8月のプロツアー『マジック2015』から早くも2ヶ月が経ち、今週末には秋の最新エキスパンションである『タルキール覇王譚』の名を冠したプロツアー『タルキール覇王譚』が開催される。
アメリカ、日本を筆頭に世界各地から強豪プレイヤーが一堂に集うこのトーナメントは、さながらマジック:ザ・ギャザリングのワールドカップだ。公式ページでのテキストカバレージに加え、ニコニコ生放送とTwitchでもライブビデオカバレージが行われる予定なので、是非とも世界最高峰のプレイヤーたちの戦いに注目して欲しい。
さて、テキスト、ビデオの両カバレッジは最高のライター&解説陣(なんと、あの浅原 晃と鍛冶 友浩だ!)によって配信されるため、なんとなしに覗いてみても楽しめることは間違いないが、とはいえ少し事前の予習をしておいたほうが、より楽しめるのではないだろうか。
そこで、この記事では僕が選ぶプロツアー『タルキール覇王譚』の見どころを”7つ”お届けする。
週末をもっと楽しむための観戦ガイドとして役立てて欲しい。
◆見どころ1:
今年の趨勢やいかに?2014-2015プロシーズン最初のプロツアー!
まずは「プロツアーとは何か」ということから紹介しよう。
・プロツアーってなに?
プロツアー(PT)とは、1年に4回、新エキスパンションが発売されてまもなくに行われる完全招待制のイベント。世界中の強豪が一堂に集い、総額約2500万円にも上る賞金と世界最強という名誉をかけて、技術と知識の粋を尽くして3日間にわたり競うトーナメントである。
これらプロツアーは1年に4回開催され、プロプレイヤーたちは上位入賞をすることで獲得できるプロポイントの数を1年を通して競っている。そして、その1年の区切りとは、秋の大型エキスパンションが発売される現在にある。
つまり今回のプロツアー『タルキール覇王譚』から、プロプレイヤーたちの1年にわたる過酷なレースが始まるのだ。
そのため、プロツアー『タルキール覇王譚』は、彼らの1年間の行方を占う重要な立ち位置を占めている。たとえば去年の同時期に行われたプロツアー『テーロス』を優勝したイタリアのJeremy Dezaniは、その幸先の良いスタートダッシュを活かし、とうとう年間最多プロポイントの称号であるPlayer of the year(POY)に輝いているのだ。
「まずは誰が先頭に立つのか。そしてそれは自分であって欲しい。」
プロプレイヤーの誰もがこう考えていることだろう。
ノルマや安全策などなく、皆が優勝だけを目指している過酷な殴り合い。
それが秋に開催されるプロシーズン最初のプロツアーの特徴だ。
そして、今週末の10月10~12日に、アメリカはハワイ州ホノルルでプロツアー『タルキール覇王譚』は開催される。初日と2日目はスタンダード10回戦と『タルキール覇王譚』ブースタードラフト6回戦で予選ラウンドが行われ、予選ラウンドの上位8名のみが3日目の決勝ラウンドへと進出する。決勝ラウンドでは優勝者を決定するためのシングルエリミネーション3回戦をスタンダードで行い、見事に勝ち抜いたものが約400万円の優勝賞金とプロツアー王者の栄誉を手にする。
※プロツアー『タルキール覇王譚』の詳しい関連情報については公式サイトの記事をご覧ください(「新環境最初の大イベント、プロツアー『タルキール覇王譚』をニコ生で観戦しよう!」)。
今秋から来夏までの1年間の彼らの趨勢は如何なるものになるのか?
熾烈なプロプレイヤー同士の争いに注目したい。
◆見どころ2:
個人戦だけどチーム戦?注目の的は「Revolutions」!
今回のプロツアー『タルキール覇王譚』は、もちろん個人のプレイヤー間で競われる大会だが、きっと彼らは利害関係を共にするプレイヤー同士でチーム活動を行い、その研究成果をプロツアーの本戦に持ち込んでくるだろう。
昨年のプロツアー『テーロス』を優勝したJeremy DezaniはMTG Madnessというチームで活動し、同大会の決勝戦をなんとほぼ同じデッキを持つチームメイトのPierre Dagenと戦ったのだ。優勝したのはJeremy Dezaniだったが、彼らが使っていた「青単信心」は完成度とアイデアにおいて世界を圧倒し、この奇妙な決勝戦はチーム活動の重要性をしらしめることになった。
それ以前から代表的なチームは存在していたものの、よりチームの活動が活発な方向へと転換したのが昨年だった。やはり個人とチームではできる作業量やレイヤーが異なるため、これまでのプレイヤー個人の能力主体の活動だけでは厳しいのかもしれない。これからはチーム活動によってどれだけ個人の能力への負担を減らすのか、というチーム主体の時代が訪れようとしているのだろう。
そして、その名の由来はフランス革命からか、それともチームコンセプトか分からないが、今大会もっとも注目されているチームこそが「Revolutions」である。
Brad Nelson, Timothee Simonot, Joel Larsson, Daniel Antoniou, Raphael Levy, Pierre Dagen, Melissa DeTora,
Jeremy Dezani, Vidianto Wijaya, Samuelle Estratti
今をときめく女性プレイヤーであるMelissa De Toraも在籍する多国籍軍である「Revolutions」は、古くよりマジック強豪国であるフランスの代表的なプレイヤーたちに、新興勢力から数名が加わったパワーチームだ。
このチームには、昨年の覇者であるJeremy Dezaniと、彼のかつてのチームメイトであるPierre Deganも参入し、いっそう強力な面々を揃えつつある。
今夏の終わりにスタンダードで流行した「Rabble Red」の原型も彼ら「Revolutions」の研究成果であり、現在のトーナメントシーンを語る上では避けられないチームにまで成長している。
今回のプロツアー『タルキール覇王譚』では、彼らの持ち込むデッキから目が離せない。
◆見どころ3:
新旧正統派ヒーローチーム!?
Channel Fireball & Channel Fireball Pantheon!
これまで昨年の代表的な勝者をJeremy Dezaniただひとりであるかのように紹介してきたが、昨年のプロポイントレースにおいて最後の最後までDezaniを窮地まで追い詰めたのが「Channel Fireball Pantheon」に所属するReid Dukeだった。
William Jensen, Jelger Wiegersma, Gabriel Nassif, Matt Sperling, Gaudenis Vidugiris, Zvi Mowshowitz……
名前の並びを見るだけでも垂涎モノだ
彼が所属する「CFBP」は、かつては「StarCityGames」に所属していたヒーロープレイヤーの面々が移籍して生まれたチームだ。Jon Finkel、Kai Buddeの両名が集っているチームというだけで古くからのファンにはインパクトがあり(この2人に津村を加えたら世界最強チームだ)、現在のトップシーンを走るReid Duke、Owen Turtenwald、William Jensenたちも加わっていることで、もはや文句のひとつすら出てこないスターチームに仕上がっている。
彼らは個々人が綺羅びやかすぎてチームとして注目されることは少ないが、ここまで強豪が揃うと誰かしら勝ってしまうので、大体フィーチャーテーブルの1つには「CFBP」のシャツを着たメンバーが座ることになる。
また、彼ら「CFBP」の母体である「Channel Fireball」にも世界屈指のスタープレイヤーが集っている。総帥であるLuis Scott-Vargasを中心に集まったチームで、かっこいい火の玉のロゴはどこかしらで見たことがあるのではないだろうか?
Martin Juza, Shuhei Nakamura, Bob Maher, Ben Stark, Paul Rietzl, Josh Utter-Leyton Shahar Shenhar
……もちろん負けず劣らず豪華な面子だが、どちらかといえば古豪が多いかもしれない。
もはや世界ランキングの大半が「CFB」と「CFBP」によって占められているのではないかと思わせる面々には苦笑しか出てこない。ただ、「CFB」については、昨今ではかつての活躍をみるに物足りなく、やや印象が薄れたようにも思える。
もちろん、昨年度の世界王者であるShahar Shenharに、プロツアー『マジック2015』で上位入賞したPat Cox、マジック界の御意見番ことBrian KiblerにPauloVDRと魅力的な面々は揃っている。ただ、これでも印象が薄れたと感じるほどのインパクトがかつての彼らにはあったのだ。
かつては「世界」 vs 「CFB」とまで言われた強すぎた彼らの姿を今大会では見れるのだろうか?
スターチーム=「CFBP」となりつつある現状に一石を投じる活躍を彼らには期待したい。
◆見どころ4:
日本、BlackBorder、Starcity、Mintcard!続く第三勢力はどこだ!?
「Revolutions」に「CFB」など、これまでに紹介してきたコミュニティの多くは国境を越えた多国籍軍だったが、現在でも交流しやすく信頼関係が築きやすいが故の、国ごと母国語ごとのコミュニティは活躍している。
アジアの隆盛の象徴である「Team Mint card」、アメリカ国内の強豪を揃えたPatric Chapin率いる「StarCityGames」、プロツアー『マジック2015』王者であるIvan Flochを輩出した「BlackBorder」。
枚挙していくと暇がないが、日本もこれらに括られるコミュニティとして存在している。
渡辺 雄也、津村 健志、中村 修平、三原 槙仁(殿堂入りおめでとう!)といった歴戦の面々に、昨シーズン好調だった市川 ユウキと山本 賢太郎のコンビ、世界に誇るデッキデザイナーである行弘 賢、八十岡 翔太、齋藤 友晴とタレントが揃っている。
特に直近の2つのプロツアーでTop8に入賞している市川 ユウキには注目したい。
また、今回は殿堂表彰依頼のプロツアーへの参加となる大磯 正嗣が参戦する。3年半でプロツアーTop8に6回も入賞し、津村 健志らとともに最強の日本を作り上げた一人だ。
2007年の『プロツアー横浜』においては、当時はすでにトーナメントシーンからは離れていたものの、友人のデッキを手にふらっとTop8に入賞したこともある。
今回も「たまたま時期がよかったから」と気軽な参加表明をしているが、いつしかの大活躍を期待してしまう。
果たして今回の日本勢はどのような活躍を見せてくれるのだろうか?
今晩から始まるビデオカバレッジではいちファンとして応援したい。
◆見どころ5:
要注目!”挑戦者”からも目が離せない!
プロツアーに参加するのはトッププロばかりではない。PTQ(プロツアー予選)を勝ち抜く、あるいはグランプリで上位入賞することでもプロツアーへの参加権利を手にすることができるからだ。
今回もトッププロへの”挑戦者”として数多くのプレイヤーが権利を手にしてプロツアーに参戦する。
そして日本勢の中でも特に注目すべき”挑戦者”は以下の4名だ。
・清永翔
清永 翔は今年の日本を席巻したプレイヤーだ。6月にモダンシーズンのPTQを突破し、9月にはWMCQ(世界選手権予選)も勝利し、一夏でプロツアーの権利と日本代表の座を手にしている強豪だ。
この絶好調の連勝街道がホノルルまで続いていることを信じたい。
・河浜 貴和
河浜 貴和は「チーム豚小屋」を率いるリーダーだ。「チーム豚小屋」の詳細についてはこの記事をご覧頂きたいが、国内の大規模イベントでは上位を見れば「チーム豚小屋」がいる、といった具合に上昇気流にのったノリノリのチームなのだ。
彼らはインタビューの中で「自分たちは調整チームではない」と話してはいるが、彼らの勝因には独自に積み重ねている何かがあるはずだ。その秘密の力は、日本の草の根をかき分け、世界にも通用するのだろうか?
・覚前 輝也
覚前 輝也は古くからのプレイヤーにとっては馴染み深い名前だろう。トッププレイヤーではないが、2004年前後に安定して好成績を残していたプレイヤーだった。しかし、いつしかフェードアウトし、そして今、皆が忘れた頃に戻ってきた。
タルキールプレリにて、マジック復帰してちょうど一年。
世界一のプレイヤーになるつもりでMTGの世界に復帰した。
世界一になるために1番重要なのが、24時間365日マジックの事を考える事。
次に重要なのが、常にハイレベルで出来る環境。
最後が一緒に高め合える仲間だと思う。
— 覚前 輝也 (@fushiginokunin5) 2014, 9月 19
そう、世界一になるために戻ってきたのだ。
今夏に行われたグランプリ神戸2014を見事に「バーン」で優勝し、いよいよ世界一に挑戦する舞台に手がかかった。
プロツアー『タルキール覇王譚』では彼の覚悟と実力が試される。
・加藤 一貴
覚前 輝也に続いてまた懐かしい名前だが、かつての国内のリミテッドグランプリを総ナメにしていた強豪だ。しばらくトーナメントシーンからは遠ざかっていたが、マジックは続けていたようで、今でも変わらず、いや昔よりも増した実力で勝利を重ねている。
PTQを突破して出場したプロツアー『マジック2015』では上位入賞し、グランプリ神戸2014でも11位に入賞しているのだ。
連戦連勝かつ実力もお墨付き。そんな彼の活躍を今回のプロツアーで期待しない理由はない!
◆見どころ6:
“菊名合宿”の成果やいかに?世界のドラフト戦略のトレンドとは?
週末のプロツアー『タルキール覇王譚』では、2種類のフォーマットでトーナメントは進行していく。初日と2日目ともに、3回戦の『タルキール覇王譚』ドラフトと5回戦のスタンダードだ。
つまりプロツアー『タルキール覇王譚』で勝つためには、プレイヤーたちはドラフトとスタンダードの両種目で好成績を残さなければならない。しかし、発売から僅か2週間の間にその2種目をマスターすることは、たとえトッププロであっても難しいことだ。
そこで彼らはしばしばプロツアーに向けた集中練習会を行う。海外のプレイヤーたちは開催地にウィークリーマンションを借りて泊まり込み、日本のプレイヤーたちは”合宿”と称してマジック漬けの数日間を送るのだ。
先々週にhappymtg内でお届けした“菊名合宿”もそのひとつ。日本のトッププロが集うプロツアーに向けたドラフト練習会である。ここでは強豪の意見が擦り合わされ、カードや戦略への適切な評価がみるみるうちに組み上げられていった。
そして、この『タルキール覇王譚』のドラフト環境は、「緑黒系」か「白系」がいいという結論が出た。
スゥルタイやアブザンのように遅いゲームで有利がある「緑黒系」と、白黒や白赤、緑白といった白ベースのアグロである「白系」は、最速と最遅が入り混じる多色環境の中、速度に対してしっかりとしたコンセプトを持つことができるからだ。
そして、先週末に上海とオーランドで開催された2つのリミテッドグランプリはそれぞれアブザンとマルドゥが優勝し、ある程度は“菊名合宿”における結論は正しそうだという予想がたった。
しかし、プロツアーではここからが本番なのだ。強そうなドラフトテクニックを皆が理解しつつある中で、自分たちがどれだけ正確により良い戦略を選択できるのかが問われる。「緑黒系」ならばスゥルタイとアブザンのどちらがより優れているのか、それらの理想型はなにか、皆が過小評価しているカードはなにか。
公式ページに掲載されるドラフト戦略と、ビデオカバレッジでは浅原と鍛冶の解説をガイドにして、トッププロのドラフトの一挙一動には注目して欲しい。
◆見どころ7:
ミッドレンジの隆盛は止むのか?角度が問われるスタンダード!
昨今におけるプロツアーの構築フォーマットのメタゲームは、“アグロに強いミッドレンジ”が多い傾向にある。その理由は以下の2つだ。
1.準備期間が短いため、「強いデッキ」よりは「強いカードを見落とさないこと」に力を入れるプレイヤーが多い。 →結果として強力なクリーチャーやプレインズウォーカーを有するミッドレンジになりやすい。
2.コントロールとアグロでは、アグロのほうが短期間でリストが完成するため、それなりに強いアグロが各地で誕生し、それを対策したミッドレンジが増える。
2.コントロールとアグロでは、アグロのほうが短期間でリストが完成するため、それなりに強いアグロが各地で誕生し、それを対策したミッドレンジが増える。
プロツアー開催直前の有力な情報源であるMagic Onlineの結果も、「緑系信心」や「ジェスカイテンポ」、「マルドゥミッドレンジ」と、例のごとく”アグロに強いミッドレンジ”だらけの状況だ。
この流れはおそらくプロツアー本戦でも引き続き、本戦の様子は”アグロに強いミッドレンジ”と、それを”対策したデッキ”がぶつかることになるだろう。
その”対策したデッキ”とは、現環境では「スゥルタイコントロール」「白系コントロール」「トークン」「英雄的」あたりだろうか。
純粋にクリーチャーを順番に並べていくアグロとは違った角度で戦うデッキ(「トークン」や「英雄的」など)か、ミッドレンジが得意とするゲームの速度帯よりも少し遅いゲームで戦うデッキ(「スゥルタイコントロール」や「白系コントロール」など)が有力となりそうだ。
さてそこで注目のカードは、以下の5枚だ。
・《血の暴君、シディシ/Sidisi, Brood Tyrant(KTK)》
「スゥルタイコントロール」の中核となる小さな《墓所のタイタン》。墓地を肥やす能力で《残忍な切断》など「探査」呪文の燃料を供給するだけでなく、トークン生成能力のおかげで攻撃と防御ともに働く優秀なボードコントロール力を持っている。色の制限から多くのデッキで見ることにはならないが、このカードが発揮するパフォーマンスは圧倒的である。新時代の《高原の狩りの達人》かもしれない。
・《対立の集結/End Hostilities》
「白系コントロール」を支える弱い《神の怒り》。
ミッドレンジ同型を制するためには、相手よりも一手早く脅威を展開するためにマナ加速を加えることが最も簡単だ。プロツアー『ニクスへの旅』で話題になった《森の女人像》と《クルフィックスの狩猟者》のパッケージを使った「緑系ミッドレンジ」は常に有力な選択肢である。
しかし、そういったマナ加速がディスアドバンテージとなりうるのが《対立の集結/End Hostilities》のようなリセット呪文をもつコントロールデッキとの対戦で、展開した脅威とともにマナベースまでも崩されてしまうのだ。「アグロ」と「緑系ミッドレンジ」が流行するならば、弱い《神の怒り》とはいえ、《対立の集結/End Hostilities》にも大活躍の機会は残されている。また、同様に《危険な櫃》も見過ごされやすいカードだが、今回のように様々なミッドレンジがメタゲームに存在する環境はチャンスだろう。
・《女王スズメバチ》
ミッドレンジ同士のゲームは結局のところ、どれだけインパクトの大きいアクションを繰り出すことができるかによって趨勢が決まる。つまり額面通りに強そうなカードが強いのだ。それでいうと《女王スズメバチ》はその粋ともいえるカードだろう。接死持ちの飛行が合計5体も展開されるのだから、まとめて対処する方法がなければ、ほぼ5枚のカードと交換できてしまう。
そのため、「緑系信心」および「緑系ミッドレンジ」の戦いは、中盤をすぎればこの《女王スズメバチ》を巡るものになる。さらに《破滅喚起の巨人》による一掃や、《エレボスの鞭》などで再利用することが次なる工夫の一手だが、果たしてどれが正着手なのだろうか。トッププロが見出す《女王スズメバチ》駆除のテクニックに注目したい。
・各種「隆盛」
モダン環境における《ジェスカイの隆盛》の活躍ぶりを見るに、これらの《隆盛》シリーズにはまだ計り知れない可能性が眠っている。たとえば《アブザンの隆盛》も除去耐性の高い強化エンチャントとして申し分なく、また《マルドゥの隆盛》が持つ爆発力も決して侮れない。
しかし、これらはどれも使いにくい3色のエンチャントであり、能力の癖が強く最大限の力を発揮するデッキ構成を見つけることはとても難しい。トッププロならばどのように《隆盛》を調理するのだろうか?本戦での《隆盛》デッキの活躍には大いに期待したい。
・《道の探求者》
「果敢」の誘発条件から、無条件にどのデッキにも入るわけではないものの、「英雄的」「トークン」「バーン」「白系ミッドレンジ」など幅広いデッキで採用されるであろう優秀なクリーチャー。基本的には20点のライフを削り合うゲームであるため、「絆魂」という最もライフリソースに影響する能力はやはり強力なのだ。
また、2マナ2/2という基本サイズはともかくとして、それが3/3あるいは4/4まで成長する「果敢」能力は、安易なブロックや交換を許さない。同様に《僧院の速槍》も強力な「果敢」持ちとしてスポットライトを浴びている。この2種を採用するような白赤のデッキがどの程度存在するかは分からないが、「果敢」が現状では過小評価されている能力のひとつであることは間違いない。
以上の5枚が今回のプロツアー『タルキール覇王譚』のスタンダードで注目したいカードだ。
この他にも《灰雲のフェニックス》など魅力的なカードは多くあるため、ひょっとしたら本戦の構築ラウンドは、それらを組み合わせた未知のデッキばかりになるのではないかという期待がある。
トッププロが構築したデッキ、戦略、プレイにはいつだって驚きが満ちているのだ。
「まさかそのプレイが」や「まさかそのカードが」。
そんな嬉しい裏切りが、彼らのゲームには溢れている。
さあ、あと数時間で彼らの祭典が始まる。
繰り広げられるデッキ、戦略、ドラマを楽しみにして、今回のプロツアーも満喫したい。
願わくば日本勢が好調でありますように!
※プロツアー『タルキール覇王譚』の詳しい関連情報については公式サイトの記事をご覧ください(「新環境最初の大イベント、プロツアー『タルキール覇王譚』をニコ生で観戦しよう!」)。
※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『マジック:ザ・ギャザリング 日本語公式ウェブサイト』
http://mtg-jp.com/
『MAGIC: THE GATHERING』
http://magic.wizards.com/en
『BIGWEB マジック:ザ・ギャザリング情報サイト』
http://www.bigmagic.net/