By Atsushi Ito
マジックのカードは、様々な『領域』を行き来する。
『ライブラリー』(※)、『手札』、『スタック』、『戦場』、『墓地』。
プレイヤーはこれまで基本的に、これら5つの『領域』でカードを管理してきた。
マジックのルールや大部分のカードの効果は、この5つの『領域』間の「移動」で説明ができる。
例えば最初は『ライブラリー』にあったカードは、やがて『手札』に入り、呪文としてプレイされる。呪文は『スタック』に乗った後で解決され、それがパーマネントなら『戦場』に出るし、インスタントやソーサリーならば即座に『墓地』行きとなる。
また、「『スタック』から『手札』」や「『墓地』から『戦場』」といった、通常のプレイでは実現しない「逆の移動」を実現するカードも存在する。
《差し戻し》が解決すると呪文は『スタック』から『手札』に移動するし、《再活性》が解決すると『墓地』のクリーチャーが『戦場』に出てくる。
そしてデッキビルダーたちは、こういった『領域』間のカードの「移動」を駆使して、例えば「発掘」デッキのような、これまでのデッキ構築の枠を打ち破るような新しいアーキタイプを生み出してきた。
だが。
マジックにはいまだ有効に使われていない『6つ目の領域』があった。
数多くのカードのテキスト中に出現するメジャーな『領域』であるにも関わらず、その『領域』からの「移動」が厳しく制限されていたために、これまであまり活用されて来なかったのだ。
そう、その『領域』に入ってしまったカードは、二度と戻ってくることはない。入ることは出来ても、出ることは極めて難しい。誰も邪魔できず、誰にも邪魔されない『領域』。
いわば、最後のブルーオーシャン。
それが、『追放領域』である。
カードを「追放」するということは、『戦場』や『手札』といった他の『領域』から『追放領域』への「移動」を意味する。
そしてそれは言ってしまえば、相手のカードに対する絶対安全な対処法だった。
何故なら、『追放領域』にあるカードは文字通りゲームから除外されているのであり、それをゲーム上に呼び戻すことは、並大抵の方法では不可能だったからだ。
だから、テキストに『追放する』と書かれた除去呪文はまさしく完全性の象徴だった。
これまでは。
さて、長らくお待たせした。
今回happymtgが2015年1月23日(金)発売の新エキスパンション『運命再編』より、独占先行プレビューでお届けするのはこちらのカードだ。
奔流の精霊 4青
クリーチャー-エレメンタル
飛行
奔流の精霊が攻撃するたび、防御プレイヤーがコントロールするすべてのクリーチャーをタップする。
3(緑/黒)(緑/黒): 奔流の精霊を追放領域からタップ状態で場に出す。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。
3/5
クリーチャー-エレメンタル
飛行
奔流の精霊が攻撃するたび、防御プレイヤーがコントロールするすべてのクリーチャーをタップする。
3(緑/黒)(緑/黒): 奔流の精霊を追放領域からタップ状態で場に出す。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。
3/5
「追放領域から(タップ状態で)場に出す」。
この唯一無二の能力が、このカードの持つポテンシャルの高さを表している。
『追放領域』から『戦場』への任意の(つまり、「追放」された原因によらない)「移動」が可能なカードは、他に《霧虚ろのグリフィン》くらいしかないからだ。
つまりスタンダードでは、このような能力を持っているのはこれ1枚のみということだ。
神話レアにふさわしい稀有な能力を持つこのカード。
早速、パッと思いつく範囲で「このカードによって何ができるか」を考えてみよう。
1. 「追放」除去や打消しが効かない
今のスタンダード環境には「追放」除去が溢れている。
《払拭の光》《完全なる終わり》《アブザンの魔除け》《信者の沈黙》《危険な櫃》etc……
しかし、その全てをこのカードは受け付けない。
たとえ「追放」されても、素知らぬ顔で再び戦場に戻せば良い。
もちろん《雲散霧消》のような「追放」カウンターも効かない。
つまりこのカードは強力な「追放」カードに安易に頼りがちなプレイヤーを戒める、大自然の怒りの発現なのだ。
2. 「探査」とのシナジーがある
そうはいっても、通常の「破壊する」系の除去を食らって『墓地』に落ちてしまった場合は再キャストできない。
しかし『タルキール覇王譚』はそんなときのために、先回りして解決法を用意していた。
そう、「探査」。
墓地のカードを取り除いてキャスティングコストを軽くするこの能力を使えば、一切のタイムラグなしで『墓地』から『追放領域』へのカードの「移動」が可能になる。
つまり「探査」が採用されているデッキならば、『奔流の精霊』は実質無敵の生物となるのだ。
3. 《エレボスの鞭》で戻すとすごい
また、万が一『墓地』に落ちた場合には別の活用法もある。
このカードの能力はその執拗なまでの復帰能力だけにとどまらないからだ。
「攻撃するたび、防御プレイヤーがコントロールするすべてのクリーチャーをタップする。」
地味ながら、極めて強力な一文である。
しかし防御側もタップされてしまうとわかれば、全てのクリーチャーを遠慮なく攻撃に向かわせることだろう。それではあまりこの能力の有難味がない。
そこで、《エレボスの鞭》。
「速攻」を持たせるこの神器によって『奔流の精霊』を『戦場』に呼び戻せば、奇襲性は抜群。
さらにターン終了時には、何とこのカードは『追放』されるのだ。
あとは言うまでもないだろう。一切のブロックができない丸裸の対戦相手をタコ殴りにすれば良い。
4. 《女王スズメバチ》を突破できる
個人的にスタンダードで相手に出して欲しくないイライラクリーチャー第1位が《女王スズメバチ》。
一旦場に出たが最後、こちらの攻撃は全く通らなくなってしまうからだ。
しかし、『奔流の精霊』があれば。
「飛行」「接死」持ちトークンもなんのその。安心安全に攻撃を継続することが可能になる。
これでもう、何も怖くない。
5. 《悪夢の織り手、アショク》で取り除かれても大丈夫
仮に相手が《悪夢の織り手、アショク》を出してきたら「しめしめ」とほくそ笑もう。
何せこちらのデッキには『追放領域』からプレイできるファンタジスタがいるのだ。
相手がプラス能力を起動したが最後。
あとはボールを相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!するだけだ。
6. 新プレインズウォーカー、ウギンに対して強い
『運命再編』で現在最も注目されているカード。
それはやはり先日公開された最新のプレインズウォーカー、《精霊龍、ウギン》に他ならないだろう。
しかしこのカード、『奔流の精霊』は、ウギンに対して強いのだ。
「+2」能力では落ちないし、「-X」能力を使われようものなら、『追放領域』から元気に舞い戻ってくる。
クリーチャーで防御網を固めてもオールタップ能力があるため、忠誠値を守りきるのは難しい。
つまりウギンが活躍するならばこのカードもウギンキラーとして活躍するかもしれないのだ。
さて、いかがだっただろうか。
『タルキール覇王譚』からのストーリー展開の続きも気になる『運命再編』(カードギャラリーは【こちら】)は2015年1月23日(金)発売だ。
1月17-18日(土・日)には晴れる屋トーナメントセンターでもプレリリースを行う。
『運命再編』で、あなたの運命も再編してみませんか?
※2015/01/02 訂正: 『山札』という表記を『ライブラリー』に改めました。→戻る