◆総合勝率
順位 | 名前 | 総合成績 | 勝率 |
1位 | 高橋 優太 | 14勝7敗 | 67% |
2位 | 山本 賢太郎 | 15勝12敗 | 56% |
2位 | 齋藤 友晴 | 15勝12敗 | 56% |
4位 | 市川 ユウキ | 16勝14敗 | 53% |
5位 | 金川 俊哉 | 14勝13敗 | 52% |
6位 | 覚前 輝也 | 15勝15敗 | 50% |
6位 | 大礒 正嗣 | 6勝6敗 | 50% |
8位 | 井川 良彦 | 14勝16敗 | 47% |
9位 | 八十岡 翔太 | 15勝18敗 | 45% |
10位 | 伊藤 敦 | 1勝2敗 | 33% |
11位 | 津村 健志 | 7勝17敗 | 29% |
◆3-0アーキタイプまとめ
ドラフト | プレイヤー | アーキタイプ |
【1stドラフト】 | 山本 賢太郎 | 青赤 |
【2ndドラフト】 | 市川 ユウキ | 青黒 |
【3rdドラフト】 | 井川 良彦 | 緑白多色 |
【4thドラフト】 | 高橋 優太 | 赤黒 |
【5thドラフト】 | 齋藤 友晴 | 青白 |
【6thドラフト】 | 覚前 輝也 | 赤緑 |
【7thドラフト】 | 覚前 輝也 | 青赤 |
【8thドラフト】 | 市川 ユウキ | 緑黒 |
【9thドラフト】 | 山本 賢太郎 | 緑黒 |
【10thドラフト】 | 金川 俊哉 | 青黒 |
【11thドラフト】 | 覚前 輝也 | 白黒 |
◆2-0アーキタイプまとめ
青赤:5回
青黒:4回
緑黒:4回
白黒:2回
赤緑:2回
緑白ベース多色:1回
緑白タッチ赤黒同盟者:1回
青白:1回
青緑:1回
赤黒:1回
赤白:0回
青黒:4回
緑黒:4回
白黒:2回
赤緑:2回
緑白ベース多色:1回
緑白タッチ赤黒同盟者:1回
青白:1回
青緑:1回
赤黒:1回
赤白:0回
◆ 「環境の速度」
~地上ビートダウンのいない環境、『戦乱のゼンディカー』~
『戦乱のゼンディカー』ドラフトとは、一体どのような環境なのか?
おそらく多くの人にとっては、カードリストを見ただけでは環境の速度や特徴について、なかなか想像しづらかったに違いない。
だが蓋を開けてみれば、そこには久しぶりに2マナ域がとても弱いリミテッド環境が待ち受けていたのだ。
何せ今回のエルドラージ・末裔トークンは、『エルドラージ覚醒』のときのエルドラージ・落とし子トークンとは違ってサイズが1/1なのである。そのエルドラージトークンが通常のスペックのクリーチャーのおまけみたいにくっついてきて地上が埋まるものだから、2マナから始まる地上ビートダウンというのはほとんど成立しない。
そして地上ビートダウンが成立しないというのは、ここ最近の『タルキール龍紀伝』『マジック・オリジン』という環境と比べてあまりにも異質であったため、この「晴れるーむ合宿」に参加するプロたちも初めのうちはかなり戸惑い、ちぐはぐなデッキを組みがちであった。
それでもやがて環境の基本速度について、「どうやらこの環境はミッドレンジを組んだ方が良さそうだ」という共通認識が段々とできあがってきた、そのとき。
環境の本当の敵が姿を現してきたのである。
◆ 「環境の性質」
~強烈なアーキタイプ環境~
環境の本当の敵。それは【グランプリ・千葉2015】のフォーマットでもあった『モダンマスターズ 2015年版』ドラフトと同じ、強烈なアーキタイプ環境であるという点に尽きる。
そもそも「アーキタイプ環境」とは、たとえば自分が黒をやっていても取れない黒いカードがあるといったように、5色の概念を超えた「アーキタイプ」という枠組みがそれぞれの色が持っている領分を超えて重なり合っている環境のことだ。
具体的には、《骨の粉砕》のようなカードは緑黒エルドラージでは初手級の働きをするが、白黒ライフゲインや赤黒「欠色」、青黒「嚥下」ではそうでもない、といった具合に、同じ黒いカードでもアーキタイプによって点数が全く異なってきてしまう、そんなカードが多い環境を指す。
そして「アーキタイプ環境」では何が起こるのかというと、ピックの段階で極めて繊細なカード評価の見極めが必要となってくる。つまり、「正しいピック」を行うためにはかなりの経験値が必要となるのだ。
何せまず成立しうるアーキタイプに何があるのかという点についての知識が不可欠だし、それを知っていても何がシグナルとなるのか、どんな呪文バランスが完成形なのか、サイドボードにはどんなカードが必要なのか……これらすべての情報は、経験則でしか補いえないからだ。
それ故に。この環境のピックの難しさは、最近の環境の中では群を抜いていると感じる。
「特定のアーキタイプに特化したカードをどのくらいの手順でピックし、またいつそれを放棄するのか」というバランス感覚の要求度合いが極めて高く、最適なポジション (最終的に自分の勝率が最も高いようにアーキタイプの住み分けが完了した際のそのアーキタイプ) に収まるためのピックの精度についてもまた同様だ。
ピックの段階でいくつものパラメータを同時に管理し、自分が最も利益が得られるであろうルートを、ピックごとにリアルタイムで書き換えながらデッキという名の終着点を目指す綱渡り。
『戦乱のゼンディカー』ドラフトのピックはトライアスロンを想起させるほどに苛酷で、そしてピックを失敗した者には容赦なく敗北が訪れるという意味で、限りなく残酷なものだったのだ。
◆ 現段階での色の評価
強豪揃いのメンバーにこれまでにないほど苛酷なドラフトという極限の状況となった今回の「晴れるーむ合宿」。そんな中、最高勝率を叩きだしたのは高橋だった。
その勝因はおそらく、黒のエキスパートを目指した点にあると思う。
【青の一強ぶり】に目を奪われがちだが、実は黒の勝率も同じくらい高い。そして高橋は2色目は違えどほぼ毎回のように黒をドラフトしていた。
環境の実質は青と黒の2トップであり、注目の集まった青ではなく黒を中心にピックしていたことが、高橋の高い勝率に結びついていたのだろう。
この点、赤白の低すぎる勝率とは対照的だ。
赤白は一度も2-0していないどころか3回も0-3しており、ほぼデッドカラーといって差し支えない。
この事実と合わせれば、『戦乱のゼンディカー』ドラフトで青も黒もやらないことには大きなリスクが伴うという命題は、現時点ではかなりの確度で真実に近いということになりそうだ。
◆ そしてプロツアー『戦乱のゼンディカー』へ
だがこの程度の結論には海外勢も辿りついていることだろう。肝心なのは環境の定義ではない。定義された環境に従って考える人々の思考の一歩先へ、どうやってたどり着くかなのだ。
【青黒ジャッカル】のような抜け道がどこかにないとも限らない。
プロツアー『戦乱のゼンディカー』初日と2日目の開始早々の3回戦、ドラフトラウンドで、「晴れるーむ合宿」に参加したプロプレイヤーたちはどのようなピックを見せてくれるのか。
彼らがトップ8に残り、そして優勝することを祈りつつ、今回は筆をおかせていただく。
それでは、1月の『ゲートウォッチの誓い』でまた会おう!