行弘賢と学ぶドラフトセオリー vol.6 ~アーキタイプドラフトを覚えよう~

行弘 賢

行弘 賢



 プロツアー『運命再編』も終わってオフシーズンとなり、ようやく家でゆっくりとMOでドラフトできます。そんなまったり中の僕ですが、今回も頑張ってドラフト講座やっていきますよ!


 今回のドラフトセオリーは、『アーキタイプドラフト』です!







■ 1. 『アーキタイプドラフト』とは?

 アーキタイプドラフトとは、簡単に言ってしまえば『特定の戦略に沿ったカードを中心にピックする手法』のことです。簡単に言われても分からん!と言う方のために、早速『運命再編・タルキール覇王譚』のドラフトの例を見ていきましょう。


 あなたは初手でなかなかのレアである《ティムールの戦巫師》を引くことができました。このパックはかなり強く、《実在への書き込み》《天上の待ち伏せ》のどちらかは1周してきそうな感じがします。


ティムールの戦巫師


 2手目では強コモンである《砂草原ののけ者》と強アンコながら色マナ拘束がきつい《雲変化》の2択になりましたが、1周してきそうな《天上の待ち伏せ》《実在への書き込み》と同じ色である《雲変化》を取ることにしました。


砂草原ののけ者雲変化


 3手目ではパックが弱く《実在への書き込み》を取り、4手目もアンコモン以上に目ぼしいカードがなく、《龍火浴びせ》《天上の待ち伏せ》の2択となります。


龍火浴びせ天上の待ち伏せ


 ここで、あなたは自分の取ったカードが「裏向き」の状態で場に出るカードばかりであることに気が付きます。幸運にも既に《ティムールの戦巫師》の能力がクリーチャーが表になった時に「格闘」する能力を持っているため、裏向きのクリーチャーの数は多くてもかまわない状態です。一般的にカードの点数は<龍火浴びせ>が上だとされていますが、デッキの都合を考えると<天上の待ち伏せ>の方が良いと判断して、ここは《天上の待ち伏せ》を取ります。


 その後8手目までピックし、1周してきた9手目の自分のパックには《天上の待ち伏せ》が残っており、《天上の待ち伏せ》をピックします。


 1パック目終了時点でのピックはこうなりました。





 青緑中心のピックをし、できる限り裏向きの状態で場に出るカードを取りました。その際に流した《砂草原ののけ者》《龍火浴びせ》は惜しいものの、1パック終了時点でのデッキのまとまりを考えれば、現時点では今回のピックは成功と言えると思います。


 2パック目以降は1パック目で《天上の待ち伏せ》が1周してきたことからも分かるように、青緑の人気が薄く、裏向きのクリーチャーの恩恵が得られる《秘密の計画》を遅い順目で2枚確保することができるなど、見事に『裏向きで出るクリーチャーを固め取る』アーキタイプドラフトは成功しました。以下が完成デッキです。



「ティムール変異・予示」

6 《島》
5 《森》
2 《山》
1 《開拓地の野営地》
2 《茨森の滝》
1 《岩だらけの高地》

-土地(17)-

1 《龍の眼の学者》
1 《アイノクの先達》
1 《煙の語り部》
1 《氷羽のエイヴン》
1 《ティムールの軍馬》
1 《蓮道のジン》
1 《氷河の末裔》
1 《サグの射手》
1 《松歩き》
1 《氷河の忍び寄り》
1 《ティムールの戦巫師》
1 《雪角の乗り手》
1 《長毛ロクソドン》

-クリーチャー(13)-
1 《引き剥がし》
1 《実在への書き込み》
1 《挑発の咆哮》
1 《石弾の弾幕》
1 《弱者狩り》
2 《天上の待ち伏せ》
2 《秘密の計画》
1 《雲変化》

-呪文(10)-
hareruya







 見事に「変異」・「予示」のクリーチャーばかりのデッキになりました。デッキのクリーチャー換算のカードのほとんどが<秘密の計画>や<ティムールの戦巫師>との相性がバツグンで、まとまりのある良いデッキだと思います。


 それでは、なぜアーキタイプドラフトをすることで良いデッキとなったのでしょうか?普通の点数順にピックするよりも、まとまったデッキになったのはなぜなのでしょうか?

 今度はその疑問である『アーキタイプドラフトの仕組み』について解説していきます。





■ 2. 『アーキタイプドラフト』が成功する仕組み

 そもそもアーキタイプドラフトは最初に説明した通り、『特定の戦略に沿ったカードを中心にピックする手法』です。これを突き詰めると『特定の戦略でしか使えない汎用性の低いカードを上手く使うことで周りと差をつける』ということになります。


 例えば先ほどの《秘密の計画》ですが、これは裏向きのクリーチャーが多数デッキに存在しない限りは、何の役にも立たないエンチャントです。しかし逆に言えば、それらが多数存在する場合はデッキのキーパーツとなりえます。


秘密の計画


 《秘密の計画》を8人のドラフトで使用できる人は、『色の都合』・『アーキタイプ』どちらも合っている人だけになります。そんな人はそのアーキタイプを狙っている自分以外にはなかなか当て嵌まることはないですよね。

 こういう特殊な『嵌まれば強い』カードを、遅い順目でピックし使えるのが『アーキタイプドラフトの最大の旨味』と言えるでしょう。これが『特定の戦略でしか使えない汎用性の低いカードを上手く使うことで周りと差をつける』というアーキタイプドラフト成功の仕組みになります。

 他の例で言えば、


 ・数多くのトークン生成カード(<子馬乗り部隊>など)+全体強化カード(<ラッパの一吹き>など)


子馬乗り部隊ラッパの一吹き



 ・「呪禁」持ちのカード(<旋風の達人>など)+強化オーラ(<ジェスカイの呪印>など)


旋風の達人ジェスカイの呪印


 ……なども、専用のカード同士の組み合わせとしては破格の効果を得ることができる組み合わせですね。このように『汎用性の低いカードを組み合わせることでデッキの質を向上させる』ことができるなら、あなたはアーキタイプドラフトに成功したと言えるでしょう。


 さてここまではアーキタイプドラフトのいわば『メリット』をお伝えしてきましたが、次はアーキタイプドラフトの『落とし穴』について説明していきます。





■ 3. 『アーキタイプドラフト』の落とし穴

 アーキタイプドラフトには、メリットだけでなく、デメリットも存在します。特に気をつけなければいけない点は、次の2点です。



◎ 落とし穴その1: 早い順目で汎用性の低いカードを取ってしまう


 アーキタイプドラフトをある程度やっていると、お気に入りのアーキタイプができてきます。そして気が付けば、ドラフトの半分以上そのお気に入りのアーキタイプをドラフトしてしまったります。こういうケースの状態で陥りやすいのが、『早い順目で汎用性の低いアーキタイプに必要なカードを取ってしまう』ケースです。


 例えば初手の時点で《砂草原ののけ者》《雲変化》には、お互いの点数に大差はありません。どちらを取っても良いと思います。ただし《砂草原ののけ者》《天上の待ち伏せ》では、さすがに《砂草原ののけ者》に軍配があがります。先ほどの例の青緑ドラフトで3-0した経験からといって、こういった2択で同じようなデッキを目指したいがために<天上の待ち伏せ>を早い順目で取ってしまうのは間違いです。





 繰り返しになりますが、アーキタイプドラフトの最大の旨味は『遅い順目で取れる汎用性の低いカードを上手く使えること』です。これを忘れて最初から特定のアーキタイプに突き進むのは『決めうち』であり、なかばギャンブルのようなピックとなってしまいます。

 そういった『決めうち』が成功する環境もありますが、基本的にはそうしないように気をつけるべきだと思います。



◎ 落とし穴その2: アーキタイプが被ってしまう

 
 遅い順目で自分しか使えないカードが流れてくる……。そんな旨味がアーキタイプドラフトにはありますが、1周してくると思って流したカードがなぜかなくなってしまったりします。そんな時は『アーキタイプが被っている』と認識した方がいいです。


 特にアーキタイプ被りが起こりやすいのが、『人気のアーキタイプ』がその環境にある場合です。分かりやすく強いカードの組み合わせはそれだけでゲームに勝ててしまうので、しばしば卓内で競合してしまうことがあります。こういった『人気のアーキタイプ』のキーパーツはもはや『汎用性の低いカード』とは言えないので、多少カードパワーに開きがあっても優先的に確保してもかまいません。


 あまりプレイされないようなニッチなカードが1周してこなかった場合は、アーキタイプ被りに陥っている可能性があるので、素直に別の戦略に切り替えるのも一つの手ですね。

 以上2点がアーキタイプドラフトにおける注意点となります。

 それではここからはピック譜を見ながら実際にアーキタイプドラフトの手順をみていきましょう。





■ 4. 実践編 ~遅い順目で取れたカードを上手く使う~

 今回は実際の『運命再編・タルキール覇王譚』ドラフトのピックから見ていきましょう。



◎1-1




嵐の憤怒、コラガン

行弘のピック: 《嵐の憤怒、コラガン》


 まず初手は文句なしのレア《嵐の憤怒、コラガン》です。単体としても強いですが、横並びで一斉に攻撃するとより真価を発揮しやすいので、できるならばビートダウンを組みたいところです。

 2手目はレア抜けで、アンコモン以上が弱く《ゴブリンの踵裂き》を取ります。初手との噛み合いでは特に文句もありません。



◎1-3




風に削られた岩山

行弘のピック: 《風に削られた岩山》


 3手目は《風に削られた岩山》です。飛行クリーチャーである《アブザンの飛空隊長》でも良いのですが、《嵐の憤怒、コラガン》を取っているので、2パック目以降の《子馬乗り部隊》などのトークン系のカードを取って使いたいので、ここは土地を取ることにします。

 4手目は他に特に取るものもなく《砂爆破》



◎1-5




過酷な命の糧

行弘のピック: 《過酷な命の糧》


5手目は上家から白黒はやっていないというサインともとれる《過酷な命の糧》『横並びで殴るアーキタイプ』を目指している現状では、かなり嬉しいカードが取れました。



◎1-6




砂爆破

行弘のピック: 《砂爆破》


 6手目は《砂爆破》《頭巾被りの暗殺者》とも悩みますが、現状赤白ベースでデッキを組みたいのでここは白いカードを取ります。

 7手目は全体強化の《戦乱の閃光》、8手目はまたもや《風に削られた岩山》、そして9手目で<過酷な命の糧>が1周してきたところで今回の『横並びで殴るアーキタイプ』は卓内で自分だけだと確信します。

 現状クリーチャーがあまり取れておらず、明確な勝ち筋は《嵐の憤怒、コラガン》《過酷な命の糧》のみなので今後はクリーチャーを中心にピックしていきます。
 
 そして10手目で《戦線突破》をピックします。今後は軽いクリーチャーを多くピックし採用するつもりなので、それらを継続的にクロックとして運用できる<戦線突破>は『横並びのアーキタイプ』に噛み合ったキーカードとなりえます。


戦線突破


 11手目はデメリット持ちですが現状足りてない2マナ粋である《くすぶるイフリート》、12手目はカットで《突然の再利用》、13手目には《くすぶるイフリート》、14手目《精霊龍のるつぼ》、15手目《スゥルタイの頭蓋守り》と、1パック目終了時点では『スペル多め、クリーチャー少なめ』な構成になってしまったので、2パック目以降はクリーチャーを中心にピックしていきました。





 最終的にできたデッキは、《谷を駆ける者》4枚の超前のめりビートダウンとなりました。残念ながら《子馬乗り部隊》こそ取れなかったものの、『横並びで殴る』コンセプトを維持することができたため、結果的には今回のアーキタイプドラフトは成功と言えるでしょう。

 このドラフトは3-0することができ、しかも1パック目の遅い順目で取れた《過酷な命の糧》《戦線突破》が毎試合大活躍という内容で、これぞアーキタイプドラフトの醍醐味……という試合内容でした。(余談ですが《嵐の憤怒、コラガン》は1回も手札にきませんでした)


(このドラフトの全ピック譜は【こちら(raredraft)】)


 特に《戦線突破》《過酷な命の糧》と違いカードの点数もそこまで高いものではないので、今回のアーキタイプドラフト成功の立役者と言えますね。このように遅い順目で取れる、デッキに合ったカードを上手く使って、周りと差をつけていきましょう!





■ 5. 今回のまとめ

 『汎用性の低いカードを上手く使ったアーキタイプドラフトで、デッキを強くしよう!』


 『人気アーキタイプは被りやすいので気をつけよう!』


 『狙っていたカードが1周してこなかったら、そのアーキタイプは避けよう!』


  これからはぜひ、これらを意識してドラフトしてみてください。今までと違ったドラフトになると思います。

 今回の記事はここまでです。次回もまた僕の「ドラフトセオリー」を余すことなく伝えようと思います。それでは、また来月もドラフトの記事でお会いしましょう!