By Atsushi Ito
次のプロツアーの権利を争う場であるプロツアー地域予選への参加権をかけたプロツアー予備予選 (PPTQ)の、その決勝。
プロツアーに参加するための第一関門となるこの場所にたどり着いたのは、つい先日【プロツアー『マジック・オリジン』】で地獄を見てきた男だった。
砂田がバンクーバーの地に刻んだ戦績は、0-5-1ドロップ。久しぶりのプロツアーとはいえ、【グランプリ・千葉2015】で4,000人規模の参加者の中でトップ4まで上り詰めたプレイヤーが、こうもあっさりと初日で敗退するというのは、やはりプロツアーが一筋縄ではいかないことの証左と言えるだろう。
だがそれでも、砂田の心は折れていなかった。むしろ火が点いたのかもしれない。プロツアーとはそういうものだ。行けない者はいつかあの場所にと焦がれるが、行った者もそれ以上の強さで、再びあの場所にと願う。
デッキは【第2期モダン神挑戦者決定戦】で神への挑戦権を獲得したときと同じく、最強の相棒であるバーン。しかしあのときよりも確実に強くなった砂田が、今再びプロツアーへの門を叩こうとしていた。
既にプロツアー参加の経験がある砂田に対して、宮下にとってのプロツアーは彼自身の言にもあるように、まだ【一度は出てみたい夢の舞台】だ。
【The Last Sun2014】でトップ4に入った経験もある宮下だが、次なるステップであるプロツアーには、なかなか辿りつけずにいた。
だが、今日こそはという思いでこの決勝まで勝ち上がったのだ。
「親和とバーンを倒す」という一念で選択したジェスカイコントロール。そして決勝の相手は、バーン。
今日こそは。宮下、想定内の敵を相手に自らの手で道を切り開けるか。
砂田と宮下。プロツアーを経験した上で再びプロツアーを希求する男と、まだ見ぬプロツアーに焦がれる男。
ともにプロツアーへの道をどうあってもつなぎたい者同士、譲れない戦いが幕を開けた。
Game 1
スイスラウンドの順位により先手をとった宮下だが、オープニングハンドに悩まされる。
対戦相手である砂田のデッキはバーン。この点、相手の初動を挫くという最低条件は満たしているものの、万が一土地が詰まりクロックをかけられなかった場合、好き放題やられてしまうヴィジョンが見える。
キープ、or マリガン?
悩んだ宮下はキープを宣言。1ターン目のセットは《山》でゴー。
一方これを見て砂田、一拍おいて《僧院の速槍》を送り出し、透けて見えている《稲妻》に差し出す。
そして続けてセット《天界の列柱》の返しで《ゴブリンの先達》をレッドゾーンに送り出す砂田。能力が誘発し、ライブラリートップは……《刃の接合者》。宮下、3枚目の土地が置けないことが確定してしまう。
しかし他方で砂田も2枚目の土地が置けていない。宮下が2枚、砂田が1枚。お互い土地が詰まっている奇妙な構図だ。
それでも続く2体目の《ゴブリンの先達》は《マナ漏出》するがなおも土地が引けない宮下に対して、砂田はさらに3体目の《ゴブリンの先達》で攻め立てる。今度は《瞬唱の魔道士》で相打ちしにいく宮下だが、いよいよ後がない。
均衡が崩れたのは次のターンだった。砂田が先に《聖なる鋳造所》を引き込んだのだ。
度重なる《ゴブリンの先達》のアタックの末にここでようやく《島》がめくれ、安心してこれに《流刑への道》を撃ち込む宮下だったが、2マナオープンでターンを返す砂田に対し、返す宮下の手札にはカウンターがなく、わずかな可能性に賭けて開き直ってフルタップで《刃の接合者》を展開せざるをえない。
だが、砂田は既に計算を終えていた。
エンド前に《ボロスの魔除け》本体、メインで《裂け目の稲妻》を待機。続くターンエンドにも《ボロスの魔除け》を本体に撃ち込み、《裂け目の稲妻》待機解除から本体《頭蓋割り》!!
14点あった宮下のライフは、綺麗さっぱりゼロとなった。
宮下 「うーん、マリガンだったのか……?」
ゲームを振り返る宮下。だが結局今は気持ちを切り替えるしかない。
砂田 1-0 宮下
Game 2
今度は土地7枚で迷う余地なくマリガンする宮下だが、6枚スタートとはいえ砂田の動きを丁寧に捌きにいく。
《ゴブリンの先達》には《稲妻のらせん》。《大歓楽の幻霊》にも《稲妻のらせん》。さらなる《大歓楽の幻霊》も《稲妻》し、ダメ押しに《刃の接合者》を送り出す。宮下としては、悪くない展開のつもりだった。
しかし砂田はなおも攻撃の手を緩めない。《粉々》でゴーレム・トークンを排除すると、クロックとして《ゴブリンの先達》を定着させ、一時は20点を上回っていた宮下のライフを、12点まで追い込む。
対し、宮下はここにきてマナフラッドしてしまい、防御の手が尽きかけていた。
いずれにせよ選択肢はない。ならばと一縷の望みをかけ、フェッチ起動でライフを11点まで減らしながらも《流刑への道》構えの《天界の列柱》アタックで勝負に出る。
しかし。それは事実上の敗北宣言だった。
攻撃を受けた砂田は、エンド前に《ボロスの魔除け》を本体に撃ち込むと。
《ゴブリンの先達》のアタックに《流刑への道》を撃ち込んで宮下がフルタップになったのを確認してからメインで公開したのは、《ボロスの魔除け》と《稲妻》!!
砂田 2-0 宮下
PPTQ「アトランタ」、優勝は砂田 翔吾(神奈川)!おめでとう!!