あなたの隣のプレインズウォーカー ~第11回 ギルドの都へおかえりなさい~

若月 繭子

若月 繭子

彼はまだ短い人生の中、ラヴニカの歴史における偉大なるギルドや多くの英雄達、そして名うての悪者達についての物語に浸るあらゆる機会を逃さなかった。当然彼はゴルガリ団とセレズニア議事会へと特別な魅力を感じていた、彼自身がどちらのギルドに所属するべきか定かではなかったとはいえ。彼の父親はゴルガリのギルドマスターであり、母親はセレズニア議事会の英雄的な守護者だった。

ゴルガリ、怪物達のギルドは彼を怖れさせなかった。父親のギルドはミクを魅了した。そして彼はギルドの歴史について書かれた本を読み続けてきた。崇高なるボロス軍とその炎をまとう天使達。影のオルゾフ組、法律家と幽霊と金のギルド。アゾリウス評議会、法の気高き賢者達。シミック連合の才気溢れる医師達、論理的かつ力を求めるイゼット団、野生的で獰猛なグルール一族。加えて、触れてはいけない……実のところ、彼はかつて母親に頬を叩かれたことがある……見えざるディミーア家。十番目の、存在しないギルド。これらの物語を見つけるのは簡単ではなかったが、ミクはラヴニカの中央にある図書館をよく知っていた。そして、ラクドス教団の死の狂信者達、誰もが彼に知ってほしいとは思わないギルド。彼の年頃の多くの少年達と同じように、危険なラクドス教団を彼は面白いと感じた。違う、彼らのようになりたいと思ったわけではない。ミクはラクドスの隆盛と戦い、忌まわしき奴隷使いと直接対決し、彼の大胆な剣術と頼もしい狼とともに無辜の者を救い出す自分自身を思い描いていた。

(小説Dissension P.116より抜粋・私訳)

こんにちは、若月です。
いつものように小説のワンシーンから始めましたが、これはゴルガリ団のギルドマスター、ジャラドの息子ミク(11歳)が各ギルドに対しての印象を述べたものです。ラヴニカに住まう一人の少年がギルドをどのように見ているのかがよくわかります。
今回は、プレインズウォーカー達を紹介するという連載の趣旨からは少々外れますが、旧ラヴニカブロックの物語のおさらいです。一体どんなストーリーだったのか、各ギルドはどうなったのか、既に名前が発表されているギルドマスター達は何者なのか。発売を前に日々公式の新情報が出続けている時期ではありますが、旧ラヴニカブロック時代にプレイしていた人もそうでない人も、ラヴニカへの回帰発売前にちょっと昔について知ってみませんか?

注意! ここからは旧ラヴニカブロックのストーリーのネタバレが含まれます。ラヴニカへの回帰の前に自力で小説読んでみようかな、という人は楽しみが削がれてしまうかもしれません。くれぐれもご注意下さい。



1. 旧ラヴニカブロックの物語とは



いつもの基本地形も、都市次元ラヴニカではちょっと違います。
平地は都市の遠景、島は建物の間を縫って流れる川、沼は不気味な下水道、
山は煙を噴き出す工場や溶鉱炉、森は建物に取り込まれた木々。
所々に点々とする人影からそのスケールがわかります。


カードの人気は今もとても高いのですが、旧ラヴニカブロックのストーリーはあまり知られていないような気がします。
次元全てが都市に覆われたラヴニカ、そこでは一万年の間、二色のマナを体現する十のギルドが不戦協定「ギルドパクト」を締結し、その次元においてそれぞれの役割を平和裏に務めながらも影では密かに覇権を争ってきました。そして存在しないとされる十番目のギルド、ディミーア家の首領である吸血鬼ザデックがギルドパクトを転覆させようと企んだことから、数十年にも及ぶ騒乱が勃発します。……大体のあらすじはこのような感じです。
その中で各ギルドはそれぞれの目的のためにどう動いたのか、また各ギルド二種ずつ登場している伝説のクリーチャー達はどのようなキャラクターで、どのような活躍をしていたのでしょうか。

ウォジェクの古参兵、アグルス・コスオルゾフの御曹子、テイサ

ラヴニカ・ギルドの都&ディセンションの主人公がアグルス・コス、
ギルドパクトの主人公がテイサです。




2. 各ギルドと所属する人物達の顛末

十のギルドの路線は大まかに「ギルドパクトの破壊を防ぎ、ラヴニカの平和を維持する」「ギルドパクトを破壊し、ラヴニカでの覇権を得ようとする」「ギルドパクトもラヴニカ支配も割とどうでもいい、我が道を行く」の三つに分かれていました。



では、「ギルドパクトの破壊を防ぎ、ラヴニカの平和を維持する」側のギルドから紹介して行きましょう。


ボロス軍

聖なる鋳造所稲妻のらせん

ボロス軍はギルドパクトを守り速やかに紛争を収めるための軍隊であり、ボロス軍の下部組織ウォジェク連盟は警察組織として日々の治安維持にあたっています。旧ラヴニカブロックはギルドパクト協定を破壊し支配権を得ようとする人々が様々な陰謀や騒動を企てるという物語ですので、それを防ごうとするボロス軍のキャラクターが主人公として選ばれるのは必然だったのでしょう。
(ラヴニカへの回帰ブロック・ギルド特設ページ)


・ウォジェクの古参兵、アグルス・コス/Agrus Kos, Wojek Veteran

ウォジェクの古参兵、アグルス・コス

ギルドパクトはラヴニカ次元最強の魔法だ。それはただの紙片でも、商売上の同意事項でもない。ギルドパクトは確かに文書だが、それは同時に呪文でもある……権限を持ち、その内に法を包含する呪文。そしてウォジェク連盟は法を執行する。彼、アグルス・コスは法を執行する。
コスはどうにか立ち上がると、ポケットへと手を入れて十芒星型の胸章を取り出し、それを上着の胸元に押しつけた。そしてベルトから銀製の手錠を引き抜いた。重傷から復帰してからというものの、彼はその胸章を身に着けることにためらいを感じていた。だが今、胸章はあらゆる意味を持っていた。
コスは高座へと歩き、燃えくすぶるザデックの前にかがむと、世界最大の悪者の上腕に手錠をはめた。それは鋭い音を立てると、ギルドパクトの呪文を受けて穏やかに輝いた。秘密の王といえどもマット・セレズニアが生きている限り、それを破壊することはできない。
「ザデック」コスは言った。「ルーダ、聖バユル、ベル・ボルカ巡査部長殺害の容疑で逮捕する。抵抗は無意味だ。全く、なんて荒っぽい一週間だ」

(小説Ravnica: City of Guilds P.291-292より抜粋・私訳)

これは小説Ravnica: City of Guildsのクライマックス、セレズニア議事会を侵略しようとした《秘密の王、ザデック》をアグルス・コスが逮捕する、最高に格好いいシーンです。
彼は老齢ながらも現場での活動にこだわるベテラン警官です。しかし小説Guildpactのラスト近くにて、イゼット団狂科学者との戦いの中で死亡してしまいました。その後幽霊となってアゾリウス評議会から任務を受けてシミック連合の本拠地《進化の中心、ノヴィジェン》へと突撃したり、《アウグスティン四世大判事》の陰謀を暴いたりと大活躍。小説Dissensionのエピローグでは《幽霊街》アギレムにて幽霊警官として生きて?ゆくという自分の運命を受け入れていました。まだやるべき仕事がある、そのことをどこか嬉しそうに。
なお日本語では区別できないのですが彼はKos、プレインズウォーカーの方のコスはKothです。紛らわしいため、背景世界ファンの間ではしばしば「コス爺さん」とも呼称されています。



コス爺さんが余生?を過ごす場所。ラヴニカの幽霊街は文字通りに幽霊達の住む街です。
ちなみにイニストラードの幽霊街は無人となったいわゆるゴーストタウンを表しています。



・ボロスの大天使、ラジア/Razia, Boros Archangel

ボロスの大天使、ラジア

ボロス軍のギルドマスターです。小説Dissensionにて幽霊街アギレムを調査中、ディミーア家のギルドマスター、《秘密の王、ザデック》に殺されてしまいました。ボロスの天使としてはコスの同僚フェザー(カードには未登場ですがイメージは《炎まといの天使》)の方がずっと出番が多く、実はラジアはさほど出ていません。


セレズニア議事会

寺院の庭召喚の調べ

《極楽鳥》のフレイバーテキストを御存知でしょうか。「遥か昔、極楽鳥は空にあふれていた。 都市が広がっていったせいで、そのほとんどは社会的エリート達のペットにとなっている」 セレズニア議事会は、都市次元ラヴニカにおいて僅かに残る自然を守るギルドです。いくらラヴニカ次元のドライアドやエルフ達が都市環境に適応していると言っても他の「自然が豊かな」次元に比べるとそれはとても大変なようで、彼らは「自然を維持し増やす」ことを使命としてはいますがそれ以上の野望は持たず(持てず?)、それゆえに他の野心的ギルドから狙われやすい存在でした。
(ラヴニカへの回帰ブロック・ギルド特設ページ)



極楽鳥といえば小説Dissensionでは殺人現場に極楽鳥の羽根が遺留品として残されており、
登場人物の一人が「凄いレア物だな」と呟くというシーンがありました。



・トルシミール・ウルフブラッド/Tolsimir Wolfblood

トルシミール・ウルフブラッド

小説には出ていません。が、とてもよく似たキャラクターが旧ラヴニカブロック小説に登場しています。Fonnという名の金髪のハーフエルフの女性で狼を連れています。小説Ravnica: City of Guilds及びDissensionでは準ヒロイン的な存在です。トルシミールを女性にしたような雰囲気なのではないかと私は考えています。


・議事会の合唱者/Chorus of the Conclave

議事会の合唱者

正確には彼女らはセレズニア議事会のギルドマスターではありません。真のギルドマスターは自然そのものの顕現であるとされている神秘的意識「マット・セレズニア」であり、《議事会の合唱者》はその代弁者となっているドライアドの集合体です。ザデックにそそのかされた《ゴルガリの女王、サヴラ》によって本拠地《都市の樹、ヴィトゥ=ガジー》が攻撃されてマット・セレズニアはザデックに殺されかけ、はたまた《穢すものラクドス》にも標的にされるなど旧ラヴニカブロックにおいてセレズニアはひたすら受難でした。


オルゾフ組

神無き祭殿絶望の天使

生と死を表裏一体とするギルドでも、ゴルガリ団がゾンビのギルドならばオルゾフ組は幽霊のギルド。彼らが重要視するのは金と伝統。ラヴニカにおけるあらゆるビジネスの背後には何かしらオルゾフ組の影があると言われています。ビジネスの面で既にラヴニカを支配していると言ってもいいオルゾフ組は、ギルドパクト協定をどうにかするのではなく、その枠内で力をつける方が都合が良かったのでしょう。
(ラヴニカへの回帰ブロック・ギルド特設ページ)


・オルゾフの御曹子、テイサ/Teysa, Orzhov Scion

オルゾフの御曹子、テイサ

小説Guildpactの主人公。オルゾフ組の正当後継者の血筋であり敏腕法律家、能力と野心を合わせ持つ才女です。再開発地域ウトヴァラを相続し、その地の疫病を一掃したりイゼット団狂科学者の世界征服計画をくじいたりと奮闘していました。その後小説Dissensionでの大惨事も無事生き延び、新たなギルドパクト協定の設立に助力しました。なお彼女のカードイラスト、背後に立つ男性は小説にのみ登場の従者Meliskと思われます。


・オルゾヴァの幽霊議員/Ghost Council of Orzhova

オルゾヴァの幽霊議員

「お前は執行猶予中だ。今回失敗したら死が待っているぞ」
「もう死んでいますが何か」

(小説Guildpact P.139より抜粋・私訳)
オルゾフ組のギルドマスターである彼らは過去のオルゾフ総統達の幽霊の集合体です。オルゾフの首領達はその長寿命を金で買い、死後には幽霊となってギルドを統べます。ただし自殺した場合はその権利を失うので、幽霊議員に加わりたくともなかなか加われず歯がゆい思いをする者もいます。

闇の腹心

ボブの隣にいる円錐形の生物は、オルゾフ組の重鎮の中でも
死んで幽霊議員に加わるのを待っている段階の者なのだとか。



次に「ギルドパクトを破壊し、ラヴニカでの覇権を得ようとする」ギルド。


ディミーア家

湿った墓ディミーア家の護衛

アゾリウス評議会のアウグスティン四世曰く、対抗する力の存在によってギルドパクト協定は強固なものとなる。存在しないとされるギルド、ディミーア家はギルドの一つでありながらギルドパクト協定に敵対する存在です。旧ラヴニカブロックにて、ギルドパクト協定を破壊したり自らが覇権を得ようという野望を抱いたギルドの背後には大抵ディミーア家、ザデックの影がありました。
(ラヴニカへの回帰ブロック・ギルド特設ページ)


・ディミーアの脳外科医、シアクー/Circu, Dimir Lobotomist

ディミーアの脳外科医、シアクー

登場していません。そもそも、小説に登場するディミーア所属の人物はザデックの他には……。《精神ヒルの塊》《ディミーアのドッペルゲンガー》は頻出しています。どんな人物や物にも姿を変えて潜入することができる恐怖の蟲の塊。グロ注意。

精神ヒルの塊

むしろ一番活躍していたディミーア所属クリーチャーかも。



・秘密の王、ザデック/Szadek, Lord of Secrets

秘密の王、ザデック

彼こそが旧ラヴニカブロックの一番の黒幕です。一万年の間ラヴニカ地下に潜み、ギルドパクト協定の転覆を狙っていました。小説Ravnica: City of Guildsではサヴラをそそのかしてセレズニアを壊滅寸前に追い込むもアグルス・コスに逮捕されてしまいます。ですがそれこそがザデックの、ギルドパクト協定を破壊する巧妙な罠でした。その後アゾリウスに引き渡されて殺害されるも、小説Dissensionでは幽霊となり幽霊街アギレムにてボロスの天使軍団をほぼ全滅させていました。自分を殺害し利用したアウグスティン四世へと復讐した後は幽霊街で何か企んでいるようです。


ゴルガリ団

草むした墓ゴルガリの墓トロール

ギルドの中でもいわゆるドレッジから最もプレイヤー知名度が高いであろうゴルガリ団。生と死の循環を理念とし、ラヴニカ地下世界で屍術と狩りの技を磨いています。また地下農場でのキノコ栽培等でラヴニカの食糧事情を支えるという縁の下の力持ち的な一面もあります。旧ラヴニカブロック序盤にてゴルガリ団は内紛状態にあり、そこをディミーア家のザデックにつけ込まれるような形となりました。
(ラヴニカへの回帰ブロック・ギルド特設ページ)

ゴルガリの腐敗農場

ゴルガリの地下農場ではゾンビ達が働き、作物のキノコを育てています。




・ゴルガリの女王、サヴラ/Savra, Queen of the Golgari

ゴルガリの女王、サヴラ

彼女はゴルガリ団の中ではギルドマスターである石の死の姉妹に次ぐ実力者でしたが、ザデックの囁きに従ってゴルガリ団創設者スヴォグサーを蘇らせ、石の死の姉妹を倒してギルドマスターとなりました。そして次にセレズニアを手に入れようとした時、現れたザデックに殺されてしまいます。しかもその後、小説Dissensionではその死体にスヴォグサーが憑依するという有様。哀れ。


・石の死の姉妹/Sisters of Stone Death

石の死の姉妹

旧ラヴニカブロック開始時、彼女ら3人がゴルガリ団のギルドマスターでした。ですが小説Ravnica: City of Guilds中盤でサヴラとスヴォグサーに敗れ、三姉妹中二人が死んでその地位を追われてしまいました。一人は生き残るもボロス軍の天使フェザーに「今度地上で見かけたら殺す(要約)」と言われて撤退。生きてはいると思います。


イゼット団

蒸気孔電解

マッドサイエンティスト的なイメージの強いギルドですが、まあ実際そうなのですが、一方で彼らはラヴニカの上下水道や蒸気網等、インフラストラクチャーの構築と維持管理を受け持っており都市生活になくてはならないギルドです。物語では、小説Guildpactにてイゼット団の狂科学者Zomaj Haucがドラゴンの卵を三つ孵化させ、それらを従えて世界を支配するという野望を抱き、アグルス・コスやテイサによって退けられていました。そのあまりにベタな展開はコス曰く「勤務中の暇潰しに読んだ安物の娯楽小説のようだ」と。
(ラヴニカへの回帰ブロック・ギルド特設ページ)


・ティボーとルミア/Tibor and Lumia

ティボーとルミア

物語には登場していないのですが、二人が何者かはAsk Wizardsにて説明されていました。長いので要約しますと、二人はイゼットの大魔導士の夫婦なのだそうです。左側の男性ティボーは大気の使い手、右側のルミアは地の魔術師でマグマを操るとのことです。


・火想者ニヴ=ミゼット/Niv-Mizzet, the Firemind

火想者ニヴ=ミゼット

ニヴ=ミゼットさん! 小説Dissension冒頭でネフィリム数体と戦うも傷を負ったら「飽きた」って言い訳して逃げ帰ってそれ以降出てこなかったくせにラヴニカへの回帰アナウンスで堂々と顔出してるニヴ=ミゼットさんじゃないですか!! ……一応彼の名誉のために付け加えておきますが、上述の世界征服計画にはノータッチです。



ニヴ=ミゼットは非常に自己顕示欲が強いことで知られています。
ギルドシンボルは彼の姿を象徴化したものですし、
そもそもイゼット団という名前も彼の名が元になっています。



アゾリウス評議会

神聖なる泉再誕の宣言

法を執行するのがボロス軍ならば、法を司るのがアゾリウス評議会です。盲目的に彼らの正義を貫き、変化を許容せず現状を維持する。ですがその色が示す正義と秩序のギルドも、ギルドパクト協定を覆し彼らの法のもとにラヴニカを支配するという野望を抱きました。
(ラヴニカへの回帰ブロック・ギルド特設ページ)


・アウグスティン四世大判事/Grand Arbiter Augustin IV

アウグスティン四世大判事

小説Dissensionに登場していますが、当初あれ、いい人なんだ……と思わせておいて悪い人でした。小説Ravnica: City of Guilds終盤にて逮捕されたザデックはアゾリウスに引き渡されて殺されていました。アウグスティンはザデックの幽霊を支配し、彼を利用してボロスの天使軍団を全滅させます。ですが最終的に、利用されていたことを知ったザデックによって殺されてしまいました。

秩序の尖塔、プラーフ

アゾリウス評議会の本拠地プラーフ。
小説Dissensionでは空から落ちてきたボロス軍天使達の空戦艇パルヘリオンが激突して大破するという惨事に……



・不可解なるイスペリア/Isperia the Inscrutable

不可解なるイスペリア

登場していません。何が「不可解」なのかはラヴニカへの回帰で明かされるのでしょうか。


シミック連合

繁殖池シミックの空呑み

自然を保持するセレズニア議事会に対し、シミック連合は自然をよりよく改造することを目指しています。ラヴニカの人々にとってシミック連合は多くの便利な品々を作り出す企業のような存在であり、頼もしい医師達の集団でもあります。彼らは医療や身体能力強化の為と称し、ラヴニカの多くの人々に彼らが開発した「細胞質体/Cytoplast」を提供していました(これはゲーム上でシミックの「移植」能力で移動される+1/+1カウンターとして表現されています)。その裏で彼らはそのバイオテクノロジーの結晶、クラージ実験体によってラヴニカを支配するという計画を立てていました。
(ラヴニカへの回帰ブロック・ギルド特設ページ)

ヴィグの移植術師

ラヴニカのヴィダルケンはミラディンのそれと違って二本腕なのですが、
このカードに描かれている彼だけが四本腕です。
シミックの改造実験の結果でしょうか?



・シミックの幻想家、モミール・ヴィグ/Momir Vig, Simic Visionary

シミックの幻想家、モミール・ヴィグ

MOのアバターとしておなじみの人ですね。両腕が不自然なほどに長いのは改造を受けているためです。彼はサヴラの遺体に憑依したスヴォグサー(ゴルガリ団の項目参照)と共に、シミック連合の本拠地ノヴィジェンの研究室にて後述の「クラージ計画」を進めていました。ですがアゾリウスからの任務を受けて潜入したアグルス・コス(幽霊)もまたサヴラの身体に憑依し、そのことを知らないモミールはコスに目玉を突き刺されて死亡してしまいました。


・クラージ実験体/Experiment Kraj

クラージ実験体

このクラージ実験体の能力はラヴニカブロックでは珍しく、ストーリーと非常に合致しています。

 クラージ実験体は、+1/+1カウンターが置かれている他の各クリーチャーの持つすべての起動型能力を持つ。
 {T}:クリーチャー1体を対象とし、それの上に+1/+1カウンターを1個置く。

+1/+1カウンターはシミック連合が開発した細胞質体/Cytoplastを指し、シミックのキーワード能力「移植」によって置かれたもの。シミックはこの細胞質体をラヴニカ中の人々に与えておき、目覚めたクラージ実験体がラヴニカ中の細胞質体を全て取り込んで宿主の能力を得る、そしてクラージを制御するモミールがラヴニカを支配する……というのが「クラージ計画」でした。ですがモミールがアグルス・コスに殺されたことからクラージは暴走、彼?はデーモン・ラクドスと戦って勝利するもセレズニア議事会の飛行生物兵器「Quietmen/沈黙者」達に始末されました。


そして、「ギルドパクトもラヴニカ支配も割とどうでもいい、我が道を行く」ギルド。


グルール一族

踏み鳴らされる地巨大ヒヨケムシ

野人軍団グルール。ギルドとしての結束は緩いもので、雑多な種族からなる幾つもの小集団がそれぞれのボスに従っています。彼らの大切な役割の一つは、都市次元ラヴニカにおいて文明に馴染めない者達の居場所となること。そのため、縄張りを通りがかったテイサ一行へと略奪のために襲いかかるなどフリーダムに暴れ回ってはいましたが、他のギルドをどうこうしようという野望は特に持っていませんでした。
また旧ラヴニカブロックの謎生物ネフィリム。彼らは都市の廃墟地下深くに棲む古の怪物であり、その由来も正体も謎の存在なのですが、グルールの者達はその生態や対処方法を心得ており、ネフィリムが生息している地域を旅する際はグルールの案内人を雇うと良いのだそうです。
(ラヴニカへの回帰ブロック・ギルド特設ページ)

光り眼のネフィリム魔女の腑のネフィリム

歴代マジックのクリーチャーの中でもトップクラスに不気味なネフィリム達。
小説でもまさにこの姿で登場しています。



・憎悪の種、ウラシュト/Ulasht, the Hate Seed

憎悪の種、ウラシュト

小説Guildpactの化物枠はネフィリムだから!(出てない、の意)


・腹音鳴らし/Borborygmos

腹音鳴らし

小説Guildpactにて名前のみ登場していました。サイクロプスやオーガ等、マジックにおける知的生物の中で比較的知性の低いとされる種族もラヴニカではその多くが頑張って社会生活を営んでいます。


ラクドス教団

血の墓所悪魔火

赤黒。マジックで最も破壊的な色の組み合わせの通りに、ラクドス教団は混乱と殺戮を振りまく死のギルドです。一方で彼らはラヴニカ世界の鉱工業生産を担っており、ラクドス教団に所属することが直接罪となるわけではありません。一万年の間、ギルドマスター・ラクドスは教団本拠地《迷宮の宮殿、リックス・マーディ》の奥深く、溶岩の中で眠りについていました。ギルドの実質的指導者、血の魔女イゾルダ(リゾルダではなくイゾルダ)がそのラクドスを呼び覚ます儀式を行ったことにより、ネフィリムの襲撃やクラージの出現で混乱するラヴニカへと更なる混沌が巻き起こります。とはいえ彼らはギルドパクト協定をどうこうではなく、ただ思うように暴れていただけだと私は解釈しています。
(ラヴニカへの回帰ブロック・ギルド特設ページ)

ヘルホールの鼠粘液絡みの鼠

鼠はラクドス教団の象徴の一つであり、もし鼠が急激に数を増やしているようなことがあればそれは教団の隆盛の兆候なのだとか。



・血の魔女リゾルダ/Lyzolda, the Blood Witch

血の魔女リゾルダ

小説Dissensionに出て来るラクドス幹部の魔女はイゾルダ/Izoldaという名前でした。イゼット的で紛らわしいと思われたためにカードでは名前が変わったのかもしれません。イゾルダはギルドマスター・ラクドスと感覚を共有していたために、主がやられた際に自分も同じ傷の痛みを受け、苦しんでいた所をラクドスの狂信者達に貪り食われてしまいました。グロ注意(二度目)


・穢すものラクドス/Rakdos the Defiler

穢すものラクドス

イゾルダや教団員達の儀式によって一万年ぶりにラヴニカ地表へと姿を現したラクドスですが、クラージ実験体との戦闘の果てにダウン、後にその身体は主要登場人物皆によってリックス・マーディの火口に放り込まれてめでたしめでたし……え、「何度でも蘇るさ」?


と、目立っていたものも影の薄かったものもありましたが、とても個性的な十のギルドでした。
旧ラヴニカブロックの結末を簡単にまとめますと、ひとまずラヴニカを混乱に陥れようとする者は全て退けられました。そして様々な騒動の果てに結局魔法的協定ギルドパクトは破壊されてしまったものの、主にテイサの活躍によって魔法的拘束力を持たない新ギルドパクト協定が設立され、混乱し壊滅しかけた各ギルドも再建への道を歩み始めました。まだまだ大変だけれど一応は大団円、良い読後感のあるエンディングだったと私は感じました。「回帰」して、更にはこれまた個性的なプレインズウォーカー達が加わってどうなるのでしょうね。



3. 新ギルドマスター達

ラヴニカへの回帰特設サイトにおいて、各ギルドマスターの名前と種族、大まかなプロフィールが公表されています。

「ラヴニカへの回帰」に登場のギルドとそのギルドマスター
アゾリウス評議会:イスペリア(スフィンクス)
ラクドス教団:ラクドス(デーモン)
セレズニア議事会:トロスターニ(ドライアド)
イゼット団:ニヴ=ミゼット(ドラゴン)
ゴルガリ団:ジャラド(エルフ・ゾンビ)

「ギルド門侵犯」に登場のギルドとそのギルドマスター
ディミーア家:ラザーヴ(シェイプシフター)
グルール一族:腹音鳴らし(サイクロプス)
オルゾフ組:オブゼダート(スピリット)
ボロス軍:オレリア(天使)
シミック連合:ゼガーナ(マーフォーク)

彼ら新ギルドマスターの中でも、ジャラドとオブゼダートは旧ラヴニカブロックの小説に登場していました。

まずジャラド。デュエルデッキ:イゼットvsゴルガリに先行収録されている彼は《ゴルガリの女王、サヴラ》の弟で、彼女の死後にゴルガリ団のギルドマスターの座に就きました。責任感が強く、小説Ravnica: City of Guildsにて内外に多大な迷惑をかけたゴルガリ団をしっかりと立て直した頼もしいギルドマスターです。小説Dissensionにて息子をラクドス教団に攫われ、救出に向かったのですが血の魔女イゾルダに殺されてしまいました。その後自身の屍に憑依し、リッチとなって蘇りました。
なお彼の妻は、記事上部セレズニア議事会の項目で述べたハーフエルフのFonnです。小説Ravnica: City of Guildsにて共に戦った後、どうやらいい仲になった模様。二人は小説Guildpactではアグルス・コスの葬儀の際に顔を見せただけだったのですが、小説Dissensionで再びメインキャラになった時に明かされた驚愕の事実。二人は結婚しており息子まで生まれていて更には互いのギルドの相違から既に離婚していたと。なんという超展開……ついでに息子の年齢と話中の時間経過を考えるにデキ婚だったんじゃないか疑惑が。ああ、責任感が強いってそういう……



姉さんと並べたい能力。生前は「印象的なハンサム」だったらしいです。
少なくとも身体にキノコを生やしているようなセンスは無かったような……


オルゾフ組の新ギルドマスター、オブゼダートは《オルゾヴァの幽霊議員》の別名であり、だいたい同じ存在と考えて良さそうです。ただし公式の動画によれば「中の人の面子は微妙に交代している」との事です。

また、ボロス軍の新ギルドマスター、オレリアは公式記事「群衆の親分、クレンコ」に名前のみですが登場していました。その記事下部の訳注の通り、ラジアの死後にギルドマスターになったのはフェザー(ボロス軍の項目参照)だったのですが、オレリアが彼女を追放したようです。ボロス軍に一体何が起こったのかは定かではありません。

群衆の親分、クレンコ自然の伝令、イェヴァ

M13の伝説クリーチャーのうち2人はラヴニカ出身!
クレンコはゴブリンとは思えない賢さと人望を持っています。
イェヴァにはセレズニア的な雰囲気がありますね。




また基本セット2013のゴブリントークンはラヴニカ住まいで都市派のお洒落さん。


もう一つ気になるのはシミックの新ギルドマスター、ゼガーナ。旧ラヴニカブロックにマーフォーク・クリーチャーの姿はありませんでした。都市環境に魚人が生息するのは難しいのでしょう(といいますか、数年間マーフォーク・クリーチャーが作られなかった時代がありまして、旧ラヴニカブロックが丁度そこに位置しているのがそもそもの理由かと思われますが)。上記の動画によりますと、「ラヴニカへの回帰ブロックにはマーフォークがいる。ラヴニカにマーフォークが出現した理由はきちんと説明する」だそうです。そしてマーフォークで青緑と言えば思い出すのがDotP2012で登場したマーフォークのプレインズウォーカー、キオーラ・アトゥア。ようやく彼女の登場に期待がかかる……かも。

プレインズウォーカーの話が出たところでついでに。公式でもラヴニカへの回帰に向けてどんどん新情報が出てきていますが、おなじみ背景世界紹介記事「プレインズウォーカーのための案内」シリーズのRTR版がスタートしています。その第一回によれば「ラヴニカ次元出身のプレインズウォーカーも何人か存在する」……そしてデュエルデッキ:イゼットvsゴルガリの《予言の稲妻》には、同じくDotP2012初出、ラヴニカ出身でありイゼット団所属のプレインズウォーカー、ラル・ザレックの姿が。ついに彼がカードとして登場するのでしょうか。

……ところで。旧ラヴニカブロックはまだプレインズウォーカー達が「旧世代」(【第5回】【第6回】記事参照)だったころのエキスパンションです。当時、マジックの物語の背後には常にプレインズウォーカーの影がありました(神河ブロックにプレインズウォーカーは登場しませんが、同等と言われる程の力を持つ大口縄や夜陰明神がいました)。ですがそんな中、旧ラヴニカブロックの物語には全くプレインズウォーカーが登場していません。実はあまりはっきりした事はわかっていないのですが、小説によりますとラヴニカ次元は過去長い間、多元宇宙の中で孤立しておりプレインズウォーカー達にとって非常に訪れにくい場所でした。ボロス軍の天使達とアゾリウス評議会の歴代ギルドマスターのみがそれを知っていました。その原因も明記はされていないのですが、もしかしたらギルドパクトの魔法の副作用か何かだったのかもしれません。ギルドパクトはラヴニカ次元に平衡をもたらすための協定であると同時に、各ギルド以上に力を持つ存在がやって来るのを防ぐ……と考えれば辻褄は合います。そして今はそのようなことはなく、現にジェイスを初めとした多くのプレインズウォーカーがラヴニカへとやって来ています。というわけで、今回発生するであろうラヴニカでの争いにプレインズウォーカー達が介入するであろうことが予想できます。それが顕著なのが次のエキスパンション、「ギルド門侵犯」でしょう。



4. Gatecrash/ギルド門侵犯とは?

ラヴニカへの回帰ブロック第二エキスパンションが発表されています。Gatecrash/ギルド門侵犯。公式アナウンスの際に発表されたイラストではボロス軍の紋章を腰に着けたギデオンの姿が! 待ってました!!
それにしても気になるのがこの日本語名。「Gatecrash」の意味を手元の辞書で調べてみますと、「(切符無しで、招待されないで)パーティーや催し物などに押しかける、料金を払わずに入る」とあります。また少なくとも、旧ラヴニカブロック小説三部作において「ギルド門」なる建造物的なものは見当たりませんでした。キャッチコピーが「Fight For Your Guild」なので、これはギルド間の闘争にプレインズウォーカー達が乱入するのでしょう。更に「ラヴニカへの回帰」で5つのギルド、「ギルド門侵犯」でもう5つのギルド、そして第三エキスパンション(名称未発表、やはり何かネタバレなのでしょうね)では10のギルド全てが登場するとのことですが、その第三エキスパンションは「小型」と発表されています。全ギルドが登場するのに小型……? これは何かありそうですよね。

いよいよ近づいてきたラヴニカへの回帰。これほどまでに発売前から盛り上がっているエキスパンションはそうないでしょう。毎週新情報が出て来るこの時期は背景ファンにとってもたまらない季節。ラヴニカという魅力的な世界はこの連載でも引き続き追って行きたいと思います。