八十岡翔太のプロツアー『戦乱のゼンディカー』レポート (前編)

八十岡 翔太


こんにちは八十岡です。

先日行われた【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】は決勝戦が日本人対決という、とてもすばらしい結果で終わりましたね。

日本人がプロツアーで優勝するのは【2009年以来】でとても喜ばしいことです。ただ、それが自分ではなかったことはとても悔しいですね。

今回はその【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】のトーナメントレポートをお送りしたいと思います。



プロツアー初日: 早朝

前日に早めに寝たためか、朝2時といつもより早く目が覚めるところからスタート。何のためにこんなに早く起きたかといえば、もちろん今日のデッキを作るために他ならない。

ここ2週間で色々なデッキを回して自分がたどり着いた結論は《シルムガルの嘲笑》《龍王シルムガル》を使ったデッキを使おうということでしたので、それらを使ったデッキを色々考えました。

どんなデッキを考えたのかを話す前にまず、なぜその結論になったのかを簡単に説明したいと思います。


カマキリの乗り手先頭に立つもの、アナフェンザ


今のスタンダードは《カマキリの乗り手》《先頭に立つもの、アナフェンザ》3マナのクリーチャーがとても強いのに比べ、2マナクリーチャーや2マナのインスタント除去が弱いため、後手を引いたときにそれらをきちんと対処できる(またはそれを苦にしない)デッキというのが今のスタンダードを勝つ上で一番重要なことだと思いました。

その上で出した結論が1マナ、2マナのアクションが強いアタルカレッドを使うか2マナで何でも返せる《シルムガルの嘲笑》を使うかでした。


ティムールの激闘強大化シルムガルの嘲笑龍王シルムガル


アタルカレッドは環境で一番安定して1ターン目と2ターン目に動けるデッキで、相手が3マナの脅威を出してくるまでにかなり有利な場を作ることができます。

そのうえ《強大化》《ティムールの激闘》の一撃必殺もあるので不用意なタップアウトを咎めることもできます。


ただ【BMO vol.5】でこのデッキを使い、その後も調整をしてわかったことは、メインは最強だがサイド後は特に強くないなということでした。

なぜかというとサイド後は《正義のうねり》《究極の価格》、そして《アラシンの僧侶》といった2マナの強いアクションが増えてしまい相手の軽いカードは弱いといった前提条件が崩れてしまうからです。


正義のうねり究極の価格アラシンの僧侶


そうなるとデッキとしての優位が薄れ、サイド後はどのマッチアップもだいたい勝率が3割から4割ぐらいで、わざわざこのデッキを選ぶ理由もありません。画期的なサイドプランが見つかりそれを改善できたら使ってもいいと思ってたのですが、特に見つからなかったのでこのデッキを使う選択肢はなくなりました。



ということで《シルムガルの嘲笑》を使ったデッキを考えることになります。《龍王シルムガル》に関してはただの趣味で使いたかっただけとかではなく、今回のプロツアーは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》がたくさん使われると思ったからです。相手が忠誠値4で置いといた《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を奪って「-4」能力を使うのはとても気持ちがいいです。






最初に考えたのはフェッチランドとバトルランドを生かした青ベースの5色ドラゴン《龍王オジュタイ》《龍王ドロモカ》《龍王シルムガル》《龍王アタルカ》が入った龍王デッキでした。


龍王オジュタイ龍王ドロモカ龍王シルムガル龍王アタルカ


が、もちろんそんなデッキがまともに回るわけなく、一瞬で解体です。






次に作ったのが《龍王オジュタイ》《龍王シルムガル》《龍王ドロモカ》が入った青白黒緑で『戦乱のゼンディカー』のミシュラ土地2種類を搭載したデッキです。4色にしただけあってマナベースはまともになりましたが、


乱脈な気孔伐採地の滝


そもそもこれだけドラゴン入ってるデッキでミシュラを起動することがあるわけもなく、全体的にもっさりしていて強さを感じなかったのでこれも少し回して解体。






ドラゴンは重くて強いカードなので、序盤をきちんと捌ける構成にするのがいいだろうと思い、次に作ったのが青赤黒緑の4色で、《焦熱の衝動》《コラガンの命令》で序盤を耐えて6ターン目からドラゴンをたたきつけるデッキです。


焦熱の衝動コラガンの命令


コンセプトやデッキの動き自体はそこまで悪くはなかったのですが、白を抜いてしまった関係で青白フェッチが取れず、2ターン目に《シルムガルの嘲笑》が撃てないことが度々あり、長丁場を戦うにはデッキが不安定すぎるので解体。






このあたりですでに朝5時を回っており、サイドを考える時間とかを考えると流石にそろそろデッキを決めないと間に合わない時間になってきました。


その結果選んだデッキがエスパードラゴンでした。そもそも2ターン目に(青)(青)が必要なデッキで4色とか5色とか回るわけないんですよ、夢を追い求めても仕方がありません。現実を見ましょう。


最終的に完成したデッキはこちらになります。



八十岡 翔太「エスパードラゴン」
プロツアー『戦乱のゼンディカー』

5 《島》
2 《沼》
1 《平地》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
1 《吹きさらしの荒野》
3 《窪み渓谷》
2 《大草原の川》
1 《精霊龍の安息地》
3 《乱脈な気孔》

-土地(26)-

4 《ヴリンの神童、ジェイス》
4 《龍王オジュタイ》
2 《龍王シルムガル》

-クリーチャー(10)-
2 《意思の激突》
4 《シルムガルの嘲笑》
1 《軽蔑的な一撃》
2 《忌呪の発動》
2 《破滅の道》
1 《風への散乱》
2 《完全なる終わり》
2 《命運の核心》
4 《時を越えた探索》
3 《絹包み》
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》

-呪文(24)-
3 《強迫》
3 《アラシンの僧侶》
2 《僧院の導師》
2 《正義のうねり》
1 《黄金牙、タシグル》
1 《軽蔑的な一撃》
1 《究極の価格》
1 《苦い真理》
1 《衰滅》

-サイドボード(15)-
hareruya



かなり普通のエスパードラゴンだと思いますが、気持ち2マナのアクションを増やして3マナ、4マナのアクションを減らしています。このデッキのキーは《龍王オジュタイ》をいかに安全な場で出せるかなので、4-5ターン目に2アクションをとりやすくしました。


絹包み軽蔑的な一撃龍王オジュタイ


サイドボードは最後までアタルカレッド相手にどこまで取るかすごい悩みました。アタルカレッドを完全に切って他への勝率を上げるのもかなりアリだとは思いましたが、現状でもアタルカレッド以外には概ね有利がつくと思ったのかなり多めに対策カードを取りました。

デッキが完成したときにはすでに8時になっており、急いで支度をして会場に。



■ 1stドラフト

今のプロツアーはドラフト3回戦から始まりその後構築5回戦を戦い、4勝4敗以上が2日目に進出できます。とはいえ4-4で2日目にいってもトップ8の目はないので、最低でも5-3、できれば6-2で2日目に進出したいです。

そのためにはこのドラフトは2-1したいところです。この環境のドラフトはかなり難しく、何も考えずぼんやりと強そうなカードをとっていると弱いデッキになりやすく、きちんと最終形を意識してピックしないといけません。


今回僕がやりたいと思っているアーキタイプは「緑黒エルドラージ」「白黒ドレイン」「青赤欠色」「青白飛行」「青黒コントロール」で、初手に引いたカードでこのどれかに進もうと考えていました。


ドラーナの使者カラストリアの癒し手


そして運命の1パック目。初手に取ったのは《ドラーナの使者》。白黒をはじめるには一番いいカードです。それから《カラストリアの癒し手》が3枚取れたりして1パック目終了。


どうやら卓に白黒はいなさそうです。


2パック目、3パック目では2枚目の《ドラーナの使者》と4枚目の《カラストリアの癒し手》《物静かな使用人》などをピックし最終的にできたデッキがこちら。



八十岡 翔太「白黒ライフゲイン」
プロツアー『戦乱のゼンディカー』 1stドラフト

9 《沼》
7 《平地》
1 《乱脈な気孔》

-土地(17)-

2 《捕らわれの宿主》
1 《ズーラポートの殺し屋》
1 《物静かな使用人》
4 《カラストリアの癒し手》
2 《ニルカーナの暗殺者》
2 《マキンディの巡回兵》
2 《ドラーナの使者》
1 《グリフィンの急使》
1 《音無く飛ぶもの》
1 《カラストリアの夜警》
1 《果敢な血王》

-クリーチャー(18)-
1 《従順な復活》
1 《大物潰し》
1 《悪魔の掌握》
1 《乱動の報復》
1 《停滞の罠》

-呪文(5)-
hareruya









多少カードが足りていないものの、そこそこ強そうなデッキに。この時点では2-1はできるだろうと思っていましたが、結果はなんと……




ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 1青白覚醒 ××
Round 2青赤 〇××
Round 3赤緑上陸 〇〇




負け負け勝ちでなんとか1-2!


2R目では1本目《カラストリアの癒し手》×2、《ドラーナの使者》×2、《物静かな使用人》ブン回りをして、対戦相手に「なんで1回戦負けたの?」と聞かれ「2本とも土地しか引かなくてー」とか話してたら、そこから2回連続事故で負けて相手に謝られたりとかなり辛いスタートでしたが、3回戦はなんとか勝てて一安心。

気持ちを切り替えてスタンダードラウンドへ。



■ スタンダード

ドラフトを1-2してしまった以上、このスタンダードでは最低でも3-2、できれば4-1以上したいところです。


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 4緑白大変異 〇〇
Round 5エスパー 〇〇
Round 6エスパー ×〇△
Round 75色《白日の下に》 〇〇
Round 8エスパー 〇×〇


6R目の1本目をかなり時間をかけて負けてしまい、3本目始まった時点で残り5分とかで終わるわけもなく引き分けになってしまいましたが、そのおかげでそこからコントロールと2回当たれて4-0-1でスタンダードラウンドを乗り切りました。

引き分けてしまったときは負けとたいして変わらないなーと思っていたのですが、よくよく考えたら引き分けラインに入ってしまえばコントロールと当たりやすくなるので、むしろ引き分けてよかったのかなと思いました。



何はともあれドラフトラウンドと合わせて5-2-1で初日終了です。明日7-1すればTOP8に残れるので、首の皮一枚で繋がったといったところでしょうか。

朝早く起きただけあって眠かったので、ホテルの下のbarで軽く晩飯を食べてその日は早く寝ることにしました。








【後編】に続く


ヤソ



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