By Yoshihiko Ikawa
「《精力の護符》コンボ」。
環境でも随一のスピードを誇るコンボデッキのミラーマッチとなったこの準決勝。
「今日はちょっと先手の気分なので。」と楊がおどけると、一方の野稲も「後手の方が揃いやすいんじゃないですか？」とおどけて返す。
このミラーマッチはお互いできることが限られている。そしてそれが分かっているからこそ、2人ともかなりの和やかムードなのだ。
妨害の薄いコンボデッキ同士の対決は基本的に圧倒的なスピード勝負であり、だからこそ先手が大事であり、マリガンが大事となる。
一応スイスラウンドの順位で先攻でスタートできる楊に分があるとはいえ、突き詰めると「回るか回らないか」になるこの対決。
どちらの《原始のタイタン》力に軍配が上がるのか。
Game 1
先手の楊が1マリガン。お互いこの勝負のポイントがどこにあるのか熟知しているのだろう、非常に決断が早い。
野稲は7枚でキープ。
楊は《マナの合流点》から《血清の幻視》。
野稲は《森》から《精力の護符》と、開幕ターンにして2T《原始のタイタン》を予感させる。
しかしこの事態を察知していたのか、楊は数少ない妨害手段である《幽霊街》を置いてターン終了。
楊 「2キルしたかったんでしょ？やらせねーよ」
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これにより2ターン目の「《花盛りの夏》＋お帰りランド」が妨害されることになった野稲。《光輝の泉》だけで静かにターンを返す。
しかし楊が3ターン目《古きものの活性》で《シミックの成長室》を手札に加えた上で《精力の護符》プレイしてエンドと《原始のタイタン》への下準備を済ますと、野稲も動かざるをえない。
3ターン目に《トレイリア西部》セット(《精力の護符》でアンタップ)から《血清の幻視》で手札を整えたあと、野稲は仕掛けることに。
まずは《花盛りの夏》から《グルールの芝地》。これに楊が《幽霊街》を起動するかとも思われたが、2枚目の《花盛りの夏》から動かれるのをケアするためにスルーしたため、6マナから《原始のタイタン》が登場した。《幽霊街》が構えられているために《処刑者の要塞》を持ってきても。ということでサーチしたのは《シミックの成長室》2枚。ここでアンタップ前に片方に《幽霊街》を起動し、《トレイリア西部》の「変成」だけは防ぐ。
楊も野稲に続けと《花盛りの夏》→《シミックの成長室》から《花盛りの夏》2枚目！
大量のマナを生み出したのちに《召喚士の契約》から《原始のタイタン》→《ボロスの駐屯地》《シミックの成長室》、手札から《処刑者の要塞》出して速攻アタック！
《原始のタイタン》の能力で《シミックの成長室》と《トレイリア西部》をサーチし《トレイリア西部》を戻すと、第2メインに「変成」して《否定の契約》サーチして、翌ターン以降に備える。
だが、やはり《原始のタイタン》先出しだった上、楊と違って《召喚士の契約》を経由せずにプレイしたためマナの余裕があった野稲の優位は揺るがない。
《原始のタイタン》アタック(楊はブロックなし)で《シミックの成長室》をサーチして戦場にあった《トレイリア西部》を回収すると、「変成」からの《殺戮の契約》！
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これで虎の子の《原始のタイタン》を失った上に、アップキープには《召喚士の契約》の債務が残っている楊は万事窮す。
一応ドローを見てみるも、マナもライフも足りない楊には投了以外の選択肢が残されていなかった。
野稲 1-0 楊
ミラーマッチはどちらもそこまで意識していなかったのか、お互い効果的なサイドボードがそこまで入っていないため、メインボードとほとんど同じような対戦になることが想定される。
Game 2
楊はGame 1に引き続きまた秒でマリガン。6枚の手札も渋々といった感じでキープ。対する野稲は悩まずキープ。
そして2ターン目に《精力の護符》こそ出すが2枚目の土地を置けない楊を尻目に、野稲は後手2ターン目に《精力の護符》から《シミックの成長室》、《花盛りの夏》から《召喚士の契約》を経由しての《原始のタイタン》！！
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これには楊も諦め顔。
圧倒的先出し有利なこの《原始のタイタン》対決。
楊にできることは、もはや「《ボロスの駐屯地》＋《処刑者の要塞》サーチからの《原始のタイタン》速攻アタック」という、流れるような定番ムーブを眺めるだけだ。
……だけのはずだった。そう、普通ならば。
ブン回りで気を良くしすぎたのか、大舞台での緊張ゆえか。
《原始のタイタン》攻撃後に野稲の戦場に残された土地は《魂の洞窟》《ボロスの駐屯地》《シミックの成長室》。
そう、野稲は誤って《召喚士の契約》の「契約コスト=(2)(緑)(緑)」を払えない状態にしてしまっていたのだ。
気づいたときには後の祭り。
野稲、2キルしたはずが痛恨の逆2キル。
野稲 1-1 楊
Game 3
いきなりオカルトめいた話をして申し訳ないが、勝負には「流れ」というものがある。
そしてGame 2での逆転劇もとい自爆が、「流れ」を野稲から楊に傾かせたに違いない。
Game 1、Game 2とマリガン続きだった楊、ついに7枚キープすることに成功。
先手7枚キープながら最初の2ターンは土地を置くだけと大人しい立ち上がりの野稲に対して、一方の楊は。
1ターン目に《精力の護符》。
2ターン目に《精力の護符》2枚目から《花盛りの夏》＋《シミックの成長室》、そして大量のマナからの《原始のタイタン》！！！
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《精力の護符》2枚の加護により、2ターン目にして「《原始のタイタン》2体が《処刑者の要塞》と《軍の要塞、サンホーム》でアタック＝32点」が確定した楊。《精力の護符》コンボの真髄をここ一番で見せつけることに成功したのだ。
なかったはずのGame 3で最高のブン回りを喰らい、もはや自虐的に笑うしかない野稲。どうせなら、と「契約コスト」を払えない《殺戮の契約》を《原始のタイタン》にプレイすることで投了の代わりとするのだった。
野稲 1-2 楊
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