あなたの隣のプレインズウォーカー ~第4回 脳筋(マッスルヘッド)のガラク~

若月 繭子

若月 繭子

 こんにちは、若月です。
 リリアナは……その、ごめんなさい。新天地イニストラードで大活躍中の彼女ですが、背景ストーリーの続きが明かされておりません。情報が増えるまでしばらくお待ち頂ければと思います。
 その代わり今回はイニストラードにおけるリリアナの前日談的な意味も込めまして、ローウィンに登場した「オリジナル5」の中でも最強とも言われ、長きに渡って使われた、そしてこれからも使われるであろう緑のプレインズウォーカー、ガラクについてのお話です。


 ところで、過去3回の記事では主にプレインズウォーカー達を主人公とした小説(以下、PWノベル)を元にして色々と書きましたが、残念なことにガラクが登場しているPWノベルは発売されておりません。リリアナが主人公のPWノベル「Curse of the Chain Veil」には確実に登場しているようなのですが、この小説は元々2010年2月に発売される予定だったのが無期限延期となっております(延期理由は不明です)。タイトルからして明らかにイニストラード、今回のリリアナに関わってきていると思われますが、2011年11月現在正式な発売アナウンスはまだありません。

 その代わりにガラクが頻繁に登場しているのがプレインズウォーカー・コミック(以下、PWコミック)です。これは公式ウェブサイトに時々掲載されるウェブコミックであり、様々なプレインズウォーカー達にスポットを当てた物語が描かれています(一覧は【こちら】)。内容はプレインズウォーカー達の過去、各エキスパンションのストーリーの前日談が主です。色々な意味で秀逸なエピソードの宝庫であるため背景世界ファンには人気のコンテンツで、日本語訳されているものと未訳のものがあります。今回は主にこのPWコミックを元にお話したいと思います。



1. ガラクの人物像



《ガラクの大軍》の左端にガラク本人が混じっているのに気付いてました?



 ガラク本人のカードには見ただけでわかる「緑らしい」「わかりやすい」強さがあるように、ガラクは色々な意味で実に「緑らしい」人物です。戦士でありドルイドでもある彼は、野生のままに生きることを哲学とし、強大な獲物を仕留めようと様々な次元の森を渡り歩いています。自然に対しては心を開きますが文明を信用せず、人間に対しては無愛想で短気。またそのような自分を理解しない「文明的な」相手からは怪物のように思われていることも自覚しています。初登場時から続く半裸の装いも、文明を嫌う彼らしいものと言えるでしょう。とは言えイニストラードの寒さには流石のガラクも叶わなかったようで《情け知らずのガラク》はだいぶ厚着をしていますが。そう、イラストレーターのEric Deschamps氏によりますと、イニストラードのガラクが厚着をしているのは単に「寒いから」なのだそうです。


二つのポーズが似ているのは偶然? 意図的?


 ガラクは野生生物と心を通わせ、またとりわけ難しい獲物を仕留めた時は彼らを自身とを「繋げ」て、その強さを手に入れます。彼の名を冠するクリーチャー(《ガラクの仲間》等)や彼が呼びだすトークンは友、配下、自身の一部など様々な存在なのでしょう。



2. PWコミックのガラクその1 兜の由来

 もう一つガラクの外見的特徴といえばあの、顔の上半分を隠すマスクのような兜でしょう。あれは実はガラクの父親の仇が被っていたもので、PWコミック「The Wild Son」(公式には未訳)にはガラクの生い立ちとともに、あの兜を手に入れた経緯も語られています。

 少年時代、ガラクは農場主の父親とごく平凡に、平和に暮らしていました。10歳の誕生日にガラクは父から最初の魔法、種を芽吹かせる術を教わります。ですがその喜ばしい日は暗転しました。その地区の執行官の兵士が、有望な若者と聞いてガラクを徴兵しようとやって来たのです。父は声を伝えるアーティファクトをガラクに渡すと、森に逃げるよう言いました。
 ガラクは父親の声を聞きながら、追跡から逃げ続けました。ですがついには父親が反逆者扱いを受けて殺されてしまうことをアーティファクトを通じて知ります。父は最期に人間が抱く悪と欺瞞について警告し、また常に自然の声に耳を傾けるようガラクへと教えました。
 その台詞を抜粋しましょう。

“Nature is your best ally. Anyone who can speak can lie.”


「自然こそお前の最良の仲間だ。言葉を話す者は嘘をつく」といったような意味です。実は、この教えを受けたのであろうガラクの言葉がデュエルデッキ:ガラクVSリリアナ版及び統率者版《調和》のフレーバーテキストとなっています。


“Words lie. People lie. The land tells the truth.”
「言葉は嘘をつく。 人々も嘘をつく。 大地は真実を告げてくれる。」



 7年後、大きく成長し力をつけたガラクは何体もの大型クリーチャーを従え、父を殺した者を探し出すべく街へと向かいました。決して誰も殺さないようにと命令してクリーチャー達を暴れさせ、父の仇である執行官をおびき出します。父親のもとへと案内すると言われたガラクは従いますが、父親が殺されてそのまま放置されている地下牢へと連れて行かれ、閉じ込められてしまいました。ですがガラクはそのような不実を予想していました。彼は慌てることなく地下牢の床を突き破るほど強大なワームを召喚し、執行官を噛み砕かせました。こうして父親の仇を討ったガラクは執行官の兜を手に取り、野生へと戻って行きました。
 この時手に入れたマスク状の兜ですが、別に顔を隠しておくことにこだわりやしがらみがある訳ではないようです。その証拠に素顔の描かれたカードイラストが複数存在し、またPWコミックでも人前で兜を脱いでいます。ちなみに素顔イラストの初出はローウィン発売直後の公式記事、そのタイトルもまさしく「Planeswalkers Unmasked」(公式には未訳)でした。


ワイルドなイケメンです。




3. PWコミックのガラクその2 リリアナとの因縁

 上でも少し書きましたが、ガラクの登場しているデュエルデッキは「ガラクVSリリアナ」、屍術士リリアナ・ヴェスと対決する形になっています。
 この「デュエルデッキ」シリーズに登場するプレインズウォーカーは適当な組み合わせなどでは決してなく、ストーリー上において敵対関係や、敵対とまでは行かないものの決して友好的とは言えない同士の組み合わせをフィーチャーしたものです(とは言え、エルズペスとテゼレットは多少緊張した出会いこそあれ対立はしていませんし、2012年3月末発売予定のデュエルデッキ:ヴェンセールVSコスに至っては対立どころか多少の口論があった程度の、紛れもない仲間同士なのですが)。
 そしてこのデュエルデッキの存在が示す通りに、ガラクとリリアナの間には浅からぬ因縁があります。

ハンターとヴェール

ヴェールの呪い

 ここでリリアナの話になりますが、彼女は時のらせんブロックで起こった多元宇宙規模の出来事、「大修復」以前にプレインズウォーカーとして覚醒したと推測されています。つまり元々はウルザやセラのように無限の魔力と不死の肉体を持つ存在だったのですが、「大修復」によってプレインズウォーカーの灯の性質が変化した結果それらを失ってしまいました(これはニコル・ボーラスも同様であり、またソリン・マルコフも同じような「旧世代PW」だったと言われています)。リリアナは力と永遠の若さを再び手に入れるため、四体のデーモンと暗黒の契約を交わしました。契約の全内容は明らかにされてはいませんが、一つは彼女の魂を引き渡すというものです。
 今リリアナはその契約を後悔し、逃れる方法を探しています。そのためにニコル・ボーラスに助けを求め、ジェイス・ベレレンを利用し、また自身でも契約主のデーモンを倒そうと考えました。ある時、契約主の一体コソフェッドの命令により、強大な力を秘めた古代のアーティファクト「鎖のヴェール」を手に入れた彼女は、その力を使って逆に主を亡きものにしようと企みます。
 このヴェールを手に入れる過程で彼女はガラクに遭遇し、彼と戦って打ち負かすと更には弱体化と腐敗の呪いをかけたのでした。

 そもそも、ガラクとリリアナの出会いは全くの偶然でした。リリアナは鎖のヴェールを求め、ガラクはいつものように強大な捕食クリーチャーを求めていました。それら自体は全く不思議でも何でもありませんでした、同一の次元で二人が近くにいたということ以外は。
 リリアナは探索の最中、偶然遭遇したガラクの仲間である獣の一体を何気なく倒します。仲間を殺されて怒り狂ったガラクは彼女を追跡し、古の寺院の遺跡に辿りつきました。リリアナはそこに鎖のヴェールが隠されていると知り、探索にやって来ていたのです。遺跡内でガラクはリリアナに襲いかかりますが、彼女は手に入れたヴェールの力を借り、黒の魔術でガラクを圧倒します。そして彼の身体を痛めつけるだけでなく、呪いをかけて彼を弱体化させ、更に彼の召喚術を腐敗させてしまいました。
 ガラクは戦いに敗れ、瓦礫の下敷きになりながらも生き延びました。ですが彼女を追おうにもその痕跡は既にありませんでした。そこで彼はリリアナの情報を求め、かつて「二度と行かない」と誓った次元、世界規模の大都市ラヴニカへと向かいます(確かに次元まるまる一つが都市であるラヴニカはガラクと相性が悪いとしか言いようがありませんが、理由がそれだけかどうかはわかりません)。ラヴニカで彼は無限連合(詳細は【前回の記事】を参照)へと押し掛け、その現支配者にしてリリアナの元恋人であるジェイス・ベレレンへと、彼女の居場所を教えるよう強引に迫ります。一悶着の後にガラクはリリアナの居場所を聞き出し、ジェイスが研究していた地図がゼンディカーのものであると教えて去りました。

 余談ですがジェイスはガラクのこの乱暴な仕打ちに実は結構怒っていたようで、《移し変え》のフレーバーテキストで中々辛辣な言葉を浴びせています。


そこまで言わなくても。




4. そしてイニストラード

 一方のリリアナはヴェールの力を借りてコソフェッドを倒し、残るデーモンの契約主三体のうち一体、グリセルブランドを追ってイニストラードへとやって来ました。そして彼女の足跡をたどって恐らくは幾つもの次元を渡り、ガラクもイニストラードに辿り着きました。そこで呪いやイニストラードの怪物たちと戦いながら、彼はリリアナを追い詰めることができるのか。まだ多くは語られていません。第二、第三エキスパンションと物語が進むにつれて次第に明かされていくのを楽しみに待ちましょう。


 ところで公式記事「変身するガラク」によりますと、ガラクの変身ギミックは、

「忠誠度が一定の値以下になる」

「衰弱する、あるいは脆弱になる」

「普段は抑え付けている呪いの力が顕在化する」

 という仕組みのようです。そしてガラクが呪いを受けて衰弱している、という設定は「ガラクの生み出すトークンがどんどん小さくなっていっている」という事実に反映されているかもしれません。

《野生語りのガラク》[-1]:緑の3/3のビースト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。


《原初の狩人、ガラク》
[+1]:緑の3/3のビースト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
[-6]:あなたがコントロールする土地1つにつき、緑の6/6のワーム・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。


《情け知らずのガラク》[0]:緑の2/2の狼・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。

《ヴェールの呪いのガラク》[+1]:接死を持つ黒の1/1の狼・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。




5. 公式から「脳筋」と呼ばれた者

 最後に、今回の記事タイトルについて。
 手前味噌ではありますが公式記事「リリアナの任務」(元記事 Liliana’s Mission )最下部付近に以下のような記述があります。

(抜粋)
リリアナがヴェールによって呪いをかけた、そびえ立つような、脳筋の自然魔道士については?
(原文)
What about the towering, muscle-headed nature-mage whom Liliana cursed with the Veil?

 どう見ても脳筋です、本当にありがとうございました。