それでは今回も、会場で異彩を放っていた”ちょっと変わった”デッキたちを紹介しよう。
幾度にもわたって入念に捻られたアイデアに注目だ。
■ 《一日のやり直し》マーフォーク
《一日のやり直し》は強烈なデメリットを抱えている癖の強いじゃじゃ馬カードだが、ここで紹介する「《一日のやり直し》マーフォーク」はその特性を上手く乗りこなしている。
《一日のやり直し》はお互いにリソースを補充するカードだが、こちらのターンはその場で終了してしまうため、対戦相手が先にカードを展開できてしまうことが悩みの種だ。しかし、「マーフォーク」ならばその問題は比較的小さい。
その理由は「マーフォーク」の持ち味ともいえる《霊気の薬瓶》にある。《霊気の薬瓶》があれば対戦相手のターンでも引いてきたクリーチャーを展開できるのだ。これまでは度々《霊気の薬瓶》で繰り出すクリーチャーが切れてしまうことがあったが、《一日のやり直し》があれば、毎ターン安定して起動することができるだろう。
13 《島》 4 《変わり谷》 4 《不毛の大地》 -土地(21)- 4 《呪い捕らえ》 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 4 《銀エラの達人》 1 《潮流の先駆け》 1 《幻影の像》 1 《波止場の用心棒》 4 《真の名の宿敵》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(24)- | 2 《残響する真実》 3 《一日のやり直し》 4 《Force of Will》 2 《虚空の杯》 4 《霊気の薬瓶》 -呪文(15)- | 3 《基本に帰れ》 2 《狼狽の嵐》 2 《ハーキルの召還術》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《水没》 1 《虚空の杯》 1 《潮流の先駆け》 1 《梅澤の十手》 1 《誤った指図》 -サイドボード(15)- |
また、さりげなく搭載されている《虚空の杯》も見逃せないポイントだ。レガシーには強力な1マナ呪文が多い。《渦まく知識》《稲妻》《剣を鍬に》など枚挙に限りがないほどだ。そのため、《一日のやり直し》したあとに1マナ呪文を連打されてしまうと、如何にこちらには《霊気の薬瓶》があるとはいえ、対戦相手の方が《一日のやり直し》から受ける恩恵は大きいだろう。
ただ、そこで《虚空の杯》をX=1で設置しておくと状況は一変する。たとえ相手の手札が《一日のやり直し》で補充されても、そこに含まれている1マナ呪文を全て無駄なカードに変えてしまえるからだ。特に「マーフォーク」が苦手とする《稲妻》や《剣を鍬に》といった軽量除去を封殺できることは素晴らしい。
「マーフォーク」も少なからず1マナ呪文を採用してはいるが、多くの対戦相手ほどではないだろう。レガシーという環境の姿、「マーフォーク」というデッキの特性を理解した魅力的なデッキに仕上がっている。
■ 白単《空の遺跡、エメリア》
《空の遺跡、エメリア》はかつてスタンダードの時代から多くのファンを抱えてきた魅力的なカードだ。7枚の《平地》をアップキープにコントロールしていると墓地にあるクリーチャーカードを戦場に戻すことができる。長期戦で活躍するアドバンテージカードとして、《砂の殉教者》や《太陽のタイタン》などをお供に引き連れていた。
そんな《空の遺跡、エメリア》をレガシーでも使ってみようという試みが「白単《空の遺跡、エメリア》」だ。カードプールが広がったことでより魅力的なETB能力をもったクリーチャーを採用されている。
10 《平地》 2 《空の遺跡、エメリア》 4 《古えの墳墓》 4 《裏切り者の都》 1 《コーの安息所》 -土地(21)- 4 《石鍛冶の神秘家》 3 《前兆の壁》 1 《理想主義の修道士》 3 《巡礼者の目》 1 《ちらつき鬼火》 1 《台所の嫌がらせ屋》 1 《アカデミーの学長》 1 《ファイレクシアの変形者》 1 《修復の天使》 1 《真面目な身代わり》 1 《崇敬の壁》 1 《霊誉の僧兵》 1 《霊体の先達》 1 《目覚ましヒバリ》 1 《太陽のタイタン》 1 《ワームとぐろエンジン》 -クリーチャー(23)- | 1 《悟りの教示者》 3 《虚空の杯》 2 《金属モックス》 4 《パララクスの波》 1 《オパール色の輝き》 1 《バジリスクの首輪》 1 《迫撃鞘》 1 《梅澤の十手》 1 《出産の殻》 1 《殴打頭蓋》 -呪文(16)- | 2 《剣を鍬に》 2 《議会の採決》 2 《Holy Light》 1 《虚空の杯》 1 《トーモッドの墓所》 1 《墓場の浄化》 1 《審問官の総督》 1 《浄化の印章》 1 《弁論の幻霊》 1 《神聖の力線》 1 《神の怒り》 1 《魔法の夜》 -サイドボード(15)- |
《空の遺跡、エメリア》の起動条件を満たすための《平地》を《巡礼者の目》で調達し、《前兆の壁》と《石鍛冶の神秘家》が序盤の戦線を支える。《ちらつき鬼火》《修復の天使》《パララクスの波》でETB能力持ちを使いまわせば、いつの間にやら《空の遺跡、エメリア》が動き始める時間になっているだろう。
《パララクスの波》には、《オパール色の輝き》とのコンビネーションも期待できる。《オパール色の輝き》でクリーチャー化した《パララクスの波》は能力を自身に起動すると、ゲームから取り除かれた後に「《パララクスの波》が戦場から離れた際の能力」が誘発し、消散カウンターが置き直される。
つまり、好きな回数だけ《パララクスの波》の能力を起動できるのだ。また、能力をスタックに積む順番を工夫すると、好きな数のクリーチャーを永遠とゲームから取り除くこともできる。この2枚が揃ってしまえば戦場の主導権はこちらのものだ。
《出産の殻》も面白いカードだ。ETB能力を使い終えた《前兆の壁》や《巡礼者の目》が次々と生まれ変わり、《修復の天使》や《霊誉の僧兵》を経て、最後にはボスである《太陽のタイタン》が登場する。そこまで繋がってしまえば終幕が近い。
こうして様々なシナジーが搭載されたデッキである「白単《空の遺跡、エメリア》」の弱点は、その重さにある。1ターン目から激しをいカードの応酬がされるレガシー環境において、3ターン目に《巡礼者の目》を出している場合ではないのだ。
そこで、その余りある重さを支えるために、《古えの墳墓》《裏切り者の都》《金属モックス》といった「ストンピィ」御用達のマナ加速が採用されている。これで問題が解決するわけではないが、幾許かは改善されているだろう。そして、1マナ域のカードはほぼ採用していないため、X=1の《虚空の杯》も用意されている。豊富な2マナ土地の恩恵を受けて1ターン目から設置できてしまえば完封できることもあるだろう。
サイドボードまで含めると、この記事では紹介しきれないほどのシナジーが搭載されている「白単《空の遺跡、エメリア》」は挑戦的かつ楽しいデッキだ。対戦相手の驚く顔が見たい方は是非手に取ってみてほしい。