イニストラードでもオレがスタンダード!

行弘 賢


編注:この記事は、グランプリ広島開催前の10月18日前後に書かれたものです。リニューアルに伴う編集側の都合により、掲載時期が遅れてしまったことを、読者の皆様に深くお詫びいたします。



1.新環境スタンダードでのオレのスタンダードなメタゲーム

 皆さんイニストしてますか!?

 やっぱり新エキスパンションが発売されるとテンションがあがりますね。僕もスタンダード熱が上がりまくっちゃって困ってます。

 さて、熱があがるのはいいのですが、まずは環境のおさらいをしましょう。

 ZENブロックとM11が落ちる事によって環境のデッキはかなりの数が使えなくなりました。白系のデッキは《戦隊の鷹》が落ちたことにより少なからずデッキパワーが落ち、ヴァラクート、欠片の双子はそもそもデッキの主要パーツが落ちるので使いものになりません。

 赤単も色々厳しいですが、特に1マナ選択肢としての《ゴブリンの先達》《稲妻》をはじめとした優秀な火力を揃って失った事が大きく、デッキパワーをかなり下げています。ですが、主軸となりうる《燃え上がる憤怒の祭殿》《槌のコス》は残っているので、これら火力や序盤のクリーチャーの代わりが見つけられればチャンスがあると思います。

 このようにパーツを失ったデッキがある一方で、《出産の殻》はメインパーツはそのままなので今後も活躍しそうですし、《ボーラスの工作員、テゼレット》はカードパワーが高いカードなので今後もデッキができるでしょう。

 さて、ここまではZENブロックとM12が落ちた事による影響です。でもセットが落ちるという事は新セットもでているという事ですよね。


ヴェールのリリアナ堀葬の儀式


 今回の新セットのカードリストを見て僕が単純に強そうだなーと思ったのが《ヴェールのリリアナ》《堀葬の儀式》です。この2枚はシナジーを形成しており、どちらも単体のカードパワーが非常に高いです。そのため、この2枚を使ったコントロールが環境をある程度支配すると考えました。《禁忌の錬金術》という優秀なドローサポートもコントロールは手に入れたので死角が無い印象があります。

 赤単は優秀な火力を失ったことで《機を見た援軍》がより辛くなっている印象があって、白系のコントロールが増えるなら、そこまで流行れないかなぁと思いました。《情け知らずのガラク》はパッと見でそこまで強さが分からないので多分余り使われなさそうだなぁといった印象を受けましたし、そもそも緑系のデッキは《審判の日》にも弱いのでやはりこのメタゲームだと微妙だと感じました。

 さて、これが今回新セットが出た直後の僕の感想です。まとめると、ビートが少なく、コントロールが多い環境になるのでは?という事ですね。という訳で、早速コントロールをぶちのめすデッキを紹介させていただきます。



2.コントロールをぶちのめすデッキとは?

 《ヴェールのリリアナ》しかり、《瞬唱の魔道士》しかり、皆さんも色々注目しているカードがあると思いますが、今回僕が地味に注目しているのが今回の『友好色レア土地サイクル』です。


ステンシアの血の間ムーアランドの憑依地


 一番弱いと思われる《ステンシアの血の間》ですら、赤黒のデッキができるならば2枚程は採用されるであろうポテンシャルがあると思います。その中でも《ムーアランドの憑依地》は地味な効果を持った土地ですが、冷静によく読んでみるとかなりおかしな事が書いています。土地がクリーチャーを出すのはまぁ最悪許せるとして、コスト、軽すぎません?こういった強いカードは新たなアーキタイプを作り出す可能性があります。

 というわけで、僕の次環境一押しのアーキタイプ『スピリットブレード』をご紹介したいと思います。

 とりあえずまずはデッキリストをご覧下さい。



『スピリットブレード』

4 《金属海の沿岸》
4 《氷河の城砦》
4 《ムーアランドの憑依地》
7 《平地》
7 《島》

-土地-
4 《宿命の旅人》
4 《不可視の忍び寄り》
4 《瞬唱の魔道士》
4 《刃の接合者》
-クリーチャー-
4 《深夜の出没》
4 《マナ漏出》
2 《四肢切断》
2 《雲散霧消》
2 《忘却の輪》
4 《饗宴と飢餓の剣》

-呪文-

2 《雲散霧消》
4 《機を見た援軍》
2 《墓場の浄化》
3 《審判の日》
1 《忘却の輪》
3 《ギデオン・ジュラ》

-サイドボード-
hareruya



深夜の出没


 インスタントタイミングで出てくる1/1の飛行クリーチャーはまさしく前環境の《戦隊の鷹》を彷彿させますね。《深夜の出没》《ムーアランドの憑依地》はどちらも構えながらスピリットを生み出せるため、隙を作らずに細かく対戦相手を攻める事ができます。どちらもマナコストは《戦隊の鷹》より少し重いのですが、インスタントで生み出せるということと、さらに《深夜の出没》の場合は2体いきなり出るということでそれを補って余る性能だと思います。


宿命の旅人


《宿命の旅人》はパッと見で冗談でしょ?といったカードでしょう。しかし、このデッキだったら相手のクリーチャーをブロックしてライフを減らさずにトークンを出すことができ、更に《ムーアランドの憑依地》でトークンを出すという2度美味しいクリーチャーです。1マナ域としては優秀な部類だと思います。軽く出しておけるので《饗宴と飢餓の剣》が着地した時に装備しやすいのも良いですね。


瞬唱の魔道士


 《瞬唱の魔道士》は誰もが注目する今回の目玉カードですが、その前評判通りの強さを持っています。カウンターは《マナ漏出》《雲散霧消》で合計6枚入っているので《瞬唱の魔道士》まで使えば、対戦相手からすると無限にカウンターが飛んでくるという気分にすらなるでしょう。クロックアップしながら対戦相手の妨害をするのは流石に強いですね。他にも《深夜の出没》を追加で使う事もできるので展開力も更に増しますし、《四肢切断》で盤面の脅威を消し去っても良いでしょう。インスタントタイミングで場にでるので、いきなり登場して《饗宴と飢餓の剣》を装備して殴れるのも強いので、とにかくデッキの最重要パーツのひとつですね。


不可視の忍び寄り


 透明人間こと《不可視の忍び寄り》《饗宴と飢餓の剣》の装備先として最適です。1回装備がついてさえしまえばもう止められないですからね。2ターン目《不可視の忍び寄り》からの3ターン目《饗宴と飢餓の剣》というぶんまわりは対戦相手にかなりのプレッシャーを与えそうです。

 《刃の接合者》は恐らくこの環境最強といえる3マナ域のクリーチャーで、早いターンからの大きなクロックとして重宝します。《刃の接合者/Blade Splicerと《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》が並んだだけで対戦相手は後手後手にならざるを得ませんからね。早いターンのクロックは対戦相手の隙も生みやすいので《饗宴と飢餓の剣》を通しやすくなります。

 《忘却の輪》は対戦相手の《ギデオン・ジュラ》《忘却の輪》を対処できるのが環境的にあってると思います。基本的に何でも除去できる《忘却の輪》はコストの重さを除けば非常に万能な除去となるので、メインボードから白がとっていく除去として今後は標準装備になると思います。《饗宴と飢餓の剣》《忘却の輪》でしかほとんど対処されないので《忘却の輪》《忘却の輪》する事でいきなり《饗宴と飢餓の剣》が戻ってきて装備してアタック!なんて展開もよく起こると思います。

 ここまで見てわかるように、このデッキはかなり《饗宴と飢餓の剣》を押していますが、その理由はこのデッキは土地がアンタップする事による恩恵をたくさん得る事ができるからです。受けられる恩恵の具体例を3つ紹介させてもらいます。

 ひとつ目はインスタントのカードが多いことによる恩恵です。構えながら動けるデッキなので、メインで動いてから土地を起こして構えるという動きは相手の行動を封殺する事ができます。

 ふたつ目は《ムーアランドの憑依地》の存在です。土地が起きる事によって1ターンで2回能力を起動する事も可能になります。攻撃が通ったら土地が起きるスタックで起動すればほぼ無料でトークンを得る事になる動きはかなり強いです。

 みっつ目として、これらの恩恵を意識すると、《饗宴と飢餓の剣》だけでもこちらが動かずにプレッシャーをかける事ができる、という点をあげておきたいです。場に《饗宴と飢餓の剣》があるだけで相手はこちらのマナが立っている時に行動を起こすのにかなりのリスクが発生してしまいます。こちらはインスタントでクリーチャーを出す術が多くあるので、実際かなり《饗宴と飢餓の剣》を装備して殴る事ができると思います。これは土地が起きるということとは直接関係無いのですが、結局土地が起きるというプレッシャーを相手が感じているという裏返しでもあります。


 メインでは赤単やクリーチャーの質の良いデッキに対して少し辛いのでサイドボードには《審判の日》《機を見た援軍》、更には《ギデオン・ジュラ》まで採用しています。メインボードはカウンターが多めでそういったデッキに対して少し辛い部分があるので、サイド後に勝てるようにしています。

 《雲散霧消》《墓場の浄化》は今後フラッシュバックや《堀葬の儀式》を使った墓地利用のコントロール等が流行りそうな傾向にあるのでそれを対策しています。《雲散霧消》は単純に重いカードに対して強いですしね。



3.オレのメタゲームはスタンダードだったのか?

 さて、ここまではデッキの紹介をさせていただきました。これはコントロールが多そうだな、と考えた結果のデッキ構成であり、現在のメタとは狙った所が少し違っています。なので、現在このデッキがメタ上でどのような立ち位置にいるかをハッキリさせましょう。




 happymtg.comの新機能に皆さんお気が付きでしょうか?トップページに表示されている『Deck Hit Chart』に注目してみてください。これは、直近2週間でhappymtg.comのデッキサーチに登録されたアーキタイプの数をランキングにしたもので、現状を把握するのに今後役立つツールとして使えるのではないかと思います。

 上位に来ているアーキタイプに当初予想していなかった『ケッシグウルフランプ』『赤単』『緑白ビートダウン』が揃い踏みしています。これらが流行る事を僕は全然予測できていなかったのは不甲斐ないです。

 『赤単』にいたっては冒頭でカードパワーを下げている、と言いましたが《流城の貴族》が1マナ域を埋め、《硫黄の流弾》が火力の隙間を埋めたのが大きかったようですね。コントロールに強い《燃え上がる憤怒の祭殿》がそのまま強かったのもあると思います。

 《情け知らずのガラク》はビートダウンには格闘のモードも狼を出すモードもどっちも機能し、コントロールには狼を出しつつ、隙を見て裏返ってからのクリーチャーサーチモードも結構鬼畜なので僕の思った以上に強いカードでした。そのため緑系のデッキが予想以上に多くなるという結果になりましたね。

『ケッシグウルフランプ』は単純にカードパワーが高いデッキなのでともかくとして、ビートダウンも相当数いるとなると、デッキ構成もそれなりに変えないといけないと思います。

 《不可視の忍び寄り》はコントロールには強いカードなのですが、ビートダウンにはいまいちなカードです。何故なら《不可視の忍び寄り》は除去耐性こそ素晴らしいものを持っているのですが、クロックとしては少し物足りなく、ビートダウンと対峙すると守りにも向かないので基本的に仕事をするのが難しいからです。

  なので、《不可視の忍び寄り》を4枚抜いて、《ギデオン・ジュラ》2枚と《審判の日》2枚をメインボードに移すと良いと思います。

 《ギデオン・ジュラ》は『緑白ビートダウン』『赤単』等のビートダウン全般に強いカードであり、《審判の日》との相性も抜群です。ビートダウン相手にはダメージレースを壊してくれるし、時には1枚で場を制圧すらしてくれます。

 《審判の日》はこちらもビートダウンに強いカードです。その上『ケッシグウルフランプ』にも結構刺さります。というのも、緑単タッチ赤の型だと《ダングローブの長老》に対して《饗宴と飢餓の剣》でしか対抗できないのが不安材料になってしまうためです。盤面さえリセットしてしまえばこちらはいくらでもトークンを出してリカバリーする事が可能ですからね。

 サイドボードの抜けた4枚は『赤単』や『ケッシグウルフコントロール』に効く《瞬間凍結》を採用すると良いと思います。

 今回の変更は、あくまで『Deckhit Chart』のメタを参考にした変更になりますので、今後このデッキのように《審判の日》がメインから多く積まれてビートダウンが厳しい状況にななればまたメタが動くと思いますので、その時はまたそれに合わせた改良をすると良いと思います。デッキパワーは高いので、上手く環境に合わせる事ができるなら長く使えるアーキタイプだと思います。

 さて、今回のデッキはいかがだったでしょうか?僕にしては丸いデッキだなーと思った方もいるかもしれませんね。そういった方には申し訳ないので、次回は凄く面白いデッキを紹介したいと思います。それではまた次回の記事でお会いしましょう!