高橋優太のヴィンテージのすゝめ 前編

高橋 優太


 2015年10月2日、【禁止改定】が発効。

 《時を越えた探索》……レガシーで禁止。ヴィンテージで制限カードに。


時を越えた探索


 青を使うプレイヤーにお馴染みのカード《時を越えた探索》

 スタンダードのエスパードラゴンを支えている1枚であり、レガシーのオムニテルやデルバーの中盤~終盤の強さはこのカードのおかげだった。

 《時を越えた探索》が強力なカードであることに異論はないだろう。

 だが、強すぎるカードは時として環境を支配してしまう。

 ZEN-SOM期スタンダードの《石鍛冶の神秘家》《精神を刻む者、ジェイス》

 モダンでジャンド最強時代を作った《死儀礼のシャーマン》《血編み髪のエルフ》

 そして最近のレガシーなら《時を越えた探索》

 「《時を越えた探索》に対抗するためにはこちらも《時を越えた探索》を使うしかない」ということになりかねない。

 そう、強すぎるがゆえに禁止されてしまうのだ。


 一般的に、禁止カードはマナコストが効果に比して適正でないものが多い。

 0マナマナ加速、1マナ3ドロー、2マナ追加ターン!

 言葉にすると信じられないほど強力なカードも、マジックには存在する。




 あらゆるマジックプレイヤーの憧れ、「パワー9」

 レガシーではもちろん禁止の超強力カードたちだ。

 「パワー9」に限らず、《天秤》《Fastbond》《露天鉱床》など、強すぎるがゆえに禁止されているカードたちは数多くある。

 しかし、もしも歴代の強力カードたちを「禁止」なしに使うことができるフォーマットがあるなら……



 そんなフォーマットが、ある!

 「パワー9」をはじめ、あらゆる超強力カードをデッキに1枚までなら入れることができる、マジックの究極とも言える形!

 それが「ヴィンテージ」!!!





 ヴィンテージで一番強いプレイヤーは誰なのか。それを決めるべく、12/13(日)に【ヴィンテージ神決定戦】が開催される。

 歴代の強力カードの共演……一体どんなデッキが存在するのだろうか。

 今回の記事では、そんなヴィンテージの世界を前後編に分けて紹介して行こう。

 ※ヴィンテージの禁止・制限カードについては、【こちら】をご覧ください。



■ 「Mentor」



「Mentor」

1 《島》
3 《Tundra》
3 《Tropical Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
1 《Library of Alexandria》
1 《露天鉱床》

-土地(17)-

2 《ヴリンの神童、ジェイス》
2 《瞬唱の魔道士》
4 《僧院の導師》

-クリーチャー(8)-
4 《精神的つまづき》
3 《定業》
2 《狼狽の嵐》
2 《ギタクシア派の調査》
2 《剣を鍬に》
1 《Ancestral Recall》
1 《渦まく知識》
1 《思案》
1 《撤廃》
1 《Time Walk》
4 《噴出》
4 《Force of Will》
1 《時を越えた探索》
1 《宝船の巡航》
1 《森の知恵》
1 《Black Lotus》
1 《Mox Sapphire》
1 《Mox Emerald》
1 《Mox Jet》
1 《Mox Pearl》
1 《Mox Ruby》

-呪文(35)-
2 《自然の要求》
2 《精神壊しの罠》
2 《トーモッドの墓所》
2 《墓掘りの檻》
1 《神々の神盾》
1 《封じ込める僧侶》
1 《エーテル宣誓会の法学者》
1 《剣を鍬に》
1 《狼狽の嵐》
1 《至高の評決》
1 《静寂》

-サイドボード(15)-
hareruya


僧院の導師噴出


 直近の【グランプリ・神戸2015】トップ8入賞が記憶に新しい《僧院の導師》だが、その活躍はスタンダードだけに留まらない。

 《噴出》《ギタクシア派の調査》《精神的つまづき》《Force of Will》などなど、0マナのカウンターやドロー呪文が豊富なヴィンテージでこそ《僧院の導師》は輝く。


 このデッキの最高の回りを挙げてみよう。


1. 1ターン目に《Black Lotus》《僧院の導師》→Mox→Moxに《撤廃》→Mox。

2. 相手のターンに《Force of Will》で妨害。

3. トークンが4体なので、2ターン目に3つ呪文をプレイして攻撃→21点 (5+4+4+4+4)!




 このようにヴィンテージの《僧院の導師》生き残ればすぐにゲームを決めてしまう強力なカードだ。

 なので《僧院の導師》を中心に、ドローと妨害呪文でバックアップしていくのが基本的な動きとなる。



《精神的つまづき》《狼狽の嵐》


精神的つまづき狼狽の嵐


 最近の青い中速デッキでは《精神的つまづき》4枚+《狼狽の嵐》2枚というのが定番になってきている。

 《Ancestral Recall》を筆頭に《太陽の指輪》《Fastbond》《通電式キー》など、ヴィンテージでは強力なカードが1マナに集中している。それを牽制するための《精神的つまづき》は、《Force of Will》に次いで定番カードだ。

 ヴィンテージは先手後手の差が大きいが、《精神的つまづき》はそれを少し緩和してくれる。《Force of Will》《精神的つまづき》どちらかが初手にあると後手でもキープしやすくなる。

 また、ヴィンテージでは青が強い=ドローと打ち消しが強い。それに対抗するためのメイン《狼狽の嵐》というわけだ。

 「Mentor」デッキの小技として、「果敢」を稼ぐために自分の呪文に《精神的つまづき》をプレイすることがある。《狼狽の嵐》のコピーに対して《精神的つまづき》を撃つこともあるので、覚えておくと良いだろう。

 ここまで長所ばかり述べた《精神的つまづき》《狼狽の嵐》だが、万能というわけではなく、相手によっては無駄カードになってしまうこともある。

 後述の【発掘】【Workshop】デッキには1マナのカードやインスタント・ソーサリーがほとんど入っていないため、サイドアウトすることもあるだろう。



・サイドの《神々の神盾》《封じ込める僧侶》について


神々の神盾封じ込める僧侶


 《神々の神盾》【グリセルオース】【ストーム】対策になる。《ドルイドの誓い》誘発時に対戦相手を対象をとる必要があるので《神々の神盾》で無効化することができる。

 《封じ込める僧侶》《ドルイドの誓い》《実物提示教育》だけでなく、【発掘】《ナルコメーバ》《恐血鬼》《イチョリッド》《戦慄の復活》をまとめて対処できる。

 使う側も使われる側も覚えておくと良いだろう。



■ 「墓荒らし」



「墓荒らし」

3 《Underground Sea》
2 《Tropical Island》
1 《Bayou》
4 《汚染された三角州》
3 《霧深い雨林》
4 《不毛の大地》
1 《露天鉱床》
-土地(18)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《闇の腹心》
2 《ヴリンの神童、ジェイス》
2 《瞬唱の魔道士》
2 《三角エイの捕食者》

-クリーチャー(14)-
4 《精神的つまづき》
2 《狼狽の嵐》
1 《Ancestral Recall》
1 《渦まく知識》
1 《思案》
1 《神秘の教示者》
4 《突然の衰微》
1 《Time Walk》
1 《Demonic Tutor》
4 《Force of Will》
1 《Black Lotus》
1 《Mox Emerald》
1 《Mox Jet》
1 《Mox Sapphire》
3 《無のロッド》
1 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(28)-
3 《外科的摘出》
3 《自然の要求》
2 《殺し》
2 《魔力流出》
1 《イクスリッドの看守》
1 《狼狽の嵐》
1 《鋼の妨害》
1 《集団疾病》
1 《墓掘りの檻》

-サイドボード(15)-
hareruya


闇の腹心無のロッド三角エイの捕食者


 通称「墓荒らし」。BUGカラーの優秀カードを集めたデッキだ。

 このデッキの中心は何と言っても《闇の腹心》

 ヴィンテージではクリーチャー除去が入ったデッキが少なく、また速攻ビートダウンも皆無なため《闇の腹心》が延々とアドバンテージをもたらしてくれる。

 また、ヴィンテージでは多くのデッキにMoxシリーズが入っているため、「アンチアーティファクト」というデッキ構築がある。

 《無のロッド》《石のような静寂》で相手のアーティファクトを封じるもので、特に【Workshop】デッキに対して有効な戦略だ。

 この「墓荒らし」も、自分が使うMoxは色のあっている3種のみに抑えて、メインから《無のロッド》という「アンチアーティファクト」戦略を取っている。

 さらにメインからの《三角エイの捕食者》で相手のMoxを許さない。《不毛の大地》《露天鉱床》と合わせて、相手のマナ基盤を徹底的に攻めるのが基本的な動きだ。



《ヴリンの神童、ジェイス》《瞬唱の魔道士》


ヴリンの神童、ジェイス瞬唱の魔道士


 先ほどの【Mentor】にも入っていた《ヴリンの神童、ジェイス》《瞬唱の魔道士》

 どちらも《Ancestral Recall》《Time Walk》を使いまわすことができれば莫大なアドバンテージを得ることができる。

《ヴリンの神童、ジェイス》はMoxから1ターン目に出せる上に、ヴィンテージだと相手によって不要なカードが生まれやすいのでそれをドローに変えられるという利点がある。ただし、《精神を刻む者、ジェイス》と共存できない。

《瞬唱の魔道士》《狼狽の嵐》《精神的つまづき》など軽量カウンターを使い回せる (《ヴリンの神童、ジェイス》はカウンターを再利用できない) ほか、クロックとしても機能する。

 それぞれの違った長所を持つので、どちらか4枚よりも「2枚 : 2枚」に散らすのがオススメだ。


集団疾病


 またサイドの《集団疾病》は上記の【Mentor】と、《ドルイドの誓い》デッキの《禁忌の果樹園》対策を兼ねている。



■ 「Workshop Affinity」



「Workshop Affinity」

1 《トレイリアのアカデミー》
4 《古えの墳墓》
4 《Mishra's Workshop》
4 《不毛の大地》
1 《露天鉱床》

-土地(14)-

4 《メムナイト》
3 《搭載歩行機械》
4 《信号の邪魔者》
4 《ファイレクシアの破棄者》
3 《電結の荒廃者》
4 《磁石のゴーレム》
-クリーチャー(22)-
1 《Black Lotus》
1 《Mox Emerald》
1 《Mox Jet》
1 《Mox Pearl》
1 《Mox Ruby》
1 《Mox Sapphire》
1 《Mana Crypt》
4 《頭蓋骨絞め》
2 《探検の地図》
1 《魔力の櫃》
1 《太陽の指輪》
1 《頭蓋囲い》
4 《起源室》
4 《からみつく鉄線》
-呪文(24)-
4 《墓掘りの檻》
4 《アメジストのとげ》
3 《四肢切断》
3 《トーモッドの墓所》
1 《梅澤の十手》

-サイドボード(15)-
hareruya


電結の荒廃者からみつく鉄線


 2015年10月2日、ヴィンテージに大影響を与えたのは《時を越えた探索》の制限だけではなかった。


虚空の杯



 《虚空の杯》、制限カード入り。


 先手の《虚空の杯》は圧倒的だった。

 自分はMoxを展開→《虚空の杯》「X=0」で相手のMoxを無効化した上で《磁石のゴーレム》、という動きはそれだけでゲームが終わってしまう。納得の制限入りだ。


 これにより「Workshop」デッキは《アメジストのとげ》《抵抗の宝球》による妨害をメインコンセプトにしたデッキから、ビートダウンする形が主流となってきている。

 それがこの茶単ビートダウン「Workshop Affinity」。

 軽いアーティファクトクリーチャーを並べて《信号の邪魔者》《電結の荒廃者》でサポートし、《からみつく鉄線》《磁石のゴーレム》で相手の速度を下げている間に攻めきる形だ。


起源室頭蓋骨絞め


 このデッキの中核とも言えるのが《起源室》《頭蓋骨絞め》のコンボだ。これによりカードを引く→トークンを出す→またカードを引くの循環が生まれることになる。《起源室》のトークンはアーティファクトなため、《電結の荒廃者》《トレイリアのアカデミー》と強力なシナジーがある。


 最高の回りを挙げてみよう。







 ブン回りが最も強いデッキで、相手に何もさせないまま勝ってしまうこともある。

 また《トレイリアのアカデミー》は制限カードだが、上記のような展開に欠かせないので《探検の地図》が採用されている。



《搭載歩行機械》《ファイレクシアの破棄者》


搭載歩行機械ファイレクシアの破棄者


 スタンダードでお馴染みの《搭載歩行機械》だが、ヴィンテージでも《電結の荒廃者》のお供として活躍している。

 《電結の荒廃者》で生贄にしても良いし、「接合」先としても優秀だ。

 一方《ファイレクシアの破棄者》はプレイングが出るカードだ。

 基本的には相手が出したMoxを指定するが、それ以外にも《ダク・フェイデン》《ヴリンの神童、ジェイス》など選択肢が多岐に渡る。

 私は何もない状態で出すなら《Black Lotus》《ダク・フェイデン》を指定するようにしているが、相手のデュアランで読む、プレイの履歴で読むなど、まだまだ練習が必要だと感じている。



■ 「発掘」



「発掘」

4 《知られざる楽園》
2 《マナの合流点》
2 《ダクムーアの回収場》
1 《Karakas》
2 《石化した原野》
4 《Bazaar of Baghdad》

-土地(15)-

4 《恐血鬼》
4 《ナルコメーバ》
3 《ゴルガリの凶漢》
4 《臭い草のインプ》
4 《イチョリッド》
1 《炎の血族の盲信者》
4 《ゴルガリの墓トロール》
1 《太陽のタイタン》
1 《大修道士、エリシュ・ノーン》

-クリーチャー(26)-
4 《陰謀団式療法》
3 《戦慄の復活》
4 《黄泉からの橋》
4 《虚空の力線》
4 《血清の粉末》

-呪文(19)-
4 《薄れ馬》
4 《鋳塊かじり》
3 《静寂》
2 《蛮族のリング》
2 《石化した原野》
-サイドボード(15)-
hareruya


ゴルガリの墓トロール黄泉からの橋イチョリッド


 レガシーではお馴染みの「発掘」。

 発掘カードを捨ててドローを置き換えるのが基本動作だが、ヴィンテージには「引く」と「捨てる」両方を兼ねたカードがある!



 タップで「カードを2枚引き、3枚捨てる」というこのデッキのために生まれてきたかのようなカードだ。

 この《Bazaar of Baghdad》さえ起動していれば《ナルコメーバ》《イチョリッド》が湧き出てくるので、それらを生け贄に《戦慄の復活》《黄泉からの橋》から大量のゾンビ軍団+《炎の血族の盲信者》が基本パターンだ。

 デッキが極端に《Bazaar of Baghdad》に依存しているので、《Bazaar of Baghdad》のない初手はすべてマリガンすることになる。初手に来る確率を少しでも上げるために《血清の粉末》までもが採用されている。

 例え6回マリガンしたとしても《Bazaar of Baghdad》1枚さえあれば回る、珍しいタイプのデッキだ。

(ちなみに私はこのデッキで《血清の粉末》含み9回マリガンしても《Bazaar of Baghdad》を引かずに負けたことがある。対戦相手よりもマリガンと戦うことの方が多いデッキだ)


 「発掘」デッキの宿命だが、サイド後は墓地対策との戦いになる。メインは置換するだけの《Bazaar of Baghdad》も、サイド後はサイドカードを求めてドローすることが多い。

 相手が青い中速デッキだったら《トーモッドの墓所》《墓掘りの檻》の採用率が高いので、まずは《鋳塊かじり》を入れるところからスタートだ。


蛮族のリング石化した原野


 《封じ込める僧侶》には《蛮族のリング》で対応しよう。これは《石化した原野》で回収可能だ。

 また「発掘」の長所として、デッキが比較的安価なことが挙げられる。

 パワー9を使わずに一線級の強さがあり、《Bazaar of Baghdad》以外はレガシーの「発掘」と変わらない。

 ヴィンテージ新規参入者にはオススメのデッキだ。




■ ヴィンテージに触れて

 私自身、実際にヴィンテージのデッキに触れるまでは「先手ゲー」「運ゲー」の印象があった。

 しかし実際に触れてみると、それが偏見であったことに気づく。

 敷居の高さから誤解されやすいが、デッキ構築が多彩でメタゲーム読みが重要であり、非常に競技性の高いフォーマットだ。

 その反面、ヴィンテージについての記事は驚くほど少ない。せっかくの機会なので、今回の【ヴィンテージ神決定戦】がヴィンテージに興味を持つきっかけになれば幸いだ。

 それでは、また次回。



■ おまけ・廉価版デッキ



「赤バーン」

7 《山》
4 《樹木茂る山麓》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《不毛の大地》
1 《露天鉱床》
-土地(20)-

4 《ゴブリンの先達》
4 《僧院の速槍》
3 《渋面の溶岩使い》
2 《ゴリラのシャーマン》
4 《大歓楽の幻霊》
-クリーチャー(17)-
4 《精神的つまづき》
4 《稲妻》
4 《Chain Lightning》
4 《溶岩の撃ち込み》
4 《裂け目の稲妻》
3 《無のロッド》
-呪文(23)-
4 《墓掘りの檻》
3 《貪欲な罠》
2 《溶融》
2 《突然のショック》
2 《精神壊しの罠》
2 《トーモッドの墓所》

-サイドボード(15)-
hareruya


ゴブリンの先達Chain Lightning大歓楽の幻霊


 ヴィンテージをやりたいが「パワー9」は高い!という方にデッキを紹介するコーナー。

 Moxを使わないならアンチMoxのデッキ構築!ということで、《ゴリラのシャーマン》《無のロッド》を採用している。


ゴリラのシャーマン


 《ゴリラのシャーマン》はMoxモンキーとも呼ばれるカードで、わずか1マナでMoxを破壊する。

 クリーチャー除去が少ないヴィンテージだからこそ【Mentor】【墓荒らし】が強いが、赤バーンなら難なく除去!サイドの《突然のショック》《僧院の導師》対策だ。

 【ストーム】【発掘】には弱いが、そこはサイドボードを駆使しよう。






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