By Atsushi Ito
8月に【八十岡 翔太】、9月に【中島 主税/井川 良彦/金川 俊哉】の加入をお伝えしたばかりの【Hareruya Pros】に、またまたビッグニュースが舞い込んできた。
様々な国産カードゲームでの活躍を経て、2014年9月の『タルキール覇王譚』発売からマジックに本格参入。2015年1月の【グランプリ・静岡2015】では11位入賞、そして半年後の2015年4月にはレガシーの【グランプリ・京都2015】でトップ4入賞と、新世代のマジックプレイヤーの中で今最も注目されている男。
原根 健太(愛知)。
あの”J-SPEED”が、このたび【Hareruya Pros】に加入することとなったのだ。
極めてストイックな姿勢でステップアップを追い求め続けてきた原根が、これからは晴れる屋のスポンサーを受けた「プロ」として、マジックで世界に挑戦することを決めた。
その決断の裏側には、一体何があるのか?
【Hareruya Pros】加入の理由と、原根がこれから目指すものについて、インタビューを試みた。
■ 今よりもっと上のレベルに成長するために
--「原根さんはどうして【Hareruya Pros】に加入することにしたんでしょうか?」
原根 「僕の場合、マジックの地力を付けたかったからというのが一番大きいですね」
--「地力というと、具体的にはどういった要素を指すのでしょうか?」
原根 「デッキ構築の手法とか、マリガン判断やサイドボーディングなど色々ですね。構築やリミテッドといった環境を超えて通底する、マジックの基礎のようなもの全般を指しています」
--「そのマジックの基礎が、今の原根さんには足りていないと」
原根 「そうですね。何せまともな練習経験の大半は【グランプリ・京都2015】のためのレガシーの練習でしたから……マジックオンラインはやっていたんですが最近までスタンダードの8人構築にすら出たことがなかったんですよ。それどころか冷静に考えてみるとFNMにも出たことがない、プレリリースに出たのも『マジック・オリジン』が初めてという有様で、強くなるために必要な過程を色々とすっ飛ばしてきてしまったのかな、と思うようになりました」
--「齋藤 (友晴) さんから【Hareruya Pros】加入についてのお誘いを受けたときは、どういう風に思いましたか?」
原根 「すごいチャンスがいただけたな、と思いました。ちょうど自分のプレイする環境を不安に思っていたところでしたので……練習方法といえばマジックオンラインでひたすら一人で練習を繰り返すばかりで、『どこかで行き詰まるだろうな』と感じはじめていたところだったんです」
--「え、そうなんですか?【グランプリ・静岡2015】、【グランプリ・京都2015】と順調に結果を残されているので、何か良い練習方法を採用されているのかな、と思っていました」
原根 「いえ、練習でも最初のうちはひたすら負け続けてます。それでも自分の強みとして学習能力や吸収の早さには自信があるので最終的には段々と勝てるようにはなるんですが、ただそれだと時間が十分あるときしか勝てないんですよね。それもあって『今よりも上のレベルに成長するためには、外とのつながりを作らないと危ういな』と思ってはいたんですが、なかなかきっかけがつかめなくて迷子になりかけていたところだったので、お話をいただけて非常にありがたかったです」
--「原根さんは【Hareruya Pros】に入り、マジックの基礎を身につけることで、より成長できると考えているわけですね」
原根 「はい。やはり自分より強い人からアドバイスがもらえる環境というのはストレートに成長につながると思います。僕の現状としてはマジックの基本がとにかく足りてなくて、何をどうしたら上手くなるのかが掴めないような状態なので、そういった壁に当たってしまっている状況を、【Hareruya Pros】に加入して僕よりも上手いプレイヤーに教えを請うことで打開できるのではないかと考えました」
■ プロツアー『マジック・オリジン』の経験から得たもの
--「原根さんが『自分にはマジックの基礎がまだ足りない』と感じたきっかけは、やはり【プロツアー『マジック・オリジン』】での経験が大きかったのでしょうか?」
原根 「確かにそれはありますね。プロツアーではとにかくプレイヤーの層の厚さを感じました。僕は初日のドラフトラウンドで2-1したものの、スタンダードラウンドでは0-4してしまって、『この会場の中で自分が最弱だな』と真剣に思いましたね」
--「初めてのプロツアー参加ということで、実際に世界大会に参加してみた感想はどうでしたか?」
原根 「それはもう、本当に楽しかったです。僕は緊張感のあるフィールドでゲームをするのが大好きなんですが、今まで経験した中でも間違いなく最高峰の舞台でした。プロツアーは昔から憧れの大会だったので、その点はとても嬉しかったです」
--「原根さんは昔からマジックをされていたんですか?」
原根 「中学生くらいのときに少しだけやっていました。周りがやめていってしまったので僕も一旦やめざるをえなかったんですけど、当時からマジックの世界観は大好きでしたし、『デュエリスト・ジャパン』で世界大会の記事を読んでわくわくしたりしていました。昔から世界規模のトーナメントシーンというものに憧れを持っていたんですよね。それもあって、プロツアーでは雑誌に登場していたような海外のプレイヤーたちを実際にこの目で見られて感動しました。負けたあとも自分のどこがダメだったかを反省しつつ、勉強のつもりでずっと彼らの試合を見ていました」
--「どのプレイヤーに会えたことが一番嬉しかったですか?」
原根 「やっぱりJon Finkelですね。僕の考え方の起源になっているんですが、中学生のときに雑誌で読んだ『プレイに上手いも下手もなく、あるのはたった1つの正解だけ』という言葉は、今でも強烈に頭に焼き付いています。その言葉を読んで以来、僕はプレイの精度というものに厳しくなって、『絶対もっといいプレイがあるはず』とベストなプレイを追求するようになりました」
--「どんなに良いプレイをしても、相手のトップデッキなどで負けてしまうこともあるかと思いますが……」
原根 「そういうときに『運が悪かった』って言うのは簡単ですが、僕は実力が全部だと思っていて、負けたのは常に自分の実力のせいだと思うようにしています。それにプロツアーに参加している人たちを見ていたら、とてもじゃないですけど『運が悪くて負けた』なんて言えないくらい、今の自分の実力と差があるのを感じました」
--「どういった点で差を感じましたか?」
原根 「たとえば僕はコントロールがすごく好きだったんですけど、プロツアーの優勝は赤単だったじゃないですか。それもあって、デッキ選択において好みを優先しすぎたりしないように、アグロデッキも平等に選択肢として検討できないとダメだなと思いました。あと構築ラウンドでAlexander Hayneと当たったんですけど、彼も全然そんなアグロなデッキを使うイメージなかったのに、《アーティファクトの魂込め》デッキを使っていたんですよ。それを見て、『プロツアーではみんなベストであろうとしているんだな』ということを実感して、意識がすごく変わりましたね」
■ 3年目にレベルプロになるために
--「これからの原根さんの活動としては、どういったことをしていくつもりでしょうか?」
原根 「まずは再びプロツアーに出場するため、プロツアーの権利が得られる大会へのアプローチを増やしていくつもりです。具体的には、国内だけでなくアジア圏のグランプリへの出場機会を増やしていこうと思います。手始めに友人たちと【グランプリ・北京2015】に出場するつもりです (編注: 原根たちのチームはプロツアーの権利を獲得できるトップ4には残れなかったものの、賞金圏内の16位入賞となった)。それから、これまでは生活時間帯的に厳しくてマジックオンラインのPTQには出ていなかったんですが、覚前 (輝也) プロに『MOPTQには絶対出た方がいいよ!』と出場を強く勧められたので、そういうところも含めて全力で取り組める環境を作っていきたいですね」
--「原根さんといえば非常に読み応えのある記事 (参考: GP京都レポート【前編】/【後編】、【GP北京レポート】) を執筆することでも有名ですが、【Hareruya Pros】に加入したということは、このサイトで原根さんのブログやコラムが読めるようになるということでしょうか?」
原根 「そうですね、まだちょっと自信がない部分があるのでプロとして記事を執筆することに若干の躊躇いはありますが、色々な人に僕の考えやデッキを見てもらって意見をもらえたら嬉しいし、自分のレベルアップにもつながると思うので、ブログは更新していく予定です」
--「【晴れるーむ合宿】にも参加されますか?」
原根 「もちろん練習とかにも積極的に参加したいですね。むしろ合宿でなくても集まる機会があればどこでも行きたいです。【Hareruya Pros】に惹かれた部分として、『チームで調整していく』『日本最強のチームを作る』という理念が掲げられていたというのがあるので、僕自身も【Hareruya Pros】としての活動を通じて基礎マジック力の向上という自分の目標を達成していくつもりではありますが、僕の方からもチームのために何か協力できることがあれば、ぜひ協力させていただきたいと思います」
--「原根さんから見て【Hareruya Pros】のプレイヤーたちの印象はどうですか?」
原根 「八十岡 (翔太) さん、高橋 (優太) さん、井川 (良彦) さん、津村 (健志) さんとはそれぞれ対戦したことがあるんですが、なかなかそのレベルの人とやれる機会があまりないので、実際に打ち負かされるなどしてやっぱり実力者たちの集団だなと思いました。それもあって【Hareruya Pros】の方々からは今の自分に足りないものを吸収できるのではないかと考えています。彼らはレベルプロとして継続的にプロツアーに参加してそこで勝つことを目標としているので、自分よりは確実に上のレベルの集団ではありますが、だからこそそんな中で対等以上に戦えるようになることを目指すことで、上達するための道筋が見えてくるのではないかと思います」
--「最後に、今後の目標を聞かせてください」
原根 「実はマジックを再開するときに決めていたことがあって、『3年でレベルプロになろう』という目標を設定したんです。1年目は地力をつけるシーズンで、2年目のどこかでグランプリトップ8に入ってプロツアーに出場し、3年目でレベルプロを見ていけたら、という風に考えていました。実際には2014年の9月に再開して、たまたま1年目で2年目の目標を達成できたけれども、逆に1年目の目標だった地力、マジックの基礎についてはまだまだ不十分だなと感じられたので、2年目の途中くらいまで場数を踏んで経験や知識を養いたいと思っています」
--「すごくしっかりしたヴィジョンをお持ちなんですね」
原根 「適切な目標を決めた上で、それに向けて努力してその達成を楽しむというタイプの人間なので、目標設定はしっかりやるようにしています。勝負は3年目、2016-2017シーズンですね」
--「ありがとうございました」
新たなるメンバーとして超大型新人を迎え、【Hareruya Pros】の成長が止まらない。
日本のプロコミュニティのさらなる発展を目指す【Hareruya Pros】と、これからプロプレイヤーとして世界と戦う原根 健太のことを、ぜひこれからも応援よろしくお願いします!
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