新しいカードに、新しい戦略。なにかと目新しいものは眩しく新鮮に映ります。
しかし、温故知新とはよく言ったもの。古いカードやアイデアにも、新鮮な戦略は眠っているのです。
今回は、The Last Sun予選1031で見かけた、古き良きアイデアを中核とした”ちょっと変わったデッキ”を紹介しましょう。
◆ 《からみつく鉄線》親和
遡ることJon Finkelの「<修繕>」、樽元気の「<からみつく鉄線>親和」と、《からみつく鉄線》とアーティファクト・デッキの相性の良さはこれまでの歴史が証明してきました。
そして、現在でもレガシーとヴィンテージの両フォーマットで活躍する「MUD」が《からみつく鉄線》の恩恵を最大限活用していることからも、《からみつく鉄線》の拘束力は未だ尚現役だと言えるでしょう。
3 《空僻地》 4 《大焼炉》 4 《教議会の座席》 1 《古えの居住地》 2 《古えの墳墓》 2 《ちらつき蛾の生息地》 -土地(16)- 4 《羽ばたき飛行機械》 3 《メムナイト》 4 《信号の邪魔者》 3 《大霊堂のスカージ》 3 《エーテル宣誓会の法学者》 2 《ファイレクシアの破棄者》 4 《エーテリウムの達人》 -クリーチャー(23)- | 4 《感電破》 1 《投げ飛ばし》 2 《一日のやり直し》 4 《オパールのモックス》 2 《バネ葉の太鼓》 4 《頭蓋囲い》 3 《からみつく鉄線》 1 《ボーラスの工作員、テゼレット》 -呪文(21)- | 3 《虚空の杯》 2 《血染めの月》 2 《精神染み》 1 《墓掘りの檻》 1 《真髄の針》 1 《大祖始の遺産》 1 《古えの遺恨》 1 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《ファイレクシアの破棄者》 1 《からみつく鉄線》 1 《ボーラスの工作員、テゼレット》 -サイドボード(15)- |
ここで紹介する「《からみつく鉄線》親和」は、古き良き《からみつく鉄線》デッキの系譜を受け継ぎながらも、これまでにはない《からみつく鉄線》の使い方を試みています。
まず、アーティファクト・デッキにおける《からみつく鉄線》の良さとはなんでしょうか?
それは”置物”と呼ばれるタップしても問題のないパーマネントがあることで、《からみつく鉄線》の誘発効果の効果を自分だけが無視できる環境を自然に用意できるところにあります。このデッキならば、《頭蓋囲い》や《羽ばたき飛行機械》がそれに当たるでしょう。相手は毎ターン土地を縛られてマナを生み出すことすらままなりませんが、こちらは悠々とパーマネントを追加で展開できるのです。
また、《からみつく鉄線》が拘束するのは相手のマナだけではありません。対戦相手のパーマネント全体に干渉するため、対戦相手が《頭蓋囲い》や《エーテリウムの達人》のために用意したブロッカーたちも寝かしつけます。古き《からみつく鉄線》デッキの多くは序盤のマナ拘束に力を注いできましたが、この「《からみつく鉄線》親和」はより攻撃的にふるまうことで、中盤を過ぎても《からみつく鉄線》による拘束力の恩恵を受けられるのです。
そして、極め付けが、この《一日のやり直し》。
この記事シリーズ内でも幾度となく取りあげた、夢のあるカードが、このデッキにも活躍の場所を見つけたようです。手札の消耗が激しい「ダンプ系のデッキ」と相性がいい《一日のやり直し》は、「親和」のような高速でパーマネントを展開するデッキにもぴたりと嵌まります。
しかし、《一日のやり直し》には重大なリスクがあることも忘れてはいけません。それは、こちらのターンが終了してしまうため、対戦相手から引き直した大量のカードを使えることです。そのリスクを軽減させるために、多くの《一日のやり直し》デッキは、《霊気の薬瓶》を採用したりと工夫を欠かしませんでした。
そして、「《からみつく鉄線》親和」は、《からみつく鉄線》による拘束力を、《一日のやり直し》後のリスクを減らす工夫として用意しています。
こちらのターンが終了しても、相手には引き直した大量のカードを使うマナが《からみつく鉄線》によって残らなければ問題ない、という作戦です。おまけに引き直した7枚に《からみつく鉄線》があれば、対戦相手は引き直したカードを何一つ使うことなく拘束されたままゲームを終えることもあるでしょう。
古き《からみつく鉄線》のアイデアにはじまり、現代の新カードとの見事な組み合わせには、ほうと感心させられます。《からみつく鉄線》が好きな方、「親和」というデッキが好きな方。どちらにもお勧めしたい面白いデッキです。