今、マジックで一番面白い構築フォーマットは何だろうか?
テーロスも発売し、最もプレイ人口が多いスタンダードだろうか。それとも、《渦まく知識》や《Force of Will》が絶妙なスリルを味あわせてくれるレガシーか。はたまた、研究度合が如実に結果に反映されるブロック構築か。あるいは、もしかすると統率者戦だったりするかもしれない。
もちろん答えは人によるだろう。
かつて私はこの質問に対し迷わず「エクステンデッドだ」と答えていた。
が、今やそんなフォーマットは存在しない。エクステンデッドとなってしまった。
ということは、だが。
個人的には、やはり。
モダンだろうと思うのだ。
何せ、ざっと数えても30個を超えるアーキタイプが存在し、対戦相手は常に新鮮な驚きをもたらしてくれる。
また、クリーチャーを主体にしたダメージレースが多いスタンダードと違い、古き良きコンボデッキが色々作れるため、普段のマジックとは違った緊張感も味わえる。
ついでにいえば、まともに組むならデュアルランドが必要となりがちなレガシーとは異なり、ラヴニカへの回帰ブロックで再録されたギルドランドや、ちょっと前にマジックを始めた人なら持っているであろうゼンディカーのフェッチランドがメインのマナベースとなっているため、お財布にも優しい。
《瞬唱の魔道士》や《ヴェールのリリアナ》といった、ローテーション落ちした最近の強いカードも頻繁に使われているため、スタンダードデッキからのコンバートも容易だ。
そんな楽しくてしかも参入しやすいモダンを、プレイしない理由があるだろうか?
いや、ない!
そこで今回は、短期集中連載として。
・Part1 ?モダンへの招待?
・Part2 ?グランプリ・ブリスベン13結果分析?
・Part3 ?グランプリ・アントワープ13結果分析?
という全3回に分けて、モダンの楽しさを伝えるとともに、次回からはちょうど今月開かれているモダンの海外グランプリの結果から、テーロス導入後の最新のモダン情報をお届けしようと思う。
テーロスからマジックを始めたという人も、テーロスでトーナメントに来る頻度が上がったという人も。
時には、自分の主戦場たるスタンダードやレガシーでの調整に行き詰ることもあるだろう。
そんなとき、モダンはいつでも君を待っている。
なお、これは少し先の話になるが、来年8月にはグランプリ・神戸14がモダンで行われる。
他のプレイヤーたちより一足早く参入して、経験値を積んでおくのも悪くないかもしれない。
これを読んで、少しでもモダンというフォーマットに興味を持ってくれたなら。
こんなに嬉しいことはない。
1.モダンの速度
基本セットは8版以降、エキスパンションはミラディン以降の、いわゆる新枠のカードが使えるフォーマットで、2013年10月現在、禁止カードは以下の通りである。
《祖先の幻視》
《古えの居住地》
《苦花》
《猛火の群れ》
《血編み髪のエルフ》
《金属モックス》
《雲上の座》
《暗黒の深部》
《戦慄の復活》
《垣間見る自然》
《ゴルガリの墓トロール》
《大焼炉》
《緑の太陽の頂点》
《超起源》
《精神を刻む者、ジェイス》
《精神的つまづき》
《思案》
《定業》
《罰する火》
《炎の儀式》
《教議会の座席》
《第二の日の出》
《煮えたぎる歌》
《師範の占い独楽》
《石鍛冶の神秘家》
《頭蓋骨絞め》
《弱者の剣》
《伝承の樹》
《梅澤の十手》
《囁きの大霊堂》
《野生のナカティル》
「なんだか禁止がいっぱいあってよくわからないな」と思われるかもしれないが、モダンの禁止カード選定の基本方針はおおよそ「3ターンキル防止」と「メタゲームの硬直化防止」にあるので、強すぎたり早すぎたりするやばいカードは大体禁止になっていると思ってもらった方が良い。
さて、これらの禁止カードを踏まえた結果。
モダンという環境は現在、4ターンキルが速度的な指標となっている。
例えば、環境の代表的なコンボである《欠片の双子》デッキや《メリーラ》《出産の殻》デッキ、《風景の変容)》デッキなど、いずれも4ターン目が平均的なクライマックスだ。
5 《島》 1 《山》 3 《蒸気孔》 1 《踏み鳴らされる地》 4 《沸騰する小湖》 3 《霧深い雨林》 3 《硫黄の滝》 2 《地盤の際》 1 《僻地の灯台》 -土地- 4 《瞬唱の魔道士》 1 《呪文滑り》 4 《詐欺師の総督》 3 《やっかい児》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《鏡割りのキキジキ》 -クリーチャー- |
4 《血清の幻視》 3 《稲妻》 2 《のぞき見》 2 《払拭》 2 《炎の斬りつけ》 1 《呪文貫き》 3 《差し戻し》 4 《欠片の双子》 -呪文- |
3 《血染めの月》 2 《古えの遺恨》 2 《金屑の嵐》 2 《仕組まれた爆薬》 1 《渋面の溶岩使い》 1 《呪文滑り》 1 《払拭》 1 《否認》 1 《焼却》 1 《対抗変転》 -サイドボード(15)- |
この4ターンというのが実に良い按配なのだ。
何故かというと、土地からのマナに限定すれば先手なら10マナ、後手なら6マナしか使うことができない。
とすれば、スタンダードでよく活躍するような4マナ以上の超強力カードを使うなんて論外で、大抵は3マナ以下のスペルをやりくりすることになる。
しかし逆に、ともすれば場を白けさせがちな1キルや2キルはまず起こらず、互いが4ターン目に向けて少ないリソースを奪い合うのが通常だ。
そう、そこにはある種お約束のように、「仕掛けどころの4ターン目」が誂えられているのだ。
早すぎもせず、遅すぎもせず。
それぞれが4ターン目に備えて力を矯め、蓄えられた戦術を一気に解き放つ???。
その程良い緊張感が、ゲームを面白くする。
レガシーでは殺伐としすぎだが、スタンダードでは物足りない。
モダンはそういう人にはぴったりのフォーマットと言える。
2.バランスのとれた環境
前の段落では4ターンキルのイメージをわかりやすくするため、コンボに焦点を当てたが。
モダンは決してコンボだけが跋扈する環境というわけではない。
ビートダウンも、そしてコントロールも、まともに存在しており、かなり健全なメタゲームを形成している。
3 《島》 1 《平地》 2 《神聖なる泉》 2 《蒸気孔》 1 《聖なる鋳造所》 4 《乾燥台地》 4 《沸騰する小湖》 4 《天界の列柱》 2 《硫黄の滝》 3 《地盤の際》 -土地- 4 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー- |
4 《呪文嵌め》 4 《稲妻》 2 《流刑への道》 4 《熟慮》 4 《マナ漏出》 2 《疑念の影》 4 《電解》 2 《スフィンクスの啓示》 4 《謎めいた命令》 -呪文- |
4 《広がりゆく海》 2 《払拭》 2 《摩耗+損耗》 2 《否認》 2 《対抗変転》 2 《至高の評決》 1 《ザルファーの魔道士、テフェリー》 -サイドボード(15)- |
非常にベーシックなタイプの白青赤コントロール。今年のプレイヤー選手権で渡辺雄也らが使用したアーキタイプでもある。
《瞬唱の魔道士》、《熟慮》、《スフィンクスの啓示》など、少し前までスタンダードのトリコロールに使われていたカードが多く採用されている。
1 《森》 1 《山》 4 《踏み鳴らされる地》 3 《乾燥台地》 2 《霧深い雨林》 2 《新緑の地下墓地》 1 《沸騰する小湖》 4 《銅線の地溝》 -土地- 4 《実験体》 4 《ゴブリンの先達》 4 《密林の猿人》 4 《苛立たしい小悪魔》 4 《炎樹族の使者》 4 《火打ち蹄の猪》 4 《タルモゴイフ》 4 《ゴーア族の暴行者》 -クリーチャー- |
4 《稲妻》 2 《タール火》 2 《四肢切断》 2 《炎の印章》 -呪文- |
3 《漁る軟泥》 3 《自然の要求》 3 《血染めの月》 2 《火柱》 2 《粉々》 2 《倦怠の宝珠》 -サイドボード(15)- |
こちらの赤緑ビートダウンも《炎樹族の使者》《火打ち蹄の猪》《ゴーア族の暴行者》など、スタンダードの赤緑ビートで強かったラインを踏襲している。
そして、コンボだけでなくこれらビートダウンやコントロールのデッキの焦点が、やはりちょうど4ターン目に集約されているがゆえに、どのデッキも不思議と突出することなく、メタゲームが多様性を保っているのである。
禁止カードによって人為的にたびたび調整された環境ゆえに、ゲームバランスがうまく機能しているという点が、モダンの魅力の1つと言えよう。
3.開発の余地
実はモダンは、導入から2年を過ぎた今でも、まだまだ新デッキ開発の余地があるフォーマットでもある。
昨年の2012マジック・プレイヤー選手権で八十岡がオリジナルデッキ「エターナルコマンド」を引っさげて大活躍したのは周知の事実だが。
それ以外にも、今年のマジック:ザ・ギャザリング世界選手権2013ではCFB勢が持ち込んだ黒緑ジャンクが話題となり、その後もトップメタに食い込んでいる。
また、最近はこんなデッキが突如出現して、モダンプレイヤーの度肝を抜いた。
4 《平地》 3 《沼》 4 《神無き祭殿》 4 《湿地の干潟》 4 《孤立した礼拝堂》 1 《宝石鉱山》 1 《魂の洞窟》 -土地- 4 《死の影》 2 《呪文滑り》 4 《希望の化身》 -クリーチャー- |
1 《殺戮の契約》 4 《天使の嗜み》 4 《大霊堂の戦利品》 4 《信仰の盾》 3 《流刑への道》 3 《思考囲い》 4 《暗黒への突入》 2 《消耗の儀式》 4 《神聖の力線》 -呪文- |
3 《コジレックの審問》 3 《天界の粛清》 3 《蔓延》 3 《強き者の優位》 2 《魂の洞窟》 1 《思考囲い》 -サイドボード(15)- |
頭がおかしい
一体どういう発想でこのデッキができたのか。
しかもDEで4-0するまでに至ったとなると、デッキビルダー冥利に尽きるであろう。
さて、これらのことからわかるように。
モダンには掘り下げられるべきポイントがまだいくつも残っているのだ。
何より。
テーロスが入ったばかりのこの時期なら、競争相手もそんなにいないだろうし、誰でも簡単にデッキビルダーになりうる。
あなたの自由な発想が、世界に羽ばたく……かどうかはともかく。
一度モダンのデッキを作ってみると、意外な才能が開花するかもしれない。
4.終わりに
さて、簡単にモダンというフォーマットの魅力の説明を試みたが、いかがだっただろうか。
Part2は冒頭で述べたとおり、海外のモダングランプリの結果から、テーロス導入後のモダン環境について分析していくつもりだ。
それでは、また次回。
ちなみに、晴れる屋トーナメントセンターでは平日いずれも14時、17時、20時から、それぞれ4人以上で成立する3回戦のモダントーナメントを開催している。
また土日も基本的にモダンの大会が開かれているので、モダンに興味はあるけど近隣にモダンの大会がないという方は、是非一度高田馬場まで。
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