USA Legacy Express vol.44 -SCGO Indianapolis, SCGO Orlando-

Kenta Hiroki


皆さん明けましておめでとうございます。今年もアメリカで開催される大規模なレガシーの大会であるStarCityGames.com Open Series(SCGO)を中心に、皆さんにレガシーの最新情報をお届けしていきたいと思います。今年もよろしくお願いいたします。

さて、今回の記事ではSCGO IndianapolisSCGO Orlandoの入賞デッキの解説をしていきたいと思います。



SCGO Indianapolis トップ8 デッキアーキタイプ

2014年1月5日
1位 Jund Depths/ダークデプス
2位 UWR Delver/白青石鍛冶
3位 UWR Delver/白青石鍛冶
4位 ANT/むかつきストーム
5位 UWR Delver/白青石鍛冶
6位 Sneak and Show/スニーク・ショー
7位 RUG Delver/カナディアン・スレッショルド
8位 Junk Depths/ダークデプス

年明け早々SCGO Indianapolisが開催されました。冬の嵐にも拘らず250人以上の参加者を出すなど大盛況でした。大会結果の方は昨年のGP Washington DCでも優勝したUWR Delverがトップ8の半数近くを占める中、 《暗黒の深部》コンボを搭載したLoamデッキが優勝を果たしました。Loamデッキと《小悪疫》をハイブリットした、非常に個性的な構成のデッキです。



SCGO Indianapolis デッキ解説

「Jund Depths」「Junk Depths」「UWR Delver」



Kennen Haas「Jund Depths」
SCGO Indianapolis (1位)

2 《Bayou》
1 《Badlands》
1 《Taiga》
4 《新緑の地下墓地》
2 《樹木茂る山麓》
1 《血染めのぬかるみ》
4 《燃え柳の木立ち》
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
1 《Karakas》
1 《ボジューカの沼》
3 《演劇の舞台》
4 《不毛の大地》
1 《Maze of Ith》
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》
2 《暗黒の深部》

-土地(30)-

1 《ゴブリンの太守スクイー》
1 《冥界のスピリット》

-クリーチャー(2)-
4 《納墓》
4 《信仰無き物あさり》
2 《輪作》
1 《カラスの罪》
4 《壌土からの生命》
4 《小悪疫》
1 《罰する火》
4 《モックス・ダイアモンド》
4 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(28)-
3 《真髄の針》
2 《無垢の血》
1 《ファイレクシアの摂取者》
1 《棺の追放》
1 《輪作》
1 《古えの遺恨》
1 《罰する火》
1 《天啓の光》
1 《踏査》
1 《抵抗の宝球》
1 《Maze of Ith》
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》

-サイドボード(15)-
hareruya


Loamデッキと《小悪疫》デッキをハイブリットした様な構成で、《暗黒の深部》《演劇の舞台》のコンボも搭載されています。《演劇の舞台》《暗黒の深部》をコピーし、コピーした方を場に残せば、カウンターが乗っていない状態の《暗黒の深部》になり、即座にトークンを出すことが可能です。この他にもこのデッキの《演劇の舞台》は、《Maze of Ith》《ボジューカの沼》《不毛の大地》等もコピー可能で、用途の広いカードです。

《納墓》《ゴブリンの太守スクイー》《冥界のスピリット》《罰する火》《壌土からの生命》等、デッキのエンジンの核となるカードをサーチすることが可能で、さらにサイド後は《天啓の光》《古えの遺恨》《棺の追放》といった、『フラッシュバック』持ちで特定のデッキや戦略の対策となるカードをサーチするなど、このデッキでは《Demonic Tutor》のように使用することができます。

《小悪疫》《不毛の大地》など相手の行動を制限させる手段を多く搭載しており、流行りの《真の名の宿敵》の対処も、《ヴェールのリリアナ》《小悪疫》があるので容易です。《冥界のスピリット》《タルモゴイフ》等のクリーチャーを毎ターンブロックして時間を稼ぎます。デッキの構成上非コンボデッキに強く、《輪作》からの《The Tabernacle at Pendrell Vale》はクリーチャーを並べる部族デッキに対して特に効果的です。土地をギリギリまで切り詰めたDelver系のテンポデッキに対しても、《不毛の大地》で相手の土地を破壊することでクリーチャーを場に維持することが困難になります。

反面、ANT等のコンボ対策がメインの《カラスの罪》とサイドに1枚だけ採用されている《抵抗の宝球》しか見られないので、相性はあまり良くなさそうです。ただ、《巣穴からの総出》《The Tabernacle at Pendrell Vale》があるのでコンボ側にとっても非常にリスキーなプランとなります。また、《実物提示教育》やReanimator対策にサイドに1枚だけ採用されている《ファイレクシアの摂取者》も面白いアプローチです。《The Tabernacle at Pendrell Vale》など入手が困難な高額カードが多数搭載されているデッキですが、ツールボックス的なデッキで他と違った戦略を好む方は一度は試してみる事をお勧めします。

暗黒の深部納墓小悪疫






Tony Wong「Junk Depths」
SCGO Indianapolis (8位)

1 《森》
1 《沼》
3 《Bayou》
2 《Scrubland》
1 《Savannah》
4 《新緑の地下墓地》
1 《湿地の干潟》
1 《吹きさらしの荒野》
2 《やせた原野》
1 《ドライアドの東屋》
1 《Karakas》
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
2 《魂の洞窟》
2 《暗黒の深部》
2 《不毛の大地》
1 《演劇の舞台》

-土地(26)-

1 《死儀礼のシャーマン》
3 《吸血鬼の呪詛術士》
2 《闇の腹心》
1 《ガドック・ティーグ》
4 《聖遺の騎士》

-クリーチャー(11)-
2 《緑の太陽の頂点》
4 《生ける願い》
4 《突然の衰微》
2 《壌土からの生命》
2 《森の知恵》
4 《虚空の杯》
4 《モックス・ダイアモンド》
2 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(24)-
2 《スレイベンの守護者、サリア》
2 《ゴルガリの魔除け》
1 《クァーサルの群れ魔道士》
1 《吸血鬼の呪詛術士》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《ファイレクシアの破棄者》
1 《ガドック・ティーグ》
1 《オルゾフの司教》
1 《平和の番人》
1 《悪魔の布告》
1 《ボジューカの沼》
1 《不毛の大地》
1 《暗黒の深部》

-サイドボード(15)-
hareruya


《暗黒の深部》コンボを搭載したもう一つの入賞デッキですが、Tony Wong のリストはKennen Haasと異なりJunk Loamにコンボを足した構成です。《暗黒の深部》のコンボのお供として《演劇の舞台》の他に《吸血鬼の呪詛術士》も採用されています。珍しくハンデスが不採用で、代わりにコンボ対策に《虚空の杯》からフル搭載されているなど、特徴のあるリストになっています。

《生ける願い》が採用されている関係でサイドの多くは願いのターゲットで占められています。コンボ対策に《スレイベンの守護者、サリア》《エーテル宣誓会の法学者》等ヘイトベアーが多めに採られています。《暗黒の深部》などの土地もサーチできるのでコンボも決まりやすくなっています。《オルゾフの司教》はあまり見かけないカードですが、マイナス修正なので《真の名の宿敵》も除去することができる上、『憑依』するので上手く使えば大きなアドバンテージを得られます。

虚空の杯生ける願い吸血鬼の呪詛術士






Josh Guibault「UWR Delver」
SCGO Indianapolis (2位)

4 《Tundra》
3 《Volcanic Island》
4 《霧深い雨林》
3 《溢れかえる岸辺》
2 《沸騰する小湖》
4 《不毛の大地》

-土地(20)-

4 《秘密を掘り下げる者》
4 《石鍛冶の神秘家》
2 《真の名の宿敵》

-クリーチャー(10)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《稲妻》
4 《剣を鍬に》
4 《呪文貫き》
4 《目くらまし》
4 《Force of Will》
1 《火と氷の剣》
1 《殴打頭蓋》

-呪文(30)-
4 《翻弄する魔道士》
3 《渋面の溶岩使い》
2 《紅蓮破》
2 《安らかなる眠り》
1 《狼狽の嵐》
1 《Wear》
1 《墓掘りの檻》
1 《饗宴と飢餓の剣》

-サイドボード(15)-
hareruya


GP Washington DCで優勝して以来常に第一線で活躍し続けているデッキで、今大会でも最も多くの入賞者を出しました。今大会のファイナリストであるJosh Guibaultはメインの装備品の選択が他のプレイヤーと異なり《梅澤の十手》が不採用で、代わりに《火と氷の剣》が採用されています。《梅澤の十手》と比べるとクリーチャー除去能力は劣りますが、除去耐性が付くほか、相手に《真の名の宿敵》を出されても地上が止まらなくなる上に打点も強化できるのが強みです。

部族デッキやDeath and Taxesなどのクリーチャーデッキに対してはサイドに3枚採用された《渋面の溶岩使い》が控えているので、メインの単体除去と合わせれば有利にゲームを進めていけます。

秘密を掘り下げる者火と氷の剣渋面の溶岩使い




SCGO Orlando トップ8 デッキアーキタイプ

2014年1月12日
1位 BUG Delver/青黒緑アグロ
2位 Reanimator/リアニメイト
3位 Omni-tell/実物提示教育
4位 ANT/むかつきストーム
5位 UWR Delver/白青石鍛冶
6位 Jund/ジャンド
7位 UR Delver/青赤デルバー
8位 Elves/エルフ

Delver系のデッキが上位の多くを占め、Loamエンジンを搭載したデッキが活躍していた前回と異なりコンボデッキの活躍が目立ちます。Tier1のUWR Delverは前回と異なり今回の入賞者はわずか1名でしたが、ほぼ毎回入賞者を出している事から現在のベストな《石鍛冶の神秘家》デッキの一つであることは間違いありません。優勝は《墓忍び》をフィニッシャーに搭載したBUG Delverでした。最近はBUGと言えば《断片無き工作員》の『続唱』からアドバンテージを稼ぐ中速寄りのShardless BUGだったので、テンポ型のBUGをSCGOの上位で見かけるのは久しぶりです。



SCGO Orlando デッキ解説

「BUG Delver」「ANT」「UR Delver」



Laurence Moo Young「BUG Delver」
SCGO Orlando (1位)

4 《Underground Sea》
1 《Tropical Island》
4 《汚染された三角州》
4 《新緑の地下墓地》
2 《Bayou》
1 《霧深い雨林》
4 《不毛の大地》

-土地(20)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《秘密を掘り下げる者》
4 《タルモゴイフ》
2 《墓忍び》

-クリーチャー(14)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《目くらまし》
4 《突然の衰微》
4 《Hymn to Tourach》
4 《Force of Will》
2 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(26)-
3 《見栄え損ない》
3 《呪文貫き》
3 《ゴルガリの魔除け》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《クローサの掌握》
1 《水没》
1 《墓掘りの檻》
1 《ヴェールのリリアナ》
1 《忍び寄るタール坑》

-サイドボード(15)-
hareruya


去年開催されたGP Washington DCSCGO Providenceでは惜しくもタイブレーカー落ちのため9位でのフィニッシュになっていたアーキタイプ(両大会ともに使用者は異なる)でしたが、今大会では遂に優勝という快挙を成し遂げました。 《真の名の宿敵》対策になる《ヴェールのリリアナ》がメインから2枚採用されています。フィニッシャーに《墓忍び》が採用されているなどチームアメリカを彷彿させる構成です。《墓忍び》は最近は頻繁に見るカードではありませんが、飛行持ちで《真の名の宿敵》の上から相手をアタックすることが可能で、タフネスも5あるので《稲妻》1枚で落ちないのが強みです。環境に多く存在する《真の名の宿敵》の影響で《精神を刻む者、ジェイス》の使用率も低下しているのも追い風です。《剣を鍬に》とRUG Delver等がサイドインしてくる《水没》に気を付ければ現在の環境ではかなり信頼できるクロックです。

《死儀礼のシャーマン》のおかげで立ち上がりが早く相手の《不毛の大地》による被害も緩和されるので、他のDelver系のデッキに対しては有利が付きそうです。相手のクロックをカウンターされずに破壊できる《突然の衰微》にアクセスできるのも大きな魅力です。コンボに対してもカウンターとハンデスの《Hymn to Tourach》があり、《秘密を掘り下げる者》《タルモゴイフ》等の軽い優秀なクリーチャーでプレッシャーをかけられるので、メイン戦は《突然の衰微》等の除去を引きすぎなければ5分かやや有利です。サイド後はこれらの除去や重い《墓忍び》《呪文貫き》《ヴェンディリオン三人衆》《ヴェールのリリアナ》に変わります。

単体除去が中心なのでクリーチャーを多数並べてくる部族デッキや《ルーンの母》《スレイベンの守護者、サリア》を搭載したDeath and Taxesに対してはメインでは不利が付きそうです。サイド後はタフネス1のクリーチャーを一掃する《ゴルガリの魔除け》や追加の除去の《見栄え損ない》が投入されるので相性も大分改善されます。《見栄え損ない》は同系でも《死儀礼のシャーマン》《秘密を掘り下げる者》を除去できるのでサイドインされます。《ゴルガリの魔除け》はマイナス調整なので《真の名の宿敵》対策として有効です。《至高の評決》《仕組まれた爆薬》等から自軍のクリーチャーを護ったり、Sneak and Showの《騙し討ち》やこちらのハンデス対策にサイドインされる《神聖の力線》対策など、用途が広いスペルです。

墓忍びヴェールのリリアナゴルガリの魔除け






David Winsauer「ANT」
SCGO Orlando (4位)

2 《島》
1 《沼》
2 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
4 《汚染された三角州》
3 《沸騰する小湖》
2 《宝石鉱山》

-土地(15)-



-クリーチャー(0)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《思案》
4 《定業》
4 《渦まく知識》
4 《暗黒の儀式》
3 《陰謀団式療法》
3 《強迫》
4 《陰謀団の儀式》
4 《冥府の教示者》
1 《炎の中の過去》
1 《苦悶の触手》
1 《むかつき》
4 《ライオンの瞳のダイアモンド》
4 《水蓮の花びら》

-呪文(45)-
3 《ザンティッドの大群》
3 《突然の衰微》
2 《蒸気の連鎖》
2 《虐殺》
1 《外科的摘出》
1 《思考囲い》
1 《巣穴からの総出》
1 《Tropical Island》
1 《Karakas》

-サイドボード(15)-
hareruya


青いデッキ対策に《陰謀団式療法》《強迫》の合計6枚のハンデスをメインに採用した上、サイドにも追加で《思考囲い》が1枚採用されています。サイドの1枚が《強迫》では無く《思考囲い》なのは、ヘイトベアー等のクリーチャーを落とすことができるためかと思われます。しかしこのデッキはメインにフル搭載された《ギタクシア派の調査》のファイレクシアマナコストや《むかつき》等、ライフを支払うシチュエーションが多数存在するため、少なめの採用となっています。

サイドには定番化しているカウンター対策の《ザンティッドの大群》をはじめ、置物やヘイトベアー、RUG Delver等のクロック対策としては《突然の衰微》《蒸気の連鎖》の他に《虐殺》までも採用されています。Death and Taxesは勿論のこと、UWR Delverに対しても劇的な効果が望めます。

むかつき強迫虐殺






George Goanos「UR Delver」
SCGO Orlando (7位)

3 《島》
2 《山》
3 《Volcanic Island》
4 《乾燥台地》
4 《沸騰する小湖》
2 《霧深い雨林》

-土地(18)-

4 《秘密を掘り下げる者》
4 《ゴブリンの先達》
1 《渋面の溶岩使い》
2 《瞬唱の魔道士》
2 《真の名の宿敵》

-クリーチャー(13)-
4 《渦まく知識》
4 《Chain Lightning》
4 《稲妻》
3 《思案》
3 《呪文貫き》
4 《目くらまし》
3 《発展の代価》
4 《Force of Will》

-呪文(29)-
2 《外科的摘出》
2 《紅蓮破》
2 《粉々》
2 《水没》
2 《大祖始の遺産》
2 《罠の橋》
1 《幻影の像》
1 《青霊破》
1 《赤霊破》

-サイドボード(15)-
hareruya


《秘密を掘り下げる者》デッキの中でもUWR Delverよりもメインのバーンスペルが多めで《ゴブリンの先達》も採用されているなど速さに特化した型です。軽いスペルを多数搭載したこのデッキは《瞬唱の魔道士》を最も有効に使うことが可能です。メインの《発展の代価》は流行りのUWR Delverや今大会の優勝デッキであるBUG Delver等に対して刺さります。中盤以降のゲームも高い除去耐性と回避能力を持ち合わせている《真の名の宿敵》のおかげで相手の最後数点のライフも削りやすくなっています。

サイドの 《罠の橋》《幻影の像》は主にReanimatorやSneak and Showに対して投入されますが、UWR Delverなど装備品で《真の名の宿敵》を強化してくるデッキに対してもサイドインされそうです。《罠の橋》で相手のクリーチャーを止めている間にバーンスペルで相手に止めを刺すという、軸をずらしたゲームプランを展開することも可能です。

ゴブリンの先達発展の代価罠の橋



総括

SCGO Indianapolisは珍しいスタイルのLoamデッキが優勝を収めました。トップ8の半分を《秘密を掘り下げる者》デッキが占め、その中でもUWR Delverはトップ8に3名を送り込む活躍を見せました。その翌週に開催されたSCGO OrlandoはBUG Delverの優勝で幕を閉じました。《真の名の宿敵》対策を多数搭載している上にコンボに対しても強い構成なので、現在のレガシーのメタに合ったデッキだと思います。今後はハンデス対策に《神聖の力線》をサイドに積んだコンボも増えてきそうです。

以上SCGO IndianapolisとSCGO Orlandoの解説でした。

次回の記事ではSCGO ColumbusとSCGO Baltimoreの解説を予定しています。

それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーを!