準々決勝: 平松 葵(千葉) vs. Anthony Welsh(東京)

晴れる屋

By Shiro Wakayama


   CARDSHOP晴れる屋の常連が、当然のようにTOP8に駒を進めてきた。
 筆者の知る限り、平松は平日に晴れる屋で行われるスタンダードトーナメントでの全勝率が、5割を超える。happymtgのデッキサーチで、”hiramatsu mamoru”で検索すると、その凄さがわかると思う。
Caw-Bladeを、《精神を刻む者、ジェイス》等の禁止以前から使い込み、現在の形に代わっても、使い続ける平松。その実力は折り紙つきだ。

 対するAnthonyも、晴れる屋の常連だ。スタンダード、レガシーとフォーマットを問わず、参加していて、ゴブリンや吸血鬼デッキ等の、ビートダウンを好んで使う傾向が強い。

 相反するタイプのデッキを使う、二人の勝負を見てみよう。


Game 1
 先手anthonyはマリガン。平松は即キープを宣言。

 赤黒吸血鬼のanthonyの《吸血鬼の裂断者》からスタートし、平松は長らく使っていたCaw-Bladeで、これまた使い慣れた《定業》でスタートする。

 anthonyは《臓物の予見者》を陣営に加え、小さなクロックと、全体除去からの復帰の布石を打つ。

 対する平松、ここでも《定業》をプレイし、この後の逆転劇に備えて手札をそろえる。

 anthonyは2体目の《吸血鬼の裂断者》をプレイして、アタック、平松のライフは15。

 ここで、平松は少し悩み、《忘却の輪》でクロックをつぶしていくか、セットランドした《墨蛾の生息地》《饗宴と飢餓の剣》によって一気に盤面をまくり返すというプランを採用するか、逡巡する。
 ここで平松の出した答えは、《饗宴と飢餓の剣》プレイで、次のターンのビッグアクションを狙うというもの。anthonyが除去を持っていれば、一気に劣勢になってしまうし、持っていなければ、行動回数が2倍に増える。

 anthonyの3体の吸血鬼が、自らのライフを蝕みフェッチランドでのダメージを含めて16としながら、《饗宴と飢餓の剣》を出してノーガードの平松に襲いかかり、ライフを10とする。

 平松、《墨蛾の生息地》《饗宴と飢餓の剣》を装備してアタックを試みようとするも、《破滅の刃》で実質のタイムワープ。平松はかなり厳しい表情。このアクションを捌かれてしまったことで、Anthonyのクロックに殆ど干渉できていないということになる。

 全体除去が引けるわけでもなく、一本目は吸血鬼を操るAnthonyが瞬殺劇を演じて見せた。

平松 0-1 Anthony


Game2

 《ギデオン・ジュラ》《審判の日》《太陽のタイタン》といった少し重めのハンドに土地が《平地》1枚という苦しいハンドをマリガンした平松。anthonyもこれに付き合う形となり、お互いに再度入念にデッキをシャッフルする。

 互いにタップインランドからスタートし、ファーストアクションは平松がトップデッキした《戦隊の鷹》。ブロッカーとして、マリガン後の初手でキープ基準となっていた《呪文滑り》よりも上々のスタートだ。

 これに対してanthonyは2ターン目に《臓物の予見者》と少し苦しいスタート。

 平松がマリガンを補って余りあるアドバンテージを、《戦隊の鷹》で獲得するが、これを《電弧の痕跡》で一掃。さらに《恐血鬼》をプレイすれば、平松は《呪文滑り》、これには《恐血鬼》のアタックと《稲妻》の合わせ技で対処と、お互い手札を消耗しながらの攻防となるが、Anthonyの土地が詰まり気味で、うまく動けていないのが気がかりだ。

 1枚の《戦隊の鷹》を手札に残しつつ、1点クロックをしかける平松に、《吸血鬼の裂断者》を追加して、ダメージレースを優位に運ぼうとするAnthony。
 Anthonyが主導権を握ろうと能動的にクロックを展開し、且つ《恐血鬼》の上陸用土地が手札からつきかけたか?というこのタイミングで、《審判の日》で場を一層。さらに、その後土地を引き込んだAnthonyが《恐血鬼》を戦場に戻しても、これを《忘却の輪》で即退場させる。
 この流れで、一気に平松が優位を築くかと思いきや、Anthonyも土地を引いていない分、手札に強力な後続が残っている。《ギデオン・ジュラ》へのけん制となる《吸血鬼の呪詛術士》を展開し、さらに平松の《戦隊の鷹》に合わせて《マラキールの門番》をキッカーコスト込でプレイと、傾きかけた天秤を自らの側にもう一度引き寄せる。
 サイドボード後、追加の除去や、おそらく入っているであろう《機を見た援軍》を乗り越え、anthonyが勝利に一歩近づいたのだろうか?

 答えは否だ。平松は、何の考えも無しに《審判の日》をプレイしたりしない。Anthonyの最後の力を振り絞った構成を、2枚目の《審判の日》で洗い流すと、さらに平松は《ギデオン・ジュラ》《刃砦の英雄》×2を立て続けに展開。まるで凱旋とでもいうような悠々とした行軍で、2本目を取り返した。


平松 1-1 Anthony

Game 3
 お互い、小考えるの後、キープを宣言。

 先手のAnthonyはベストの動きとも言える、《吸血鬼の裂断者》でゲームをスタートさせる。

 これに対し、平松は《呪文滑り》をプレイして、Anthonyの行軍を遅滞させ、もっと多くのクリーチャーを展開させて《審判の日》までの布石づくりをするが、この《呪文滑り》はアタック+《稲妻》で予定調和的に除去されてしまう。

 ここで、平松がAnthonyの異変に気付く。彼の場には、1枚しか土地が無いのだ。この機に乗じて、マウントポジションを取ってしまいたい平松は、《四肢切断》《吸血鬼の裂断者》を葬ると、《戦隊の鷹》をプレイ。盤面を構築しだす。

 やっと2枚目の土地に辿り着いたanthonyは、《恐血鬼》をプレイ、遅ればせながらと言ったところではあるが、盤面にプレッシャーを用意する。
だが、順調に、必要なパーツを引いてきている平松に、死角は無い。

 平松が展開した《戦隊の鷹》2体に、《電弧の痕跡》を合わせられ、場のクリーチャーがいなくなったところで、《機を見た援軍》が突き刺さる。
ビートダウンというアーキタイプのデッキが、ゲーム序盤での攻勢にデッキ構成を傾倒させ、何とか削ってきたライフと相手の盤面を、たったの3マナで一気にひっくり返される。
 3体のトークンと、6ライフゲインという、あまりにも強力な、無情なスペルが、土地が詰まり気味だったところから、何とか盤面をイーブンにしたと思った矢先に、anthonyの心を刈り取る。

 1/1のトークンでは止めることが出来ない、《吸血鬼の呪詛術士》が、振り出しに戻ってしまったライフを少しづつ削るが、《恐血鬼》と、相打ちをしながら、平松のクリーチャーが1体、anthonyのクリーチャーが《臓物の予見者》《吸血鬼の呪詛術士》となったところで、無情にも突き刺さる、2枚目の《機を見た援軍》。これにはAnthonyも冷静ではいられない。かなり顔をしかめながら、何とか打開方法を模索する。

 だが、ここまで緻密に動いてきた平松を、デッキは裏切らなかった。

 《饗宴と飢餓の剣》によって、行動回数が増えだした平松は、自らのトークンの死も厭わず、anthonyの塵芥程度しか残っていなかった希望を全て刈り取るために、《審判の日》から《ギデオン・ジュラ》へと繋ぎ、盤面からの脅威を完全に刈る。さらに、《躁の蛮人》によって破壊されていた《饗宴と飢餓の剣》の2枚目をきっちりと引き込み、終わってみれば、圧倒的な場を創り上げた平松が、準決勝へと駒を進めた。

平松 2-1 Anthony