日本選手権の後は、俺のデッキがスタンダード

行弘 賢


 夏草や兵どもが夢の跡…。どうも皆さんお久しぶりです!
 
 日本選手権に参加された皆さん、お疲れ様でした!今回も日本選手権は凄く盛り上がりましたね!祭りの後はいつも寂しくなっちゃいますが、スタンダードで行われるPTQフィラデルフィアやFinalsのゲートウェイ予選も行われているので、そうも言ってられません。

 さて、今回は僕が日本選手権に参加するために制作したデッキを紹介したいと思いますが、その前にまずは軽くメタゲームのおさらいをしましょう。

 今回の日本選手権はM12参入後すぐのトーナメントという事で、いわゆる『スタンダードで一番カードプールの広い』状況で行われたトーナメントでした。《精神を刻む者、ジェイス》《石鍛冶の神秘家》がスタンダードから消えた今、環境を支配するのは《不屈の自然》《真面目な身代わり》を獲得したヴァラクート。次点で青黒のコントロール、青白の《戦隊の鷹》コントロール、《渋面の溶岩使い》《チャンドラのフェニックス》を獲得した赤単、ヴァラクートに強く《思案》の恩恵を受けた《欠片の双子》デッキ、圧倒的ぶんまわりが人気でプロツアー・名古屋の限定構築からやってきた《鍛えられた鋼》デッキ辺りが本戦でいるであろうというのが大方の予想でした。


忘却の輪機を見た援軍


 僕は新環境という事で、先ほど挙げたデッキがそれぞれトーナメントにある程度の数がいるだろうと予想しました。これだけ多種多様なデッキが環境に存在すると、デッキ次第ではまったく勝てないマッチアップも出てきます。
 どれを選択しても裏目が存在するなら、新たな選択肢を模索しよう!ということで、僕はまず青黒コンに白を足す所から始めました。新環境でコントロールを選択する利点としては、サイドボード後相手より有利に戦える点です。その選択肢を増やすために白をまず足す事にしました。白は今回M12から参入したニューカマー《忘却の輪》《機を見た援軍》の両者チームシングルシンボルだけタッチする事にしました。
 メインボードから最初は両者とも4枚採用してみたのですが、やはり《機を見た援軍》は手札で腐る事もあり、すぐに2枚に減りました。《忘却の輪》は青黒の触りにくい所にタッチでき、デッキにフィットしていると感じたので枚数は減らしたものの3枚になり、両者ともサイド後4枚になるようにサイドボードに残りを置きました。

 そんなこんなで試行錯誤してできたデッキがこちら。



1.環境最強のデッキ!?オメガウェポン


Ken Yukuhiro/「オメガウェポン」

3《地盤の際》
4《忍び寄るタール坑》
4《闇滑りの岸》
4《金属海の沿岸》
3《沼》
1《平地》
1《島》
4《湿地の干潟》
1《氷河の城砦》

-土地-

3《真面目な身代わり》
3《聖別されたスフィンクス》

-クリーチャー-
1《蔑み》
4《コジレックの審問》
3《ジェイス・ベレレン》
2《破滅の刃》
2《機を見た援軍》
2《思案》
4《定業》
2《喉首狙い》
3《忘却の輪》
4《マナ漏出》
2《黒の太陽の頂点》

-呪文-
4《記憶殺し》
2《機を見た援軍》
1《ワームとぐろエンジン》
1《殴打頭蓋》
1《弱者の消耗》
1《忘却の輪》
1《黒の太陽の頂点》
3《見栄え損ない》
1《地盤の際》

-サイドボード()-
hareruya



 まず、メインの構成について説明します。

 メインは新環境に合わせて凄く丸い構成にしました。長いラウンドを戦うので事故負けを減らすために《定業》+《思案》の6枚体制にしました。それのおかげでコントロールながら必要な時に欲しいカードを探しに行くことが容易に可能なので、少ない枚数ながらメインに入っているカードにも重要な意味を持たせる事が可能で、サイドボード後もより有利に戦いやすくなっています。メインから2枚入っている《機を見た援軍》も普通なら絶望的な赤単にも勝率を大きく上げる事に貢献しています。


真面目な身代わり聖別されたスフィンクスコジレックの審問黒の太陽の頂点


 このデッキのマスターピースとも言えるのが《真面目な身代わり》です。殴ってよし、守ってよし、土地を伸ばしてよしの3拍子が非常に憎いので有名ですが、無色のカードで色マナを調整できる点が強すぎますね。一応3色なので、必要な色マナが手に入るのは重要です。コントロール同系でも非常に活躍しますし、勿論ビートに対しても良いカードです。

 環境的に見て《忘却の輪》が非常に機能する点としては、プレインズウォーカーに触れるという所です。やはりクロックの無いデッキに対してプレインズウォーカーは強いので、コントロールを組むならばどうにかして対処できるようにしたいところですよね。そういう意味で白を足すメリットが《忘却の輪》では薄いように感じられるかもしれませんが、メインからなんにでも対処できるというのは大きな利点があります。

 フィニッシャーが《聖別されたスフィンクス》なのは一番制圧力が高いという点と、飛行クリーチャーが欲しいからです。一応《ワームとぐろエンジン》も試したのですが、飛行クリーチャーが止まらなくて《鍛えられた鋼》デッキに耐性が無いのが気に食わなかったので《聖別されたスフィンクス》を使う事に決めました。

 除去が散らしてあるのは環境に《鍛えられた鋼》デッキが存在するためです。本来ならば全て《喉首狙い》にしたいのですが、このマッチアップで除去を腐らせたら負けに直結するので仕方なく除去を《破滅の刃》と半々にする事にしました。全て《破滅の刃》にすると今度は《忍び寄るタール坑》に触れなくなったりするので、余りオススメできませんが、今後《鍛えられた鋼》デッキが増えるようならば枚数の調整はした方が良いですね。

 ハンデスについてはやはり《コジレックの審問》が一番強く、追加で取るハンデスとしてはヴァラクートに効果の高い《蔑み》にしました。対戦相手の型が《緑の太陽の頂点》《召喚の罠》型かで全然勝率が変わるのですが、メジャーな《緑の太陽の頂点》型には《コジレックの審問》が効くので相性が良くなります。逆に《召喚の罠》型はメインボードは相性がきつくなってしまいますね。

 このデッキを調整していて、投入して一番勝率が高くなったカードが《黒の太陽の頂点》です。《鍛えられた鋼》デッキや《戦隊の鷹》《ゼンディカーの報復者》等面で押してくるカードは環境に存在するので、それらに大きく耐性が付くのは重要な事です。特に青白は《戦隊の鷹》に頼っている所が大きいので、全体除去はマッチアップ相性を覆すぐらい有効な手段になります。



2.サイドボードを極めるものはマッチを制す

 続いては、サイドボーディングについての解説です。

 3枚投入されている見栄え損ないは環境のビート全般に効きます。赤単は《ゴブリンの先達》《板金鎧の土百足》にさえ対処できればかなり楽に戦えますし、《鍛えられた鋼》デッキにも勿論効きます。1枚ぐらい《糾弾》と差し替えても面白いかもしれませんね。

 《黒の太陽の頂点》《弱者の消耗》で全体除去を散らしているのは《鍛えられた鋼》デッキを意識してのことです。全体除去をたくさん引くのは良いのですが、ソーサリータイミングの除去をたくさん引くとミシュラランドや《きらめく鷹の偶像》にやられたりするので、散らす事でそのリスクを分散しています。

 4枚投入されている《記憶殺し》は双子とヴァラクート用です。どちらも最速でうたれると厳しいマッチアップなので、効果は絶大です。状況にもよりますが、基本的には《原始のタイタン》から抜き、次は《ガイアの復讐者》を抜きましょう。《黒の太陽の頂点》は残さないと《最後のトロール、スラーン》《ゼンディカーの報復者》等で負けてしまうので気を付けてください。

 《忘却の輪》は装備品やプレインズウォーカー、相手の《忘却の輪》を割りたい時等に入れます。結構幅広くサイドインできるのですが、メインで4枚は多すぎると判断したのでサイドに1枚置いています。

 《地盤の際》はかなり優秀なサイドボードです。コントロールミラーでは対ミシュラランドと活躍する上に、マナが詰まりにくくなるというメリットがあります。もちろんヴァラクートに強いのは言うまでもありませんね。メインに4枚入れると色事故の原因に陥るのでこれもサイドに落とさせてもらっています。

 《ワームとぐろエンジン》は青黒のミラーやビート、ヴァラクートに対してサイドインします。青黒は《記憶殺し》ゲーになりやすいので、フィニッシャーは散らした方がいいですね。《殴打頭蓋》もほぼ同じような感じでサイドインできるのですが、ヴァラクートはサイド後《自然の要求》が入ってくる事が多いので《忘却の輪》も抜いて割られてきついカードを無くした方が良いと思われます。

 《機を見た援軍》はスペシャルサイドボードです。とにかく赤系のデッキに対して強いので、是非使ってみてください。これがサイド後4枚になるのがタッチ白している大きな利点でもあります。勿論ヴァラクートには入れてはいけません。

 僕はこのデッキを使って本戦で初日にヴァラクートに4回当たって1-3しました。しかし、その時はサイドの《記憶殺し》が2枚しかなく、こちらが《記憶殺し》を引かないまま上手くトップデッキをされ続けて負ける、といった感じになってしまったので次の日のサイドイベントのPTQでは上記のリストに変えて出てみました。

 結果の方は、

R1:青白     ○×○
R2:青黒赤双子  ×○○
R3:赤単ゴブリン ○○
R4:ヴァラクート ○×○
R5:青白     ○○
R6:ID
R7:ID

 で、トップ8に残ったものの、ヴァラクート相手に事故って負けて1没という結果に終わってしまいました。優勝こそ逃したものの、デッキに対する信頼度は増すばかりで、環境が固まってきたならば更なる調整ができるデッキでもあります。今のメタならサイドに《広がりゆく海》《地盤の際》の追加で1~2枚取ると良いかもしれませんね。

PTQは負けてしまいましたが、本戦で戦っていた僕と同じデッキ使った友人は6-1-1、6-2-0とどちらも良い成績でフィニッシュできていてほっとしました。PTQシーズン何を使おうか迷っているなら、一度回してみてはいかがでしょうか?気に入ってくれたら幸いです。

 それでは皆さんまた次回の記事まで!