアナ》が4枚採用されている。クリーチャーを生け贄に捧げる手段が豊富なこのデッキでは、戦場に出したターン中に即座にフリップすることも容易だろう。
また、第2面の「-X」能力と、合計5枚投入された《肉袋の匪賊》と《無慈悲な処刑人》を組み合わせることで、さながら《ヴェールのリリアナ》のように機能する。
今週末に開催される【プロツアー『マジック・オリジン』】でも最も活躍に期待されるカードのひとつと言える。
2. 極上の炎技とカラデシュの火、チャンドラ
「スタンダードの赤単」と聞くと、【第4回スタンダード神挑戦者決定戦】で優賞を収めた高橋優太の【赤単】ゴブリンが記憶に新しい。
しかし、先週末のSCGOで6位という成績を残した赤単は、ゴブリンとはまた異なる形の【赤単】アグロであった。
21 《山》
-土地(21)- 4 《僧院の速槍》 3 《鐘突きのズルゴ》 2 《火飲みのサテュロス》 1 《稲妻の狂戦士》 4 《大歓楽の幻霊》 2 《カラデシュの火、チャンドラ》 2 《ゴブリンの熟練扇動者》 2 《ゴブリンの踵裂き》 -クリーチャー(20)- |
4 《乱撃斬》 4 《稲妻の一撃》 2 《灼熱の血》 2 《極上の炎技》 4 《かき立てる炎》 3 《軍族童の突発》 -呪文(19)- |
2 《ゴブリンの熟練扇動者》 4 《焙り焼き》 2 《洗い流す砂》 2 《灼熱の血》 2 《極上の炎技》 1 《力による操縦》 2 《前哨地の包囲》 -サイドボード(15)- |
このデッキには『マジック・オリジン』で新たに登場した《極上の炎技》と《カラデシュの火、チャンドラ》が採用されている。
過去に活躍した《黒焦げ》や《炎の投げ槍》、《血の手の炎》を鑑みるに、3マナ4点火力というのはスタンダードで活躍する火力呪文としての基準だった。
《極上の炎技》はその基準を満たす上に、「魔巧」というメリット能力まで持っている。
例に挙げた3枚と比べるとインスタントかソーサリーかという点で差異はあるが、十分に活躍しうるポテンシャルを秘めていると言える。
《カラデシュの火、チャンドラ》もまた、赤単アグロデッキの鬼門である「地上が止まってしまった状況」でも継続的にライフにプレッシャーをかけられる存在として重宝されるだろう。
アンタップ能力は「疾駆」持ちのクリーチャーと相性がよく、上に挙げたデッキのような構成ならば変身は非常に容易だと思われる。
どの時代にも常に一定数の根強いファンがいる【赤単】だが、今後はどういった形が「勝ち組」となるのだろうか?
3. オジュタイの命令
今、《オジュタイの命令》に注目が集まっている。
『マジック・オリジン』で強力な2マナのクリーチャーである《ヴリンの神童、ジェイス》と《潮流の先駆け》が追加されたこともあり、リアニメイトの能力が相対的に強化され恩恵を受けることとなった《オジュタイの命令》。
先週末の【SCGO Richmond】でも、《オジュタイの命令》+《ヴリンの神童、ジェイス》(+《潮流の先駆け》)パッケージを搭載したデッキが複数結果を残しているようだ。
また、同様にあまり注目されてこなかった《シルムガルの命令》も《悪魔の契約》入りの【青黒緑コントロール】に採用され結果を残している。
これまで構築での目立った実績のないカードが、新セットの加入によって新たなシナジーを見いだされ活躍するというのはおもしろい。
これは余談だが、これで『タルキール龍紀伝』の命令サイクルはいずれも構築で実績を残すようになった。
土地以外のレアサイクルの全てのカードが構築実績を残すというのは、なかなか珍しい現象のように思える。環境の変化が多いスタンダードならではの現象といえようか。
ものの喩えだが、さらに今後新たなシナジーやデッキテクが生まれれば、まさかの「《仇滅の執政》デックウィン」や「《陽焼の執政》コントロール」といったデッキが生まれ、「執政サイクル」の時代がくるといったこともあるかもしれない。
移り変わるトレンドに常にアンテナを張り続けていなければ、いつ時代に取り残されるかわからない。今後もMTG Just Now!ではみなさんに最新の情報をお届けしていきたいと思う。
いかがだっただろうか?
今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。
次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。
※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト』
http://mtg-jp.com/
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