ちょっと珍しいレガシーのデッキたち 3

晴れる屋

by Junya Takahashi


 ”ちょっと珍しいデッキたち”シリーズをレガシー環境からお届けしよう!

 今回は3月29日に開催されたGPT京都の会場から”ちょっと珍しい”レガシーのデッキを紹介する。

 カードプールの広さとは、すなわち可能性の大きさ。

 莫大なカードプールを使用するレガシー環境は、まさに未知なる可能性に溢れる「デッキビルダーたちの楽園」に違いない。

 会場を賑わした独創的なアイデアの数々をご覧あれ!



◆ 対戦相手の全てをシャットダウン!? 「Nether Prison」!

 スタンダードからモダン、そしてレガシーへと。フォーマットを遡るに連れて、カードプールが充実していくことで活躍するカードはだんだんと軽量化されていく。

 ひとつ軽量ドロー呪文をとりあげても、スタンダードでは《予期》しか選択肢にないものの、レガシー環境では《渦まく知識》《思案》など歴代屈指のものが揃っているからだ。

 そのため、レガシー環境では、より細かいカードの応酬が行われ、その手数の差がゲームの行方を決めることも少なくない。



「Nether Prison」
GPT京都0329

1 《沼》
2 《Bayou》
1 《Badlands》
1 《Underground Sea》
1 《Volcanic Island》
3 《汚染された三角州》
3 《新緑の地下墓地》
3 《燃え柳の木立ち》
4 《やせた原野》
2 《Lake of the Dead》
2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》
4 《不毛の大地》
1 《ヴォルラスの要塞》

-土地(28)-

4 《復讐の亜神》
2 《黄金牙、タシグル》

-クリーチャー(6)-
4 《壌土からの生命》
4 《突然の衰微》
3 《罰する火》
4 《Nether Void》
4 《モックス・ダイアモンド》
4 《虚空の杯》
3 《ヴェールのリリアナ》

-呪文(26)-
3 《血染めの月》
3 《ゴブリンの熟練扇動者》
3 《殺戮遊戯》
2 《漁る軟泥》
2 《クローサの掌握》
1 《三なる宝球》
1 《イシュ・サーの背骨》

-サイドボード(15)-
hareruya



 そんな手数勝負の世界に待ったをかけるのが「Nether Prison」だ。

 鍵となるのは、《虚空の杯》《Nether Void》という2種類のジャマー。特に《虚空の杯》は、1ターン目に《モックス・ダイアモンド》から「X=1」で設置することで多くのデッキを機能不全に追い込んでしまう。

 そして、遅れた相手を封殺するのが《Nether Void》だ。通常のコストに加えて3マナを要求するエンチャントは、《不毛の大地》でマナ基盤を攻撃された相手にとって致命的な存在になる。


虚空の杯Nether Void


 しかし、《Nether Void》の効果は自分にも及ぶ。そのため、《Nether Void》の環境下でゲームを決める手段が必要になるのだが、「Nether Prison」では素晴らしい選択肢が採用されていた。

 それは《復讐の亜神》である。


復讐の亜神


 《Nether Void》の効果は、「呪文をプレイした際に3マナ支払わないと打ち消す」というもの。そして、《復讐の亜神》には「プレイ時に墓地から《復讐の亜神》を戦場に戻す」効果が備わっている。

 つまり、打ち消されてしまっていいのだ。

 《Nether Void》の打ち消し効果が解決された後に、《復讐の亜神》の効果が解決され、墓地を経由して《復讐の亜神》は戦場に登場する。

 苦手な《剣を鍬に》は「X=1」の《虚空の杯》が封じ込めている。あとは身動きが取れない対戦相手を悠々と倒すだけだ。



《集合した中隊》入りの「4色石鍛冶」?!

 《雷破の執政》《岸砕きの精霊》《鐘突きのズルゴ》《ドロモカの命令》。これら強力なカードが満載な『タルキール龍騎伝』のなかでも個人的に注目しているカードが《集合した中隊》だ。


集合した中隊


 運や構成には左右されるものの、わずか4マナでアドバンテージとテンポを生み出す、この緑のインスタントは明らかに強いとしか言いようがない。

 ただ、どう使えば最も効果的なのか。コンボだろうか?それとも?

 発売からまだ一週間も経っていない現在、この課題はまだ多くのプレイヤーに突きつけられている頃合いだろう。そんな手探りな中、アドバンテージ手段としての可能性に注目しているのが以下のリストだ。



「4色石鍛冶」
GPT京都0329

1 《沼》
3 《Tundra》
3 《Underground Sea》
2 《Tropical Island》
1 《Bayou》
1 《Scrubland》
4 《汚染された三角州》
3 《溢れかえる岸辺》
2 《湿地の干潟》
1 《Karakas》

-土地(20)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《石鍛冶の神秘家》
3 《潮の虚ろの漕ぎ手》
4 《真の名の宿敵》
3 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー(19)-
4 《剣を鍬に》
4 《渦まく知識》
2 《思案》
2 《思考囲い》
1 《コジレックの審問》
3 《突然の衰微》
2 《集合した中隊》
1 《時を越えた探索》
1 《梅澤の十手》
1 《火と氷の剣》
1 《殴打頭蓋》

-呪文(22)-
4 《Force of Will》
3 《翻弄する魔道士》
2 《真髄の針》
1 《根絶》
1 《墓掘りの檻》
1 《大祖始の遺産》
1 《解呪》
1 《盲信的迫害》
1 《仕組まれた疫病》

-サイドボード(15)-
hareruya


 いわゆる「Death Blade」と呼ばれる《石鍛冶の神秘家》を軸にしたグッドスタッフだが、クリーチャーを増やすとともに《集合した中隊》を採用することで、展開力とアドバンテージ面を補強している。

 《潮の虚ろの漕ぎ手》《ヴェンディリオン三人衆》がめくれれば対戦相手の手札はボロボロに。《石鍛冶の神秘家》《真の名の宿敵》がめくれれば戦況は一気に覆る。


潮の虚ろの漕ぎ手ヴェンディリオン三人衆
石鍛冶の神秘家真の名の宿敵


 《渦まく知識》で操作してからだとより働きに期待できそうだ。

 メインボードの構成はコンボ相手に若干の不安が残るが、サイド後からは《翻弄する魔道士》《Force of Will》がしっかりと用意されているところも見逃せない。

 他のドロー呪文では場に出せず、他のマナ加速では手札が足りない。《集合した中隊》にしかできないミラクルがこのデッキにはある。



◆ ついに《包囲サイ》がレガシーに進出!

 スタンダードではもちろん、モダンですら大活躍を果たした《包囲サイ》がついにレガシーにも登場した。昨年末のFinnish Legacy championshipでお披露目されたコンセプトではあるが、今回紹介するリストでは《起源のハイドラ》というワンパンチが加えられている。


「Nic fit」
GPT京都0329

4 《森》
2 《沼》
1 《平地》
2 《Bayou》
2 《Scrubland》
1 《Savannah》
4 《新緑の地下墓地》
2 《湿地の干潟》
2 《吹きさらしの荒野》
3 《ミシュラの工廠》

-土地(23)-

4 《老練の探険者》
3 《起源のハイドラ》
2 《クルフィックスの狩猟者》
4 《包囲サイ》

-クリーチャー(13)-
4 《陰謀団式療法》
3 《思考囲い》
3 《突然の衰微》
1 《ゴルガリの魔除け》
2 《未練ある魂》
3 《破滅的な行為》
4 《師範の占い独楽》
2 《ヴェールのリリアナ》
1 《イニストラードの君主、ソリン》
1 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》

-呪文(24)-
3 《封じ込める僧侶》
3 《エーテル宣誓会の法学者》
2 《仕組まれた疫病》
1 《墓掘りの檻》
1 《ゴルガリの魔除け》
1 《弁論の幻霊》
1 《クローサの掌握》
1 《未練ある魂》
1 《遍歴の騎士、エルズペス》
1 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》

-サイドボード(15)-
hareruya


 レガシーだとやや重すぎる4マナというコストは、《老練の探険者》《陰謀団式療法》の「Nic-Fit」でお馴染みのコンビが捻出する。


老練の探険者陰謀団式療法


 《包囲サイ》は、4マナというコストに加えて、緑黒白の多色呪文であることもレガシーでは向かい風だ。《不毛の大地》でマナベースを阻害されるため、たとえ4マナ揃ったとしてもなにか一色足りない可能性がある。

 そんな問題を《老練の探険者》は見事に解決してくれる。彼が用意する土地は全て基本地形なので、《不毛の大地》の影響は全く受けないのだ。

 普通のデッキならば持て余しがちなマナも《師範の占い独楽》《起源のハイドラ》に注ぎ込まれるため無駄になることはない。


起源のハイドラ師範の占い独楽


 《起源のハイドラ》は面白い選択で、《包囲サイ》を呼び出すほかにも、《破滅的な行為》などのボードコントロールカードを状況に応じて探すことができる。スロットを争うであろう《緑の太陽の頂点》では打ち消されてしまう状況でも、《起源のハイドラ》ならば効果によって登場するパーマネントは打ち消されないため、ビッグマナ系の弱点でもある打ち消し呪文への耐性を考えると《起源のハイドラ》はピタリと嵌まる人選なのかもしれない。

 これからも《包囲サイ》の活躍からは目を離せない。