のぶおの部屋 -第12回 ジャンド(後編)-

斉藤 伸夫



第12回 前編は【こちら】


斉藤 「前回はデッキ構造について解説していただきました。続く今回は、ジャンドの弱点やサイドボーディングなどプレイ中のテクニックについて教えていただきたいと思います。高鳥 航平さん今回もよろしくお願いします。」

高鳥 「はい。よろしくお願いします!」

斉藤 《宝船の巡航》が出てからハンデスや《ヴェールのリリアナ》が弱体化したといわれている中、《宝船の巡航》はジャンドにどのような影響を与えたかも伺いたいと思います。」



■弱点・やられて嫌なことは?

斉藤 「ジャンドを使っていて、やられたら嫌なことや苦手なカードを教えてください。」

高鳥 「ジャンドの弱点は、テンポの悪さを突かれてしまうことだと思います。ジャンドは《死儀礼のシャーマン》のおかげでマナのかかる強いスペルやクリーチャーを展開できるようになり、レガシーでも結果を残すデッキになりましたが、元々の弱点としてマナ基盤の脆さがあげられます。そのマナ基盤を責められるのが本当にきついですね。他の青いデッキと違い《渦まく知識》《思案》といったドロースペルがないので初手にあった土地、《死儀礼のシャーマン》を対処されてその後引かずに負けるといったことがよくあります。

ジャンドは《秘密を掘り下げる者》デッキに有利とされていますが、実際にプレイしている側としてはあまり楽ではないですね。《もみ消し》《不毛の大地》といったカードを複数枚引かれてしまうと、何もできずに負けてしまうこともあるからです。

また、早いデッキではないのでハンデスでスピードを落とすことを目的として打つことも多いですがハンデスの間に合わないようなANTやベルチャーなどのコンボは特に厳しいですね。また特殊地形の多い中速デッキなのでバーンも苦しいゲームになりやすいです。」

斉藤 「特殊地形がメインの非青中速デッキの弱点ですね。《死儀礼のシャーマン》は墓地対策にもなり土地基盤を安定させながらマナも増やすという、いかにこのデッキの弱点を補うカードだということがわかります。」

高鳥 《死儀礼のシャーマン》は小さなPWのように感じています。しかし、マナベースを攻めてこないデッキはコンボデッキや奇跡コンになるので、それはそれで当たりたくはないですね。」

斉藤 「個別のカードとしては苦手なカードはありますか?」

高鳥 「カードとしては《安らかなる眠り》が厳しいです。1番の攻め手の《タルモゴイフ》は0/1のクリーチャーになり、《死儀礼のシャーマン》も1/2バニラ、《罰する火》も使い回せなくなります。最近たまに『helm peace』デッキ(編注:《安らかなる眠り》《Helm of Obedience》のコンボデッキ)がまた出てきたのが気になりますね。ただ幸いに《突然の衰微》で簡単に対処できるカードではあるので、その場で負けに直結するわけではないのが救いです。」





■各主要デッキに対するサイドボーディング

斉藤 「各主要アーキタイプへのサイドチェンジの考え方を教えてください。」

高鳥 「具体的なサイドボードプランを挙げていきましょう。」



高鳥 航平 「ジャンド」 第2期レガシー神挑戦者決定戦 (優勝)

1 《沼》
1 《森》
3 《Badlands》
3 《Bayou》
4 《新緑の地下墓地》
2 《血染めのぬかるみ》
2 《樹木茂る山麓》
4 《燃え柳の木立ち》
3 《不毛の大地》

-土地(23)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《闇の腹心》
4 《タルモゴイフ》
2 《漁る軟泥》

-クリーチャー(14)-
4 《思考囲い》
2 《稲妻》
4 《罰する火》
4 《突然の衰微》
3 《Hymn to Tourach》
1 《ミリーの悪知恵》
1 《森の知恵》
4 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(23)-
2 《赤霊破》
2 《真髄の針》
1 《紅蓮破》
1 《根絶》
1 《Hymn to Tourach》
1 《古えの遺恨》
1 《壌土からの生命》
1 《ゴルガリの魔除け》
1 《殺戮遊戯》
1 《墓掘りの檻》
1 《虚無の呪文爆弾》
1 《Chains of Mephistopheles》
1 《仕組まれた疫病》

-サイドボード(15)-
hareruya




●対URデルバー


高鳥 「最近急に増えたアーキタイプですが、比較的有利に運べるマッチです。《罰する火》《タルモゴイフ》を主軸としてゲームを運ぶことを意識しています。

《仕組まれた疫病》は『指定:人間/Human』で相手のデッキの大半を壊滅させることができる、とても強いサイドカードです。ドローソースが16枚以上入っているURデルバー相手は《Chains of Mephistopheles》がとても刺さる上、なかなか触られないエンチャントですのでオススメです。」


●対RUGデルバー


高鳥 《闇の腹心》は積極的に抜きたい訳ではありませんが、サイドインアウトの枚数の都合上1枚だけ抜いています。ゲームプランとしては、とりあえずライフを大事に考え長く生き延びる選択肢を選んでいき、スローゲームに持っていきます。ハンデスも強いタイミングはもちろんありますが、特に前半は押されることが多いのでまずは盤面を意識しましょう。

たまに見かける《宝船の巡航》が入っている形だった場合、《Chains of Mephistopheles》《Hymn to Tourach》を入れ替えます。」



●対スニークショー


高鳥 《ゴルガリの魔除け》《神聖の力線》《騙し討ち》を破壊するだけでなく、《闇の腹心》《死儀礼のシャーマン》への《紅蓮地獄》から『再生』モードで守ることも覚えておくことで勝てるゲームもあります。

《赤霊破》とハンデスがあった場合は基本的には《赤霊破》を構えるよりハンデスから入りましょう。相手がカウンターとコンボパーツすべて揃っていた場合どちらにしろ負けてしまうので、気にしなくても良いです。

ショーテル戦はサイド後は比較的有利と感じれる程に勝率がありますので、メインの負けを引きずらないようにしましょう。」



●対BUG系


高鳥 「BUG系は基本的に《罰する火》がとても効果的ですので、《罰する火》を大切にすれば勝利は目前です。ジャンドはBUG系が1番苦手としているタイプの1つだと思いますので、《罰する火》《タルモゴイフ》で勝ちましょう。
以前と違い《宝船の巡航》が加入したため、《赤霊破》を打つタイミングは慎重に見極める必要があります。」



●対石鍛冶系


高鳥 メインに限ってはハンデスが強いです。理由は、《殴打頭蓋》をサーチした《石鍛冶の神秘家》の返しで《殴打頭蓋》を抜けるからです。しかし、カード枚数としてはこのアクションはディスアドバンテージな動きですし、サイド後は《真髄の針》《古えの遺恨》《殴打頭蓋》の処理が可能なので、《思考囲い》は基本的にサイドアウトしてしまって構いません。

《石鍛冶の神秘家》をアクティブにしないよう除去をしながらコントロールし、《精神を刻む者、ジェイス》さえケアすれば勝てるマッチです。」



●対ANT


高鳥 「とりあえずハンデスがとても大事ですね。《闇の腹心》で妨害手段を補充しながら《ヴェールのリリアナ》《タルモゴイフ》につなげることがゲームプランとなります。相性は不利なので、初動から妨害を繰り返すことがとても重要になります。」



●対エルフ


高鳥 「少し不利がつきます。ジャンドは除去が強いですが、除去(守るアクション)とクリーチャー展開(攻めるアクション)を同時に行えないので、自然と相手のアクションを受け続けないといけないことが多くなりがちです。しかもカウンターがないので《自然の秩序》から《世界棘のワーム》《大祖始》のような除去耐性のあるクリーチャーをサーチされてしまうと負けてしまいます。

エルフ戦は初動を除去して、相手が手札を消費したタイミングでハンデスを打つと《自然の秩序》のようなフィニッシュ級のカードを持っているので、そこを落としてから盤面に残った生物を除去していきましょう。

《森の知恵》はエルフ戦においては遅いのでサイドアウトします。手札を消費しきれないこともあるからです。また、どのエルフを除去するかをその時々に見極めるのが大事ですね。特に《エルフの幻想家》《ワイアウッドの共生虫》は揃えさせないように気を付けましょう。」



●対ミラクル


高鳥 「このマッチはクリーチャーよりも《ヴェールのリリアナ》をいかに活かすかが鍵です。《血編み髪のエルフ》がない分少し相性が悪くなっていますが、そこはサイドの《殺戮遊戯》で補っています。《天使への願い》さえ抜いてしまえば比較的に楽なゲームになりますので《殺戮遊戯》《天使への願い》1択でコールします。

《思考囲い》をサイドアウトするのは、結局《師範の占い独楽》でライブラリートップに重要なカードを積みながらゲームを進行されてしまうため、《思考囲い》が強いのは最初だけになってしまうことが多かったからです。ミラクル側は基本的にカウンターを抜くor減らすので《ヴェールのリリアナ》でも基本的には同じような働きができます。

《古えの遺恨》はサイドインしてもしなくてもいいと思います。しかしメインから《大祖始の遺産》を入れた形だったり、《殴打頭蓋》《世界のるつぼ》などのカードをみた場合はサイドインしてもいいかもしれません。」



●対ジャンドミラー


高鳥 《罰する火》がマウントをとりやすいカードですので、相手の《罰する火》をしっかり抜くために《根絶》をサイドインします。《根絶》の対象として、《罰する火》に強い《タルモゴイフ》を選ぶこともあります。

基本的に前半の軽い攻防で勝負が決まることも多いですが、盤面勝負になった時に相手だけ《血編み髪のエルフ》を持っていると厳しいです。一番強い動きである『《血編み髪のエルフ》から《ヴェールのリリアナ》』という流れに対しては、《ヴェールのリリアナ》が着地してから《血編み髪のエルフ》の解決前に《稲妻》《突然の衰微》《ヴェールのリリアナ》を落とすことによって、《ヴェールのリリアナ》の能力を使わせないというケアができるので覚えておくと役に立つことがあると思います。」



■<宝船の巡航>の影響は?

斉藤 「『タルキール覇王譚』で新しく《宝船の巡航》というカードが出ましたが、非青であるジャンドにとってどんな影響があったのでしょうか?ハンデスや《ヴェールのリリアナ》の使用者が減るだろうという予想の中での『第2期レガシー神挑戦者決定戦』優勝は、本当に凄いなと思いながら観戦していました。」

高鳥 「それまで有利だったBUG、デスブレードなどに対して、以前ほど有利ではなくなってしまいました。そのためサイドに《Chains of Mephistopheles》《赤霊破》《紅蓮破》といったサイドボードを計2枚から計3枚に増量し、加えてメインから墓地対策になる《漁る軟泥》を入れました。ただ使ってみて分かったのですが《漁る軟泥》では遅くて対処できないみたいなので要検討中です。

以前は、『《罰する火》は中盤以降に引いて使いまわせばいい』ということで3枚の採用でしたが、《宝船の巡航》《罰する火》では対処できない《タルモゴイフ》を引かれるときついので、序盤から《罰する火》をしっかり引いて《罰する火》《秘密を掘り下げる者》に打ち、《突然の衰微》《タルモゴイフ》のために残しておけるように《罰する火》を4枚に増量しました。

《赤霊破》は今まで初動の《思案》《渦まく知識》に対してプレイしていましたが、今では《宝船の巡航》の専用カードに近くなりましたね。また、《宝船の巡航》は引かれた内容に依存してしまいます。引かれたカードを《罰する火》で対処できるかどうかがポイントですね。引かれる内容として《タルモゴイフ》連打はきついですが、《秘密を掘り下げる者》《死儀礼のシャーマン》などは、何枚引かれても《罰する火》1枚で対処できますよ。

また、《宝船の巡航》だけでなく《封じ込める僧侶》の影響もあるのですが、ANTが最近また増えているのはジャンドにとっては逆風です。」

斉藤 《宝船の巡航》は驚異ですが、《罰する火》で処理できるかという視点で見ていたのですね。《タルモゴイフ》《宝船の巡航》がセットで入ってくるデッキは有利であるBUGカラーのデッキが多いですし、URデルバーにはとにかく《罰する火》が強いので、《宝船の巡航》をプレイされても乗り越えることができているのですね。」





■細かいテクニックや初歩テクニック

斉藤 「初歩的なテクニックや細かい注意点などあれば教えてください。」

高鳥 「ジャンドについては正直あまり小技とかテクニックとかは少ないデッキタイプだとは思います。積極的に狙うわけではないですが一応こんなこともできるということ、頭の片隅に置いておくといいものを紹介したいと思います。」


 ・《壌土からの生命》の「発掘」で《罰する火》を落としながら、《燃え柳の木立ち》《壌土からの生命》で回収する

 ・《燃え柳の木立ち》《死儀礼のシャーマン》から緑マナを供給することで、相手の《水没》をケアする(《森》を置かない)

 ・相手の《タルモゴイフ》に火力をプレイしてから、《漁る軟泥》《死儀礼のシャーマン》起動でサイズを下げることによって倒す

 ・《燃え柳の木立ち》が立っていれば《罰する火》に対しての《根絶》をマナを出すことによって誘発する能力で回避できる(《天使への願い》の「奇跡」を防ぐ)

 ・相手の《師範の占い独楽》ドロースタックで《根絶》やフェッチランドに対して《不毛の大地》を起動して白マナ2つ目を出させないようにする

 ・「奇跡」誘発スタックで、墓地にある同名カードに《根絶》をプレイすれば「奇跡」を防げる

 ・ANTがハンデスケアで先に置いてきた《ライオンの瞳のダイアモンド》に対して、《暗黒の儀式》などの呪文スタックで《突然の衰微》

 ・《血染めの月》ケアで《森》をサーチしておくと、《死儀礼のシャーマン》や、《血編み髪のエルフ》から《突然の衰微》などで対処できる可能性がある

高鳥 「これらは、比較的よくある初歩的なテクニックと言えるのではないでしょうか。」





■まとめ、ジャンドに興味がある人へ

斉藤 「ジャンドに興味がある人、使う人への一言アドバイスをお願いします。」

高鳥 「モダンのジャンドとパーツが共通している部分が多いので、レガシーのデッキの中では比較的組みやすいデッキだと思います。
ジャンドはカラーリング的にアグレッシブなイメージがありますが、レガシーのジャンドはボードコントロールデッキですのでじっくりと戦っていきましょう。
 《宝船の巡航》《時を越えた探索》はジャンドにとって逆風ですが、地力のあるデッキなので立ち回り次第ではなんとかなります。また《Chains of Mephistopheles》は今後サイドの定番カードになるかもしれないので高価なカードですが手に入れたほうがいいかもしれませんね。





《Chains of Mephistopheles》《森の知恵》と相性とは相性が良くないので、《ミリーの悪知恵》も最近は入れていますが、2マナ域の《森の知恵》より1マナのアクションとしてとてもよかったです。1・3ターン目にアクションがあるのは2マナ域が強いこのデッキとしては理想的です。ただし、対コンボ、コントロールでライフを払ってハンドを増やしたいマッチもあるので1:1に散らしました。《ミリーの悪知恵》を試したことがない方は、是非試してみてください。」

斉藤 「今回はありがとうございました!ジャンドの悩んでいるフリースロットが今後どうなるか、高鳥さんの活躍と合わせて楽しみにしています!」





 今回をもって『のぶおの部屋』の連載は終了となります。

 これまでインタビューをしたり記事を書いたことがなく、すべて初めての経験でしたが、拙い私の文を最後まで読んでいただきありがとうございました。当初は全5回の連載を予定でしたが、ご好評いただきましたおかげで全12回・約1年間と長い連載を続けることができました。感謝の気持ちで一杯です。

 来年の4月には日本で初のレガシーのグランプリが開催されます。普段レガシーを遊んでいる人もあまりやったことのない人も、気軽にレガシーの話ができればと思いますので、どこかで見かけたら声をかけてください。

 では、GP京都でお会いしましょう!本当にありがとうございました!