準決勝: Manuel Traboco(東京) vs. 清水 昭雄(東京)

晴れる屋

By Shiro Wakayama


  準決勝まで駒を進めてきたのは、他のTCGを中心に遊んでいて、比較的マジックの経験は浅いという清水。だが、マジック界でも強豪として知られるプレイヤーがポーカーの世界で成績を残しているように、他の知的ゲームとマジックの親和性は高い。それはここまで清水が好成績を残し、準決勝のテーブルに座っている事を見ても疑いようは無いのだが、果たしてその快進撃はどこまで行くのだろうか?
 対するTrabocoも晴れる屋のトーナメントに比較的良く顔を出している外国人プレイヤーで、対戦相手の清水に「英語めちゃくちゃ上手ですね。すごいなー。」と言われるくらいに、日本語が達者なプレイヤーだ。気さくな性格も幸いしてか、日本人プレイヤーの友人もとても多い。

 清水が使うデッキは、バントカラーの、《広がりゆく海》《酸のスライム》《滞留者ヴェンセール》で使いまわすという新手の土地破壊デッキ。
 対するTrabocoは《焼炉の悪獣》という、一見トーナメントマジックではほとんど見かけないクリーチャーを採用した、新しいタイプの赤単だ。

 Trabocoが、清水を焼き切るのが先か、清水がマナブーストからの土地破壊でTrabocoを機能不全に陥らせるのが先か。その勝負の行方を見てみよう。


Game 1

 先手清水。Trabocoがマリガン。

 清水の《天界の列柱》セットからゲームが始まるが、Trabocoはセットランドからいきなり《稲妻》を本体に打ち込む。フルバーンデッキを思わせる、積極的な動き。もうトーナメントはTOP4。相手のデッキを知った上での行動なのだろうか?

 Trabocoは、そのままの勢いに、《燃えさし運び》を展開しようと試みるが、これは《マナ漏出》。しかし、2体目は無事に着地することに成功する。

 《マナ漏出》等でお茶を濁しながら、デッキの行動を阻害するタップインランドを処理しながらきっちりと4マナまで到達した清水は、《真面目な身代わり》でマナを伸ばしつつ、防御網を作る。これには即《電弧の痕跡》で本体を削りつつ対処し、《燃えさし運び》でダメージを刻んでいく。本体火力を打っているので、早くもライフは13だ。

 しかし、5マナまで揃うと、清水のデッキの回転数が急に上がりだす。2ターン連続の《酸のスライム》で、ブロッカーを用意しながらの、土地破壊を行う。

 土地をそもそも3枚しか引いていないTrabocoはかなり厳しい。

 《炎の斬りつけ》《電弧の痕跡》と無理矢理ブロッカーを排除しながら、何とかライフを削っていたTrabocoだが、清水のライフが6点という何とも絶妙なところで、攻め手が止まってしまう。

 《巣の侵略者》《滞留者ヴェンセール》と盤面を固めるカードが清水の場に登場し、地上からの攻勢が望めなくなってしまう。だが、清水は、石橋を叩いて壊さんばかりの慎重さで、真綿で首を絞めるように、Trabocoのリソースを奪い、守勢を減らすことなく、じわじわとTrabocoのライフを蝕んでいく。

 いつの間にか、赤単であるはずのTrabocoの場に、《山》は無く、《広がりゆく海》によって出来上がった島と、清水の場に並ぶ《活発な野生林》《天界の列柱》《巣の侵略者》によって、ライフを削りきられてしまった。


Traboco 0-1 清水


Game 2

 先手Traboco。互いにマリガン無し。
 Trabocoのファーストアクションは《渋面の溶岩使い》プレイからの、2ターン目には《燃えさし運び》と、抜群のスタート。 さらに、《巣の侵略者》でお茶を濁そうとする清水に対して、《よろめきショック》《巣の侵略者》をどかしながらのアタックと、全く無駄の無い動きをする。

 このまま低マナ圏での勝負をしても勝ち目がない清水は、落とし子トークンからのマナも合わせて《真面目な身代わり》をプレイ。マナのジャンプアップをして、自分の土俵に引きずり込もうとするが、《よろめきショック》の反復で即除去、さらに4枚目の土地を引き込んでの《槌のコス》という、引き続き完璧な動き。

 さらに、《巣の侵略者》をプレイすることしか出来ない清水に対し、《渋面の溶岩使い》《稲妻》で盤面を一層してからのアタックで、華麗に5ターンキルを決めて見せた。

Traboco 1-1 清水

Game 3

 お互いにマリガン無し。「そういえば、今までの2ゲームは《ゴブリンの先達》スタートされていないんですね。ラッキーだなー。次もやめてほしいなぁ」と呟く清水。
 それに対して、「入ってないかもしれないよー?」とおどけて見せるTraboco。

 ある意味予定調和とも言えるノリで、後攻1ターン目に走り出す《ゴブリンの先達》

 先攻2ターン目、何もプレイせずターンを終える清水に対し、少しおびえながら、《ぐらつく峰》をセットして《ゴブリンの先達》でアタックするが、何もないわけもなく、《天界の粛清》

 《巣の侵略者》をプレイしながら、タップインランドをセットしていく。

 ここで、火力が手札に溢れかえっていて、クリーチャーを展開出来ないTrabocoは、清水が4マナ圏に到達することを嫌って、落とし子トークンもろとも《電弧の痕跡》で処理をする。

 そして、このアクションが的中したのか、なんと清水は土地が3枚で止まってしまう。
 さらにTrabocoは、清水の土地事故により、少し長めのゲームも許容できるこの状況でベストともいうべき《燃え上がる憤怒の祭殿》をトップデッキ。これをプレイすると、《マナ漏出》を持っていない清水はこれを許容するしかない。

 手札で腐っていた、《稲妻》を、いきなり本体に2発打ち込み、《燃え上がる憤怒の祭殿》のカウンターを増やしつつ、残り時間を狭める。1枚はカウンターされてしまったものの、清水のライフは12となり、《燃え上がる憤怒の祭殿》のカウンターの数は4。

 やっと5枚目の土地に辿り着けた清水は、これ以上被害を大きくしないために、《酸のスライム》の誘発型能力の対象を《燃え上がる憤怒の祭殿》とし、5つのカウンターがダメージとして清水へと飛び、フェッチランドの起動コストと合わせてライフを6とする。

 さらに、5マナ迄揃えばやっとデッキが動き出す清水、まだ見ぬ、《槌のコス》をはじめとした盤面の脅威への回答として、《ギデオン・ジュラ》を展開。ここから、清水の逆転劇が始まろうか、という所だったが、Trabocoは念願の土地を引き込み、手札で出番を待ちわびていた2枚の《焼尽の猛火》が、本体へ6点のダメージを叩き付けて、Trabocoを決勝戦へと導く。

Traboco 2-1 清水