皆さん明けましておめでとうございます。
今年も引き続きアメリカの最新レガシー情報をお届けしていきたいと思います。今年もよろしくお願いいたします。
さて、今回の記事では新年早々に開催された「Grand Prix Denver 2013」と「StarCityGames.com Open Series(SCGO) Columbus」の上位入賞デッキの解説をしていきたいと思います。
GP Denver トップ8デッキアーキタイプ
2013年1月4日-6日
1位 Esper Stoneblade/白青石鍛冶+黒
2位 Jund/ジャンド
3位 RUG Delver/カナディアン・スレッショルド
4位 Jund/ジャンド
5位 Elves/エルフ
6位 BUG Delver/チームアメリカ
7位 UW Helm Peace/ヘルムピース
8位 Esper Stoneblade/白青石鍛冶+黒
「GP Denver」はホリデーシーズン明けもあって参加者は700人程とアメリカのGPにしてはやや小規模でした。トップ8の入賞アーキタイプは5位の「Elves」を除いてコンボデッキらしいコンボが存在せず、「Esper Stoneblade」や「Jund」のような中速デッキや、「BUG Delver」等のテンポデッキが中心でした。カバレージを見る限りでは「StarCity Invitational」に近いメタで、多くのプレイヤーは安定した成績が期待できる「Esper Stoneblade」や「RUG Delver」、BUG/黒青緑系のデッキをチョイスしていたようです。
GP Denver デッキ解説
「白青石鍛冶+黒」「ジャンド」「チームアメリカ」
1 《平地》 2 《島》 1 《沼》 3 《Tundra》 3 《Underground Sea》 1 《Scrubland》 4 《溢れかえる岸辺》 3 《汚染された三角州》 2 《湿地の干潟》 1 《Karakas》 1 《アカデミーの廃墟》 -土地(22)- 4 《石鍛冶の神秘家》 3 《瞬唱の魔道士》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(8)- |
4 《剣を鍬に》 3 《未練ある魂》 4 《渦まく知識》 1 《思案》 2 《呪文貫き》 1 《対抗呪文》 3 《Force of Will》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 2 《思考囲い》 2 《コジレックの審問》 1 《至高の評決》 1 《名誉回復》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《殴打頭蓋》 1 《梅澤の十手》 -呪文(30)- |
3 《聖トラフトの霊》 1 《解呪》 1 《呪文貫き》 1 《Force of Will》 2 《外科的摘出》 1 《陰謀団式療法》 1 《コジレックの審問》 1 《暗黒破》 1 《非業の死》 1 《盲信的迫害》 1 《大祖始の遺産》 1 《饗宴と飢餓の剣》 -サイドボード(15)- |
今大会の優勝も「Esper Stoneblade」でした。昨年の「GP Indianapolis」以来安定して上位に入賞し続けている息の長いアーキタイプです。特にアメリカのレガシーGPで安定した成績を残していて、アメリカの大きな大会のメタに強いデッキである事が伺えます。
優勝者のVidiantoのリストは、メインは比較的オーソドックスです。サイドは追加のクロックとして《聖トラフトの霊》が採用されています。呪禁持ちなので《突然の衰微》等の単体除去に耐性があり、クロックも早いので中速デッキ相手に有効です。《盲信的迫害》は最近復権してきている「Elves」に対して有効なカードです。
1 《沼》 1 《山》 1 《森》 3 《Badlands》 1 《Taiga》 2 《Bayou》 4 《血染めのぬかるみ》 3 《樹木茂る山麓》 4 《新緑の地下墓地》 4 《不毛の大地》 -土地(24)- 2 《渋面の溶岩使い》 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《闇の腹心》 4 《タルモゴイフ》 3 《血編み髪のエルフ》 -クリーチャー(17)- |
4 《思考囲い》 3 《Hymn to Tourach》 4 《ヴェールのリリアナ》 4 《稲妻》 1 《森の知恵》 3 《突然の衰微》 -呪文(19)- |
2 《強迫》 1 《Hymn to Tourach》 3 《仕組まれた疫病》 3 《紅蓮破》 2 《古えの遺恨》 1 《壌土からの生命》 1 《虚無の呪文爆弾》 2 《梅澤の十手》 -サイドボード(15)- |
「プロツアー名古屋2011」でもトップ8に入賞経験のある強豪プレイヤーPat Coxは、《死儀礼のシャーマン》と《突然の衰微》が印刷されて以来SCGOで流行の兆しを見せていた「Jund」を使用して準優勝しました。
速攻持ちのアドバンテージカード《血編み髪のエルフ》と軽いバーンスペル《稲妻》を採用している為、プレインズウォーカーを使ってくる「Esper Stoneblade」や「BUG Midrange」に対して有利に立ち回る事ができます。メインに4枚採用されている《ヴェールのリリアナ》は《死儀礼のシャーマン》を経由すれば最速2ターン目に出す事ができ、優秀な除去として活躍します。《Hymn to Tourach》からの《ヴェールのリリアナ》はこのデッキの基本勝ちパターンの一つです。
今回の「GP Denver」のようにコンボよりも「Stoneblade」や「BUG」「RUG」の多いメタではベストチョイスだったと言えます。打ち消しを使用していないので「Belcher」等の高速コンボに対しては不利です。しかし、ハンデスが大量に積まれているので《実物提示教育》等の中速寄りのコンボに対してはそれほど不利なゲームにはなりません。
4 《Underground Sea》 2 《Bayou》 1 《Tropical Island》 3 《汚染された三角州》 4 《新緑の地下墓地》 2 《霧深い雨林》 4 《不毛の大地》 -土地(20)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《タルモゴイフ》 2 《墓忍び》 -クリーチャー(14)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《目くらまし》 4 《Force of Will》 4 《Hymn to Tourach》 1 《四肢切断》 1 《森の知恵》 4 《突然の衰微》 -呪文(26)- |
1 《忍び寄るタール坑》 2 《青霊破》 1 《暗黒破》 2 《見栄え損ない》 4 《Sinkhole》 1 《壌土からの生命》 2 《クローサの掌握》 1 《トーモッドの墓所》 1 《梅澤の十手》 -サイドボード(15)- |
「エターナルパーティ2012」や「SCGO Los Angeles」で優勝していたリストと同様の「チームアメリカ」デッキ。Daniel Signoriniは昨年の「SCGO Baltimore」でも同デッキで準優勝している強豪プレイヤーです。筆者とも面識がありソーシャルネットワークのフェイスブックを通してインタビューをする事ができました。
筆者: GP Denver トップ8入賞おめでとう! 「チームアメリカ」をよく使っているようだけど使い始めてどれくらいになる?
Daniel: 使い始めた頃は「チームアメリカ」が《Sinkhole》や《もみ消し》をメインに採用していた頃だから5年くらい。僕にとって一番手に馴染むデッキだから他に強いデッキが出てこない限りはこれからもこのデッキを使い続けていくと思う。
筆者: かなり初期の頃から使い続けてるみたいだね。サイドボードのカードは今回面白そうなのが何枚か採用されているね。特に《Sinkhole》と《忍び寄るタール坑》はどういったデッキとの対戦を想定しての採用?
Daniel: 今回のリストのサイドボードは1枚刺しの《トーモッドの墓所》以外は役に立った。《Sinkhole》と《忍び寄るタール坑》は「Stoneblade」と「青白奇跡」に対してサイドインした。特に「Stoneblade」とは今大会5回当たって4戦勝っている。「Stoneblade」や「青白奇跡」相手に《精神を刻む者、ジェイス》や他の受動的なスペルをサイドインするよりも土地破壊で展開を遅れさせたり《忍び寄るタール坑》でプレッシャーをかけていった方が有利にゲームを進める事ができる。
筆者: なるほど。今回のGPを終えて、75枚について何か不満はある?
Daniel: メインはとても満足でサイドの1枚刺しの《トーモッドの墓所》と他数枚は《水没》に変えようと思っている。「BUG/黒青緑」同系との対戦のときに《水没》があればもっと楽なゲームになったと思う。
筆者: 確かに《水没》は同系に対して有効なカードになりそうだね。他の、特に最近流行の兆しを見せている《断片無き工作員》を使った「BUG/黒青緑」についての感想は?
Daniel: 《断片無き工作員》を使った中速寄りの「BUG/黒青緑」は「チームアメリカ」と比べてアドバンテージを取るのに長けている分、少し悠長すぎると思う。手札の枚数で勝負するよりも「チームアメリカ」のように素早くクロックを展開してそれらを《Hymn to Tourach》やカウンターでバックアップしていくプランの方が今のレガシーでは成功し易いと思う。
筆者: なるほど。丁寧な説明ありがとう。
「チームアメリカ」のエキスパートで現在の型をデザインしたDaniel Signoriniは同デッキを長い間使い続けており、彼とのインタビューはとても参考になりました。バリエーションの多い「BUG/黒青緑」ですがDaniel Signoriniのリストは今回のGPで唯一トップ8に残った事から今後もよく見かける事になりそうです。
SCGO Columbus トップ8デッキアーキタイプ
2013年1月6日
1位 Elves/エルフ
2位 Shardless BUG/青黒緑アグロ
3位 Omni-Tell/実物提示教育+全知
4位 Reanimator/リアニメイト
5位 Jund/ジャンド
6位 Belcher/ベルチャー
7位 Esper Stoneblade/白青石鍛冶+黒
8位 RUG Delver/カナディアン・スレッショルド
同じ週末に行われた「GP Denver」と異なり、ホリデーシーズン明けにもかかわらず300人以上の参加者を出し大盛況だった「SCGO Columbus」。筆者もプレイヤーとして参加しましたが今回は残念な結果に終わってしまいました。
上位入賞デッキの方は、コンボが少数だった「GP Denver」と異なり、トップ8の半分がコンボデッキとメタの違いが確認できます。そんな混沌とした中の優勝デッキは「Elves」でした。上位入賞は何度か経験しているものの、少なくとも筆者の知る限りではSCGOでの優勝は初めてに近いかもしれません。
SCGO Columbus デッキ解説
「エルフ」「Omni-Tell/実物提示教育+全知」「ベルチャー」
1 《森》 1 《Savannah》 2 《Bayou》 2 《吹きさらしの荒野》 4 《新緑の地下墓地》 4 《霧深い雨林》 1 《ドライアドの東屋》 3 《ガイアの揺籃の地》 -土地(18)- 1 《ラノワールのエルフ》 1 《Fyndhorn Elves》 1 《樺の知識のレインジャー》 4 《クウィリーオン・レインジャー》 4 《ワイアウッドの共生虫》 4 《遺産のドルイド》 4 《イラクサの歩哨》 4 《死儀礼のシャーマン》 1 《ティタニアの僧侶》 4 《エルフの幻想家》 1 《威厳の魔力》 1 《孔蹄のビヒモス》 -クリーチャー(30)- |
1 《輪作》 4 《垣間見る自然》 3 《自然の秩序》 4 《緑の太陽の頂点》 -呪文(12)- |
1 《漁る軟泥》 1 《ヴィリジアンのシャーマン》 1 《調和スリヴァー》 1 《ガドック・ティーグ》 1 《大祖始》 2 《精神壊しの罠》 4 《陰謀団式療法》 1 《自然の秩序》 2 《突然の衰微》 1 《迫撃鞘》 -サイドボード(15)- |
今回優勝した「Elves」は今までのものとはいくつか異なるアプローチをしていました。筆者は時間の都合でトップ8のプレイオフに立ち会う事は叶いませんでしたが、優勝者のRiley Curranとは面識があり、スイスラウンド無敗でIDによってトップ8が確定していたRileyに待ち時間を利用してインタビューする事ができました。
筆者: トップ8入賞おめでとう! 今回このデッキを選択した理由は?
Riley: 元々「Elves」が好きでレガシーではここ数年メインで使うデッキになっている。ただ、去年の10月に参加した「SCGO Indianapolis」では「青白奇跡」があまりにも多かったから「Esper Stoneblade」を使ったけど基本レガシーの大会には「Elves」で出ている。
筆者: なるほど。今までの「Elves」と比べるとメインの《自然の秩序》等、もはや別デッキと言っても良いぐらいだけど。
Riley: ああ、《自然の秩序》は強いよ。《威厳の魔力》でカードを引きまくったり《孔蹄のビヒモス》を出して瞬殺したり、サイド後は《大祖始》という選択肢もある。今までの「Elves」と比べて爆発力がある。
筆者: 《自然の秩序》から《大祖始》は相手がサイドインしてくる《仕組まれた疫病》に対しても意表を突けるから強そうだね。
Riley: そうなんだ。今はあまり《非業の死》を使ったデッキを以前ほど見かけないから《大祖始》は強い。それに「BUG/黒青緑」が天敵の《終末》デッキを環境から追い出してくれたから今は「Elves」にとってベターな環境だと思うよ。サイドの《突然の衰微》があるから今までのようにほぼオートロスにはならなそうだけど「青白奇跡」がきつい事には変わりない。コンボもきついから《陰謀団式療法》と《精神壊しの罠》をサイドから投入する。
「GP Denver」でトップ8に入賞したMatt Nassも同様のデッキを使っていた事から、今後も活躍が期待できます。
2 《島》 3 《Volcanic Island》 1 《Tropical Island》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《汚染された三角州》 3 《沸騰する小湖》 2 《霧深い雨林》 3 《古えの墳墓》 2 《裏切り者の都》 -土地(20)- 2 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 2 《グリセルブランド》 -クリーチャー(4)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《定業》 1 《親身の教示者》 4 《目くらまし》 4 《Force of Will》 3 《実物提示教育》 4 《全知》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 4 《燃え立つ願い》 2 《水蓮の花びら》 -呪文(36)- |
1 《Karakas》 1 《実物提示教育》 1 《洞察力の花弁》 1 《外科的摘出》 1 《忌むべき者の軍団》 3 《紅蓮破》 2 《紅蓮地獄》 1 《ぶどう弾》 1 《冒涜の行動》 1 《緊急時》 1 《トーモッドの墓所》 1 《墓掘りの檻》 -サイドボード(15)- |
久々の入賞の「Omni-Tell」。勝ち手段をコンボのみに頼らずに《精神を刻む者、ジェイス》を採用した中速型です。サイドにはレガシーでは珍しい《冒涜の行動》や《忌むべき者の軍団》が見られます。またサイドに《緊急時》を採用している為、緑をタッチしています。
今後もメタられる事が減っていけば、デッキは強いので数を増やす事が想像できます。
1 《Taiga》 -土地(1)- 4 《猿人の指導霊》 4 《Elvish Spirit Guide》 4 《ほくちの壁》 -クリーチャー(12)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《燃え立つ願い》 4 《炎の儀式》 4 《捨て身の儀式》 1 《発熱の儀式》 4 《煮えたぎる歌》 3 《巣穴からの総出》 4 《土地譲渡》 4 《魔力変》 4 《ライオンの瞳のダイアモンド》 4 《水蓮の花びら》 3 《金属モックス》 4 《ゴブリンの放火砲》 -呪文(47)- |
1 《森》 3 《ザンティッドの大群》 1 《先細りの収益》 1 《袖の下》 1 《ぶどう弾》 1 《巣穴からの総出》 4 《秋の帳》 2 《花の絨毯》 1 《外殻貫通》 -サイドボード(15)- |
環境最速のコンボデッキ。メインはオーソドックスな構成ですがサイドに少し特徴があります。青いデッキを相手にした際に有効なマナソースとして活用できる《花の絨毯》が採用されています。これがあれば青いデッキ相手にマナブーストスペルに大きく依存する事なくコンボを決められそうです。無理やりコンボを通すサポートとして採用されている《秋の帳》も面白いアプローチです。
ボーナスデッキリスト
1 《平地》 3 《島》 3 《Tundra》 3 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 4 《変わり谷》 1 《Karakas》 -土地(23)- 4 《石鍛冶の神秘家》 2 《修復の天使》 4 《呪文づまりのスプライト》 3 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(13)- |
4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 2 《呪文嵌め》 4 《Force of Will》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 2 《火+氷》 2 《拘留の宝球》 1 《梅澤の十手》 1 《饗宴と飢餓の剣》 1 《殴打頭蓋》 -呪文(24)- |
3 《エーテル宣誓会の法学者》 2 《安らかなる眠り》 1 《遍歴の騎士、エルズペス》 3 《呪文貫き》 1 《水流破》 3 《紅蓮破》 2 《至高の評決》 -サイドボード(15)- |
流行の「Esper Stoneblade」と異なりKurtis Drogeのリストは《呪文づまりのスプライト》等の瞬速クリーチャーを多く採用していてテンポを意識した構成になっています。《呪文づまりのスプライト》は低マナコストが主力のレガシーでは優秀なカウンターとして活躍できます。《修復の天使》は《呪文づまりのスプライト》や《ヴェンディリオン三人衆》等を再利用してアドバンテージを稼ぐ他に、タフネスが4あるので《稲妻》一発で落とされず《敏捷なマングース》や《秘密を掘り下げる者》等を相手に一方的に勝つ事が出来ます。
サイド後は《遍歴の騎士、エルズペス》や《至高の評決》を投入して中速デッキとして振る舞う事ができます。
総括
「Grand Prix Denver 2013」はコンボが少数で「Esper Stoneblade」や「Jund」等の中速コントロールデッキが多数上位入賞していました。その裏番組として行われていた「SCGO Columbus」の上位入賞デッキは「GP Denver」と異なりコンボデッキの活躍が目立ちました。特に両大会で大活躍だった「Elves」は今後無視できない存在になりそうです。
以上「GP Denver」と「SCGO Columbus」の解説でした。
次回は「SCGO San Diego」と「SCGO Dallas」の解説を予定しています。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーを!