今回は、スタンダード・エクステンデッド・モダンと様々なフォーマットで大活躍し、レガシーでも第一線で戦っているアーキタイプ、ジャンドについてインタビューしていきたいと思います。
斉藤 「ということで、今のレガシー界でジャンドといえばこの方、高鳥 航平(東京)さんに、インタビューさせていただきます。高鳥さんは第2期レガシー神挑戦者決定戦では優勝、第1期レガシー神決定戦でもTOP16という好成績を収めたジャンドマスターです。先日の第2期レガシー神決定戦では川北 史朗さんに惜しくも敗れてしまったものの、最後まで勝敗が分からない名勝負を繰り広げたのが記憶に新しいですね。今日は、よろしくお願いします。」
高鳥 「よろしくお願いします。レガシー大会は店舗大会などで優勝ぐらいで、大きな大会での優勝は第2期レガシー神挑戦者決定戦が初めてだったので嬉しかったです。先日の神決定戦のような舞台にまた立てるよう頑張りたいですね。」
■ジャンドとは?
斉藤 「こちらがジャンドの一般的なレシピになります。
1 《沼》 1 《森》 3 《Badlands》 2 《Bayou》 1 《Taiga》 4 《新緑の地下墓地》 3 《血染めのぬかるみ》 2 《樹木茂る山麓》 3 《燃え柳の木立ち》 3 《不毛の大地》 -土地(23)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《闇の腹心》 4 《タルモゴイフ》 3 《血編み髪のエルフ》 -クリーチャー(15)- |
4 《思考囲い》 2 《稲妻》 3 《罰する火》 3 《突然の衰微》 3 《Hymn to Tourach》 1 《大渦の脈動》 2 《森の知恵》 4 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(21)- |
2 《赤霊破》 2 《梅澤の十手》 2 《ゴルガリの魔除け》 2 《外科的摘出》 2 《強迫》 1 《漁る軟泥》 1 《古えの遺恨》 1 《壌土からの生命》 1 《クローサの掌握》 1 《仕組まれた疫病》 -サイドボード(15)- |
斉藤 「それでは基本的な内容からお聞かせください。まず、ジャンドとはどんなデッキなのでしょうか?」
高鳥 「ジャンドとは、黒赤緑のジャンドカラーである3色から構成されるカードパワーの高いグッドスタッフデッキです。スタンダードのころからずっとその強さは健在で、モダンでは《罰する火》や《血編み髪のエルフ》、《死儀礼のシャーマン》の禁止もありました。
レガシーという高速環境では、《血編み髪のエルフ》は重いカードでしたが、優秀なマナ生物である《死儀礼のシャーマン》が出てから、レガシーでも勝てるデッキとして結果を残しています。
アドバンテージ源である《血編み髪のエルフ》・《闇の腹心》・《Hymn to Tourach》。繰り返し使える除去である《罰する火》・《ヴェールのリリアナ》。優秀なアタッカーの《タルモゴイフ》を軸に、リソースを絞り、盤面をコントロールしながら勝ちに向かうビートコントロールデッキです。」
■なぜジャンド?
斉藤 「なぜジャンドなのでしょうか?レガシーという環境においてジャンドを選択する理由はあるのでしょうか?」
高鳥 「メタ的に圧倒的に多いデルバーデッキ、石鍛冶デッキ、奇跡コンデッキなど、主要なデッキに対等以上に戦えるのがジャンドの選択理由ですね。それと、昔に比べてANTやベルチャーみたいな1キルを狙えるコンボデッキの数が少ないことがかなり助かっています。《Force of Will》が使えないので、どうしても瞬殺コンボ系は不利なので。」
斉藤 「《罰する火》、《突然の衰微》、《ヴェールのリリアナ》などのカードがキラーカードになりやすいマッチが多いというメタだからでしょうか?」
高鳥 「そうですね。その3枚がしっかりと機能するマッチアップはジャンドの土俵で戦えるので、概ね有利だと思っています。それら3枚が腐る相手=コンボデッキなので、そういう相手にはサイドボードを多めに用意することでカバーするようにしています。」
高鳥 「メタ以外の個人的な理由としては、いろいろなデッキを使ってみた中で、ジャンドが最もコンスタントに安定した成績を残せていたからですかね。自分の思考回路とあっているんだと思います。」
斉藤 「自分の思考回路とは具体的にはどのようなことでしょう?」
高鳥 「レガシーで一番よく見る色の青であるドロー操作、《渦まく知識》や《思案》は安定性が上がりますが、選択肢が多すぎてミスの元になってしまうことが多いと感じました。以前まではRUGデルバーやドリームホールなどを使っていましたが、ドロ―ソースの使い方が甘く負けてしまうことが多かったんですね。ジャンドは1枚1枚のカードパワーが高く、ドロー操作がないぶん盤面や除去の扱い方を重視した戦い方なので、その戦い方が自分のスタイルにあっているみたいです。」
■一般的なレシピとの違い
斉藤 「では、高鳥さんのレシピを教えてください。」
高鳥 「はい。こちらが第2期レガシー神挑戦者決定戦で優勝した時のものになります。」
1 《沼》 1 《森》 3 《Badlands》 3 《Bayou》 4 《新緑の地下墓地》 2 《血染めのぬかるみ》 2 《樹木茂る山麓》 4 《燃え柳の木立ち》 3 《不毛の大地》 -土地(23)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《闇の腹心》 4 《タルモゴイフ》 2 《漁る軟泥》 -クリーチャー(14)- |
4 《思考囲い》 2 《稲妻》 4 《罰する火》 4 《突然の衰微》 3 《Hymn to Tourach》 1 《ミリーの悪知恵》 1 《森の知恵》 4 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(23)- |
2 《赤霊破》 2 《真髄の針》 1 《紅蓮破》 1 《根絶》 1 《Hymn to Tourach》 1 《古えの遺恨》 1 《壌土からの生命》 1 《ゴルガリの魔除け》 1 《殺戮遊戯》 1 《墓掘りの檻》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《Chains of Mephistopheles》 1 《仕組まれた疫病》 -サイドボード(15)- |
斉藤 「それでは高鳥さんのレシピを見ていきましょう。一般的なジャンドとのレシピとはどのような違いがあるのでしょうか?」
高鳥 「まずは《突然の衰微》の枚数ですね。以前は《突然の衰微》3枚・《大渦の脈動》1枚といった形がメジャーでした。」
斉藤 「Grand Prix Denver 2013でトップ8に入っていたリストと同じですね。」
高鳥 「はい、それですね。ゲーム後半は《大渦の脈動》が活きてくることもありますが、最大勢力の《秘密を掘り下げる者》デッキに対しては序盤のクロックをしっかり除去してスローゲームに持ち込みたいので、確実性のある《突然の衰微》をしっかり4枚取ることにしました。」
斉藤 「なるほど。《突然の衰微》が4枚というだけでなく、火力の枚数も《罰する火》が4枚なのですね。」
高鳥 「そうです。《稲妻》3枚・《罰する火》3枚というレシピをよく見かけますが、私は《稲妻》2枚・《罰する火》4枚というバランスにしています。
《稲妻》は、相手が先攻1ターン目に出してきた生物をすぐに除去できるという強みがあるのですが、後述するように中盤以降はしっかりと《罰する火》を使い回していきたいので、《罰する火》を4枚にしています。絶対に引きたいカードともいえます。
また《燃え柳の木立ち》4枚が《燃え柳の木立ち》3枚・《Taiga》1枚となっているレシピもたまに見ますが、フェッチで《Taiga》を持ってきたい場面はほとんどありません。ですので、《罰する火》をしっかり運用できるように《燃え柳の木立ち》を4枚にしています。」
斉藤 「《罰する火》が苦手なデッキは積極的に《燃え柳の木立ち》に《不毛の大地》を使いますからね。《燃え柳の木立ち》も枚数を増やして安定性を上げているのはいいですね。」
高鳥 「そのほかの特徴としてはサイドボードの《根絶》でしょうか。ジャンドのサイドボードには《外科的摘出》がよく採用されていますが、今のメタゲーム的にとても早いコンボデッキよりも《時を越えた探索》が入っているデッキが増えてきたと感じるので、『刹那』付きの《根絶》にしました。《外科的摘出》だと、プレイに対応して《時を越えた探索》で対象にとった呪文を『探査』で追放、というアクションをされることがあるのですが、《根絶》だと『刹那』が付いているので、その心配もなく確実にゲームから取り除くことができます。」
斉藤 「高速コンボのリアニメイトやANTが多いときは0マナで《外科的摘出》の方が優れている場合もありますが、確かに《時を越えた探索》が使われている今なら《根絶》の方が良いですね!相手が《時を越えた探索》を構えていたり、《大祖始の遺産》を出していても、対応されずに確実に追放できるのは魅力的です。」
メタに合わせた変更点
斉藤 「では、今後メタにあわせてデッキを変えるとすればどうするかを聞かせてください。」
高鳥 「メインの《漁る軟泥》2枚が現在フリースロット扱いになっています。有利だったBUGが以前より厳しくなったのでメインから《漁る軟泥》を入れましたが、《宝船の巡航》に対しては《漁る軟泥》では少し遅いようなので、何にするか試行錯誤中です。
◆コンボ、ミラクルなどブロッカーのいないデッキが増えた場合
《ゴブリンの熟練扇動者》が滅法強いので使うでしょう。《終末》と1:1交換をさせることができ、《死儀礼のシャーマン》経由で2ターン目に出せば、コンボデッキとスピード勝負さえできてしまうカードです。
◆ビートが増えた場合
《血編み髪のエルフ》は場を一気に逆転できるカードです。クリーチャー同士がにらみ合っているところに《血編み髪のエルフ》→《ヴェールのリリアナ》/《突然の衰微》/《タルモゴイフ》は本当に強いです。《血編み髪のエルフ》をメインにしておくでしょう。《思考囲い》を除去にすればさらに有利がつきますが、このままで十分です。
◆テンポが増えた場合
《秘密を掘り下げる者》デッキが多いなら《漁る軟泥》をそのままにして使うでしょう。《タルモゴイフ》との睨み合いや、スレッショルドの防止、ライフゲインと1枚で多くの仕事をしてくれます。
次回はジャンドの弱点やサイドボードの考え方、《宝船の巡航》の影響はどうだったか、そして小テクを紹介といったプレイ編をお届けします。
では、次回プレイ編でお会いしましょう。