秋口に差し掛かるといつも寂しい気持ちになる。
新エキスパンションが発売されるというワクワク感よりも、よく知ったカードたちがスタンダード環境を去る喪失感が強く感じられるからだろうか。
しかし、別れと一口に言っても、”いい別れ”と”悪い別れ”がある。
さっぱりといい思い出とともにお別れするために。デッキビルダーは彼らが輝ける場所をつくるために最大限の努力をするのだ。
ローテーションが目前に迫る今だからこそ!という意欲作に注目してみた。
■ 赤緑トークン
8 《山》 2 《森》 4 《樹木茂る山麓》 4 《奔放の神殿》 4 《岩だらけの高地》 3 《領事の鋳造所》 -土地(25)- 4 《搭載歩行機械》 4 《ピア・ナラーとキラン・ナラー》 2 《鍛冶の神、パーフォロス》 -クリーチャー(10)- | 4 《乱撃斬》 4 《アタルカの命令》 4 《ドラゴンの餌》 4 《稲妻の一撃》 4 《軍族童の突発》 2 《かき立てる炎》 3 《進化の飛躍》 -呪文(25)- | 4 《嵐の息吹のドラゴン》 3 《マグマのしぶき》 3 《歓楽者ゼナゴス》 2 《焦熱の衝動》 2 《焙り焼き》 1 《垂直落下》 -サイドボード(15)- |
お別れ企画第一弾は《鍛冶の神、パーフォロス》。
「赤信心」で正攻法な使われ方もしたが、真に実力を発揮したのは1ターンに複数回のEtBをする「《先祖の結集》」や「トークン」といったデッキのコンボパーツだった気もする赤を司る神様である。
今回紹介するデッキもメインコンセプトは「トークン」となっている。《搭載歩行機械》や《軍族童の突発》で横へ横へと戦線を伸ばしていき、《鍛冶の神、パーフォロス》による直接ダメージや、《アタルカの命令》の全体強化でトドメを刺すお手本通りの綺麗な構成に仕上がっている。
同じく今秋でスタンダードを去る《かき立てる炎》も「トークン」デッキならでは輝く1枚だ。《ゴブリンの熟練扇動者》とセットで使用されることが多かったが、このデッキでは《軍族童の突発》や《ピア・ナラーとキラン・ナラー》などその代役に頼っているようだ。
ここまでお手本通りの構成が続いたが、ぴりっと一味違う隠し味は《進化の飛躍》だ。『マジック・オリジン』からの注目株としてサイドボードからのアドバンテージ源として注目を浴びてきたが、この「赤緑トークン」では、メインボードから十分なアドバンテージを生み出すカードとして活躍してくれる。
デッキに投入されているクリーチャーはたった3種類。《ピア・ナラーとキラン・ナラー》《搭載歩行機械》、そして《鍛冶の神、パーフォロス》。何が手に入るか分からない。そんなランダムな要素から嫌われる《進化の飛躍》だが、このデッキならば常に当たりくじを引ける最高のカードに早変わりする。
《進化の飛躍》を起動すると、《鍛冶の神、パーフォロス》かトークン生成カードしか手に入らない。つまり、ゲームが少しでも長引けば《鍛冶の神、パーフォロス》が無尽蔵のダメージを叩き出してくれるのだ。相手の攻撃をトークンでいなしていたら、いつの間にか有利になっている。そんな魔法のようなゲームプランは《鍛冶の神、パーフォロス》があればこそ。
あらゆるカードの歯車が噛み合ったとても綺麗なデッキに仕上がっている。
■ 《軍族の雄叫び》ゴーグル
13 《山》 3 《天啓の神殿》 3 《凱旋の神殿》 4 《ダークスティールの城塞》 1 《領事の鋳造所》 -土地(24)- 4 《搭載歩行機械》 -クリーチャー(4)- | 4 《ドラゴンの餌》 4 《稲妻の一撃》 2 《爆片破》 4 《極上の炎技》 4 《軍族童の突発》 4 《軍族の雄叫び》 4 《かき立てる炎》 4 《紅蓮術師のゴーグル》 2 《ウルドのオベリスク》 -呪文(32)- | 4 《雷破の執政》 3 《マグマのしぶき》 2 《神々の憤怒》 2 《力による操縦》 2 《前哨地の包囲》 2 《精霊龍、ウギン》 -サイドボード(15)- |
可能性という言葉は、このカードのためにある。
世界中のコンボ愛好家を悩ませる伝説のアーティファクトのお供は、今回は《軍族の雄叫び》らしい。
《軍族の雄叫び》には、次にプレイするインスタントかソーサリーをコピーするという効果に加えて、『強襲』の条件を満たしていれば更にコピーという凄まじいボーナスがついている。それを《紅蓮術師のゴーグル》でコピーすると……?
なんとコピー対象の呪文は5倍にも膨れ上がるのだ。
《ドラゴンの餌》から10体、《軍族童の突発》ならば15体のゴブリンが生み出されると言えばその凄まじさが伝わるだろうか。
しかし、これくらいでは満足できない人々のために更なる相棒が用意されていた。
そう。《爆片破》である。5×5で漏れなく25点リーサルだ。
僅か5マナで成立するコンボのなかでは破格の決定力を持つうえに、決まったときの爽快感がなお素晴らしい。
《護法の宝珠》を貼られたらどうしよう?そんな心配もこのカードで解決される。《軍族童の突発》から生成された15体のゴブリントークンが3/3に成長すればどんなデッキでも守り切ることはできない。6マナというやや重いコストもゴブリンたちが肩代わりしてくれるので安心だ。
そろそろローテーション落ちする《爆片破》に《ウルドのオベリスク》という爆発力を持ち味にしたカードらが活躍する楽しいデッキに組みあがっている。このデッキならばカードたちに楽しく別れを告げられそうだ。