皆さんこんにちは!
すでにご存知の方も多いかもしれませんが、禁止カードの改定が行われ《宝船の巡航》が禁止カードに指定されました。
《宝船の巡航》は『タルキール覇王譚』発売直後から軽量スペルを多数搭載したDelver系のテンポデッキに採用され、Jeskai StonebladeやGrixis Control、Jeskai Comboからもお呼びがかかるようになり、その挙句、対策としてアンチ青スペルの 《紅蓮破》や墓地対策の《大祖始の遺産》などがメインから当たり前のように飛び交うほどにまで環境を支配しました。
以前はレガシーの定番だったスレッショルド型のTemur DelverやShardless Sultaiは衰退し、SCG(StarCityGames.com)を中心としたアメリカのレガシーの大会では《宝船の巡航》を使ったデッキ(UR Delverなど)対それに有利なデッキ(コンボデッキ)という極端な結果になりやすかったので、個人的には今回の変更には納得です。
さて、今回の記事では禁止改定後初のレガシーの大きな大会であるSCG Washington Premier IQの結果を見ていきたいと思います。
SCG Washington Premier IQ
~新環境のレガシーPremier IQを制したのはSneak and Show~
2015年1月25日
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1位 Sneak and Show/スニーク・ショー
2位 Lands/土地単
3位 Lands/土地単
4位 Abzan Marverick/アグロロック
5位 MetalWorker/茶単
6位 Dredge/発掘
7位 Temur Delver/カナディアン・スレッショルド
8位 Grixis Control/青黒赤ジャンク
禁止改定の影響を直接受けない《実物提示教育》系のデッキや、《宝船の巡航》登場以前の環境でもコンスタントな強さを見せていたTemur Delverが多くなると予想されていました。
結果は予想通りSneak and Showの優勝でしたが、Delver系をはじめとした青いフェアデッキに強いLands、同じくDelver系に強いMarverickやMetalWorkerなども見られ、Temur Delverはトップ8には勝ち残っていたもののその先へ進むのは厳しかったようです。
SCG Washington Premier IQ デッキ解説
「Sneak and Show」「Lands」「Abzan Marverick」「Temur Delver」「Grixis Control」
3 《島》 1 《山》 3 《Volcanic Island》 4 《沸騰する小湖》 3 《汚染された三角州》 3 《古えの墳墓》 2 《裏切り者の都》 -土地(19)- 4 《グリセルブランド》 4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(8)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《呪文貫き》 4 《実物提示教育》 1 《直観》 4 《Force of Will》 4 《騙し討ち》 4 《水蓮の花びら》 -呪文(33)- |
3 《紅蓮地獄》 3 《血染めの月》 2 《灰燼の乗り手》 2 《狼狽の嵐》 2 《残響する真実》 2 《防御の光網》 1 《すべてを護るもの、母聖樹》 -サイドボード(15)- |
見事に優勝を収めたSneak and Show。禁止カードに指定された「探査」ドロースペル《宝船の巡航》の片割れで禁止を免れた《時を越えた探索》やアンチ青キャントリップスペルの《圧服》は不採用で、メインに1枚だけ採用された《直観》と土地以外は全て4枚と、綺麗にまとまっています。
サイドには今回の禁止改定を受けて復権してくるであろうTemur DelverやSultaiなど、特殊地形に依存したデッキに刺さる《血染めの月》が採用されています。
1 《森》 2 《Taiga》 1 《霧深い雨林》 1 《新緑の地下墓地》 1 《吹きさらしの荒野》 1 《樹木茂る山麓》 4 《燃え柳の木立ち》 1 《地平線の梢》 2 《平穏な茂み》 1 《Karakas》 4 《リシャーダの港》 4 《演劇の舞台》 4 《不毛の大地》 1 《幽霊街》 3 《Maze of Ith》 2 《暗黒の深部》 1 《Glacial Chasm》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 -土地(35)- -クリーチャー(0)- |
4 《ギャンブル》 4 《輪作》 4 《壌土からの生命》 3 《罰する火》 4 《踏査》 2 《マナ結合》 4 《モックス・ダイアモンド》 -呪文(25)- |
4 《クローサの掌握》 4 《抵抗の宝球》 2 《暗黒の深部》 1 《窒息》 1 《虚空の杯》 1 《真髄の針》 1 《アメジストのとげ》 1 《ボジューカの沼》 -サイドボード(15)- |
今大会2位・3位入賞という好成績を残したLandsはDelver系を初めとしたフェアデッキに強いデッキで、今後もTemur DelverやSultai Delverが復権しコンボデッキが減れば、このデッキを上位で見かける機会も増えそうです。
サイドボードにフル搭載された 《クローサの掌握》はこのデッキにとって致命的な《血染めの月》や、《罰する火》と《壌土からの生命》の2つのエンジンを妨害する《相殺》、墓地対策の《安らかなる眠り》などを確実に除去します。
1 《平地》 1 《沼》 1 《森》 2 《Bayou》 2 《Savannah》 2 《Scrubland》 3 《吹きさらしの荒野》 2 《湿地の干潟》 2 《新緑の地下墓地》 1 《地平線の梢》 1 《Karakas》 4 《不毛の大地》 -土地(22)- 4 《ルーンの母》 4 《死儀礼のシャーマン》 3 《石鍛冶の神秘家》 3 《スレイベンの守護者、サリア》 3 《闇の腹心》 2 《迷宮の霊魂》 2 《漁る軟泥》 2 《ガドック・ティーグ》 1 《封じ込める僧侶》 -クリーチャー(24)- |
1 《剣を鍬に》 4 《生ける願い》 3 《突然の衰微》 4 《霊気の薬瓶》 1 《殴打頭蓋》 1 《梅澤の十手》 -呪文(14)- |
4 《強迫》 2 《盲信的迫害》 2 《アメジストのとげ》 1 《封じ込める僧侶》 1 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《石鍛冶の神秘家》 1 《漁る軟泥》 1 《オルゾフの司教》 1 《ガドック・ティーグ》 1 《Karakas》 -サイドボード(15)- |
定番の《緑の太陽の頂点》が不採用で、《霊気の薬瓶》や《生ける願い》が特徴的なリストです。《生ける願い》はSneak and ShowやReanimatorとのマッチで必須の《Karakas》や《エーテル宣誓会の法学者》《封じ込める僧侶》といった白いヘイトベアー、《真の名の宿敵》をはじめとした厄介なタフネス1クリーチャーを一掃する《オルゾフの司教》などをマッチアップや状況に応じてサーチすることが可能で、柔軟性の高さが魅力です。
Maverickでは必ずと言っていいほど見かける《聖遺の騎士》も不在で、クリーチャーのサイズよりもヘイトベアーによる妨害能力が優先されており、サイズは装備品による強化で補うようです。
3 《Tropical Island》 3 《Volcanic Island》 4 《樹木茂る山麓》 2 《霧深い雨林》 2 《沸騰する小湖》 4 《不毛の大地》 -土地(18)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《敏捷なマングース》 4 《タルモゴイフ》 -クリーチャー(12)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《もみ消し》 4 《稲妻》 3 《呪文貫き》 2 《呪文嵌め》 1 《二股の稲妻》 4 《目くらまし》 4 《Force of Will》 -呪文(30)- |
3 《水没》 2 《狼狽の嵐》 2 《紅蓮破》 2 《乱暴+転落》 2 《墓掘りの檻》 1 《硫黄の精霊》 1 《古えの遺恨》 1 《壌土からの生命》 1 《破壊的な享楽》 -サイドボード(15)- |
《宝船の巡航》の退場に伴い緑の軽い優秀なクリーチャーの《敏捷なマングース》と《タルモゴイフ》、《もみ消し》、《目くらまし》、《呪文貫き》など青い効率的な妨害スペルを多数搭載したオールドタイプのTemur Delverが帰ってきました。
以前の環境では何とか《宝船の巡航》入りのTemur Delverを使おうと墓地に依存しない《密林の猿人》が採用された型も見られましたが、「スレッショルド」との相性の悪さからTemur DelverはUR Delverと比べ「探査」ドロースペルの恩恵を受けにくく、特にアメリカでは使用者が激減していました。
トップ8入賞者こそわずか1名ですが、トップ16には合計4名と今大会では多くのプレイヤーがこのデッキを選択し安定した成績を残しています。前環境でUR Delverを使用していたプレイヤーの受け皿的な存在だったのと、以前からスレッショルド型を愛用していた多くのプレイヤーがこぞって持ち込んだ結果だと思われます。
レガシーでは定番の《不毛の大地》+《もみ消し》によるマナ否定戦略の強さについては語るまでもなく、妨害要素の多さと優秀なクロックでコンボに対して強いデッキなので、今後の動向にも注目です。
1 《島》 4 《Volcanic Island》 3 《Underground Sea》 4 《汚染された三角州》 4 《沸騰する小湖》 1 《溢れかえる岸辺》 -土地(17)- 4 《若き紅蓮術士》 2 《瞬唱の魔道士》 2 《悪意の大梟》 2 《真の名の宿敵》 -クリーチャー(10)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《稲妻》 3 《陰謀団式療法》 1 《定業》 1 《二股の稲妻》 2 《終止》 1 《対抗呪文》 4 《Force of Will》 4 《時を越えた探索》 1 《ダク・フェイデン》 -呪文(33)- |
3 《紅蓮破》 2 《水流破》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《概念泥棒》 1 《陰謀団式療法》 1 《外科的摘出》 1 《虐殺》 1 《粉々》 1 《唐突なる死》 1 《墓掘りの檻》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《無のロッド》 -サイドボード(15)- |
最近人気がありほぼ毎回結果を残しているGrixis Controlには《宝船の巡航》の代わりに禁止を免れた「探査」ドローの《時を越えた探索》が取られています。「探査」すれば青マナ1つで3ドローできた《宝船の巡航》とは大きく異なり、「探査」込みでもキャストするのに青マナ2つが要求されるので同じように使うのは無理がありますが、コントロール寄りのこのデッキでは頼れるドロースペルになります。
構成にも若干変更があり、《若き紅蓮術士》が減って《タルモゴイフ》を採用したデッキが増えることを予想して、除去枠の《二股の稲妻》の枚数が減らされ代わりに《終止》が取られています。
多数採用されたドロースペルや《時を越えた探索》があるためかサイドには1枚刺しが目立ちます。今回上位にはあまり見られませんでしたが、Miraclesにも効きそうな《無のロッド》や《概念泥棒》も見られます。
ボーナストピック
今回紹介したデッキ以外にも、新環境で活躍しそうなデッキを見ていきたいと思います。
2 《島》 1 《平地》 4 《Volcanic Island》 3 《Tundra》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 1 《乾燥台地》 -土地(19)- 4 《若き紅蓮術士》 3 《石鍛冶の神秘家》 2 《瞬唱の魔道士》 2 《真の名の宿敵》 -クリーチャー(11)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 3 《剣を鍬に》 2 《呪文貫き》 3 《時を越えた探索》 4 《Force of Will》 1 《梅澤の十手》 1 《殴打頭蓋》 -呪文(30)- |
2 《封じ込める僧侶》 2 《翻弄する魔道士》 2 《狼狽の嵐》 2 《紅蓮破》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《議会の採決》 1 《水流破》 1 《外科的摘出》 1 《摩耗+損耗》 1 《至高の評決》 1 《精神を刻む者、ジェイス》 -サイドボード(15)- |
「探査」ドロースペルを活かすために軽いキャントリップを多数採用し、GP New JerseyでBBDが優勝を収めたことで知れ渡ったJeskai Stoneblade。
《宝船の巡航》の禁止に伴い消滅するかと思われたアーキタイプでしたが、先ほど紹介したGrixis Controlのように《時を越えた探索》で代用しています。(青)(青)と色拘束が強くなっているのと《不毛の大地》を使ったデッキが増えることを予想してか、わずかながら基本地形の枚数も増量されています。
1 《沼》 3 《Underground Sea》 2 《Bayou》 2 《Tropical Island》 4 《汚染された三角州》 4 《新緑の地下墓地》 2 《霧深い雨林》 2 《忍び寄るタール坑》 2 《不毛の大地》 -土地(22)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《タルモゴイフ》 4 《断片無き工作員》 -クリーチャー(12)- |
3 《祖先の幻視》 4 《渦まく知識》 3 《思考囲い》 4 《突然の衰微》 2 《Hymn to Tourach》 3 《Force of Will》 2 《時を越えた探索》 3 《ヴェールのリリアナ》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(26)- |
3 《見栄え損ない》 2 《虐殺》 2 《墓掘りの檻》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《Force of Will》 1 《思考囲い》 1 《クローサの掌握》 1 《原基の印章》 1 《森の知恵》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《無のロッド》 -サイドボード(15)- |
禁止改定以前は《思考囲い》や《Hymn to Tourach》、《ヴェールのリリアナ》などでハンデスしても《宝船の巡航》でアドバンテージを取り返されていました。また、《宝船の巡航》のほうが《断片無き工作員》からの《祖先の幻視》よりも手軽に3ドローができ、《断片無き工作員》を使う利点が薄らいでいたため、Shardless Sultaiはあまり見ませんでした。
《時を越えた探索》は生き残ったものの、《宝船の巡航》が禁止となったので今後はハンデスも強力な戦略となりそうです。その《時を越えた探索》も、このデッキの新たなドロースペルとして採用されています。
4 《島》 2 《平地》 3 《Tundra》 3 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 3 《沸騰する小湖》 2 《乾燥台地》 -土地(21)- 3 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(3)- |
4 《剣を鍬に》 4 《渦まく知識》 4 《思案》 1 《紅蓮破》 1 《赤霊破》 1 《対抗呪文》 2 《天使への願い》 4 《Force of Will》 4 《終末》 4 《相殺》 4 《師範の占い独楽》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(36)- |
2 《封じ込める僧侶》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《青霊破》 2 《狼狽の嵐》 1 《議会の採決》 1 《対抗呪文》 1 《紅蓮破》 1 《紅蓮地獄》 1 《摩耗+損耗》 1 《赤霊破》 1 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード(15)- |
《宝船の巡航》禁止以前も大きな大会で結果を残していましたが、UR DelverやGrixis Control、Jeskai Stonebladeなどにメインから少なくとも2枚採用されていた《紅蓮破》が《相殺》の着地を簡単には許さず、《宝船の巡航》でリソースを補充されるためDelver系など以前は相性がよかったマッチアップでも苦戦を強いられていました。
しかし、今後は《宝船の巡航》が禁止にされた影響でメインの《紅蓮破》も減ることが予想されるので、《相殺》や《精神を刻む者、ジェイス》といった青いカードも普段通りの強さを取り戻し、中盤以降物量で押されることも少なくなりそうです。
総括
以前からコンボに強かったTemur Delverの復権によりコンボは数を減らすことが予想されます。《不毛の大地》の増加に伴い一部のデッキはマナ基盤の調整をする必要が出てきそうです。SCG Washington Premier IQを制したSneak and Showは高いデッキパワーと、相性の悪いテンポデッキに対しても《血染めの月》という切り札があるのでよほど対策されない限りは今後もよく見かけるデッキとなるでしょう。
《宝船の巡航》を失ったUR DelverはSCG Washington Premier IQではトップ32を見渡しても見られませんでした。《若き紅蓮術士》も減るように思われるので、《突然の衰微》や《ヴェールのリリアナ》の強さも増します。
さて、今週末に開催されるSCGO Indianapolisのフォーマットはレガシーです。新環境初の2日制の大会で全米のレガシープレイヤーが持ち込むデッキから目が離せません。
次回の記事ではそのSCGO Indianapolisを中心にカバーしていきたいと思います。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーを!
※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『StarCityGames.com』
http://www.starcitygames.com/index.php